幻想の力でヒロアカ生活   作:ろぐいんち

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第10話

「では次の対戦に行こう!! 切島少年と久我少女ペア対! 青山少年と峰田少年ペア!!」

 

 爆豪と緑谷の試合が終わり、つつがなく試合は進行していく。そして今、私たちの番が来たのだ。

 

「久我ペアがヴィラン側! 青山ペアがヒーロー側だ! ヴィラン側は建物に入って準備! 青山ペアは5分後に潜入開始だ!」

 

 私たちは建物に入って最上階にある核の部屋で作戦会議をする。

 

「……」

 

 正直に言おう。私は今少し不機嫌だ。理由は……あまりよく分からない。恐らく緑谷関連であるのは確かなのだが。自分でもここまで怒る理由がわからない。やり過ぎではあるが、あの二人には元々長い因縁がある。それがあそこで少し爆発しただけだ。年頃の男子にはよくあること……なのに。どうしても胸が痛くなってモヤモヤが取れない。

 

「あー……なぁ、大丈夫か?」

 

「……悪い、話そう」

 

 ……だがこの心のつっかえを切島に八つ当たりする訳には行かない。一旦忘れるべきだ。私は顔を上げて切島の顔を見る。

 

「うし! じゃまぁやることは簡単だな! 俺が詰めるから、守ってくれ!」

 

「……いや、2人ともこの部屋で待ち構えよう。考えがあるんだ。……危ないかもしれないから少し離れてくれ」

 

 そういうと私は立ち上がり、切島から少し離れる。

 霧島も少し離れて見守る。

 

「フゥ…………」

 

 私は私の中にある鉄格子に意識を向ける。入学前のあの時からいつの間にか私の中にあった新しいEGO。その1つを今使おうとしているのだ。

 

 ……静かに、鏡の割れる音がした。

 

 パリン。

 

 EGO「レティシア」

 

 その音と同時に、私の視界が歪む。そして、鏡が割れるようなエフェクトと共にEGO「レティシア」を身につけた久我がそこに立っていた。

 

 手には淡いピンクで銃身にリボンの巻きついたライフルを持ち、赤白基調の童話の中に出てくるような服を着て、頭には赤く、リボンが巻き付き大きな金色の鈴を1つ付けた可愛らしいボンネットを身につけていた。

 

「おおぉ!? なんだそれめっちゃ可愛いじゃねぇか!!」

 

「……うるさい。話に戻るぞ」

 

 ……本当に似合ってない。今すぐにでも脱ぎさりたいが……一切使わないのは危険すぎる。一度は使っておくべきだからな……

 

 それに、今の時点で既にマッチの火を超えるポテンシャルを感じる。少なくともくちばしやマッチの火よりリスクレベルが高いのが感覚で分かった。

 

「……いいか、核の部屋になるべく背の低い遮蔽物を作ってくれ。切島は前に立って陽動兼近距離。私は隙を伺ったりこっちに飛び込んでくるヒーロー達を撃ち抜く。……何かあるか?」

 

「なるほど……正面衝突か!! 男らしくていいなぁ! それで行こう!!」

 

 そして私達は位置に着いた。切島は核の部屋のドアの前で待機し、私は核の目の前に。

 

 そして五分後

 

「START!!」

 

 インカムからオールマイトのスタートの合図が飛んできた。

 

 ……恐らくそう時間はかからず2人が突撃してくるだろう。私は切島に作ってもらった瓦礫を盾にしてレティシアのライフルを構える。

 

 ……動く度に鈴がなって煩わしいな。

 

 そうして2分後。すぐ近くで足音がした。

 

 私は切島にアイコンタクトを送る。切島は拳を構え、私はトリガーに指をかける。

 

 THOOM!! 

 

 部屋のドアがレーザーによって吹き飛ばされた。

 

「ワオ! なんだいそのメルヘンチックな格好は?」

 

「見つけた! 核だ!! ……なんだその格好!! ゴスロリじゃねぇか!!!」

 

「…………」

 

 部屋に突入してきた峰田が私を見るなり興奮して騒ぎだす。

 

 ……不快だ。

 

 タァン! 

 

 私は無言で一発峰田に打ち込む。

 

「いだっ!? うっ……痛いしちょっと気持ち悪い……! ……くっ、行くぞぉ! 青山ぁ!」

 

「ヴィランなんて僕には似合わないけどね!」

 

「もういいからそれはァ!」

 

 2人が部屋に押し寄せてくる。それをみた私は切島にアイコンタクトを送る

 

「オッラァァァァァ!!」

 

 ブンッ!! 

 

 切島が思いっきり青山に殴り掛かる。

 

「ウッ!? 僕の相手は君かい!?」

 

「おう! かかってきやがれ!!」

 

 青山と切島は付かず離れずの距離で殴りあっている。……青山のビームで攻撃しつつ距離を取る戦法が上手くいってなかなか距離がつまらない。少し時間がかかりそうか。

 

「これだからヒーロー科は最高だぜ……! こんな色んな属性の女子を見られるとは……!!」

 

「……チッ」

 

 ……よりによってなぜこいつが相手なのだろうか。それこそ飯田なんかなら何も言わず気持ちよく戦えただろうに。

 

 ……これも作戦か? まぁ、いい。すぐに終わらせて切島の援護に行こう。

 

 私は動かずにレティシアを構え、3発発砲する。

 

「うわっ!? うっ、あぶねぇ!」

 

 しかし峰田の素早い動きと小さな身体によって物陰に隠れられてしまう。

 

「チッ!」

 

 私は舌打ちを1つ吐いて即座にリロードし、構え直す。

 

 ……くちばしもマッチの火もそうだが、遠距離タイプのEGOの弾薬は私の精神力だ。早く勝負を決めないと私がジリ貧で負ける。かと言って焦るのは確実に良くない結果に繋がるだろう。

 

 ……私の役割は切島が1対1を出来る状況を作ること。峰田を倒せばせずともここに留めておけば、この4人で1番格闘が強い彼が全てを倒すだろう。

 

「くそぉ……やられてばかりのオイラじゃないぞ! 喰らえ! 『もぎもぎ!』」

 

 峰田は物陰から自分の頭から取れる物質、個性『もぎもぎ』を使ってあたり1面をもぎもぎだらけにする。

 

「……」

 

 今投げたのは恐らく峰田の個性だ。……あの球、ありえない角度で壁に引っ付いているな。恐らく強い粘着性を持っているのだろう。

 

 なら、私がすべきことは……

 

 私は投げられたもぎもぎを全て撃ち抜く。

 

 するともぎもぎは撃たれた場所からヒビが入ったように亀裂が広がり、すぐに「パァン!」と音を立てて割れてしまった。

 

「う、嘘だろ!? オイラ自慢のもぎもぎかこんなにあっさり……!」

 

 ……言い方的に物理耐性は高そうだな。これは思わぬラッキーだ。くちばしで撃っていたら最悪跳ね返ってきていた。レティシアの攻撃属性……BLACK、侵食攻撃が有効打になっている。

 

「くそぉ、このままじゃ……!」

 

「このままならそのうち切島が暴れ出すだろうな」

 

「ッ!」

 

 私は揺さぶりをかけるために少し口で攻撃することにした。話せば時間も稼げる。

 

「確かに相性は不利だ。だがだからといっていつまでそこに引きこもっている? あのナルシストの方を見てみろ」

 

「うっ……」

 

 今、青山は切島と戦っている。しかし切島のビームを恐れない突撃姿勢に次第に押され、更にビームの使いすぎで青山の顔色が悪くなってきている。長くは持たないだろう。

 

「この試合のキーはお前だと言うのに、そこでボーッと見ているのか」

 

「う、うるせぇ! そっちだって引きこもってるじゃねぇか!」

 

「私はこの距離で有効打を与えられる。だがお前は出来ない。この違いが分からないか?」

 

「うるさいぞ! 戦闘中にコスプレみたいな服着やがって!」

 

「……………………」

 

 ……まさか口の勝負で私がダメージを受けるとは思わなかった。これは要反省だな……

 

「……まぁ、いい。私は待つだけだ」

 

「く、くそぉ……!!」

 

 まぁこのまま膠着状態でも私は困らない。時間が来たら私たちの勝ちだし、それ以前に切島が破壊してくれるだろう。私はそれまで場を繋ぐだけだ。

 

「や、やられっぱなしでいられるかぁ!!!」

 

「!!」

 

 峰田は負けるかと奮起し、一瞬で凄い量のもぎもぎを色んなところにばらまく。壁も、瓦礫にも、床にも。

 

 私はそれを見ていくつかを空中で撃ち抜いたが、全てを撃ち抜くことは出来なかった。更に、まだ初めて使うという事もあって残弾数の確認を怠っていた。引き金を引いても弾が出ない。

 

「ッ! しまっ……!」

 

「! チャンスだ!! うおおおおお!!」

 

 その隙を逃さず峰田はこちらに距離を詰めてくる。

 

「クソッ……!」

 

 ガチャン! 

 

 リロードが完了し、精神が削られる感覚と共に発砲する。しかしその時……

 

「うわぁぁぁぁっ☆」

 

 切島に吹き飛ばされた青山が私目掛けてビームを放ちながら飛んできてしまう。

 

「ッ!」

 

 私は咄嗟に避けるために照準を外して前に飛び込む。そしてそのままこっちに詰めてきていた峰田と正面衝突してしまう。

 

「ぐっ……」

 

 私は峰田を下敷きにして倒れ込む。

 

「わ、わりぃっ久我……! 大丈夫か!」

 

「っ……もん、だい、なっ……!!!!!」

 

 ……私の足に峰田が張り付いていた。もぎもぎを手に持っていたため離れない。

 

「なっ、お前……!」

 

「こんなコスプレする割に……ふとももがちゃんと……」

 

 カチッ

 

「その後の言葉……続けたら……分かるな……?? 今すぐ離せ……!!」

 

「ひいいいいいいい!!!」

 

 私は有無を言わせず峰田の頭に銃口を押し当てた。峰田はそれに怯え、その隙に切島が慌てて捕獲テープを峰田に貼る。

 

「しゅうりょーう!!!!」

 

 どうやらナルシストの方は既にテープが貼られていたようだ。

 

「ッ………………ハァ…………」

 

「……大変だな、おめェも」

 

 肩を落とし落ち込む私に、切島がポン、と肩に手を置いて気遣ってくれた。私の背中には深い哀愁が漂っていた。

 

「勝者! ヴィランチーム!!」

 

 

 

 私たちはモニター室に戻ってオールマイトの総評を待っていた。

 

「いやぁいい試合だったよ!! ……ところで久我少女、いつまでその格好でいるつもりかな……?」

 

「どっかのゴミに気をつけないといけないので。このままで」

 

「そ、そうか……ま、まぁとりあえず総評に入ろう! まぁMVPはヴィランチームの2人かな!」

 

 私は銃口を峰田に向けたままそう答える。コイツが近くにいる間は気をつけないと私の身が持たない。

 

 ……ガタガタ震えているが、そんな事は知ったことでは無い。

 

「キチンと役割分担が出来ていたね! 切島少年は敵の攻撃力のある相手を沈めて、久我少女は丁寧にもう片方の相手の時間稼ぎ! 素晴らしい戦法だった!」

 

「逆に2人は少しばかり相性が悪かったね。もしふたりがヴィランチームなら勝敗は変わっていたかもしれない!」

 

 …………まぁ実際この2人の個性は攻めには向かないな。設置型の個性と遠距離攻撃ができる個性。もしあの峰田のボールを部屋中に設置され、青山が隙を縫ってビームを打たれていたら少し困っていたかもしれない。

 

「いい試合だった! 4人ともお疲れ様! 特に大きな怪我をしていないならゆっくり座って休みなさい!」

 

 

 こうして私の雄英での初戦闘は勝利で飾ることが出来た。

 

 …………座ったあと、女子に囲まれたのが少しうざったかった。やっぱり解除するか……くちばしに持ち替えた方が良かったかな……




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