幻想の力でヒロアカ生活   作:ろぐいんち

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第11話

「はぁ……」

 

 戦闘訓練も私達の番は終わり、残り2組の試合を眺めている。

 

 ……もちろん、常にライフルは手放さないまま。

 

「おい、久我! もう俺達の試合は終わったんだぜ!? いつまでそれ抱えてんだよ!」

 

「分かってる。けど嫌だな」

 

「気持ちは分からなくは無いけどよぉ……」

 

 切島が少し呆れたように声をかけてくる。

 

 だが私は全く気にせずレティシアのライフルをぎゅっと抱え込んでいる。

 

 当の本人は青い顔でガタガタ震えながら青山の影に隠れている。

 

 ……賢明な判断だ。アイツがもし顔を出していたら恐らく額を撃ち抜いていたかもしれない。

 

「いやいやいや! なんでまだ狙われてるの!? 試合終わったじゃん!!」

 

「その言葉が本心で言った言葉なら私は今すぐお前を撃ち抜くだろうな」

 

「ヒィィィィィ!!」

 

 そう話していると、今戦っていた4人の試合が終わり、彼らが帰ってくるまで少しの間休憩時間となる。

 

 ポンッ! 

 

 ……芦戸の両手が私の肩に乗っかる。嫌な予感がするな。

 

「それよりさ! それよりさ!! 久我のその……服? めっちゃ可愛くない!!?」

 

「分かる! しかも今体縮こまらせてるの、ほんとにお人形みたい……!」

 

 ……本当に……はぁ……始まったよ……

 

「……おい、余計な事話すな。大人しく休憩してろ……」

 

 しかし止まらない。むしろ他の女子も便乗し始める。

 

「なんか、童話の中に出てくるお人形さんみたいで超可愛い!」

 

「ボンネットもオシャレだよね! 鈴がいい味出してる!」

 

「とてもお似合いだと思いますわ!」

 

 八百万まで加勢しだした。

 ……私は無言で周囲を見回す。

 

 ……全員本気か。茶化したり、そんな感情の顔は見当たらない。

 

「……正気か? 目は確かか?」

 

 思わずそう口に出すと麗日が吹き出して笑う。

 

「だって凄い似合ってるんやもん! ちゃんと鏡で見た!? 自分のこと!」

 

「……いや、見てはない。今日初めて着たからな……」

 

「ものすごい似合ってるよ!! そのまま絵本の中から出てきたみたい!」

 

「いや、そんなわけないだろう。こんな高身長の切れ目の女が……こんなメルヘンチックな洋服、似合うとは思えないが……」

 

 私は目線を落としスカートのはしを手で少しいじる。

 

 ……なんでこんなEGOがあるんだ……? 

 

「そんなことないよ!」

 

 麗日が大きな声ですぐに否定してくる。

 

「むしろ背が高いから格好ええんよ!」

 

「そうそう!」

 

 芦戸もこれに同調して頷いてくる。

 

 ……やめてくれ……

 

「可愛いだけじゃなくて綺麗系って感じ! 元々久我ちゃんモデル体型だし!」

 

「ええと……なんて言うんだろう、お姫様ってより、物語に出てくるクールな魔女?」

 

 葉隠がそう言うと、女子たちが妙に納得したように頷き始める。

 

「それだ!」

「たしかに!」

「しっくり来ますわね……」

 

「私は全くしっくり来てない! やめろ!」

 

 私は即座に切り捨てる。しかし彼女らはそれで引くつもりは無いようだ。

 

「ねぇ切島! 切島もそう思うでしょ!?」

 

「俺に聞くのか!? ……まぁ普通に似合ってるとは思うぜ!」

 

 切島が軽い口調で答える。

 

「うるさい、余計なこと言うな……!」

 

「なんでだよ!? 事実だし仕方ねェじゃねぇか!」

 

「お前まで乗るなって言ってるんだ……! 収集つかないだろ……!」

 

「んな理不尽な……」

 

 即答だった。思わずそちらを見る。

 

 ……切島は特にからかう様子もない。なんでそんな当たり前の事を言うような顔して言うんだ…………

 

「……ハァ」

 

 私は肩を落とし、顔を下げて溜息をつくことしか出来なかった。

 

 ガチャリ。

 

「お、お待たせ……戻りました……」

 

 不意に聞き慣れた声が響いた。救護室で治療を受けていた緑谷が戻ってきたらしい。

 

 私は反射的にそちらを見る。彼の両腕にはまだ包帯が巻かれていた。

 

 ……リカバリーガールでも即座に治療出来なかったのか。

 だがまぁ……思ったより元気そうだな。

 

 麗日が手を振る。

 

「デクくん! もう腕大丈夫なん!?」

 

「う、うん! リカバリーガールにある程度治して貰ったから!」

 

 緑谷は仲良く麗日と話している。

 

 そして。

 

 緑谷の視線が私の方を向いて止まった。

 

「……何見てんだ」

 

「い、いや……えっと、その……」

 

 緑谷は目をぱちぱちさせる。

 

 そして慌てて口を開く。

 

「すごく、似合ってるなって……」

 

「…………」

 

 沈黙。 

 

 そして女子たちが一斉に頷いてこちらを見てくる。

 

「せやろ! やっぱそうなんよ!」

 

「非常に良くお似合いですわ!!」

 

「お前らうるせェ!! いい加減静かにしやがれ!」

 

 爆豪が騒がしいクラスメイトにキレて叫んでいる。

 

 ……二度とこれは使わないことを、静かに心の中で決めた瞬間だった。

 

 

 

 翌朝。

 

 私は緑谷と共に雄英に向かっていた。

 

「……まぁ、いいんじゃないか? 別に気にしなくて……」

 

「うーん……でもこのままだとあんまり……」

 

 他愛もない、特に生産性のない暇つぶしにも近い雑談だ。

 だが騒がしい雄英の教室では常に周りに人がいる。賑やかなのは嫌いでは無いが、あまり度が過ぎると騒がしいと感じるのだ。

 

 その点、緑谷は静かな会話ができる。人の空気と心に敏感だからか私との会話も距離感を上手く測ってくれている。

 

 ……この点は感謝しかない。

 

「まぁでも、久我さんが言うなら…………な、なんか人だかり出来てない……?」

 

「ん……? …………うわ……」

 

 雄英高校は日本最高峰の高校として広く知られている。常に日本の様々なところから注目されているのだ。

 

 そして人の目、興味が集まる場所にはとある害虫共が湧く。

 

「すみません! 一言だけお願いします!」

「オールマイトについてなにか一言!」

「彼の教師としての姿はどのようなものなのですか!?」

 

「…………」

 

「うわぁ、あんなにいっぱい……く、久我さん! 凄い顔しちゃってるよ……!」

 

 マスコミだ。アイツらは表現の自由などという大義名分の元相手の事情や立場など考えず押しかけてくる。

 

 彼らの声からわかる通り日本の英雄オールマイトだろう。

 

 ……朝から元気な奴らだ……

 

「緑谷……お前の超パワーであいつら吹きとばせ……」

 

「ダメだって!! 嫌なのは分かるけど落ち着いて……!」

 

 しかも何が最悪ってあいつらマスコミ慣れしている教師陣や本人に質問ではなく生徒を対象にしてるとこ。

 

 要は教師をしてるオールマイトの情報が欲しいから勢いと流れで押し切れる初心な生徒を狙い目にしているのだ。

 

「一言! 一言……あっ! 君たち、雄英生だよね!? オールマイトについて一言お願いします!」

「少しだけお時間頂けませんか!?」

「かの英雄の教師姿について何か!!」

 

「う、うわ……!」

 

 マスコミ共は校門に近づいて来た私達に気づき、目をつける。私達の周りをあっという間に囲まれ動けなくなる。

 

「…………」

 

「く、久我さんほんとに落ち着いて……!」

 

 こいつら……舐めてるのか? マスコミ対応に慣れてる教師陣や本人に聞かず、慣れてない生徒を狙って甘い汁を吸おうと……

 

「……気に入らない」

 

「え?」

 

「どけ。私達は教室に向かってるんだ。邪魔するな」

 

「そ、そう言わず……! 一言だけでいいですから……!」

 

「いいか、これで2度目だ。3度目はないぞ……

 どけ」

 

 私は緑谷の手を掴み記者の壁などないように歩き始める。

 

「わっ!? ちょ、ちょっと久我さん!」

 

「いいから着いてこい。さっさと行くぞ」

 

 私は記者達の壁を無理やり押しのけて行く。必要なら体を使って無理やりこじ開ける。

 

「うわっ!? ちょっと君! 痛いじゃないか!」

 

「どけと言っている」

 

 私は怒ったり呆然とこちらを眺める記者の目を無視して雄英の門をくぐり抜ける。

 

「待ってください! 一言だけ……きゃっ!」

 

 ガシャン!!! 

 

 記者の体がほんの少し、門をくぐり抜けた途端、センサーが反応し門が完全に閉まる。

 

「……へぇ、便利なものがあるじゃないか……」

 

「あれは……雄英バリアーだ! 許可のない人が通ろうとすると自動で閉まるっていう!」

 

「ネーミングセンス壊滅的だな……」

 

 ……まぁ、早めにあの集団から抜けられたし、早く教室に向かおう。

 

 ……こいつの手、こんな硬かったか……? 

 

 

 

「昨日の戦闘訓練お疲れ、Vと成績見させてもらった」

 

「……爆豪、お前もうガキみたいなマネするな。力はあるんだから」

 

「……分かってる」

 

 相澤が爆豪に1つ、釘を刺す。まぁ、昨日のVを見たのなら釘のひとつくらい刺したくなるだろう。

 

「で緑谷はまた腕ぶっ壊して一件落着か。個性の制御……いつまでも「出来ないから仕方ない」じゃ通させねぇぞ。俺は同じことを言うのが嫌いだ……焦れよ、緑谷」

 

「っはい!!」

 

 緑谷は緑谷で体を壊しすぎだ。毎回毎回あんな怪我をしてたらいずれ後遺症が残りかねないからな……

 

「さて、ホームルームの本題だ……急で悪いが今日は君らに学級委員長を決めてもらう」

 

「「「学校っぽいの来た──!!!」」」

 

 ……まぁ高校だしな。

 

「委員長!! やりたいですソレ俺!!」

「リーダー!! やるやる!」

「オイラのマニフェストは女子全員膝上30cm!!」

 

 クラスのほぼ全員が私が俺がと手を挙げる。

 

 ヒーロー科では集団を導くという、ヒーローとしての素地を鍛えられる役として認識されているのだろう。

 

「静粛にしたまえ!!」

 

 クラスメイトを制するように飯田の大声が響く。

 

「多を牽引する責任重大な仕事だぞ……! やりたい者がやれるモノではないだろう!!」

 

 彼は神妙な顔で続ける。まぁ、言っていることは正しいな。だが……

 

「周囲からの信頼あってこそ務まる聖務……! 民主主義に則り真のリーダーを皆で決めるというのなら……」

 

「これは投票で決めるべき議案!!」

 

 ……彼の手は高くそびえ立っていた。

 

「そびえ立ってんじゃねぇか! なんで発案した!」

 

「日も浅いのに信頼もクソもないわ飯田ちゃん」

 

「そんなん皆自分に入れらぁ!」

 

「だからこそここで複数表を獲った者こそが真に相応しい人間ということにならないか!?」

 

 言ってる事は理解できるけど……まぁ、いいか。私は立候補しないし……

 

「どうでしょうか先生!!!」

 

「時間内に決めりゃなんでもいいよ……」

 

 そうしてクラス内で投票された結果。

 

 なんと緑谷に4票も入っていた。2位は八百万。3位以下は全て1票だった。

 

「僕、3票ー!?!?」

 

「なんでデクに……!! 誰が……!!」

 

「まーおめぇに入るよか分かるけどな!」

 

 私? 私はもちろん緑谷に入れた。飯田でも良かったが……まぁ、1番付き合い長いしな。

 

「0票……分かってはいた!! 流石聖職といったところか……」

 

 飯田他のやつに入れたのか……? 自分でやりたがってたのに……何がしたいんだ? 

 

「じゃあ委員長 緑谷。副委員長八百万だ」

 

 こうして1年A組の委員長、副委員長が決まった。

 

 

 時間は過ぎ、昼。

 

 私はプロヒーロー「ランチラッシュ」が切り盛りしている食堂に来ていた。

 

「人すごいなぁ……」

 

「ヒーロー科の他の科も一堂に集まるからな」

 

 1つの高校の食堂とは思えないほど広い。しかもこれ……

 

「……美味い。凄いな、あの値段でこのクオリティ……」

 

「ね! お米がうまい!」

 

 私は注文した日替わり定食を食べながら呟く。それに反応した麗日も米を頬張る。

 

「でも……僕に委員長なんて務まるかな……」

 

「ツトマル」

「大丈夫さ」

「なんとかなるだろ?」

 

 緑谷の不安げな声に私と飯田、麗日が揃って大丈夫だと返事をする。

 

「緑谷くんのここぞという時の判断力は目を見張る物がある。だから君に投票したのだ」

 

 なるほど、だから緑谷は4票だったのか。緑谷、私、麗日、飯田……

 

「でも飯田くんも委員長やりたかったんじゃないん? メガネだし!」

 

 思ったよりざっくりいくな麗日……

 

 彼は少し汗をかきながら答える。

 

「やりたいと相応しいかどうかは別の話……僕の正しいと思う判断を下したまでだ」

 

 ……こいつ、食べ方綺麗だな。

 

「飯田、お前食べ方の品がいいな……良いとこの出か?」

 

「たしかに! ちょっと思ったけど飯田くんって坊ちゃんみたいだよね!」

 

「んんっ……ま、まぁ良いとこの出はあるな。僕の家は代々ヒーロー1家なんだ。俺はその次男だよ。ターボヒーロー「インゲニウム」は知ってるかい?」

 

 ……! 私もその名前は知ってる。東京に数多くのサイドキックを雇ってる人気ヒーロー。なるほど、その弟なのか……

 

「もちろん! 超有名なヒーローだよね!!」

 

「あぁ! それが僕の兄さ!」

 

 クイッ! とメガネを押し上げて胸を張る飯田。

 

 確かにインゲニウムと飯田の個性はかなり似てるな。納得だ。

 

「規律を重んじ人を導く愛すべきヒーロー!! 僕はそんな兄に憧れたんだ!」

 

 身近にヒーローが入ればその弟や親戚はヒーローを志しやすい。まさにその典型例なのだろう。仮に私に姉や兄がいて、しかもそれがトップヒーローの1人ともなれば恐らく私はもっと強くヒーローになりたいと思っていただろう。

 

「いいな、1度あって……」

 

 ウゥ〜〜!!!! 

 

 楽しく昼食を食べながら雑談していた私たちの耳に、大きな警報が入ってくる。

 

「警報!?!?」

 

 緑谷と飯田が立ち上がり、麗日は味噌汁を吹き出す。私は辺りを見回す。

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください』

 

 ……そのアナウンスを皮切りに、食堂は大パニックに陥る。

 

「逃げろ!!」

「いてぇ! いてぇって!」

「押すな!!」

「ちょっと待って倒れる!!」

 

 ガンッ! 

 

「づっ……!」

 

 私たち4人は迫る人並みに流され散り散りになってしまう。顔に肘が当たり、私はバランスを崩しそのまま人の波に呑み込まれる。

 

「久我さん!」

 

 ッ……! なんだってんだ一体……! 何が侵入してきたんだ……! 

 

 私は前のめりな流れに押され周りの様子を見ることが出来なかった。

 

 クソッ……! このままじゃ倒れて踏み潰される可能性すらある……! 

 

 しかしその時、食堂内に大声が響き渡った。

 

「大丈──夫!!!!」

 

 ……!! 飯田の声!? 

 

「ただのマスコミです! 何もパニックになる事はありません!!!」

 

 マスコミ!? なんでマスコミが……まさか朝のアイツらがまだいたのか……!? 

 

 そうしてパニックは収まり、警察が到着したようでサイレンの音が聞こえてくる。恐らくこれでマスコミは撤退するだろう。

 

 ……全く酷い目にあった……

 

 その後の午後の授業で他の委員決めの時間の時、緑谷が「飯田の方が相応しい」と言い出し、クラスメイトもそれに同調。そのまま飯田が緑谷とクラス委員長を入れ替わる形で今日は終わったのだった。

 

 けど……

 

 ……私の心に引っかかるものがあった。マスコミ程度があの分厚かった壁を超えたのか? 

 

 いくらマスコミ達が好き勝手やったとして……超えてはいけないラインまで超えるのか……? 

 

 私のこの心の不安は、いくら考えても消えることはなかった。




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