幻想の力でヒロアカ生活   作:ろぐいんち

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第13話

「良かったぁ何とかなって……」

 

 中央広場へ向かいながら緑谷が呟く。その指は腫れ上がっているものの、危機を脱した安心感が勝っているようだ。

 

「思ったよりすんなりいったな。流石緑谷」

 

「い、いやみんなのおかげだよ……」

 

 私は素直に緑谷を褒める。あの一瞬で全員の個性を合わせた作戦を立て、それを完璧に遂行して見せたのだ。

 

「謙遜するな……作戦を考えたのはお前だ。私たちはそれに乗っただけだ」

 

「そうだよ! お前すげぇよ! あんな一瞬で!」

 

「私もそう思うわ。ケロ」

 

「そ、そうかな……」

 

 緑谷は3人の褒めを聞いて少し照れたように返事を返す。

 

 私はそれにため息をついて足を早めるよう3人に伝える。

 

 ……ピシッ

 

 ……私の奥で、ヒビの入るような音がしたのは、聞こえないふりをして。

 

 

 ……敵。私たちはまだ駆け出し。いや駆け出しですらない、卵。その全てを舐めていた。そう言わざるを得ないだろう。

 

 中央にたどり着いた私たちを出迎えたのは、脳がむき出しの怪物に組み伏せられたイレイザーヘッドの姿だった。

 

「対平和の象徴用怪人『脳無』」

 

 そう出だらけの男……『死柄木弔』が呟く。

 

 バキバキバキッ!! 

 

「ぐぁぁっ!!」

 

 脳無の手がイレイザーヘッドの肘を握り潰す。バキバキと骨の砕かれる音と共に、イレイザーヘッドの腕が持ち上がる。

 

 なぜ、相澤は相手の個性を消さない……! 見ていない……いや、流石にこの距離だ。見ているはず……ということは素の力で人の腕を容易に破壊する程の腕力……! 

 

 私は緑谷達と共に影からみていた。峰田は震え、緑谷は戦慄し、蛙吹は水の中に体を沈める。

 

 ……再び脳無と呼ばれた怪人が動き、相澤の頭を掴み地面に叩きつける。その衝撃は地面にヒビを作る。

 

 その時、死柄木の後ろからモヤの男……『黒霧』が現れ、作戦の失敗を告げる。

 

「ハァ……ゲームオーバーだ。流石に何十人ものプロが相手だと無理がある……帰ろっか」

 

 顔を掻きむしりながら死柄木が呟く。

 

「……! 帰るっていったか、あいつ!」

「そう聞こえたわ」

 

 小声で峰田と蛙吹。

 

 ……このまま帰ってくれるなら都合がいい。あれは私たちが適う相手ではない。

 

「やったぁぁぁ! おいら達助かるんだ……!」

 

 峰田が蛙吹に飛びかかり、押しのけられ水に沈められている。

 

 ……こいつ何時でもこんな感じなのか? 少し距離を取るか……

 

「けどもその前に……平和の矜恃1つくらい……へし折って帰ろう……!」

 

 その言葉と共に相澤の上に乗っかっていた脳無が私たちに飛びかかってくる。

 

「ッ!! 下がれ!! 3人!!」

 

 私はそれを見て咄嗟に岸に飛び上がり、レティシアのライフルを盾にして拳を受ける。

 

「ッ……!」

 

 私はそのまま殴り飛ばされ、地面に転がる。

 

「久我さん!!」

 

「緑谷! 逃げろ!! 私が、時間を……!!」

 

 私は頭から血を流しながら立ち上がり、ライフルを構え脳無に3発、銃弾を放つ。

 

「……?」

 

 しかし脳無に直撃したはずの弾丸は意味をなさず、少しの傷を作ったと思ったら即座に傷が回復する。

 

「なっ……!」

 

 攻撃が、効かない……!? そんな訳が……! 

 

 ……私はヴィランの前で、それも体の強い、素早いヴィランの前で隙を晒してしまった。その代償は高くついてしまう。

 

「ッ! しまっ……!」

 

 ドゴォン!!!! 

 

 私は顔を殴られその勢いのまま再び木に激突する。壁になった木はメキメキと音を立てて折れ、私はズルズルと地面に落ちる。

 

「ハハッ……自分が自分がとイキった結果だ……ざまぁねぇな……トドメ刺しちまえ、脳無」

 

「く、そが……!」

 

 睨む私を嘲笑い、死柄木は脳無を私に向かわせる。このままでは私は死ぬだろう。

 

 ……この現状を打破できる方法。確実では無いが、ある。

 

 あの日レティシアと一緒に私の中に現れたあの刀。あれはまだ一度も触ったことがない。

 

 ……もう、後はないんだ。なら……やってしまえ。後のことなど考えず。ただこの場を切り抜ける為だけに、全てを……! 

 

 私は拳を前に目を閉じ、レティシアを解除する。

 

「久我さん!」

「久我ちゃん!」

 

 2人の悲鳴を無視して、手を前に出す。

 

 ……パリン

 

 ……鏡の割れる音が、鳴り響いた。

 

 ドゴォォォォン!!! 

 

 土煙が舞い散る。

 

「はは……直撃だ。死んだな、あいつ」

 

「く、が……!」

 

 相澤がこちらを見る。

 

 ……土煙の奥から、人影が見えた。

 

「ん? ……なっ!?!?」

 

 死柄木の驚いた声が響く。そこには桜の描かれた甲冑に身をつつみ、背後から青いオーラを漂わせ、日本刀を振り切った久我がそこに立っていた。

 

 脳無は脇腹を切り裂かれ悶絶している。

 

「EGO……『決死の一生』」

 

 私はそう呟き脳無の方を向き刀を中段に構える。

 

「何してんだ脳無……! さっさとそのガキぶち殺せ!!」

 

 死柄木からの指示を聞いた脳無が立ち上がり、両手を上げて久我に襲いかかる。

 

「……全てを打ち伏せ、全ての悪を切り伏せよう……!」

 

 私は呟き脳無目掛けて刀を水平に振り抜く。

 

 脳無の拳は私の顔を掠めるも当たらない。

 

 水平に振り出された刀は脳無の体を傷つける。

 

「ははっ! 無駄だ! どれだけ斬ろうが脳無には……!」

 

 しかし脳無に異変がおきる。今までどれだけ殴られようがどんな攻撃を食らっても意に介さずすぐに行動に移していた脳無の体がなかなか再生しない。

 

「は……!? なんで再生しねぇんだ!」

 

 ……頭痛が、酷い。今まででは考えられないほど頭が痛い。

 私の中で私のものじゃない声がずっと響いている。

 

 斬れ。突撃しろ。全てを斬れ。命果てるまで。

 

 黙れ……私の中で騒ぐな……!! 私は……時間を稼ぐ……! 

 

「ぐっ……」

 

 私はその酷い頭痛と響く声に思わずバランスを崩し倒れそうになり、膝をつく。次第に背後の青かったオーラが赤く、血のように赤く染っていく。

 

「!! 今だ! 脳無! 殺れ!!」

 

 その隙をみた死柄木が再生を終えた脳無に指示を出し、脳無がこちらに向かってくる。

 

 

 斬れ! 斬れ! 斬れ!! ……殺せ!!!! 

 

 

「ぐ……あぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 スパァン!! ドゴォン!!! 

 

 肉が切れる音と、轟音が周囲を揺らす。

 

「は、はは……! ころ、してやる……!」

 

 私は狂気的な目をしながら、首を掴む脳無を睨む。しかし脳無の頭に決死の一生が突き刺さっている。

 

「ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 殺せ! 殺せ! 殺せ!!! 守りなど要らぬ!! ただ斬り伏せよ!! 

 

 私は脳に響く声に従い、脳に突き刺さった刀を抜き、めちゃくちゃに剥き出しの脳を滅多斬りにする。

 

 脳無は苦しそうな表情と共に、もう片方の手で私の左足を掴み、力を入れて粉砕する。私の足は普通向かない方を向く。それでも私は止まらない。止まらない。止まれない。

 

 ただ、斬る、きる、きル、キル……!!! 

 

 目の前の敵を、斬る……!!! 

 

「久我さんっっ!!!!」

 

 ドゴォン!!!! 

 

 再び轟音と共に、私の体から脳無の手が離れる。

 

「う、ぁ……!!」

 

 ……手が離れた……! もっと、もっと……!! 

 

 私は地面に落下しながら脳無が吹き飛んだ方をジッと血走った目で睨む。

 

「大丈夫、大丈夫だから落ち着いて、久我さん……!」

 

「ウ、うぅ……!!」

 

 緑谷は、暴れる彼女を抱きしめ抑え込む。それが正しい接し方なのかも知らぬまま、ただ必死に普段の彼女に戻って欲しくて。ただ、あの冷たくも優しい、根っこは暖かく見守ってくれる彼女に戻って欲しくて。

 

「大丈夫、大丈夫だから……!」

 

「ぐ、ぅ、ぁ……」

 

 緑谷は語りかけながら頭を撫でる。次第に暴れる力が弱くなって、そしてぱたり、と刀を握りしめていた手が緩みカランと音を立てて決死の一生が消えた。

 

 ……しかし。

 

 ズンッ! 

 

 久我を抱き抱えていた緑谷の目の前に、再生を終えた脳無が立ちはだかる。既に久我は意識を失い緑谷の腕の中で眠り、緑谷も脳無を殴り飛ばした一撃で腕が半壊している。

 

「しまっ……!!」

 

 やられる。そう緑谷が確信して、せめて腕の中の人だけでも守ろうと目を瞑った瞬間。

 

 バァン!!! 

 

 USJの扉が大きく音を立てて吹き飛ばされた。

 

「もう大丈夫」

 

「あ、あ……!!」

 

 その声を聞いた緑谷はようやく安堵した。なぜならそこに現れたのは……

 

「私が! 来た!!!!」

 

 怒りに身を震わせた、平和の象徴だったから。




かなり描写に自信がありません。
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