幻想を手に、英雄を追う。   作:しんぱ

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先に下書きしてそれをこちらに貼っているので誤字等あれば指摘よろしくお願いします


第2話

私は緑谷と別れた後、帰り道の途中にある商店街に立ち寄っていた。

夕日はすっかり傾き、街は綺麗なオレンジ色に染まっている。

 

クゥ〜…

 

「…腹減ったな。」

 

ふと時間を見ると、家によっては夕飯を食べていてもおかしくない時間だ。

しかも今日は色々あった。爆豪が騒がしかったり緑谷と少し濃い話をしたり…まぁ、おかしくはないか。

 

ちょうどすぐ先に行きつけの肉屋がある。手持ちも少しならあるし、コロッケでも買うか。

私は深く考えず暖簾をくぐる。

 

「いらっしゃーい!あら、唯ちゃん!」

「よぉ、まだコロッケあるか?」

 

暖簾をくぐると顔なじみのおばちゃんが出てくる。休みの日なんかに小腹がすいてここによくコロッケを買いに来るのだ。

 

「もちろんあるわよ!しかも出来立て!」

「出来たて?こんな時間に?珍しいな…」

「ちょっとね!いつも通りソース多めでいいかしら?」

「あぁ。」

 

私は小銭を支払い、おばちゃんからコロッケを受け取る。昔から食べてきたいい匂いのよく揚がったコロッケだ。

 

「時間も時間だから、早く帰りなさいよ!」

「分かってるよ。じゃあな。また来る。」

 

暖簾をくぐり外に出る。そして包まれた紙袋を外し、コロッケにかぶりつく。出来たてのそれはアツアツだった。

 

「っあつ」

 

…思ったより熱かった。少し口の中、特に舌がヒリヒリする…

 

「…はぁ」

 

まぁ、多少熱すぎだろうが出来たての方がコロッケは美味い。

 

「ふぅ…ふう…」

 

息を吹きかけながら二口目を口にしようとした時…

 

ーーードォォォォォォン!!

 

少し遠くで爆発音がして、空気が微かに震えた。周りの通行人が音がした方に一斉に顔を向ける。さっきの肉屋のおばちゃんも店から出てきた。

爆発音がした方からは黒煙と、土煙が漂ってくる。

…結構な量だな、ガス爆発でも起こしたか…?

 

「ゆ、唯ちゃん!今のはなんの音…!?」

 

…かなり嫌な予感がする。今日は朝から録な事がないからな…見に行ってみるか…

私はそう思って残りのコロッケを口に押し込む。

 

「あつ…」

 

…こんな出来たてでホカホカしているコロッケをゆっくり味わわずに食べるのは勿体ないが、仕方ないだろう。

 

「おばちゃん、私ちょっと見てくる。」

 

そう言い残して野次馬共が群がる方へ走り始める。

 

「子供が捕まってるぞ!」

「ヒーローは何してんだ!!」

 

前方から騒がしい声が聞こえてくる。こんな街中の、それも商店街にヴィラン…?どうやっても捕まるだろ、何考えてんだ…?

そう考えていると少し若い声が聞こえてきた。

 

「おい!あれ、爆豪じゃないか!?」

 

「………は?」

 

私は耳を疑った。捕まってるのが、爆豪…?

そして前方から再び爆発音が響き、直後に黒煙がもうもうと立ち上った。

 

「…チッ、少し急ぐか。」

 

私は足に力を込め、走り出した。同じ方向へ向かう野次馬たちの間をするりするりと通り抜け追い越し、角を曲がった。

 

そこには、ヘドロのようなヴィランに体を覆われた爆豪があちこち爆破させながら抵抗していた。

 

「…何してんだ…?アイツ…」

 

思わず口から零れた言葉は疑問と呆れ。まさかあれだけの大口を叩いたのにこんな無様を晒しているとは思いもしなかった。

しかし…

 

「酷く無様だが…らしくないな。」

 

気に食わないヤツではある。しかしそれと同時に1目置いているヤツでもある。何よりまだ彼の目は死んでいない。憤怒の感情に支配されている。

 

「離せクソがぁぁぁぁ!!!」

 

再びヘドロが爆ぜる。ヘドロが僅かに剥がれるがすぐに元に戻る。あまり意味は無さそうだ。

 

「無理だ!近づくな!」

「相性が悪すぎる…!私にはどうにも出来ない!」

「このままだと彼の周辺の酸素が無くなるぞ!」

 

周りのヒーローは喚くだけで誰も手を出そうとしない。情けない限りだ。プロヒーローとは一体何なのか考えさせられるな。

 

ヘドロは爆発によって生じた破片や小さな瓦礫を巻き込みながら少しずつ大きくなっていく。このままでは完全に飲み込まれるのも時間の問題だろうな。

 

「…くだらない」

 

相性が悪いからなんだ。何が無理なんだ。目の前に助けを求める存在がいるというのにそんなくだらない理由で助けに行かないのか。

それに野次馬共も騒がしい。カメラやスマホを構えるだけでただ騒ぐだけ。これでは邪魔にしかならない。

私が溜息をついて爆豪に背を向けようとした時、先程見た特徴的な緑の髪が目に映った。

 

「…緑谷?」

 

「うぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

緑谷は一直線にヘドロに向かっていた。個性もない、特別な力も、突出した身体もない。

 

だと言うのに……

 

真っ直ぐ、ただ真っ直ぐに助けを求める人に向かって、自分の心に従って動いていた。

 

私は思わず口元を釣り上げた。そして同時に目の良さに感謝した。やはり緑谷は…

 

「…やはり、アイツは…。」

 

私は野次馬共の頭の上に飛び上がり、壁を蹴って上から緑谷と共に真っ直ぐ突撃する。

 

 

E.G.O 『懺悔』

 

 

私は即座にEGO『懺悔』を装備し、十字架のメイスを真っ直ぐ横に振り抜いた。

 

「フッ!」

 

パァン!

 

甲高い音を立てて緑谷に向かっていたヘドロの一部を叩き落とした。物理的な効果は非常に薄いだろう。しかし私がこのEGOを使った理由はそこではない。このEGOは、体の奥にあるそれを砕く。

これまでの人生で受けたことのない感覚に、ヘドロヴィランの動きが鈍り、一瞬止まった。

 

彼に必要なのは、この一瞬の隙だった。

 

「やれ!!緑谷!!」

 

「うあああああ!!!」

 

緑谷は私が作った隙を見逃さず、確実に鞄を投げつけた。

 

「なっ…」

 

緑谷の投げたカバンから大量の教科書、プリントが飛び散る。紙切れがヴィランの視界を遮ぎる。

 

「ハッ!!」

 

パァン!

 

紙吹雪を巻き込むように、更に私が見えた隙に懺悔を叩き込む。

 

2つの想定外と動揺が明確なチャンスを生んだ。

 

「離せゴラァァァァァ!!!!」

 

 

BOOM!!!

 

 

一際大きい爆発がヘドロを巻き込み霧散させる。その衝撃で一瞬、爆豪の顔が見えた。

 

「かっちゃん!!!」

 

「…!!」

 

しかしそれも一瞬で、即座にヘドロが元に戻ろうとしている。私は即座に懺悔を構え直し、緑谷は尚も前に出ようとしている。

 

……隙は作れる。しかしその隙に明確なトドメをさせる物がいない。決定打がないのだ。このままではジリ貧だ。最悪3人共々最悪の結果で終わる可能性すらある。

 

「邪魔ァァァァ!!」

 

逆上したヘドロヴィランが辺りの瓦礫を纏いながら私と緑谷にヘドロを飛ばしてきた。多量の瓦礫を巻き込んでいるため、直撃したら無事では済まないだろう。驚異的な速度だ。私は間に合うが、緑谷まで庇う余裕がない。

 

「ッ…!」

 

終わったか、そう確信した瞬間だった。

 

ドォォォォン!!!

 

「うっ…!?」

 

私は思わず目を逸らし、顔を腕で隠した。とてつもない轟音と、突風。空気そのものが殴り飛ばされたような衝撃と、それと同時に野次馬から声が消えた。いや、聞こえなくなった。

 

そして土煙の中にとても大きな人影が見えた。

 

「もう大丈夫だ!!!」

 

…その声は、私が何度もテレビや色んなところで聞いた事のある声だった。

 

「何故って?」

 

逆立つ金髪と圧倒的な背中。この日本で誰よりも頼りになる男。

 

「私が!来た!!!」

 

…ハッ、遅いな…

 

私はそう思うのと同時に、肩に入っていた力が不思議と自然に抜けていくのを感じ取った。

 

悔しいが、この男が来た時点でこれ以上ことが悪化することはないだろう。

 

…この場に、オールマイトが降り立ったのだった。




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