幻想の力でヒロアカ生活   作:ろぐいんち

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第3話

「私が!! 来た!!」

 

 BOOOM!!! 

 

 轟音と共に、それまでの爆発なんかとは比べ物にならない程の衝撃が辺りに響き渡る。

 辺りを漂っていた土煙が一瞬にして晴れ、そこには倒れているがヘドロが剥がれた爆豪と、引き裂かれたヘドロヴィランがあった。

 

 一瞬の静寂の後、爆発的に大きく歓声が上がった。

 

「うおおおおお!!!」

「オールマイトだ!!」

「助かった!! 来てくれたんだ!!」

 

 野次馬共が一斉に歓声をあげる。

 

 ……レベルが違う。滅茶苦茶だ。

 人1人助けるために街の空気ごと吹き飛ばし、変える。同じ人間とは思えない所業だ。

 

「かっちゃん……!」

 

 緑谷が爆豪に駆け寄る。

 ヘドロから開放された爆豪は、激しく咳き込みながらもこちらを睨んでいた。

 

 ……元気なヤツだ。

 

「ゲホッ……!」

 

「だ、大丈夫……!?」

 

「うるせェ……!」

 

 どうやら本当に元気らしい。飛び込む意味は無かったかもな。

 私は小さく息をつき、

 

 パリン。

 

 懺悔を解除する。鏡が割れたような音がして、十字架のメイスとアーマーは消えた。

 今日の出番はもうないだろう。

 

「君たち!」

 

 その時、オールマイトの声が響く。

 

 視線を向ければ、爆豪と緑谷をオールマイトが見下ろしていた。

 その表情は、テレビで見たように常に笑顔だったが、どこか真剣味を感じさせる笑みだった。

 

「かなりの無茶をしたね! そこの少女も!!」

 

 周囲のヒーロー達がようやくこちらに集まってくる。

 

 ……遅い、遅すぎる。

 

 思わず口に出しそうになったがギリギリで留める。終わった事を言っても仕方がないのだ。それに無事になんの犠牲も出さずに終わったのだから尚更。

 

「危ない所だったね!」

「いやぁ、凄いタフネスだ! 高校はヒーロー科志望かい?」

「卒業したら是非うちに!」

 

「チッ……」

 

 爆豪は煩わしげに舌打ちした。

 

 尚も耳障りな声が聞こえてくる。

 

「君は何をしてるんだ!」

「力を持たないのに飛び込んではいけないだろう!」

「こういうのは私たちに任せてくれなくちゃ!」

 

「あ、う、ごめんなさい……」

 

 ……任せろ、だ? ふざけるな。任せた結果お前たちは……

 

「君もだよ!」

「勘違いしちゃダメだ!」

「ああいう荒事は私達に任せて──」

 

 ……ダメだ、我慢できない。

 

「任せた結果があれか?」

 

 思わず口から零れた。

 

 周囲のヒーロー達の表情が固まる。

 

「……!」

 

「相性が悪い。どうにも出来ない、だから見ているだけ」

 

 私はヘドロヴィランがいた場所を指差した。

 

「違うか?」

 

「それは──」

 

 誰かが言葉を詰まらせる。

 

「……くだらない」

 

 私が吐き捨てた瞬間、

 

「お前達のたいま……んっ!」

 

「はい! その辺にしようね!」

 

 オールマイトの大きな手が唐突に私の口を塞いだ。

 

「むぐっ!?」

 

「若い頃は誰でも血気盛んだからね!! うん!!」

 

「むー!!」

 

 私は抗議するように睨みつけるが、オールマイトは笑顔のまま離そうとしない。

 

「この子達は私が責任を持って警察へ連れて行こう!」

 

「えっ!?」

 

「ぼ、僕もですか!?」

 

「もちろんだとも少年!!」

 

「むぐ……」

 

 そして私達はそのまま警察へ引き渡されることになった。

 

 

 気づけば辺りはすっかり暗くなっていた。

 結局あの後事情聴取なんかでかなりの時間を取られてしまった。

 

「……疲れた」

 

 誰に言うでもなく呟いたその言葉は夜に消え、ガチャりと音を立てて鍵が開く。

 

「ただいま」

 

 返事はない。家には常に1人だ。親はこの国にいない。

 

 私は靴を脱ぎ捨て、階段を上がり自室へ向かう。

 ドアを開け、鞄を放り投げベットに倒れ込んだ。

 

「はぁ……」

 

 柔らかなベットの感覚に力が抜ける。今日は色々あった。制服のまま寝るのは良くないが、今日ばかりは仕方ないだろう。

 

 学校では爆豪に噛みつき、緑谷と話し、はてはヴィランと対峙し……とても受験前の中学生の1日ではない。

 

 ふと、緑谷の顔が頭に浮かんだ。

 無個性の普通の中学生。だと言うのに一番に飛び出した。助ける求めを聞いて臆せず、自分の恐怖すら無視して一番に……

 

「……馬鹿だな」

 

 思わずくくっ、小さく笑う。だが嫌いじゃない。むしろ……

 

「……あぁ、面白いな」

 

 そう呟いて目を閉じた。意識がゆっくりと奥に沈んでいく。

 

 ゆっくり。

 

 ゆっくりと…………

 

 

 そして辿り着く。ここは私だけの場所。

 

 暗闇と静寂。

 

 そして……無数の鉄格子。

 

 私の個性、『幻想抽出』によって抽出された武器と防具……E.G.Oの保管庫。

 

 見慣れた景色だ。手前には今日も使った髑髏の刻まれた十字架のメイス。

 

 懺悔だ。今日も世話になった。

 

 少し離れた場所には小さな白いピストル。更に奥では燃え尽きたマッチが刺さった大砲のような物が保管されていた。

 

 しかし他に埋まっている鉄格子はない。全て空だ。

 ただそこにあるだけ。何もない。

 

「……」

 

 私は今日のオールマイトを思い出していた。

 あの圧倒的なパワーとカリスマ性。今の私では足元にも及ばない強さ。悔しいがどう思ったところで現状は変わらない。

 

「……まぁ、いい」

 

 今は届かないだけだ。焦る必要はない。この鉄格子が埋まれば埋まるほどその差も縮まるだろう。そんな気がしていた。

 




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