幻想を手に、英雄を追う。 作:しんぱ
とうとうこの日が来た。私は受験票を片手に試験会場へ歩いていた。
周囲には同じ受験生らしき学生が溢れている。緊張している者。友達と話す者。自信満々な者。実に様々だ。
「…ふぅ。」
私には関係の無いことなのだが。ただ受験を受け落ちるか受かるか。それだけだ。
そう思いながら歩いていると見覚えのある緑頭が目に入った。
「…緑谷。」
向こうも気がついたらしい。
「あっ、久我さん!」
最後に緑谷を見た時より体つきが良くなっている。
しかし…
ガッ。
「うわっ!?」
案の定だった。
緑谷は盛大に足をもつれさせそのままこちらに倒れ込んでくる。
「危ないっ!」
だが、緑谷がこちらに倒れ込んでくることはなかった。
茶髪のおかっぱ少女が緑谷の腕を掴んだのだ。
「わっ!?」
「大丈夫!?…危なかったねぇ」
おぉ、今のを掴むのか。反射神経いいな…
「は、はい!!大丈夫です!!」
緑谷は慌てて体を起こし、少女へ何度も頭を下げていた。
私はその様子を数秒眺める。
「朝から愉快な奴だ。」
「うぅ…」
緑屋が情けない声を出す。
それを見た少女は思わずと行った感じで吹き出してしまった。
「あはははっ!!」
「笑わないでよぉ…」
「だっておもろいんやもん!!」
朝の、それも将来が決まるかもしれない大きな試験の前に愉快な奴らだ。
「じゃ、じゃあ僕はこれで!!」
緑谷は顔を真っ赤にしながら逃げるように席へ向かっていった。
少女も「またね!」と手を振り自分の席へ歩いていった。
「…」
受験前から大丈夫かあいつは…私は溜息をひとつ吐いて自分の席へ座る。
その直後。
ガラッ!!
勢いよく扉が開かれる。
「オーディエンス共ォォォォォォ!!!!」
…うるさい、頭に響く声だ…
私は思わず眉を潜めた。
…今度はなんなんだ?
『俺が!!!プレゼントマイクだァァァァ!!!』
『今から雄英高校入試試験の説明を始めるぜ!!!!』
…あれで試験管なのか、もっとマシなヤツはいなかったのか…?
『と言ってもそこまで話すことも無いんだがな!リスナー達の手元にある冊子を見てくれ!!』
そう言われ私は机の上に置かれた冊子を手に取る。そこには試験の概要、そしてルールが細かく説明されていた。
『ヴィランを模したロボを使う!ロボには点数が割り振られて、それぞれ1、2、3ポイント!!』
スクリーンに各ロボの映像が掲示される。
…なるほど、あれを壊せばいいだけか。思ったより内容が単純で助かるな。
『じゃあリスナー達!!質問はあるか!?!?手を上げろ!!』
「失礼!!!」
質疑応答に入った途端、プレゼントマイクに負けないくらい大きな声が近くで響いた。
……耳がかなり鳴ってしまった。
私は声のした方を見る。真面目そうなキッチリとした髪型にメガネをかけた男だ。
「資料には4体のロボが記載されている!しかしスクリーンには3体のロボしか映っていません!何故でしょうか!」
…言われてみれば確かにそうだな、一体足りない。いちばんデカそうなやつが足りない。
「もしミスであるならば雄英高校ともあろう学校が情けなくはありませんか!?!?」
「……」
元気だな、コイツ。かなりうるさい。
…が、私も三体しか映されてない理由を知りたい。一旦聞こう。
『OKいい質問だ受験生!!4体目はいわゆるおじゃま虫!0ポイントだ!倒しても意味がねぇ!逃げるも良しだぜ!』
…なるほどな、おじゃま虫か…
詳しいサイズは分からないが、ものによっては相当だな…何より逃げてもいい、というのがかなりひっかかる。要警戒だな。
「なるほど!ありがとうございます!…ところでそこの、緑髪の君!!」
「えっ!?」
緑谷が肩を震わせる。
…あいつ、何したんだ?
「受験会場で私語とは何事だ!?気の散る…物見遊山のつもりなら即刻出ていって貰おう!!」
……
「す、すみません…!」
「受験とは真剣勝負だ!!そのような「おい、お前」」
あまりにうるさいので、少し止めることにした。どいつもこいつも声が大きすぎる…
「お前、アイツの声が気になるのは分かったが…晒し者にする理由はなんだ?辱める為か?」
「なっ…!」
「注意するのは構わん、だがお前が今そうやって大事にする事で迷惑を受けている奴もいることを、自覚しておけ。」
眼鏡の男の表情が固まった。
その直後、プレゼントマイクが固まった空気をほぐすかのように声を上げた。
『HAHAHAHA!!元気があって結構ォ!受験とはそういうもんだぜ!!そこのリスナーもナイスなお便りサンキューな!!』
私は小さく息を吐く。これ以上は面倒だ。
『他はないな!最後にこの言葉をリスナー達に送ろう!!』
『Plus Ultra!!!』
説明が終わり、受験生達が立ち上がる。
…耳が痛い。本当に受験会場か?ここは…
私も他の受験生に習って会場を出る。
廊下には大量の受験生達が歩いている。その中に私は爆豪を見つけた。
…お互いに目が合った。言葉はかわさない。ただ目線があっただけだった。
…アイツの目がこれまで以上に鋭かったのが記憶に嫌に残ってしまった。
試験会場。
私達受験生は待機室へ案内されていた。
ふと、周囲を見渡す。
貧乏揺すりをする者。
作戦を確認する者。
目を閉じて集中する者。
不安げに辺りを見回す物。
どいつもこいつも緊張でソワソワしているように見えた。
…まぁ、無理もないか。
私は静かに目を閉じた。脳裏に浮かぶはあの鉄格子。
今使える3つのEGO
懺悔。くちばし。4本目のマッチの火
…大丈夫だ。問題はない。やるだけだ。
ゆっくり目を開く。後はスタートを待つの…
『スタァァァァァァァト!!』
…はぁ、行くか。
若干腰を折られた気もしなくは無いが、それでも私は即座に駆け出した。
……パリン
鏡が割れたような、澄んだ音が会場の最初に響いた音になったのだった。
評価、感想よろしくお願いします。EGO出して!っていう要望あればなるべく叶えます。