幻想を手に、英雄を追う。   作:しんぱ

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今回も同じく下書きから持ってきてます。一応確認はしてますが…間違ってたらご指摘よろしくお願いします


第5話

パリン。

 

鏡が割れるような音が会場に響いた。

 

私の右手に白い拳銃が現れる。

白い装甲が体を覆う。

肩は大きく張り出し、胸部の装甲は赤く染っている。

赤い染みのような模様が銃身を走っていた。

 

E.G.O『くちばし』

 

「………さて。」

 

私は周囲を見回した。私が飛び出した後、大半の受験生はボーッと眺めていたが、プレゼントマイクの発破によって既に全員がロボに向かって走り出している。

 

ロボは逃げないが…せっかくスタートダッシュ出来たのだから活かさせて貰おう。

 

目の前の角を右に曲がる。すると、そこには1番小さなロボ。1ポイントヴィランがいた。

 

「目標発見!ブッコロス!!」

 

「お前爆豪かよ…」

 

あまりの口の悪さに呆れながら狙いを定める。動きは遅い。外すことはない。

 

パンッ

 

乾いた銃声が辺りに響く。1ポイントヴィランの頭が弾け飛んでいる。

 

ガシャァァァン

 

そのまま残骸は地面に転がった。

 

「脆いな。」

 

思ったより楽に行けるかもしれない。

 

私は足を止めずにそのまま次の目標目指して走り出した。

 

少し走ったところでギギギ、と機械音が聞こえてきた。

 

「…来たか。」

 

奥から2体。先程のサイズのロボと一際大きいロボ…恐らく2ポイントか。

だが…

 

「やはり、遅い。」

 

パン、パン

 

先程と同じように頭に一撃ずつ入れ込む。

 

1ポイントはそれで倒れ伏したが、2ポイントの方はギリギリ動いている。

 

「…なるほど、ポイントが上がると耐久度も上がるのか。」

 

パンッ

 

私は即座にもう1発頭に打ち込んだ。

 

ガシャァァァッ

 

ロボは耐えきれずに崩れ落ちる。これで4ポイント。

…にしてもこれだけで落ちるとは、脆いロボだ…

 

「…まぁ、いいか。」

 

まぁ、脆いならそれでいい。早く次へ行こう。時間は有限だ。

 

 

 

私は周りを見ながら走る。あれから気づけばかなりの量のロボを落としている。ふと、周りの様子が気になった。

…思ったより苦戦してるな、あの程度壊せないでヒーローになろうと言うのか…まぁ、思うのは勝手だな。

 

そう思いながら見ていると、2人組の受験者の片割れがロボに潰されそうになっていた。

 

「うわぁぁぁぁ!!」

「あ、まずっ…!」

 

もう一人は他のロボに手間取り助けは期待できそうにない。

 

「…チッ」

 

私は舌打ちを1つついて

 

パァン!

 

今にも潰されそうだった受験者のロボを撃つ。横を向いていたから一撃では…ないな。だが…

 

「ギ、ギギ…ブッコロ…!!」

 

「お前には無理だ。」

 

パァン!パァン!

 

こちらを向いたロボの頭に2発、弾丸を撃ち込む。撃ち込んだ瞬間、ロボは動きを止め、潰されそうだった受験者は下から這い出てくる。

 

こっちはこれでいい。

…ついでだ。

 

「フン。」

 

パァン!パァン!

 

今度は、頭を狙わず足の間接2箇所に弾を撃ち込む。貫通はしないが弾丸が挟まりロボの動きが鈍る。その隙を受験者は逃さず、ロボを破壊しきった。

 

「な、あんな一瞬で…!」

 

「…フン」

 

アイツらと交わす言葉はないだろう。私は再びロボを探して走り出す。

 

 

 

……刹那、遠くで衝撃と悲鳴、土煙が登った。

 

「…ッ!?」

 

離れているはずのこちらまで揺れが伝わってくる。一体…?

 

「見に行くか。」

 

私は即座に衝撃の走った方へ走り出す。

…受験生たちが必死な形相で逃げているな…

私は瓦礫を使って屋上に登った。

そしてその原因をこの目で捉えた。

 

「………なるほどな。あれが例の…」

 

そこには今までのロボとはとても比較にならない程巨大なロボが暴れていた。恐らくあれが例の0ポイントロボ、おじゃま虫だろう。

 

「流石にあれと戦う利点はないな、私もさっさと……ッ!?」

 

しかし私は見つけてしまった。下で、瓦礫に挟まれ今にも潰されそうなあの茶髪のおかっぱ少女が。

 

「た、すけて……!」

 

私は即座に駆け出す。しかし目の前を緑の閃光が駆け抜けて行った。

 

「なっ…!?」

 

なんだ、今の速度は。目で捉えることすら…

私は咄嗟に閃光が走った方を見る。そこには高く飛び上がった緑谷がいた。

 

「緑谷…!?」

 

何故緑谷がここに、まて、そもそもあいつは何故こんな高所に!?身体能力だけでできる範囲を大幅に超えている…!

 

…そこまで考えたところで私は1度落ち着いて周りを見た。このままだとあのおかっぱ少女は潰されるだろう。緑谷が間に合うかも若干だが怪しい。なら、私のすべきことは……

 

パリン。

 

白い拳銃が鏡の割れる音と共に砕け散る。

 

E.G.O『4本目のマッチの火』

 

パリン。

 

再び鏡の割れた音が響いたかと思うと、そこには巨大な鉄塊があった。

砲身。

そう呼ぶに相応しいそれは、焼け焦げたマッチが1本、砲身に深く突き刺さっている。

 

同時に黒く煤けた灰のような外套が体を覆った。

擦り切れた袖。

焼け焦げた裾。

長い間火に包まれもはや灰以外何も残っていないようなボロボロの装束。

 

口には1本の焼けこげたマッチを咥えていた。

火は付いていない。だが、焦げ跡だけは確かにそこにあった。

 

「…やはり、重い。」

 

大砲を持ち上げる。

照準を定め、丁寧に目標を決める。

倒す必要はない。緑谷が動くための隙を作ればそれでいい。

 

「フゥ…」

 

1つ、息を吐き、目を瞑る。

 

「ハァッ!!」

 

目標。0ポイントロボ、右足。

 

私は引き金を引いた。

 

武器も、防具も、何故か気分まで重くなるそれは、見た目に違わず砲口から激しい炎を吹き出す。熱風が辺りの空気を焼き払い、それは一直線にロボの足に向かって飛んでいく。

 

……ドォォォォン!!

 

無事着弾したそれは、ロボの右足を破壊しながら燃え盛る。そのままバランスを崩したロボは、後ろに倒れ込む。

 

「ッ……」

 

頭が痛くなる感覚と共に私は膝を着く。

流石にEGOを使いすぎだ。頭痛と目眩が止まらない。

 

それでも私は彼を、緑谷を見ていた。

足を撃ち抜かれたロボがゆっくりと音を立てながら倒れていく中、緑谷はロボに目もくれず一直線におかっぱ女子の方に向かっていく。

 

私はニヤリと、少し笑った。

 

「…そうか。」

 

やはり、アイツはそういう奴だ。誰もよりもヒーローらしいやつ。

ヘドロの時もそうだった。誰かが助けを求めていたら自分の身も顧みず助けに行く。

それは今も変わっていない。

 

緑谷は少女を抱えあげ、少し離れた場所に避難させる。そしてそのまま再び空高く飛び上がり…

 

……まて、なんだ、この圧は。右腕は。

 

右腕が有り得ないほど膨張しているのをみた私は驚愕に駆られた。あの右腕に、どれ程の力が…

あれは、一体………

 

「うおおおおおおおおお!!!!」

 

……私の疑問を他所に、緑谷は腕を振り抜いた。

 

「SMAAAAAAAAASH!!!」

 

ーーードォォォォォォォォン!!!!

 

…世界が揺れたと見紛うほどの衝撃波。爆風、轟音。

空気そのものが殴り飛ばされたような感覚が私を襲った。

巨大ロボの腕が…いや、腕どころではない。その巨体そのものが潰れて吹き飛んでいた。

 

「……は?」

 

思考が止まった。今のパワーは、なんだ。緑谷にあんな力は無かったはずだ。無個性のはず、だと言うのに今のは…

 

 

それこそ。

あのヘドロの日見た力に似ていた。

空気ごと全てを吹き飛ばし、

全てを圧倒する力。

 

「まさか………。」

 

それでも私は、確信を持てずに後の言葉は続くことがなかった。

 

しかし。

そんな私の思考を遮るように緑谷の体は空中で力なく崩れ落ちる。

 

「なっ…!?」

 

腕は有り得ない方向に曲がり、紫色に変色し、両足もまともに動く気配はない。

 

あの一撃の代償か…!

この高さは不味い、動かなけれ…ッ!

 

「ッ…クソッ…!」

 

そう思った私の体に頭痛と目眩が再び強く襲ってきた。

吐き気すらあるような頭痛と、目の前がぐるぐると揺れる目眩。

 

私はまともに動くことが出来なかった。

 

マズい、このままでは……!

 

そう思った瞬間だった。

 

「えいっ!!」

 

聞き覚えのある声が響く。

 

ペチン!

 

少し高い音を立てて少女が緑谷を叩く。

 

ふわり。

 

叩いた瞬間、緑谷の体が突然羽のように落下し始めた。

 

「……!」

 

そこには、ふわふわと自身も宙に浮かぶ茶髪のおかっぱ女子がいた。

 

…どうやら助かったらしい。

 

「だ、大丈夫!?」

 

「え……?」

 

緑谷自身も何が起きたか理解していないらしい。

私は小さく息を吐いた。

どうやら最悪の事態は避けられたらしい。

 

そしてーーー

 

『しゅうりょォォォォォォォォォォォォォォ!!』

 

スピーカーから、プレゼントマイクの耳をつんざくような声が響き渡った。それと同時に周りに見えていたロボが全て動きを止める。

 

『実技試験!終了だぁぁぁぁ!!』

 

辺りにいた受験者が一斉に出口に動き始める。

私も痛む頭を抱えて立ち上がった。

頭痛も目眩もまだ少し残っている。…が、今の私にそれはどうでもいいことだった。

 

…あの緑谷のパワーは、一体…

 

この思考が、私の全てを埋めつくしていた。

 

「お前は、一体…」

 

何もかも分からない事だらけだが、一つだけわかったことがある。

 

…既に緑谷出久は、私の知る無個性の少年ではない。という事だった。




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