幻想の力でヒロアカ生活   作:ろぐいんち

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第8話

 

「……」

 

 ……落ち着け。あれは事故だ。緑谷は悪くない。ただコケた先に私がいただけだ。別に私も怒っていない。

 

 …………嘘だ。顔の熱が全く引かない。今鏡で私の顔を見たら真っ赤で見てられないだろう。

 

 …………最悪だ。

 

「ほ、本当にごめんなさい……」

 

 机に突っ伏している私の横から緑谷の声が聞こえてくる。

 

 ……それに反応する余裕は、私にはなかった。

 

「……」

 

「本当にごめんなさい……」

 

「…………」

 

「わざとじゃなかったんです……」

 

 …………だから事故だと言ってるだろう。頭では理解している。

 ……理解は、している。理解はしているのだがそれとこれとは話が全く違う。

 

 むしろ謝られる度。彼の声を聞く度にさっきの感触が頭に浮かんできてしまう。

 

 ……本当に、最悪だ。ここまで私は弱かったのか……

 

「あ、あの……」

 

「……緑谷」

 

 私は尚も言い募る緑谷の顔を、ちらりと突っ伏した机と腕の隙間から覗くように見る。

 

「は、はいっ!!!」

 

 肩を大きく震わせた緑谷に、私は机に突っ伏したまま言った。

 

「今は、静かにしてくれ……」

 

「ご、ごめんなさ──……」

 

「……ハァ」

 

 思わず溜息を1つ吐いて、額を机に打ち付ける。

 

 その時だった。

 

「……もういいか?」

 

 唐突に聞こえたその不満気な声に、私を含めた教室中の視線が前を向く。

 

 そこには、いつの間に居たのか。教壇に寝袋を持った無精髭のくたびれた男が立っていた。

 

「……」

 

 ……いつからそこにいたんだ? 全く気づかなかった。

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

 あれが、担任……? とてもじゃないが教員に見えない。あまりに身なりが悪すぎる。

 

 そう私が思っていると、ゴソゴソと担任と名乗った相澤が寝袋を漁り始める。

 

「早速だが体操着来てグラウンドに出ろ。話は以上。すぐ来いよ」

 

 彼は寝袋の中から体操着を1着取り出してクラスにいる全員に見せる。

 

 そして彼は教室を出ていった。

 

 …………初日から体操着を着てグラウンドに出ろ……? 入学式はどうするつもりだ? まぁ、やれって言われたならやるしかないな。

 

 ……忘れて早く動こう。

 

 私はそう判断しガタン! と音を立てて立ち上がる。緑谷はそれに思いっきり肩を揺らして驚く。私はそれを見ないふりして麗日に声をかける。

 

「おい、麗日。更衣室、行くぞ」

 

「えっ、あっ、うん……」

 

 そして呆然とする緑谷を置いて私たちは更衣室に向かったのだった。

 

 

 着替え自体は数分程度で終わった。

 さすが雄英の体操着と言うべきか。体を動かすのに全く邪魔にならない。

 

 女子更衣室では多少の雑談……そして少しの視線があったがその全てを無視し更衣室を出る。

 

 そして麗日と共にグラウンドへ向かう。

 

 雄英高校のグラウンドは雑誌やテレビで見た通りかなりのものだ。

 

 流石は日本最高峰のヒーロー育成校。他の学校とは比べ物にならないだろう。周りに見える施設も全て良物に見える。

 

 既にクラスメイトの大半は集まっており、もちろん中には緑谷の姿もあった。

 

「……!」

 

「うっ……」

 

 目が合った。緑谷は肩をビクリと震わせてこちらをチラチラ見てくる。

 

 ……何時まで引きずっているんだ、あのバカ。

 

 私は何も言わずに若干呆れて視線を逸らした。

 ……麗日、こっちを見るんじゃない。

 

 緑谷はそれを見て何故か少し落ち込んでいる。

 ……どいつもこいつも……はぁ……

 

 そうこうしていると相澤が来た。

 

「よし、集まったな。これより個性把握テストを行う」

 

「「「「個性把握テストォ!?」」」」

 

「入学式は!? ガイダンスは!??」

 

 麗日が驚いて聞いて当然の質問をする。実際私も少し驚いた。雄英は自由が売りの校風だ。それは教員にも当てはまると聞いた事はある……

 

 ……あるが、まさか初日の全てを吹っ飛ばしていきなりとは。

 

「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間なんてないよ。雄英は自由な校風が売り文句。それは教員もまた然り」

 

 ……まぁ、言いたいことは分からんでもない。

 

「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50メートル走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。中学の頃からやってるだろ? 個性禁止の体力テスト」

 

 相澤はゆっくり歩きながら続ける。

 

「国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けている。まぁ合理的じゃない。文部科学省の怠慢だろうな」

 

 そう言うと彼は爆豪に視線を向けた。

 

「爆豪。中学の時のソフトボール投げ何メートルだった」

 

「67m」

 

 相澤は爆豪に近づいてボールを渡し、円の中に入るよう誘導して言う。

 

「個性使って投げてみろ。円から出なけりゃ何してもいい。思いっきりやれよ」

 

 そう言うと相澤は離れる。爆豪は軽く腕をクロスさせて準備運動をした後。思いっきり振りかぶる。

 

「んじゃまぁ…………」

 

「死ねぇ!!!」

 

 BOOM!! 

 

 爆音と共にボールは凄まじい勢いで吹き飛んでいく。

 

 …………あいつマジか。掛け声が死ね。か……やっぱヒーロー向いてないんじゃないか? 

 

「……まず自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段だ」

 

 ピピッ。

 

 計器は音を立てて飛距離を表示する。そこには705.2mという、驚異的な数字が記されていた。

 

「なんだこれ!! すげ──面白そう!!」

「705mってマジかよ!」

「個性思いっきり使えるんだ! さすがヒーロー科!」

 

 ……なるほど、確かに合理的だ。筋もある程度通っている。

 

 そう思った途端、相澤の雰囲気が一気に冷たく硬くなる。

 

「……面白そう、か」

 

 私はその気配の変わりように体を硬直させ思わず構えてしまった。

 

 これが、プロヒーローの圧……! 

 

「ヒーローになる為の3年間、君らはそんな腹積もりで過ごす気でいたのかい?」

 

 不味い、この流れは間違いなくロクな事が起きない。何を言い出すつもりだ……? 

 

「よし。トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し」

 

「除籍処分としよう」

 

「「「はああああ!?!?」」」

 

 ……クソッ、予想通りだ……余計な事を言うからこうなるんだ。面倒になった……

 

 恐らくあの……相澤の性格的に最下位じゃなくてもお眼鏡に叶わなかった場合除籍されるリスクがある。……初日からこれか。なかなか楽しませてくれるな。

 

「生徒の如何は先生の自由。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」

 

 ……あぁ、私の悪い癖だ。目の前に試練が現れた時、私は……ウズウズしてしまう。私は私の道を行く。それを妨げるものの全てを否定したくなるのだ。

 

 私は周りが驚愕の表情で固まる中、思わず口を上げて身体を震わせ笑ってしまった。

 

「さ、最下位除籍って……!」

「入学初日ですよ!? いや初日じゃなくても……理不尽すぎる!」

 

 ……その反論では意味がないだろう。あれに常識が通用するとは思えない。

 

「自然災害、大事故……身勝手なヴィランに何時どこから来るか予想もつかない厄災。日本は理不尽にまみれている」

 

 ……まぁ、そうだな。前のヘドロヴィランだったり、テレビでは常に事件や事故の映像が放送されている。その裏ではヒーロー達が泥と血にまみれながら解決しているのだ。

 

 ……ヘドロの時のあれはヒーローじゃない。

 

「そういう理不尽を跳ね除け、覆していくのがヒーロー。放課後マックで談笑したかったのならお生憎。雄英はこれから3年間、全力で君たちに苦難を与え続ける」

 

 ……ははっ、やはり私はここへ来て正解だった。間違いなく、暇はしない3年になるだろう。

 

「『Plus ultra』さ。全力で乗り越えて来い」

 

 彼は人差し指を立てて来い、とアピールする。

 

「さて。デモンストレーションは終わり。こっからが本番だ」

 

 

 そこから個性把握テストは淡々と進んで行った。50m走。立ち幅跳び、上体起こし……

 

 中学の記録とは比較にならないほどありえない記録が次々と飛び出し、その度に周囲から歓声が上がる。

 

 私自身もまぁ、最低限の記録は出せているだろう。

 

 だが……

 

 ピピッ。

 

「久我。握力53キロ」

 

「……まぁ、こんなもんか」

 

 私が握力を測り終わったあと、ふと緑谷を見る。

 

 ……あいつ、握力測るだけで嫌に緊張してるな。

 ……いや、怖がっている……? 

 

 緑谷の様子は明らかにおかしく、何か違和感を感じさせる。

 

 ……仕方ない、ちょっとほぐしてやるか。

 

 私は緑谷に気づかれないよう、ゆっくりと後ろを歩き背後に来る。

 

「くっ……」

 

 ドンッ

 

 私は軽く緑谷の背中を小突く。

 

「うっ!?」

 

「おい、何してんだ」

 

 緑谷は驚いたようにこちらに振り返ってくる。

 私は緑谷の反応を見ずに歩きながら話しかける。

 

「何怖がってるんだ。最下位は除籍だぞ。固まる暇、あるのか?」

 

「そ、それは……」

 

「言ったはずだ。私に、後悔させるな」

 

 私はそう言うともう一度、今度は緑谷の胸を小突いて次の種目へ歩いて行った。

 

 

 しかし、私の助言虚しく彼はどんどん緊張し、顔色は悪く硬くなっていく。

 

 ……あいつ本当にどうしたんだ? やる時はやるやつだと思っていたが……まさか私の目の狂いだったか? 

 

 そして種目は進みボール投げ。

 

 目の前で麗日が驚異的な記録を叩き出した。

 

「麗日お茶子。記録『無限』」

 

「無限!? すげぇ! 無限が出たぞ!!」

 

「やった! やった!」

 

 ……無限なんて記録、まさか見ることができるとは思わなかったな。

 

「やるな、麗日」

 

「あ! 久我ちゃん! すごいでしょ!」

 

 私は麗日に賛辞の言葉を送るべく、話しかける。麗日はそれに対して胸を張って誇っている。

 

 さて、次は誰……緑谷か。このままだと最下位だぞ、あいつ……

 

「緑谷君はこのままだとまずいぞ……?」

 

 隣にいつの間にかあのメガネが立っていた。

 

「ったりめーだろ無個性のザコだぞ!!」

 

 ……なんでこの猿が横にいるのかは分からんが。

 まぁ、いい。実際相当マズイのは事実だ。

 

「無個性!? 彼が入試時に何をしたのか知らんのか!?」

 

「は?」

 

 ……あの超パワー、活かすならここしかない。この後の種目は持久走、長座体前屈、反復横跳び。

 

 どれも瞬間的な力が必要な種目ではない。

 

 ……どうするんだ。アイツ。

 

 ……ピピッ

 

「緑谷出久、46m」

 

 ……しかし現実は残酷なものだった。普遍的、むしろ少し平均を下回りかねない記録だったのだ。

 

「な……今確かに使おうって……」

 

「個性を消した。つくづくあの入試は合理性に欠くよ。お前のようなヤツも入学出来てしまう」

 

 そういう相澤の目は充血し、爛々と光っている。

 

「消した……!? あのゴーグル、そうか、抹消ヒーロー『イレイザー・ヘッド』!」

 

 へぇ、相澤のヒーロー名はそういうのか。だが聞いた事はないな……アングラ系か。確かにメディアが嫌いなのは私も同意だ。

 

「見たとこ……個性を制御できてないんだろ? また行動不能になって誰かに助けもらうつもりか?」

 

 ……あの時のか。確かにあれは麗日がいないと緑谷は最悪死んでいただろう。私もEGOの使いすぎで動けなかった。

 

「そ、そんなつもりじゃ……!」

 

 そう言い訳しようとした緑谷を相澤は……布? で引っ張ってグイと寄せる。

 

「どういうつもりでも周りはそうせざるを得なくなるって話だ。……昔、暑苦しいヒーローが大災害から1000人以上を救い出すという伝説を作った」

 

 ……その伝説は私も知っている。かのオールマイトの英雄譚の一つだ。

 

「同じ蛮勇でも……お前のは1人を助けて木偶の坊になるだけ。緑谷出久、お前の力じゃヒーローにはなれない」

 

 そう言い切ると相澤は縄を解いて緑谷を解放し、目を閉じる。

 

「個性は戻した。ボール投げは2回だ。とっとと済ませろ」

 

 ……あいつ、本当にこのままのつもりか? 本当に除籍になるのか? 

 

「ねぇ、彼が心配? 僕はね……ぜんぜっ」

 

「気安く触るな、殺すぞ」

 

「メルシィ……」

 

 急に隣に来て肩に手を置いてきた金髪の男子の手を思いっきり振り払って睨む。

 

「ま、まぁまぁ……」

 

「フン……」

 

 麗日がまぁまぁと落ち着かせてくる。良かったな。この場に麗日がいて。居なかったらお前の精神は崩壊していた。

 

「指導を受けていたように見えるが……」

 

「除籍宣告だろ」

 

 ……緑谷に視線を戻す。

 

 あいつ……顔色真っ青じゃないか。

 ……本気でこのまま終わるつもりなら、私はアイツを高く見積もりすぎていた事になる。

 

 緑谷がボールを構えステップを取り始める。

 

「見込み、ゼロ……」

 

 しかし、彼はそこで終わらなかった。

 

 SMASH!!! 

 

 ゴッ!!!! 

 

 ボールは物凄い勢いで飛んでいき、あっという間に小さくなっていく。

 

 ピピッ。

 

「……緑谷出久、705.3m」

 

「ま、まだ……動けます……!!」

 

「コイツ……!」

 

 !!!! 700m……! 一番最初に投げた爆豪に並ぶ程の飛距離……! そして今やはり確信した。緑谷は無個性じゃない。どう会得したのかは分からないが、間違いなく個性を持っている。

 

 そしてあの指……試験の時に見たように紫色に腫れ上がっている。

 

 ……なるほど、腕にのみ力を入れると自壊する。なら指にのみ全力で力を込めてまだ、動けると……! 

 

 ……イカれてるな、だが……私は好きだ。彼のその覚悟の決まった行動が。少しズレた自己犠牲の精神が。それでこそ、私が見込んだ男だ。

 

「やっとヒーローらしい記録出したよー!」

 

「ゆ、指が腫れ上がっているぞ……入試の件といい、おかしな個性だ……」

 

「スマートじゃな「黙れ捻るぞ」oh.」

 

 そう私が興奮していると、爆豪が緑谷を見て震え、飛び込んでいく。

 

「どーいう事だコラワケを言えデクテメェ!!!」

 

 ボッ! ボッ! ボッ! 

 

 彼は手を後ろにやって小さな爆発を繰り返しその推進力を利用して緑谷に高速で近づいていく。

 

 ……それを許す私ではない。

 

 パリン。

 

 鏡の割れる音が響く。

 

 EGO『懺悔』

 

 カンッ!! 

 

 子気味いい音をたてて懺悔を爆豪に振り下ろし、直撃する。

 

「ぐっ……!?」

 

 爆豪はその初めて味わうWHITEダメージ……WHITE攻撃によって爆発を止め、怯む。

 

「お前、正気か? こんな人前でまた緑谷をいじめるつもりか? 頭が悪いのは前々から分かっていたがこれほどまでとは」

 

「うるせぇよ鉄面皮!! テメェも知ってんだろ!! あいつは無個性のはずだ!!」

 

「そこまでだ。いい加減にしろ。爆豪、久我」

 

 私が爆豪を止め、口喧嘩が始まりそうなところで相澤が目を開いて止めに来る。

 

 ……爆豪の爆発が収まったのはこれが原因か。だがEGOは消えていない。どうやら抹消はEGOには効かないらしい。

 

「爆豪、お前は後で反省文。久我。お前は一応止めた側だから見逃してやる。だが次は無い」

 

「……クソが!!」

 

「……分かった」

 

「ハァ……時間がもったいない。次準備しろ。久我、お前だ」

 

 相澤が間に入り一旦この場は静まる。どうやら次は私らしい。

 

「……私か。すぐに始める」

 

 私は円にゆっくり歩いていく。そして円の中に入り、相澤に確認をする。

 

「おい、円から出なけりゃ何してもいいんだな?」

 

「敬語使え、久我……円から出なけりゃな」

 

 ……面倒くさいが次からは敬語を使うか。余計なトラブルは避けたい。

 

「わかった、いや分かりました」

 

 そして私は懺悔を持ったままボールを拾う。手のひらで軽く持てるようなサイズ。これくらいなら、大丈夫だろう。

 

「フゥ……」

 

 私は一つ息を吐いてテニスのサーブのようにボールと、懺悔を構える。そしてそのままボールを上に投げる。

 

「ハァッ!!!」

 

 カァン!! 

 

 ボールは懺悔に打たれそこそこの勢いで飛んでいく。このまま行くなら200ちょっとで終わるだろう。

 

 ……だが、私は既に次に動き始めていた。

 

 再びグラウンドに鏡の割れる音が響く。

 

 EGO『4本目のマッチの火』

 

 今日はまだそこまでEGOを使っていない。これくらいなら問題ないだろう

 

 灰色にくすんだ砲身が赤く熱を持ち始める。

 

 狙いは、空を飛ぶボール。

 

 慎重に狙いを定め、私は4本目のマッチの火を放った。

 

 ドォン!!! 

 

 砲口から放たれた炎の弾は見事にボールに命中し、更に飛距離を伸ばす。

 

 私はそれを見ることなく、タバコのようにマッチを咥え、円から離れた。

 

 ピピッ。

 

「久我 唯 784.1m」

 

 ……まぁ、及第点だろう。少なくともあの猿は超えた。

 

「そ、それ! あの時の……!」

 

「あ? あぁ、そうだな。ロボの足をぶっ壊したヤツだ」

 

 麗日が円から出た私に駆け寄ってくる。後ろからメガネと金髪ナルシストも来た。

 

「い、今のは……! なんて個性だ……!」

 

「イケてるね! ☆」

 

 その後も個性把握テストはつつがなく進行した。私はほどほどの成績を記録したが、緑谷は痛みに耐えるのに必死で力が入っていなかった。

 

「んじゃパパっと結果発表」

 

 ……トータル最下位が除籍。この中からもう1人消えるのか。

 

 ……最有力候補は緑谷だが……どうなるか。

 

「トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する」

 

 ……どうなるか。

 

「あ、ちなみに除籍はウソな」

 

 …………

 

 …………やられた。これは私たちの後を無くして全てを引き出すための……

 

「合理的虚偽だ。君らの最大限を引き出すためのな」

 

「「「は────!?!?!?」」」

 

「あんなのウソに決まってるじゃない……ちょっと考えれば分かりますわ……」

 

 ……それは些か怪しいな。あれは一応本気の目だった。だがなぜ今になって嘘なんて言うんだ……? 

 

「……ま、そゆことだ。これにて終了。教室に各書類があるから目を通しとけ。……あぁ、緑谷。お前はリカバリーガールのとこ行って治してもらえ」

 

 ……まぁ、ひとまず良しとしよう。除籍なんてない方がいいんだから。

 

 

 

 そして時間はあっという間に過ぎていき、下校時間になった。

 

 私は下駄箱で壁に寄りかかりながら緑谷を待っていた。

 

 ……あいつ、遅いな。どこで油売ってるんだ? 入学前に登下校は一緒にすると言ったのはあいつの癖に……

 

 そうスマホを触りながら待っていると、奥の方から2人ほど人を引き連れた緑谷が階段を降りてくる。

 

 あれは……メガネと、麗日か。麗日はともかくメガネはいつ仲良くなったんだ? 

 

「ご、ごめん! 待たせた!?」

 

「そこまでだ。いいから帰るぞ」

 

 私はスマホをポケットに投げ入れ、緑谷に話しかける。

 

「あ、待って……! その……今日の朝の、本当にごめんなさい……! わざとじゃなくって、本当にコケただけなんだ……!」

 

 ……はぁ。

 

「まだ気にしてたのか? お前」

 

 少し呆れながら返事を返す。返事を聞いた緑谷は驚きで私の顔をまじまじと見てくる。

 

「あれは事故だと、言ったはずだ。お前が謝る必要はない。いいから帰るぞ。後ろの2人も、道は同じか?」

 

「あ、うん! ある程度同じだから一緒に〜って話してたんよ!」

 

「うむ、ぼ……俺もだ。そして君、入試の時は悪かった! 俺も同じく謝罪させて貰う!」

 

 ……真面目な奴だ。まぁ、この謝罪を受け入れない意味もない。

 

「いい、もう終わったことだ。名前は?」

 

「ぼ……俺のなま「普通に喋れ、何緊張してんだ?」……はは、バレていたとは」

 

 さっきからやけに一人称を言い直すのが気になったので、言った。メガネはそれを聞いて苦笑して咳払い、言い直す。

 

「ケホン……! 僕の名前は「飯田 天哉」! よろしく頼む!」

 

「あぁ、私は「久我 唯」だ。よろしく、飯田」

 

 私は飯田と握手する。恐らくこいつはただ真面目なだけなのだろう。……まぁ、行き過ぎた正義は悪になるのだが。

 

「良かったねぇデクくん! 許してもらえて!」

 

「……あ? デク? お前、それ蔑称じゃ……」

 

「い、いいんだ! 別に……」

 

 ……まぁ、本人が言うならいいか。

 

 私は1つ鼻を鳴らし、4人で帰り道を辿り始めるのだった。




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