幻想の力でヒロアカ生活   作:ろぐいんち

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第9話

 翌日。時間は進んで既に午後。次の授業は……

 

「わーたーしーがー!!! 普通にドアから来た!!!」

 

 ……まぁ、見ての通りだ。ヒーロー基礎学。ヒーローとしての常識、基礎を学ぶ授業。

 

「オールマイトだ……!! すげぇや本当に先生やってるんだな……!」

 

「銀時代のコスチューム! 画風が違いすぎて鳥肌が……!!」

 

 ……やはり、大きい。まだ遠いな。だがそれでいい。超える壁は高ければ高いほど超えた時、私に返ってくる物が大きいからな。

 

「ヒーロー基礎学! ヒーローの素地を作る為様々な訓練、座学を行う課目だ!!」

 

 まぁ、内容は言われた通りだな。この授業が1番単位数も授業料も多い。

 

「早速だが今日はコレ!! 戦闘訓練!!!」

 

 ……! 初回から早速戦闘訓練か! 

 

 最初はてっきり座学かと思っていたが……そうでは無いらしい。

 

「そしてそいつに伴って……こちら! 入学前に送ってもらった個性届と要望にそってオーダーメイドした……戦闘服!!」

 

「「「おおおお!!」」」

 

「着替えたら順次グラウンドβに集まるんだ!」

 

「「「はーい!!!」」」

 

 …………まぁ、私は個性の関係上戦闘服は必要ないのだが。

 

 

 

 そしてグラウンドβ。

 

「格好から入るのも大事な事だぜ! 少年少女! 自覚するのだ! 今日から自分は……ヒーローなんだと!!!」

 

 私以外の全員が特徴的な戦闘服を身にまとい歩いてきた。

 

 ……まだ候補とはいえ、壮観だな。それぞれの戦闘服に個性が出ている。

 

 私はそんなもの必要ないのだが。

 

「さぁ始めようか有精卵共!!」

 

「戦闘訓練のお時間だ!!!」

 

「あ、デクくん!? かっこいいね! 地に足着いた感じ!」

 

「麗日さ……うおお!?」

 

 ……鼻の下を伸ばすな、こいつ。

 

「要望ちゃんと書けば良かったよ……パツパツスーツになってん」

 

 ……まぁ、年頃の男子にはちょっと刺激が強いか。

 

 私がそんなことを思っていると、緑谷の隣に一際小さい男子がサムズアップしながら寄ってくる。

 

「ヒーロー科最高」

 

「えぇ!?」

 

 …………見なかったことにしよう。

 

 私は他の人のコスチュームを見る。

 

 爆豪は手に巨大な手榴弾のようなものが着いてるし、飯田はフルアーマーで、エンジンを人に合わせるとこうなるみたいな格好をしている。

 

 緑谷は……緑の配色に……ウサギか? 特徴的な2本の耳が生えている。

 

 ……違うな。あれオールマイトのリスペクトか。分かりやすい……。

 

「先生! ここは入試の演習場ですがまた市街地演習を行うのでしょうか!?」

 

 飯田がガションと音を立てながら手を挙げて聞く。

 

「いいや! もう2歩先に踏み込む! 屋内での対人戦闘訓練さ!」

 

 へぇ、いきなり対人戦か……しかも難易度の高い屋内。

 

「ヴィラン退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内の方が凶悪ヴィラン出現率は高いんだ」

 

 ……なるほど、ヘドロのようにただ暴れるだけのアホは外に出てくるが知識のあるやつは中に潜むと。

 

「監禁、軟禁、裏商売……このヒーロー飽和社会、真に賢しいヴィランは屋内に潜む!」

 

「君らにはこれから『敵組』と『ヒーロー組』に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!!」

 

 しかもチーム戦か!! 初めから飛ばしていくな、本当に……

 

「基礎訓練もなしに?」

 

 カエルのようなコスチュームをした少女……確か名前は『蛙吹 梅雨』だったな。蛙吹がオールマイトに疑問を投げかける。

 

「その基礎を知る為の実践さ! ただし今度はぶっ壊せばOKなロボじゃないのがミソだ!」

 

「勝敗のシステムはどうなります?」

「ぶっ飛ばしてもいいんスか」

「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか……?」

「分かれるとはどのような分かれ方をすればよろしいですか!」

「このマントヤバくない?」

 

「んんん〜〜〜聖徳太子ィィ!!!」

 

 オールマイトは拳を握りながら叫ぶとポケットからカンペを取り出した。

 

「いいかい!? 状況設定は「敵」がアジトに核兵器を隠していて、「ヒーロー」はそれを処理しようとしている!」

 

 ……やけに設定が映画チックだな。

 

「ヒーローは時間制限内に敵を捕まえるか核兵器を回収する事。敵は制限時間まで核兵器を守るかヒーローを捕まえる事! コンビ及び対戦相手はくじだ!!」

 

「適当なのですか!?」

 

「プロは他事務所のヒーローとチームアップする事が多いし、そういう事じゃないかな……」

 

「そうか……! 先を見据えた計らい……失礼致しました!!」

 

「いいよ!! 早くやろ!!」

 

 そしてチーム分けがされ。私は切島鋭児郎とチームを組むことになった。対戦相手は……峰田とナルシストか。

 

「おう! よろしくな! 久我!!」

 

「あぁ、こっちこそ」

 

 クラスメイトの名前はこの間全員分教えてもらった。個性は……まだうろ覚えだ。

 

「久我の個性って確か武器をひょいひょい持ちかえるやつだよな!!」

 

「まぁ、そうだ」

 

 間違ってはいない。

 

「くぅ〜っ派手でいいぜ……! 俺なんて硬くなるだけだからな……!」

 

「そんな都合のいいものでも無い……それに私は今回、あまり持ち変える予定はないぞ」

 

「え!? なんでだよ!」

 

「あまりにも多用すると負担が大きいんだ。だが手は抜かない。そこは安心してくれ」

 

「まぁ、大丈夫だろ! 頑張ろうぜ!」

 

 そう言って爽やかな笑みを浮かべると切島は拳を突き出してくる。

 

 私はそれにフッと笑って拳同士を軽く打ち付ける。

 

「あぁ。使う武器に関しては始まる前に伝達する。よろしく頼む」

 

「よし!! それでは続いて最初の対戦相手はコイツらだ!!」

 

「緑谷、麗日ペアVS爆豪、飯田ペアだ!! ヴィランチームは先に入ってセッティング! ヒーローチームは5分後に潜入でスタートだ! 他のみんなはモニターで観察するぞ!」

 

 私たち待機組はオールマイトの誘導でモニター室へ入る。そこにはいくつもの定点カメラが設置されていた。

 

 ……試合が始まった。早速緑谷達は建物に潜入している。

 

 そして警戒しながら進んでいた時、角からいきなり爆豪が飛び出してきた。

 

「いきなり奇襲!!!」

 

 BOOM

 

「うわっ!」

 

 緑谷が上手く麗日を抱えて奇襲は避けることに成功する。しかし少しかすったのか、フードの一部が焼けてなくなってしまった。

 

「爆豪ズっけぇ! 奇襲なんて男らしくねぇ!」

 

「奇襲も作戦だ。今のうちに学んでおくぞ。切島」

 

「緑くん良く避けれたな!」

 

 そのままモニターを見ていると爆豪が大きく右を振りかぶる。

 

 ……しかし緑谷はそれを読み切って腕を捕まえ、背負い投げる。

 

 …………今の、読みじゃないな、経験則から来る突発的な判断だ。爆豪あいつ、私が緑谷と会う前からずっと……

 

「チッ」

 

 私は胸糞悪くなって舌打ちを1つ吐く。周りのクラスメイトに少し見られたがそんなものを気にしても意味がない。

 

 何より今も戦いは進んでいるのだ。目を離すのは本当に意味がない。

 

「アイツら何してんだ? 定点カメラで音声ないとわかんねぇな」

 

「小型無線でコンビと話してるのさ! 持ち物はプラス建物の見取り図」

 

「そしてこの確保テープ! これを相手に巻き付けた時点で『捕えた』照明となる!!」

 

「……制限時間は15分で核の場所はヒーロー側は知らないんだよな?」

 

 私はオールマイトに尋ねる。

 

「YES!」

 

「ヒーロー側が圧倒的不利ですね、これ」

 

「相澤くんにも言われたろ? あれだよ! せーの!!!」

 

「「「「Plus U「あ! ムッシュ爆豪が!」」」」」

 

 ……まぁ、いい。視線を戻そう。爆豪が50m走の時に見せた爆発の使い方で麗日との距離を詰めていく。

 

 ……しかし即座に緑谷に方向をかえ再び奇襲をかける。

 

 ……上手いな、確保証明のテープで攻撃を止めている。唐突な方向変換にエネルギーを使ったからテープで止められたのか。

 

 爆豪は止められた事実に焦って右の大振りを再び繰り出す。しかしこれも緑谷は避ける。

 

「すげえなあいつ!! 個性使わずに渡り合ってるぞ!」

 

「入試1位と!!」

 

 ……ある程度付き合いがあるから読めてるとはいえ、素晴らしい判断力だ。戦闘センスの塊である爆豪とここまでステゴロでやれるとは。

 

 ……本当に出会った頃とは雲泥の差だな。

 

 緑谷は一旦爆豪から引き、身を隠す。

 ……爆豪はイラつきすぎだな。手のひらで無駄にボンボン爆発させている。

 

 ……麗日の方に動きがあったな。

 私は別のモニターに目を向ける。

 

 ……なんで麗日吹いてるんだ? しかもそれでバレてる……本当に何してるんだ……? 

 

 ……あぁ、なるほど。飯田は麗日の個性を知ってる。予め武器になりそうな家具やらは全て別室に片付けたのか。賢いな……

 

 ……!! 緑谷と爆豪が接敵している。

 

 ……爆豪が腕に着いた個手を持ち上げ、緑谷に向けている。それを見たオールマイトが慌ててマイクを掴み叫ぶ。

 

「爆豪少年!!! ストップだ!! 殺す気か!!」

 

 ……静止の言葉を投げかけたのにも関わらず、爆豪は止まらなかった。

 

 

 ドゴォォォォン!!!! 

 

「ぐっ……」

 

 モニター越しでも分かる強い光と、衝撃、爆音が防音仕様のモニター室にも伝わってくる。

 

 改めてモニターを見ると建物の半分が半壊していた。

 

「……正気か、コイツ……!!」

 

 何を考えているんだ……! これは授業だ、演習だ……! にも関わらず今の威力、直撃していたら私が4本目のマッチの火か、くちばしを装備していたとしても命があるか分からない程だぞ……!! 

 

 緑谷は……! 

 

 ……良かった、無事だ。所々焼け焦げてコスチュームはボロボロだが生きている。

 

 私は少し息を吐いて安心した。今の威力は何が起きてもおかしくない。建物の崩壊具合もかなりのもので、倒壊しても決して不思議では無い。

 

 ……麗日の方が動いている。今の爆発で飯田に動揺が走った。その隙をついて麗日が自分の個性で体重を無くし高く飛び、核へ一直線に飛んでいく。

 

 しかしそう飯田も甘くない。素早くエンジンを噴出させて核を抱えて麗日の手の届かない位置に持っていく。

 

 素晴らしい判断力と動体視力だ。麗日も悪くはなかったが……惜しい。

 

 ……緑谷の方は……かなり限界が近い。無理やり立ったが少しよろめいている。

 

「先生止めた方がいいって! 爆豪あいつ相当クレイジーだぜ殺しちまうぜ!?」

 

「いや……」

 

 切島がオールマイトに止めに入る。しかしオールマイトは止めはしなかった。

 

「爆豪少年、次ぎそれを撃ったら……強制終了で君らの負けとする。屋内戦において大規模攻撃は守るべき牙城の損壊を招く! ヒーローとしてはもちろん敵としても愚策だそれは! 大幅減点だからな!!」

 

 ……止めないのか、流石にこれ以上はマズいと思うが……まぁ、オールマイトにも何考えがあるのだろう。私は何も言わず再びモニターに注視する。

 

 オールマイトから指導を受けた爆豪は頭をかいたあと、緑谷に向かって距離を詰めていく。緑谷は迎え撃つべく真っ直ぐに手を突き出すがそれを読んでいたのか。爆豪は直前で上に飛び上がりそのまま緑谷の背中を爆撃する。

 

 そしてそのまま緑谷が怯んだ隙に右の大振りを腕に叩き込みそのまま腕を掴む。爆発の推進力を利用し一回転したあと思いっきり地面に叩きつけた。

 

 ……今のはかなり効いただろう。にしてもやはりとは思うが、何度もチャンスがあったのにも関わらず爆豪は緑谷にテープを巻こうとしない。

 

「リンチだよこれ! テープ巻き付ければ捕らえた事になるのに!」

「ヒーローの所業に非ず……」

「緑谷もすげぇけど……戦闘能力において爆豪は間違いなくセンスの塊だよ……」

 

 ……同意だ。この短い間に緑谷の癖を見切って大きな一撃、更にチャンスを逃さず追撃、追撃……そのどれもが高い水準で維持されている。

 

 ……緑谷が逃げている。まぁ、仕方ないだろう。時には引くことも重要だ。突撃だけで勝てるほど甘くは無い。

 

 だが……

 

 

 私の目には、爆豪の方が余裕なく見えるな。

 

 ……!! マズイ! 緑谷はあの自壊する超パワー、爆豪は直接爆発を当てようと……!! 

 

「おい! オールマイト!! 止めろ!!」

 

 それが直撃したらお互い間違いなく後に引く怪我に繋がる! 演習で負っていい怪我の範疇を超えるぞ!! 

 

『双方、中……』

 

 !? 何故中止の宣言を中断した……!? 

 

 いや、まて、緑谷が見ているのは爆豪じゃない……! 

 

 緑谷は力を込めた腕をアッパーのように突き出し、爆豪には当てず建物を破壊する。

 

 ……当然、なんの対策もされていなかった爆豪の小手が緑谷の顔に直撃する。

 

「なっ……!」

 

 私は思わず声を出した。上で待機していた麗日が緑谷の攻撃で発生した瓦礫を無重力で重さをなくした柱で撃って飯田の方に飛ばしている。

 

 飯田は驚きと対処に追われ一瞬核から意識が外れた。その一瞬で十分だったのだろう。麗日が飛び込み核に抱きつく。これでヒーローチームのWINは確定した。確定したが……

 

 緑谷は……!! 

 

 ……!!! いや、顔に直撃はしていない……! 使っていなかった左手を犠牲にして無理やり守ったのか……! 

 

 緑谷の左手は焼けこげ黒く染まっている。それでも、緑谷は勝つために判断してやり遂げたのだ。

 

 ……あぁ、緑谷の勝ちだ。文句などあろうはずもない。完膚なきまでに爆豪を出し抜いて試合に勝ったのだ。だが……

 

「ッ……緑谷ッ!!」

 

 どさり、と緑谷は倒れ込む。当たり前だろう。むしろ今まで動けていた方がおかしいのだ。

 

「負けた方が無傷で、勝った方が倒れてら

 ……」

 

 麗日もあれだけの量と数を一度に浮かせた反動か、吐き気によってうずくまっている。

 

「勝負に負けて試合に勝った、というところか……」

 

 …………良くやった。緑谷。お前は本当に凄いやつだ。私には真似など出来ないであろう事を平然と……

 

 私は素直に緑谷を褒めることしか出来なかった。

 

 

 

 …………心の奥にある小さな小さな分からない気持ちには終始、気づかなかった。

 




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