Join Us   作:フキヤヒロミ

1 / 4
第1話

「ちょっと、ミソラ! そろそろ出ないと間に合わないわよ!時間かけすぎじゃない?」

 

 ハンターVGの中でハープが呆れたように言った。

 

「もう、ハープは分かってないなぁ! スバルくんに会うんだよ? 一番可愛いワタシで会いたいの!」

 

 鏡を覗き込みながら、ワンピースの裾を整える。帽子を少し傾けて、また戻す。……ううん、なんか違う。

 

 「アイドルの響ミソラ」じゃなくて、「等身大のワタシ」を見てくれる男の子なんて、スバルくんくらいだ。だから、今日はいつもより気合いが入ってしまう。

 

「本当は『可愛い』って言わせたいだけじゃないの?」

 

 ハープは楽しそうに、弦を鳴らす。

 

「特別な日なんだよ!これくらいフツーだもん!」

 

 そう、今日ワタシは、大切なひとのウチへお呼ばれしている。しかもなんと、スバルくんからのお誘いだった。

 

「特別な男の子のおウチにおジャマして、ご両親もいるなかでお食事……だものね。こういうの、なんていうのかしら?ゴアイサツ?」

 

 クスクスと笑いながら、ハープがワタシを見る。ごあいさつ、ではもちろんない。でも、ついつい意識はしちゃう。

 

「とはいえ、もうこんな時間なんだから、そろそろキリあげなさいよ」

 

 その言葉に、チラッと壁の時計を見る。あと少し。

 

 仕上げに、桜色のリップをそっと引く。……うん。少しだけ、大人っぽい。

 

 鏡の中の自分へ小さく頷いてから、傍のポシェットにリップを滑り込ませる。ハンターVGを手に取ると、そのまま玄関へ駆け出した。

 

「お待たせ、ハープ!行こっか!」

 

「ホント、待ちくたびれたわ。早く行くわよ、ミソラ」

 

 次のウェーブライナーまであと少し。スバルくんに早く会いたくて、駆ける足が自然と速くなった。

 

−−−−−−−−★☆★

 

 もうすっかり薄暗い。ちらほら街灯もつき始めた。

 

 楽しみにしてたけど、いざとなると緊張する。

 

 意を決して玄関の前に立ち、インターフォンを押す。

 

 チャイムがドア越しに鳴るのが聞こえた。

 

 「はぁい!」となじみのある声がする。 

 

 ペタペタと駆けてくる音が近づいてきたと思ったら、ワタシの前で勢いよくドアが開いた。

 

「いらっしゃい、ミソラちゃん! さあ、中に入って!」

 

 エプロン姿のスバルくんのママ―あかねさんが満面の笑みで迎えてくれた。

 

「すみません、今日はお邪魔します」

 

 あかねさんの横を抜けて、玄関に入る。CM撮影やドラマじゃ全然緊張しないのに……今日はやっぱり落ち着かない。

 

 ただでさえ緊張してるのに、ハープに言われたことを意識しちゃって、余計ドキドキが増してる気がする。ワタシだって、考えないわけないんだから!

 

 そんなことを考えていたら、

 

「あ、ミソラちゃん。いらっしゃい」

 

 スバルくんがリビングから顔を出した。ついうれしくて、胸のあたりで小さく手を振る。ツンツン頭にビジライザーをのせたその男の子は、照れくさそうに振り返してくれた。

 

「あらあら、仲良しね」

 

 あかねさんのからかうような声に、ワタシも顔が熱くなる。ロッポンドーヒルズのフィナンシェをあかねさんに渡しながら、リビングへお邪魔した。

 

−−−−−−−−★☆★

 

「いらっしゃい、ミソラちゃん。忙しいのに、よく来てくれたね」

 

 リビングに入ると、今度はスバルくんのパパ―大吾さんから声をかけられた。

 

 イスに座っているだけでも、やっぱり迫力がある。

 

 ひと目見ただけで頼もしそうな感じ。

 

 成長したら、スバルくんもああなるのかなと思ったけど……全然イメージがわかない。

 

 スバルくんをちらっと見たけど、やっぱり想像がつかない。

 

 大吾さんのほうに向き直して、

 

「お誘いしてもらってから、すごく楽しみにしてたんです!」

 

 思わず、少し声が上ずった。ちょっと恥ずかしくなる。

 

「そういってもらえるのは嬉しいね。スバルも昨日からそわそわしてたんだ、なあ?」

 

「ちょっと、急に何言い出すんだよ、父さん!」

 

「大吾のいうとおりじゃねえか。スバル、お前全然寝られなくて一晩中星空を眺めてただろ」

 

 ハンターVGから勢いよく、ロックくんが飛び出してきた。出てきたくてウズウズしてたんだと思う。

 

 カラダの電波が心なしかいつもよりチリチリしてる。

 

「ち、ちょっとウォーロックまで!べ、別にそんなんじゃないからね、ミソラちゃん!昨日は星空がいつもよりキレイだったから、ついつい望遠鏡でさ……」

 

 慌ててごまかすところがスバルくんらしい。

 

 ソワソワして寝られないなんて、ワタシからしたらカワイイとしか思えない。

 

 オトコのコのみえっぱりはイマイチわからなかったりする。

 

「そんなに楽しみにしてくれたんだ、ありがとう、スバルくん。ワタシも寝付けなかったから……ふふ、おソロいだね!」

 

「……」

 

「だってよ、スバル。よかったじゃねえか。オマエだけじゃなかったってよ」

 

 ロックくんがスバルくんの肩をポンとする。

 

 脇の大吾さんはそんな様子を声を上げて笑っていて、あかねさんは静かにニンマリしている。

 

 当のスバルくんはほっぺを真っ赤にして、ロックくんを睨んでいた。ちょっぴり涙目かも。悪いことしちゃったかな。

 

 ワタシのハンターVGが震える。たぶん、ハープだ。出てもいい?ということだと思って、小声で「いいよ」と答えてあげた。

 

 ポロロンと弦が弾く音がして、ハープがスルッとワタシの目の前に現れた。

 

「あら、ロック。ご主人サマを困らせちゃダメじゃない」

 

「あ?何だオマエ。急に出てきて突っかかってくんじゃねえ」

 

「まあ、ホントのこと言っただけじゃない?ウィザードであるアナタがスバルくんをイジめてどうするのよ。眠れなくて当然じゃない。国民的アイドルが訪ねてくるのよ。ソワソワして目が冴えてくるのが普通の反応よ。図太いアナタにはわからないかもしれないけど」

 

 ハープのコトバに、さすがのロックくんもぐうの音もでないようだった。目が泳ぐ……ってよく言うけれども、それを聞くたびにハープにコテンパンにされるロックくんの目を思い出す。

 

「ったく、オンナってのはこれだからイヤなんだよ。細けえことばっかり言いやがって」

 

 ロックくんはいつもハープに弱い。

 

 「ちょっと言い返したらいっつも尻尾巻いて逃げるのよ。カワイイわよね」とハープは言うけれども、ハープだからなんじゃないかと思う。

 

 何となく、バツが悪い半分、照れ隠し半分のような気がする。二人の関係が、ワタシとスバルくんに似ているからかもしれない。

 

「スバルくんのツメのアカでもセンじて飲んでみたらどう?誰かを見習ってほしいときに、ニホンではそう言うらしいわよ、ねえ、ミソラ」

 

「ホントに煎じて飲むわけじゃなくて、そういうことわざがあるだけだけど……じゃなくて、ハープも言い過ぎ、失礼だよ!」

 

「あら、ゴメンなさい。そんなに傷つくとは思わなくて」

 

 ハープはクスクス笑いながら、スッとワタシのそばについた。気が済んだみたい。 ロックくんの方を見ると、ケッといいながら、同じようにスバルくんに寄っていっていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。