「こればかりはウォーロックの負け、だな。ま、見てる分には賑やかで楽しかったけどな」
大吾さんがロックくんの背中を力強く叩く。勢いに負けて、ロックくんはよろつき前に押し出されていた。
「おい大吾!痛えじゃねえか!」
「すまんすまん。そんなに力を込めた覚えもなかったんだがなあ」
「オマエなあ……」
「ほらほら二人とも、そのあたりにして。せっかく支度も済んでるんだから。ミソラちゃんもごめんなさいね。ひとまず空いてる席にどうぞ」
台所から、あかねさんが声をかけてくれた。お言葉に甘えて、席に向かう。どこに座ろうか迷っていたら、スバルくんが椅子を引いてくれた。
ピンクのポシェットを外して、ひとまずかたわらに置く。そのまま椅子に座ると、スバルくんが隣に座った。
「ミソラちゃん、今日は来てくれてありがとう」
スバルくんが言った。
「スバルくんからのお誘いだもん。ほかのおシゴト全部、キャンセルしてでも行くよ!」
「はは……、冗談だと思うけど、ミソラちゃんならやりそうで怖いよ」
次々とお料理が目の前に配膳されていく。
カラフルなサラダボウルに、コーンポタージュ。ポテトサラダと平皿に盛られたライスが出てきた。
可愛いボタニカルの丸皿が目の前に置かれる。
ふわっと、ワタシの目の前まで湯気が上がってきた。見ると、煮込みハンバーグだ。デミグラスソースにじゃがいもとにんじんが浸っている。ハンバーグの上に、ちょこんとクレソンがのっていた。
「母さんのハンバーグ、結構おいしいんだよ」
隣でスバルくんが教えてくれた。
「久しぶりに食べるな」
大吾さんがぼそりと呟く。
「あなたはしばらくいなかったからでしょ」
笑いながらあかねさんが答える。
なにげない会話のなかに、その言葉だけは少し違って聞こえた。
大吾さんの「久しぶり」にも、あかねさんの「しばらく」にも。
ワタシにはわからない時間が詰まってるんだ。
そう思うだけで、胸がキュッとした。
「さあ、冷めちゃう前にいただきます、しましょ」
私の目の前にあかねさんが座る。もちろん、隣は大吾さん。
気がついたらいつの間にか、ハープとロックくんはいなくなっていた。端末に戻っている気配もない。
おおかた、ロックくんと一緒にウェーブロードに上がっているんだろうな、と思った。たいてい今までそうだったから。
さっきまであんなやり取りしてたのに、と思うと少しニヤついてしまう。……いけない、顔に出ちゃいそう。
気を取り直して、前を向き直す。そして、手を合わせて。
「いただきます」
自然と、隣のスバルくんと声が重なった。ちょっぴり嬉しくて、ついスバルくんのほうを見る。
目が、合った。スバルくんもワタシを見ていた。
照れくさくて、笑った。スバルくんもつられて笑う。
「いいな、アオハルってやつか」
「父さん、ソレ、意味分かって言ってる?」
「お父さんミーハーだから、すぐそういう言葉使いたがるのよ」
「ミーハーっておまえ……もう死語だぞ」
あかねさんが笑い、大吾さんも笑う。スバルくんも。
気がつけば、ワタシも輪のなかで笑っていた。