薬師アレンとエルフのリズレ 作:ルゥー創作するのは間違っているだろうかー
「ん、傷の治りは良さそうだな」
アレンはリズレの傷を見ると別室に移ったベルを呼びに行った
「終わりましたか?」
「傷を診るだけだからな、もういいぞ」
「痕残っちゃうかな...」
リズレは傷跡に手を充てる
「残らない、その為にその軟膏を用意したんだ」
「特別ってこと?」
「ああ、魔力を含ませてある特別なやつだ」
「俺も風呂に入ってくる」
「リズレ、それ飲んで早く寝ろよ?」
「うん」
そう言って薬湯を手にする
それをじっと見るベル
「寝ないの?」
リズレはベルの視線に気づく
「はい、アレンさんを待ちます」
「そっか」
リズレさんと2人きり
ベルは緊張しながら会話を探す
「明日はクエスト、また受けるんですよね?」
「そうね、身体が鈍るし」
一口飲んで机に置く
「僕、頑張ります」
「うん、それじゃ。おやすみ」
そう言ってリズレは薬湯を飲み干した
リズレはもう寝台に入った
ベルは1人考えていた
寝顔が見たいけど、嫌われるよな
怒られるのも嫌だし
アレンがそこへ戻ってくる
「ちゃんと飲んだか?」
ベルに確認するアレン
「飲んでました」
ベルはアレンにちゃんと報告した
「そうか」
アレンはリズレの方を見る。
もう寝息が聞こえていた。
「早いな」
「薬の効果ですか?」
「それもある」
アレンは小さく笑った。
「あいつ、普段から無理するからな」
ベルは寝台を見る。
いつも冷静で強いリズレが今は静かに眠っている。
「本当に強いですよね」
「強いな」
即答だった。
「でも怪我もするし腹も減る」
「当たり前のことだけどな」
ベルは少しだけ笑った。
完璧な人じゃない。
だからこそ憧れるのかもしれない。
「お前も寝ろ」
「はい」
客間の灯りが消える。
村の夜は静かだった。
次の日、街へ戻りギルドに入る
「ん?ルーキーが一緒じゃねえか、仲間になったのか?」
ベルを突き飛ばした冒険者に声を掛けられる
アレンとリズレはいつも通り無視をする
「はい!一緒にこれからクエストを受けます」
ベルは嬉しそうに昨日突き飛ばされたのに受け答えを始めた
「へえ、そんな足手纏いを...物好きだねえ」
ベルを馬鹿にする態度にアレンは無反応
リズレはちらっと視線をベルに送る
ベルは言い返せないでいる
口を固く紡ぎ震えている
「僕は!今日頑張ります」
ベルはギルド中に響く声で叫んだ
場がほんの一瞬静まり、ベルに注目が集まる
その言葉に冒険者達が笑い出す
中には腹を抱えて笑う者もいた
「頑張る、ねえ」
「ルーキーはみんなそう言うんだよ」
ベルは拳を握る。
何も言い返せなかった。
悔しい。
けれど事実だった。
自分はまだ何も成し遂げていない。
すると、
「ベル」
アレンが呼んだ。
「はい」
「依頼選ぶぞ」
それだけだった。
慰めもない。
励ましもない。
ただ、当たり前のように次へ進む。
ベルは少しだけ肩の力を抜いた。
「はい!」
今度はちゃんと前を向く。
その横でリズレが小さく呟く。
「別に間違ってない」
「え?」
ベルが振り向く。
「頑張るのは大事」
リズレは依頼書を見たまま続けた。
「頑張らない人は強くならないから」
ベルは目を丸くする。
それは励ましというには不器用だった。
けれど、
リズレなりに認めてくれた言葉だった。
「宝探し...?」
ベルはクエストの書かれた羊皮紙を読んだ
「まあ、いきなり討伐より楽だろう」
アレンの言葉にリズレは呟く
「暇」
アレンは初心者クエスト向けの探索依頼を受けることにした
「リズレは村に戻っててもいいけど?」
アレンはリズレに提案する
ベルはそれを聞いてしょんぼりする
「それも退屈」
リズレは即答した
ベルの表情がパァッと明るくなる
「?」
ベルの喜びに気づくリズレ
でも、なんでかは分からない
辿り着いたのは古びた遺跡だった
「暗いですね」
ベルは入り口で立ち止まる
アレンはランタンを取り出した。
「ん」
火を点けようとする。
するとリズレが首を傾げた。
「必要?」
「必要だろ」
「見える」
「俺は見えない」
「あ」
リズレは少し考える。
「そうだった」
「そうだったじゃない」
アレンは呆れる。
ベルも頷いた。
「僕も全然見えません」
「人間って不便」
「人間だからな」
「先に言っとくが、宝箱をすぐに見つけても近寄るんじゃないぞ?」
ベルは宝箱にすでに喰われていた
「おい」
アレンが額を押さえる。
数秒前である。
本当に数秒前だ。
なぜもう喰われているんだ。
「た、助けてくださぁぁい!」
宝箱の蓋に頭を噛まれたベルがじたばた暴れている。
「ミミック」
リズレが冷静に答えた。
「見れば分かる」
アレンはため息を吐く。
「だから近寄るなって言っただろ」
「だって宝箱がありました!」
「そうだな」
「開けたくなるじゃないですか!」
「そうだな」
「助けてください!」
「それとこれとは別だ」
「ひどい?!」
ベルの悲鳴が洞窟に響く。
リズレはしゃがみ込むとミミックを観察した。
「小さい」
「初心者向けのダンジョンだからな」
「噛む力も弱い」
「じゃあ自分で外せますか?!」
ベルが希望を見出した顔をする。
リズレは少し考え、
ミミックの上をこんこんと叩いた。
「痛っ!」
「ベルじゃない」
「僕です!」
「そう」
興味を失ったように立ち上がる。
「アレン、任せた」
「結局俺か」
アレンは腰袋から小瓶を取り出した。
蓋を開ける。
次の瞬間。
ブシュッ。
「ギャアアアアッ?!」
ベルではない。
ミミックが悲鳴を上げた。
そのまま勢いよくベルを吐き出す。
地面を転がるベル。
「な、何したんですか……」
「臭い薬」
「万能すぎません?」
「割と万能だ」
アレンは真顔で答えた。
リズレが小さく吹き出す。
「ベル」
「は、はい」
「勉強になった?」
ベルは服についたよだれを見て、
少しだけ涙目になりながら頷いた。
「宝箱は……すぐ開けません……」
「よし」
アレンは満足そうに頷く。
「今日の授業終わりだな」
「まだ始まって五分です!」