薬師アレンとエルフのリズレ   作:ルゥー創作するのは間違っているだろうかー

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強さじゃない

 



「どうだった?冒険はできたか?」

 

ベルはギルドでまた話しかけられる

「いや、ミミックに何度も捕まって大変でした...」

 

 

「だろうな」

ガハハハと笑う冒険者達

 

「...っ!!!」

情けない

ベルは肩を落とす

 

 

「ベル、ほら行くぞ」

アレンはベルの肩を叩きギルドを出る

 

リズレも後に続くとちらっと声が聞こえた

 

「ちゃんとパーティーなんだな」

 

「いいな、俺もエルフと一緒に冒険してえ!!!」

 

「羨ましいなあ!!!」

 

「逃げ出さないだけ、頑張ってるじゃねえか」

 

ベルに賞賛の声も聞こえてきたがベルには届いていないようだった

 

 

 

村の客間に戻ってくるとベルは大の字に寝転んだ

 

 

 

 

「普通の宝箱とミミックの違いがよくわからなかったな…」

 

ベルは大の字になったまま天井を見つめる。

 

「分かる」

 

意外にも答えたのはリズレだった。

 

「え?」

 

ベルが起き上がる。

 

「私も最初は分からなかった」

 

「リズレさんもですか?!」

 

少しだけ声が明るくなる。

 

「うん」

 

リズレは椅子に腰掛けながら頷いた。

 

「噛まれた」

 

「噛まれたんですか?!」

 

「噛まれた」

 

淡々としている。

 

ベルは思わず笑ってしまった。

 

あのリズレでもそんなことがあったのか。

 

「何回くらいですか?」

 

「二回」

 

「僕、六回です」

 

「多い」

 

即答だった。

 

「ですよね……」

 

再び沈むベル。

 

するとアレンが薬草を仕分けながら口を開いた。

 

「まあ、今日は悪くなかったぞ」

 

「え?」

 

ベルは顔を上げる。

 

「人の話を聞いてた」

 

「それだけですか?」

 

「それが一番大事なんだよ」

 

アレンは笑った。

 

「最初の頃の冒険者なんて、話を聞かずに死ぬ奴が多い」

 

客間が少し静かになる。

 

ベルもリズレも何も言わない。

 

「お前はちゃんと失敗した」

 

「失敗……」

 

「そして生きて帰ってきた」

 

アレンはそう言った。

 

「なら十分だ」

 

ベルはしばらく黙り込んだ。

 

今日一日を思い返す。

 

ミミックに噛まれた。

 

転んだ。

 

道を間違えた。

 

怒られた。

 

でも――

 

生きて帰ってきた。

 

「……はい」

 

今度の返事は少しだけ力強かった。

 

その様子を見たリズレがぽつりと言う。

 

「明日は四回にしよう」

 

「何をですか?」

 

「ミミック」

 

「目標がおかしいです!」

 

ベルの悲鳴に、アレンは吹き出した。

 

客間には久しぶりに笑い声が響いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アレンはそう言うと立ち上がる

「それじゃあ飯にするか!」

 

 

「はい!」

ベルがお腹をさすりながら返事をした

 

「リズレもちゃんと食べるんだぞ」

 

「毎回言うんだ、ソレを」

リズレははいはい、呆れたように肩をすくめる。

 

「毎回言わないと食わないからな」

 

「食べてる」

 

「足りてない」

 

即答だった。

 

ベルは二人のやり取りを見ながら小さく笑う。

 

食堂へ向かう途中も、アレンは村人に呼び止められたり、薬草のことを聞かれたりしていた。

 

そのたびに立ち止まって答える。

 

「アレンさんって結構人気なんですね」

 

「薬師だからな」

 

「薬が欲しい人が多いだけ」

 

リズレが横から言う。

 

「それでも頼られてるってことですよ」

 

ベルがそう言うと、アレンは少し困ったように頭を掻いた。

 

食堂に入ると、村人たちが歓迎してくれた。

 

討伐のお礼だと言って、大皿に盛られた料理が次々と運ばれてくる。

 

ベルは目を輝かせた。

 

「すごい……!」

 

「食え食え」

 

「いただきます!」

 

勢いよく食べ始めるベル。

 

その横でリズレも黙々と食べていた。

 

アレンはその様子を見て頷く。

 

「よし」

 

「何が?」

 

「ちゃんと食ってる」

 

「監視してるみたい」

 

「してる」

 

否定しなかった。

 

リズレは少しだけ不満そうな顔をしたが、結局もう一口パンを口に運ぶ。

 

それを見てアレンは満足そうだった。

 

ベルはそんな二人を見ながら思う。

 

冒険は怖い。

 

失敗もする。

 

今日だって散々だった。

 

でも――

 

こうして一緒に飯を食べる時間は、少し好きかもしれない。

 

そう思いながら、ベルは目の前のスープを飲み干した。

 

明日はもう少しだけ上手くやれる気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜リズレが風呂に入っている間、ベルが突然言い出した

 

「リズレさんって、綺麗ですよね」

 

「...ああ」

アレンはクエストの最中に採った薬草を仕分けながらそう相槌を打つ

 

 

「それに優しいですし」

 

 

「だからってまた風呂を覗くなよ?」

 

「あれは事故です?!」

 

 

ベルは顔を真っ赤にした。

 

「本当に事故なんです!」

 

「そうか」

 

アレンは適当に頷く。

 

明らかに半分くらいしか信じていない。

 

「信じてませんよね?!」

 

「信じてる信じてる」

 

全然信じていない声だった。

 

ベルは机に突っ伏した。

 

「僕だって分かってますよ……」

 

「何が?」

 

「リズレさんに相手になんてされないことくらい」

 

薬草を仕分けていたアレンの手が少しだけ止まる。

 

「ふーん」

 

「ふーんって」

 

ベルは情けない声を出した。

 

「だって凄いじゃないですか」

 

ぽつりと呟く。

 

「強くて」

 

「うん」

 

「綺麗で」

 

「うん」

 

「優しくて」

 

「うん」

 

「僕なんかミミックに六回も食べられたのに」

 

「それは多いな」

 

即答だった。

 

ベルはさらに沈む。

 

「でも」

 

アレンが薬草を束ねながら言った。

 

「リズレはそういうの気にしないぞ」

 

「え?」

 

「強いとか弱いとか」

 

「そうなんですか?」

 

「少なくとも、お前がミミックに食われた回数は気にしてない」

 

「そこなんですか判断基準?!」

 

ベルが叫ぶ。

 

すると、

 

ガチャ。

 

ちょうど客間の扉が開いた。

 

風呂から戻ったリズレだった。

 

まだ少し髪が濡れている。

 

「何の話?」

 

ベルが固まる。

 

アレンが即答した。

 

「ミミック六回の話」

 

「やめてください?!」

 

リズレは少し考えてから頷いた。

 

「七回じゃなかった?」

 

「増えてる?!」

 

「じゃあ六回」

 

「そこじゃないんです!」

 

ベルの悲鳴が客間に響く。

 

リズレは椅子に腰掛けながら首を傾げた。

 

何がそんなに騒ぐことなのか、本気で分かっていない顔だった。

 

アレンはそんな二人を見て小さく笑う。

 

今日も平和だな、と。

 

そしてベルは気づいていなかった。

 

リズレは確かに強い。

 

けれど、本当に憧れているのはその強さじゃなくて――

 

こうして自然に隣にいられることなのかもしれない、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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