ある時から記憶を無くした名もなきカニは故郷を探して旅をしている。

そして旅の途中、『レルネー』という土地について知る。

その土地にはヒュドラという怪物がいるんだそう。

『レルネー』という言葉が頭から離れないカニは実際にレルネーに行ってみることにしたのだった

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プロローグ

少年は森の中を歩いていた。

 

森の奥で何やら大きな音がしていたので、少年は好奇心の赴くまま音のなる方に近づいていっているのである。

 

確かこの辺りだったはず、と少年は辺りを見回す。

 

そうするとそこには一匹の蛇が倒れていた。

 

少年は蛇を見るとすぐさま逃げ出そうとしたけれど、怪我をしているのに気づく。

 

少年はどうしようかと迷いながら蛇の近くを行ったり来たりする。すると蛇が喋り出し、少年はとても驚く。しかし、話していることをよく聞いてみるとお腹が空いているんだと分かった。

 

少年は思わず笑って、「薬草と食べられそうなの持ってくるから少し待っていて」と伝える。

 

これが後に『レルネーの沼の怪物』として恐れられるヒュドラとその親友となる『カルキノス』の出会いだった。

 

 

 

 

♢♢♢♢♢

 

それはまだ、神々が空を支配していた時代の話

 

人々は神殿で祈りを捧げ、数多の英雄が群雄闊歩し、怪物が吠え、神々が地上に干渉していた時代

 

場所は神代、古代ギリシャ

 

そんな場所を一匹のカニが一人で旅をしていた。

 

「ふんふふんふふ〜ん♪今日は何処に行こうかな〜。」

 

カニに名前は特にない。神の血をひく怪物というわけでもないただの何処にでもいる他より少し大きなだけのカニである。

 

しかし、何か特別なことがあるとするなら今から5年前までの記憶がないことくらいである。その為、カニは自分の記憶を取り戻すために、5年前から旅を続けている。

 

 

 

 

 

「うーんここもダメだったかぁ。カニだから海沿いに探して来たけどもしかして俺の故郷は海じゃないのかな。うーん・・・・・・ダメだ思いつかない。これからどうしよう。」

 

海沿いに色んなところを探しまわったけど見つかんないんだし、もしかしたら俺の故郷、海じゃなかったりするのかな。でも、人の話を盗み聞いたり、コソコソ調べたりしたところによると俺は海にいるカニらしいんだよなぁ。あれっもしかして海の中に入っていかないといけなかったりするかな。けど海に入ると何故か波で押し返されちゃっていつのまにか浜辺に戻っちゃってるんだよなぁ。

 

「海は粗方探し終わったし次は川とか湖の方を探してみるか。他にやる事もないしね。よしっご飯食べ終わったら早速行ってみるか。」

 

 

そういうとカニは木を登り木の実を落とし、木から飛び降り海に入ると、一瞬で2つの鋏で魚を2匹掴み、そのまま波に押し返され浜辺に戻ってきた。

 

「いやー最初の頃は全然ご飯が取れないし見つからないしで大変だったけど今では慣れたもんだよねー。魚を掴んでれば魚も一緒に浜辺に来てくれるって気づいた4年前の俺、ほんと天才だよ。」

 

それにしても最初の頃は本当に大変だった。ご飯は木の実を取ろうにも木を登れないし、魚を取ろうにも波で押し返されちゃうしで。しかも落ちてる木の実は大体食べられちゃってたりしたせいで他の動物の食べ残しとか死骸とかを食べるしかなかった。たまに運良く生きた魚が落ちてたり、目の前でいきなり動物が死んだりしてそれを食べてたけどそれがなけりゃ今ごろハデス様と会ってただろうと今でも考える。

 

まあ、それから1年ぐらいで狩りも上達して自分で木の実や魚取ってこれるようになったんだから俺も成長したよね。

 

 

けど正直それ以上にやばかったのが野生動物に食べられそうになった事だよね。命からガラ逃げれた時は良かったけど、危うく食べられそうになったのは一度や二度じゃないしね。まあそうゆう時は基本的に森を歩いてる人にぶつけると退治してくれるけど、危うく俺まで退治されそうになるからさっさと逃げないといけないよ。みんながカニになった時は注意してね。

 

 

 

「なんて考えてるうちに食事は終了!さて。この近くに川ってあったかな。・・・・・・いや待てよ。変に探しまわるよりも、一度街に行って近くの川とかについて調べた方がいいのでは。よし、じゃあ近くの旅人について行って街まで案内してもらおう」

 

何て言いながら歩いているとちょうど良く旅人が歩いているのを見かける。よし、この人について行くことにしよう。そう考えてカニはこっそりとその旅人の後ろをついてきた。

 

そうやってこっそりついて行くとやっと街を見つけるができた。

ただのカニである彼が知ることはないが街の名前はミュケナイ。そしてこの時ついて行った旅人の名はヘラクレスであった。

 

 

 

 

 

「街に着いたはいいもののどうやって中に入ろう。俺の身体は大体3mくらいあるし、正面から行くのは危ないよね。壁を登るにも明るい時にこんなカニが登ってたら騒ぎになっちゃうだろうし。うーん。本当にどうしようかな。」と悩んでいるときに一人の老婆が声をかけてきた。

 

「そこのカニ。何か困っていることでもあるのかい。こんな老婆でよければ話してみなさい。」

 

カニは自分に話しかけてくる人間を初めて見たので驚きながらも、話しかけようとする。しかし、カニの言葉が人に伝わるわけもなく、どうにか身振りで街に入りたいことを伝えようとする。

 

「なるほど。お前は街に入りたいんだね。何でカニが街に入ろうとしているんだい。理由によっては考えよう。」

 

カニは相手に自分の意図がしっかりと伝わっていることに驚き、続けて自分の記憶を取り戻す旅をしていることを身振りで伝える。

 

「なるほど。街や街の人々に危害を加えたりする気はないんだね。」

 

カニは大きく頷く。

 

「よかろう。しかし入るのは私の目の届く範囲でだけ。一時間経てば街から出ること。これを守れるなら、お前を私のペットとして入れてやる。」

 

カニはそれに大層喜んで老婆に深く頭を下げた。すると老婆は3m以上ある大ガニを30cm程の小さなカニに姿を変えて持ち上げ、街の方に歩いて行った。

 

 

 

 

 

街に入るとカニは街のあまりの大きさと美しさに言葉を失っていた。しかし、一時間しか時間がない事を思い出し、老婆にこの辺りに川や水辺がないか聞いてみる。しかし、

 

「私は、見ているだけだ。調べたいことがあるなら自分で調べな。」

 

というのでカニは困り果て、せめて情報が聞けるところを教えてくれと尋ねると、

 

「まあ、それくらいならしてやるか。着いてきな。」

 

と言い、老婆と思えない速さで人混みの中を進んでいく。カニは甲羅を踏まれ、足を踏まれ、時に見失いそうになりながら、なんとか老婆について行った。

 

 

 

 

着いたところは酒場で、

「お前は本を読んだり出来ないから、ここで情報収集してな。」

というとカニが視線を外した隙に老婆はいなくなっていた。

カニはよしっ、頑張るぞ!と気合を入れて中に進んで行った。

 

 

 

 

 

その日も酒場は賑わっていた。

 

農家たちが酒を飲み、商人たちがこれからの商売について情報を交換しあい、旅人たちが見聞を語り合い、吟遊詩人が歌を歌っている。

 

カニはその酒場で色々な話を聞いた。例えば、

「東の街で祭りがあるらしいぞ」「去年は行けたが今年は難しいだろうな」

「何でも、ヘラクレスとかいうやつがこの国に来て王から試練を受けるんだとよ。」「誰だそりゃ!また命知らずの英雄がきたのかよ!」「いやそれが「おーい!酒お代わり!」聞けよ!」

「最近海沿いを歩くでかいカニがいたんだって!」「まーた言ってるやアイツ」「どうせ酒の飲み過ぎだろ」

カニは少しドキッとした

 

 

などなど様々な事をカニは楽しそうに聞いていた。こういう話を聞くのは好きだった。知らない土地の話を聞くと、その景色を想像して、実際に行ってみたくなる。こうやって話を聞いていると老婆が来て

「あと、5分したら終わりだからね。」

と言ってきた。

 

カニは慌てて近くの水辺について話している人を探すが見つからない。そんな時だった。

 

レルネーには近付かん方がいい

酒場の隅の老人がつぶやく。

「おい、じいさん。俺たちは英雄になる男だぜ。怪物なんてわけないさ。だから教えてくれよ、そのヒュドラがいるところによ。」

「ああ、俺たちならどんな怪物だって退治してやるぜ。」

そう言って若い5人組の男たちはまた聞く。

「だから教えてくれよ。その化け物の居場所をよ。」

老人はため息をつき、

「あの怪物はこちらから近付かん限り襲ってきたり、することはない。しかし、奴の持つ毒はどんな生き物も殺す。動物も植物も、同じ怪物すらも奴の毒を喰らって生き残ったものはいない。そしてやつを退治するため、古今東西万夫不当の英雄がこぞって向かったが生きて帰ってきたものはいない。」

「・・・・・・爺さんは何でそんなこと知ってんだよ。」

「そりゃぁ、わしは見たことがあるからよ。」

「まじか」

「まあ、わしの村を襲ってきたのをたまたまわしだけ生き残っただけじゃがの」

「なるほどな。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

カニは黙っていた。遠くの祭りの話より、新しくきた英雄の話より、最初に探していたはずの近くの川や水辺のことより、その『レルネー』という名前が気になった。

なぜだろう。分からない。けれど。心のどこかがその名前を掴んで離さなかった。まるで、遠くから誰かに呼ばれているような、そんな感覚に襲われていた。

 

「時間だ。そろそろ出るよ。」

「・・・・・・ところでお前さんは探しもの。見つかったかい?」

カニはふるふると首を横に振る。

「じゃあこれからどうするつもりだい?」

カニは迷いながらも足元に蛇の絵を描く。

「蛇・・・。まさかレルネーに行くつもりかい。やめときな。死にに行くようなもんだよ。」

カニは老婆に頭を下げて街の外に出て行った。

老婆はため息を吐き、カニの姿が見えなくなるまで見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてカニが完全に見えなくなった頃。老婆の姿は突如として美しい女神の姿に変わる。

「なるほど、やはり彼は貴方に会いに行くようですよ」

             ヒュドラ

 

 

 




ここまで読んでくださりありがとうございます
作者はFateとギリシャ神話の知識がないのでwikiで調べながら書いてます
なので間違っているところがあれば優しく教えて貰えるとありがたいです

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