レルネーの友   作:餅もち

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第十話

♢♢♢♢♢

 

カルキノスが薬草と食べ物を持って戻ってきた時。蛇はちゃんとその場にいて、逃げていなかった。

 

「おっ、本当に待ってた。」

 

「待てと言われたので。」

 

「真面目かよ。」

 

カルキノスは笑いながら近づく。手には薬草や獣の肉、木の実や機械の残骸まで色々なものを持ってきていた。

 

「お前何食うのか分かんないから適当に色々持ってきた。けどとりあえずは怪我だな。ほら、これ食べろ。その辺に生えてる薬草だけど効果は保証する。代わりにクソまずいけどな。」

 

「まずい・・・・・・ですか。」

 

蛇は薬草を躊躇なく食べ始める。

 

「・・・・・・なるほど、これがまずい、という感覚」

 

「薬だからな。我慢しろ」

 

「分かりました」

 

そう言って蛇は無言でムシャムシャと薬草を食べ始めた。

 

 

 

 

 

薬草を食べさせた後、カルキノスは蛇に聞く。

 

「お前って何食うのか分かんないからとりあえず適当に色々持ってきたんだけど、何なら食えるんだ?その辺の獣の肉に川で取った魚、食べれる木の実とお前の身体に似てる残骸も持ってきてみた。好きなの食べていいぞ。」

 

そう言ってカルキノスは持ってきた肉や魚、食うかもわからない機械の残骸まで、持ってきた籠から出して見せる。

 

「お前は何食べるんだ?色々あるから何かしら食べれるものはあると思うが。」

 

「私のために持ってきたのでしょう。安心してください。全部食べます。」

 

「おー。いいぜ食えるもんなら食ってみな。まあ、ふざけて持ってきたのもあるからこの辺はよけて・・・・・・」

 

「安心を。全て食べれます。」

 

「いや、食う量明らかにお前の身体の大きさに合ってないしなんかの残骸なんて蛇が食えるわけ・・・・・・」

 

「安心を。全て食べます。」

 

「へぇー。なら食い切ってみろや。食い切れるもんならな。」

 

蛇は分かりましたと言って食べ始める。

 

パクパクもぐもぐバキボキゴキャゴリバリゴべキャ

 

 

 

数分後。

 

蛇は綺麗に完食した。

 

「ごちそうさまでした。」

 

「マジかよ。明らかに食べた量と身体の大きさがあってねぇ上、食事をしてる音じゃねぇ。一体どう言うことだ?」

 

「ところで。」

 

「ん?」

 

「人間は全員こんな感じなのですか?」

 

「どんな感じだ?」

 

「怪我した生き物に食べ物をあげたり、森の獣を楽々と狩れたり、神の真体の一部を難なく破壊したりできるのですか、と言うことです。」

 

カルキノスは少し考えて、

 

「いや、俺は同年代の奴には負ける気ないけど流石に大人には勝てないと思うぞ。それに戦い方は生きてるうちに自然と身につけたり、まあ色々あるけど、怪我した蛇を助けるのは人によるとしか言えん。・・・・・・まって今なんて言った?」

 

「そうなのですか。」

 

蛇は少し考える。あの人から教えてもらったことと違う。この時代の人間にとって森は基本的に必要以上近づかず、獣なども大人が数人がかりでやっと追い払えるような危険なものであるはず。今まで見てきた場所ではすべて教えられた通りの場所だった。ならばどちらかが間違っている。この場合、間違っているのはカルキノスである。

 

「おーい。聞こえてますかー。蛇さーん?」

 

「カルキノスは変な人間ですね。」

 

「なんでだよ。まあ、多少他とは変わってる自覚はあるしな。事実といえば事実か。」

 

「訂正します。カルキノスはかなり変わった人間です。」

 

「訂正すんな。・・・・・・ってあれ?俺お前に教えたっけ?」

 

「・・・・・・・・・・・・名乗りましたよ。」

 

「あれ、そうだっけ?いつ?」

 

「・・・・・・さっきです。」

 

「いや、さっきっていつだよ。」

 

「薬草を食べる前あたりです。」

 

「・・・・・・覚えてねぇ。」

 

「でも、言いました。」

 

確かに言われてみれば名乗った気もする。いや、名乗ったか?今日はこの蛇がいきなり喋ったり、笑わせてくるせいであんまり覚えてないんだよな。・・・・・・まあ、いいか。

 

「まあいいや。俺はカルキノスだ。お前は?」

 

「私はヒュドラといいます。この度は助けてくれてありがとうございます。」

 

「おう。気にすんな。今回助けたのはただの気まぐれみたいなもんだしな。」

 

カルキノスは知らない。今会話している蛇が数日前に洞窟で殴り飛ばした八つ首の怪物の本体であることを。カルキノスは成長してヒュドラとまた再会するまで一度も知ることはなかった。

 

 

 

「じゃあな。もう会うことはないだろうが次は怪我しないように気をつけろよ。」

 

「はい。」

 

少し歩く。すると後ろに気配を感じて振り返る。するとそこには蛇がいた。

 

「……何してんの?」

 

「進んでいます。」

 

「見れば分かる。まあ、たまたま道が同じこともあるよな。じゃあ今度こそじゃあな。」

 

そう言ってさらに歩く。蛇は後ろで同じくらいのスピードで進んでいる。立ち止まると後ろの蛇も止まり、走ると後ろの蛇も同じくらいのスピードでついてくる。

 

「なんでついてくるんだ?」

 

「ついていってはいけないのですか?」

 

「いや別に。」

 

「なら問題ありません。」

 

さらに十分後。ヒュドラはまだカルキノスの後ろをついてきていた。

 

このまま村行ったら間違いなく、元いた場所に戻してきなさいって叱られる!どうにか撒いて秘密基地まで隠れるか。

 

カルキノスは急に本気で走り出し、森の中を素早く駆けていく。時々木に飛び移って移動したり、川に飛び込んで反対側まで泳いで行ったりもした。

 

そんなこんなで30分ほどカルキノスは森中を駆け回っていた。そしてもうヒュドラがついてきていないことを確認した後にこっそりと秘密基地に入った。

 

「ここまでしたらあいつも追ってこれねぇだろ。流石に村の場所を教えるわけにはいかないし、秘密基地も教えたくないしな。」

 

「戻ってきたのですね。おかえりなさい」

 

「おーただい、・・・・・・ま」

 

驚きながら振り返る。するとそこには、小さな蛇の姿があった。

 

「・・・・・・はぁ。なんでいる。お前ついてきてたのか?」

 

「いえ、走り出してから少しは追えていたのですが距離はどんどんと離される一方でした。そのため、カルキノスの戻ってくる場所を計算し、ここに来た。というわけです。」

 

カルキノスは頭を抱えた。ヒュドラは真顔だった。いや、蛇の顔なんて分かんないけどそんな感じの顔をしていた。

 

「帰れ。」

 

「帰る場所がありません。」

 

「なんでだよ。昨日までどこで寝泊まりしてたんだよ。そこいけばいいだろうが。」

 

「なくなりました。」

 

「そんな急に!?」

 

「? 住処が無くなるなんて良くあることです。慣れています。」

 

「よくあるって、はぁ、お前なぁ。」

 

「何か間違えてしまったでしょうか。」

 

カルキノスは深いため息を吐いた。目の前の蛇は悪いやつには見えない。

けど怪しい。めちゃくちゃ怪しい。喋る蛇なんて初めて見たし、機械の残骸まで食うし、追い払ったはずなのに先回りしている。どう考えても普通じゃない。

 

「・・・・・・お前、本当はどこいくつもりだったんだ?」

 

「分かりません。」

 

「分かんないのかよ。」

 

「はい。」

 

ヒュドラはあっさりと自分の計画性の無さを認める。

 

「今までは見ていただけだったので。」

 

「見てた?」

 

「はい。」

 

「何を?」

 

「色々です。」

 

「全然答えになってねぇ。」

 

ヒュドラは少し考える。それから答える。

 

「人間。」

 

「人間?」

 

「はい。村や、そこに住む人。その生活を見ていました。」

 

「へぇ。そりゃなんで?」

 

「たまたま目についたので。」

 

この蛇は妙だ。言葉は知っている。話もできる。なのに妙なところで常識がどこかズレている。まるで本でだけで人間を学んだみたいな感じだ。いや、怪物が人間を知るすべなんて本ぐらいしかないか。

 

「じゃあ友達とかは?」

 

「いません。」

 

「家族は?」

 

「います。」

 

「いるんかい。」

 

「はい。育ててくれた人がいます。その人から色々なことを教わりました。」

 

「じゃあその人のところに帰れよ。」

 

「嫌です。」

 

「なんでだよ。」

 

「今はカルキノスの方が気になります。」

 

「怖いこと言うな。」

 

「?」

 

本気で意味が分かっていないらしい。カルキノスは再び頭を抱えた。

 

なんなんだこいつ。蛇なのに喋ったり、人間のことを知ろうとしたり。・・・・・・ん?人間のことを知ろうとする?なんで?

 

 

 

しばらく沈黙が流れる。秘密基地の中は静かだった。洞窟を冷たい風が通る。ヒュドラは秘密基地の中で顔を上げてじっとこちらを見ている。カルキノスは入り口に立ち考えていた。

 

こいつは危険だ。間違いなく今ここで殺しておくべきだ。それが確実なんだから。もし見逃して村が危険に晒されたらどうする』

 

自分の中の、『』がささやく。瞬間、自分の頭が不安や恐怖、殺意であふれる。

 

なるほど、それが一番簡単だな。『それなら今すぐにでもこの化け物を殺そう』。だが、この感情は俺のものじゃない。なら、冷静になってもう一度考える必要がある。『でもこいつは明らかに危ない。自分が危険に晒される。』確証もないことをギャーギャー喚くんじゃねぇよ。いいから、黙って見てろ『そう。』

 

 

 

 

 

 

「カルキノス?どうかしたのですか?」

 

「いや、何でもない。・・・・・・なあ、ヒュドラ。」

 

「何でしょう」

 

「お前さ。俺の秘密基地、誰かに言うか?」

 

「カルキノスが言ってほしくないのなら言いません。」

 

「絶対に、約束できるか?」

 

「はい。もちろんです」

 

その答えだけは妙に信用できた。

 

「……そうか。じゃあ今日だけだぞ。」

 

ヒュドラが固まる。

 

「今日だけ。」

 

「おう。」

 

「ここにいていいのですか?」

 

「一日だけな。」

 

「なるほど。」

 

ヒュドラは考え込む。

 

数秒後。

 

「では明日になったらもう一度許可を取ります。」

 

「そういう問題じゃねぇ。」

 

「違うのですか?」

 

「違う。」

 

「難しいですね。」

 

「人間社会はそういうもんだ。」

 

「勉強になります。」

 

カルキノスは思わず笑った。本当に変な蛇だな、こいつ。

 

その時だった。

 

ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。

 

大きな音が洞窟に響いた。カルキノスは周囲を見る。ヒュドラも周囲を見る。

 

数秒後。

 

二人の視線が合った。

 

「……お前か?」

 

「私です。」

 

「さっきあんだけ食っただろ。」

 

「はい。」

 

「なんで腹減ってんだよ。」

 

「分かりません。」

 

ヒュドラは少しだけ俯いた。

 

「……お腹が空きました。」

 

「それは聞けば分かる。」

 

「お腹が空いています。」

 

「二回言うな。」

 

「エネルギー不足です。」

 

「分かったから!」

 

カルキノスは笑いながら立ち上がった。

 

「仕方ねぇな。少し待ってろ。」

 

「どこへ?」

 

「飯探しだよ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「おう、お前も手伝えよ。お前の飯を探しに行くんだからな。」

 

「分かりました。ですが一つ伝えておかなければならないことがあります。

 

「なんだよ。」

 

「私はいつもこのようにお腹が空いているわけではありません。今は数日間食べていなかった分のしわ寄せが来ているだけです。」

 

「はいはい、言い訳はいいからさっさと行くぞ。」

 

「カルキノス。重ねて伝えたいことが」

 

「またか。さっさと言え。時間なくなるぞ。」

 

「大丈夫、すぐに終わります。・・・・・・あなたに感謝を。今この瞬間も。今までも多くのことをしてもらいました。本当にありがとうございます」

 

その言葉に、

 

カルキノスは小さく年相応の少年のような、優しい笑みを浮かべた。

 

「ほら、せっかくだから、この辺の美味い木の実とか魚色々教えてやるよ。ついてこい!」

 

「はい。教えてください。あなたの言葉で、あなたのことを。あの人も少しの寄り道くらいなら、きっと許してくれるはずですから。」




元々は原典通りの感じにしようかと思ってたんですけど二次創作なので自分の描きたいように描くことに決めました。
なので嫌な人はここで読むのをやめるのをおすすめします。

読んでくれてありがとうございます
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