レルネーの友   作:餅もち

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第十一話

♢♢♢♢♢

 

カルキノスが薬草と食べ物を持ってきてから数日。ヒュドラは当然のように秘密基地に居着いていた。最初は一日だけ。そう言ったはずだったはずなのに。

 

しかし翌日には来ていた。その次の日も来ていた。さらにその次の日も来ていた。そして、ついに今日はカルキノスが来た時にはもう、ヒュドラは秘密基地の中でくつろいでいた。

 

「おい、今までは仕方なく入れてたけどついに勝手に侵入してきたな。というかお前もうここに住み着いてるだろ。毎回俺が来た瞬間に『許可を貰いにきました』ってきやがって。つい面白くて入れちゃった俺も悪いけど。」

 

「許可を貰いにきました」

 

「だから、もう中に入ってんだろうが!」

 

「なるほど」

 

ヒュドラは一度秘密基地の外に出る。

 

「許可を貰いにきました」

 

「もう遅えよ!ったく、まあけど、いまさらか。仕方ないな、次からはちゃんと伝えてくれ。これからは許可取らなくていいからさ。」

 

「分かりました。カルキノスが来る直前に秘密基地から出て、挨拶することにします」

 

「まて、お前本当に住み着いてたのか?」

 

「はい。しかし、中のものには一切触っていません。安心してください。むしろ増やしています。」

 

「何やってんだよ。」

 

カルキノスは呆れる。だが追い出す気にはなれなかった。こいつは変な蛇だが悪い奴じゃない。それに話していて飽きない。何より、今までより森に行くのが楽しみになっている自分がいた。

 

 

 

 

その日も二人は森を歩いていた。カルキノスはきを登って赤い木の実を取ってきてヒュドラに差し出す。

 

「ほらよ。これ食ってみろ。」

 

「分かりました。・・・・・・甘い。ですね。」

 

「おっなら当たりだな。たまにこれめちゃくちゃ酸っぱいのがあるんだよなー。俺も食べるか。・・・・・・ハズレか。捨てよ。」

 

「捨てるのなら私にください。食べます。」

 

「いや、これめちゃくちゃ酸っぱいぞ?まあいいけどちょっとだけにしとけよ?」

 

「分かりました。・・・・・・なるほど。これが酸っぱい。」

 

ヒュドラは止まらず食べ進める。カルキノスはその姿に驚き、食べ切った時には思わず拍手をしていた。

 

「おー!すげえ。それよく食べれたな?基本酸っぱいやつは村でも食べ切れるやついないんだぞ。すごいなお前」

 

「前に食べたことがありました。なので平気です。」

 

「お前、今まで何食って生きてきたんだよ。美味しくないのは捨てた方がおいしいのたくさん食べれるぞ」

 

「世界を見て回る過程でさまざまなものを食べてきました。でも、これが一番美味しかったです。」

 

カルキノスはそうかと言ってかわいそうなものを見る目をした。ヒュドラが木の実を大事そうに食べるのを見て、子どもみたいだなと笑った。

 

「よしっ!じゃあ俺が美味しいもの沢山教えてやるよ!あと、食べ終わったら見せたいものがあるんだ。とっておきのもの見せてやるよ。」

 

「そうですか。ありがとうございます。」

 

「ははっ!軽いな。まあいいけどさ。じゃあ食べ終わったら秘密基地行こうぜ。」

 

「分かりました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

秘密基地に戻るとカルキノスは奥に隠していた獣の皮を数枚持ってくる。そして、洞窟の床に並べ始めた。動物の皮には絵が描かれていて、その姿は、脚が8本、大きな鋏が2つ、大きな甲羅のカニの姿だった。

カルキノスはしゃがみ込んでヒュドラに見せる。

 

「ほら、みてみろ。すごいだろ、これ俺が数日前からこっそり書いてたんだ。」

 

ヒュドラはしばらく見つめていた。そして小さく呟く。

 

「・・・・・・カニ?いえ、よく見るとところどころ獣の皮や骨、機械や武器で作られていますね。」

 

「そう!カニ型ロボットだ!しかも、これはただのカニ型ロボットじゃないぞ。めちゃくちゃ強いロボットだ!」

 

カルキノスは胸を張り、教える。

 

「前にお前と初めて会った時いただろ?あの継ぎ接ぎの機械の怪物。アレ見て思ったんだよな、機械で動くやつって面白そうだなって。だから作ってみたくなって設計図書いてみたんだよ!」

 

「なるほど。やはりカルキノスは変人ですね。」

 

カルキノスは苦笑して少し間をおいて話しだす。

 

「うるせぇよ。・・・・・・それで何だけどさ、一緒に作らないか?これ。」

 

ヒュドラは首を傾げる。

 

「なぜですか?」

 

「なぜってそりゃ、どうせ何かするなら友達と一緒にやりたいじゃん。村のみんなは森怖がってきてくれないしさ。」

 

「・・・・・・友達、ですか?なぜ?」

 

カルキノスは一瞬きょとんとして、当たり前のように言った。

 

「なぜって俺らもう友達だろ?」

 

その言葉を聞いてヒュドラの思考が止まった。

 

友達。

 

その単語の意味は知っている。本で読み、旅の過程で何度か聞くことがあった。見ることもあった。曰く、人間同士が仲良くなる関係、互いを助け合う存在。一緒にいて楽しい存在。

 

だが、自分には関係ないものだと思っていた。

 

「私たちは、友達、なのですか?」

 

「そうだけど?」

 

カルキノスは本当に不思議そうな顔をした。ヒュドラは少し迷ってから言う。

 

「ですが、私は助けられておきながら勝手についてきて、秘密基地にも、入りました。許可を取る前に侵入もしました。カルキノスにたくさん怒られてしまいました。・・・・・・そのため、嫌われているのでは、ない、かと、思っていました。」

 

「うん、まあ確かに勝手についてきて秘密基地の場所バレたのは最初確かにムカついてたな。」

 

「それなら、友達なんてなれないのではないのですか?それに、友達とは人間同士の関係のことではないのですか?」

 

一瞬秘密基地の中がシーンとなり、ヒュドラが思わず秘密基地から逃げたそうとしたところ、カルキノスが突然吹き出した。

 

「ブハッ!あははははははははは!!!お前そんなこと気にしてたのかよ!てっきりお前も友達だって思ってたからあんなことしてるのかと思ってたのに!嫌われてると思ってたとか!お前馬鹿だな!あはははははは!!!」

 

「笑いすぎです。それに、カルキノスも私に対して会う時いつも微妙な顔をしていたではありませんか。」

 

「あれはお前がいつも俺が秘密基地について入ろうとした瞬間に許可をとりにくるから出鼻挫かれてたからだよ!あはははははは!!!お前面白い面白いとは思ってたけどやっぱり今までで会ってきたやつのなかで一番面白いよ!嫌われてるとか、わざわざそんなこと気にしてたのかよ。」

 

「気にすることではないのですか?」

 

「少しは気にした方がいいけどそんなに気にすることじゃねえよ!」

 

カルキノスは笑いながら言う。

 

「俺さ、嫌いな奴を秘密基地に2回も入れたりしねえぞ?ましてや3回や4回なんて絶対入れねえ。そもそも俺ら最近毎日遊んでんじゃん!なら、もう友達だろ。」

 

その言葉を聞いて、ヒュドラはもう言葉が出てこなくてなってしまった。

 

胸の奥の何かが暖かい。知らない感覚だった。ヘラから与えられた知識にもない。旅の中で観察した人間たちの記録にもない。

けれど、不思議と嫌ではなかった。むしろ、もっと感じていたいと思った。だから、しばらく何も言えずにぼうっとカルキノスを見ていた。

 

「おーい?どーしたー?大丈夫かー?」

 

「・・・・・・いえ、大丈夫です。それで、・・・・・・あれ、何の話をしていましたか?」

 

「忘れたのかよ。ったく、じゃあ改めて、一緒に作ろうぜ。ロボット!」

 

「はい。やらせてください。なんでもします。」

 

カルキノスは返答の速さに驚きながら、満面の笑みを浮かべて、立ち上がる。

 

「じゃあ共同開発だな!」

 

「共同開発?」

 

「二人で作るってことだよ!」

 

「なるほど。二人で一緒に作るということですね。任せてください。」

 

「よし!じゃあまず素材集めだ!」

 

カルキノスは設計図を丸めて奥に投げ、勢いよく出口へ向かった。

 

「森行くぞ!」

 

その時。ヒュドラがカルキノスを呼び止める。

 

「待ってください。」

 

「ん?」

 

カルキノスが振り返る。ヒュドラは少しだけ考えてから尋ねた。

 

「友達とは何ですか?」

 

カルキノスは固まった。

 

数秒後。また、笑い出す。

 

「お前分かってなかったのかよ!」

 

「だって知識としてしか知りません。」

 

「ははは!マジか!」

 

カルキノスはしばらく笑い続ける。

 

ヒュドラは特に反応はなかったが、どこか不満そうだった。

 

「笑うところですか?」

 

「いや悪い悪い。」

 

カルキノスは涙を拭きながら言う。

 

「友達ってのはな。」

 

少し考えて、悩む。自分もそんなこと考えたことなかったな。いや、答えは簡単か。

 

「一緒にいて楽しいやつ。」

 

「楽しい。」

 

「おう。」

 

「それだけですか?」

 

「あと気になるやつ。」

 

「気になる。」

 

「困ってたら助けるし。」

 

「助ける。」

 

「なんか面白いことあったら教えたくなるし。」

 

「教えたくなる。」

 

「秘密基地も見せる。」

 

「秘密を見せる。」

 

「それで。」

 

カルキノスは笑った。

 

「また明日も会いたいなって思うやつ。」

 

ヒュドラは静かに聞いていた。そして、小さく呟く。

 

「なるほど。それなら、私はカルキノスの友達ですね。」

 

「おう。」

 

「カルキノスも私の友達です。」

 

「そうだな。」

 

カルキノスとヒュドラはお互いに顔を合わせるとほんの少しだけ笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢

「これが私たちが友達になるまでだよ。この時の記憶は今でも昨日のことみたいに思い出せるよ。いやーいい。めっちゃいいよ。」

 

「あぁ、思い出した。今思えばこの時言ってた育ててくれた人ってヘラ様のことだったんだな。そういえばお前っていつからヘラ様に育てられてきて、いつから旅してたんだ?」

 

「10歳ぐらいだったかな。それから一年くらい旅してたからこの時は11歳かな、多分。」

 

「まじか、お前俺の一個下だったんだな。まあ、お前ガキっぽいもんな。」

 

「悪口ばっかのカルキノスの方がガキだよ!カルキノスはもう17歳、いやそろそろ18歳になるんだから大人になった方がいいんじゃない?」

 

「何だと。俺に嫌われてると思ってたくせに毎日遊びにくるようなコミュ症のくせに。」

 

「あれはまだ子どもだったからだよ!それにカルキノス以外の人なんて関わってこなかったから実質家族以外の相手とは初めての会話だったし!」

 

「やーいコミュ症ぼっち!コミュ症ぼっち!」

 

「むきーーーーーーっ!!!」

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