レルネーの友   作:餅もち

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第十二話

♢♢♢♢♢

 

カルキノスとヒュドラの二人が改めて森に出発しようとした時、カルキノスがふとつぶやいた。

 

「なあ、ヒュドラ。」

 

「何ですか?」

 

「少し前から思ってたけどお前その喋り方堅苦しくね?」

 

「変なんですか?」

 

「いや、別に変ってわけじゃないけどさ。友達なのにその喋り方は固くねって思っただけだ」

 

「なるほど。・・・・・・友達であればもっと違う喋り方なのですね。」

 

「いや、必ずしもそうだって訳じゃないけどさ。あーなんていうかな。つまり、お前ともっと仲良くしたいってことだよ。まあ、その喋り方が良いってんならそのままでいいけどさ、友達なんだから楽に喋っていいんだぞ。」

 

「喋り方なんて気にしたことありません。これは育ててくれた人の喋り方を真似ているんです。」

 

「あっ、そうだったのか。まあ、喋り方なんて何でも良いしな。」

 

「・・・・・・ですが、・・・・・・友達なら、違う喋り方もありのようなので。・・・・・・こんな感じかな。違う話し方で話すのは慣れないけど、どうかな。」

 

「おっ良いじゃん。そっちの方が俺好きだぜ。話しやすいし。」

 

ヒュドラの胸の奥がまた、暖かくなった。ヒュドラは友達についてあまり分からない。でも、カルキノスに褒められたり、好きと言われたり、一緒にいると嬉しくなって、胸が暖かくなった。

 

「じゃあ、これからはこの喋り方にするね。改めて、よろしくお願いします。」

 

「ははっ!喋り方ちょっと戻ってるぞ。まあ、少しずつ慣れていこうぜ。よし、じゃあ行くか、素材探し。」

 

「そのことなんだけど、ちょっと設計図のことで話したいことがあるんだ。聞いてくれる?」

 

「いいぞ。遠慮しなくていいって言ったしな。なにかお前も付け足したい機能とかあるのか?」

 

「うん。それも何だけどそれ以上に大切なことがあるの。」

 

 

 

ヒュドラはそう言って秘密基地の中に入っていく。カルキノスも後ろを着いていく。そして、カニ型ロボット制作は開始早々に頓挫した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ、作るの無理だよ。ロボットにいらない機能が多すぎるよ。」

 

「いや、頑張れば出来るって!やってみないと分かんないだろ!」

 

「やる前に分かることもあるよ。ほら、もう一回このロボットについて説明してみて?」

 

「いいぜ、よく聞きな。まず空を飛ぶためのエンジンがついてて空を自由に飛べる!それに、鋏の力はどんなものもねじきる!それと中に入れば、中は家みたいになってて、洞窟の中のものを全部こっちに移してもうバレないようにする!脚の一本一本が変形して武器になったりビームを出したりもする!いつもは3mくらいの大きさだけど戦う時は山よりも大きくなる!他にも色々機能つけたかったけど流石に自重しといた。どうだ!すごいだろ!」

 

「うん、無理だよ。空を飛ぶのとか、ビームとか、中に生活空間を作るのならまだしもさ。変形して武器になる機能なんてカルキノスに必要なくない?それに何よりいきなり山より大きくなるなんて、どうやったって無理だよ。」

 

「うぐっ。でもさ、ロマンがあるじゃん?かっこいいし。」

 

「ロマンとかじゃなくてさ、どうやったって無理って言ってるの。それに設計図も絵しか描かれてないから寸法とか、何にもないし、こんなんじゃ何年たっても作れないよ。それに大きくなったり元に戻ったりって不可能だよ。」

 

「ぐぅ。・・・・・・仕方ない一から描き直すか。今のうちに言ってくれてありがとな。」

 

そう言ってカルキノスはとぼとぼと描き直すため設計図を拾おうとした手をヒュドラが止める。

 

「でも、確かにできたらかっこいいのは認める。だから、私が描いてあげる。」

 

「お前が?蛇なのにそんなこと出来るのか?」

 

「出来るよ!あの8つの蛇を作ったの誰だと思って・・・・・・今の無し。人間を見てるなかでそういうのが得意な人がいたから描けるようになったんだよ!だから、設計図は私が描いてあげる!・・・・・・まあ、流石にカルキノスのやりたいこと全部叶えるのは無理だけど。どう?」

 

「まじで!?めっちゃ助かる!俺に出来ることは何でも言ってくれ!いくらでも手伝うからさ!」

 

「おぉ、そんなに喜んでくれるなんて。でも、どうしても無理な部分はあるからね?あんまり期待しないでね?」

 

「大丈夫大丈夫!足りない機能は後から付け足していけばいいんだよ!さすがヒュドラ。俺の友達なだけはあるな!」

 

「・・・・・・大きくなったりは難しいけど、出来るだけベストは尽くすね。カルキノスの、友達、として。えへへ。」

 

「お前、可愛いところあるな。」浮気?付き合ってすらいないだろお前は出てくんな

「そう?嬉しいな。設計図作り、頑張るね。」

 

「おう、任せる。・・・・・・それじゃあおれは森で素材集めてくるから、その間に設計図は任せる。頼んだぞ。」

 

「任せて。全力で頑張るよ。」

 

「おう。・・・・・・あと、せっかくだし、ロボットの名前はお前が決めてくれ。俺はネーミングセンスないからよ。」

 

「えっ、いきなりそんなこと言われても」

 

「お前が決めなきゃロボットの名前は『カルキノス2号』だからな。」

 

「名前頑張って考えるね!」

 

「それでいいんだよ。よしっ、じゃあ行ってくる。」

 

「あっうん。いってらっしゃい。気をつけてね。」

 

 

 

 

 

それから数日間、ヒュドラは設計図を書き直し、機構を考えて、シミュレートし、出来るものは詰め込み、できないものもどうにかできないか何度も試したりしていた。そうやって、順調に設計図は進みついに完成させることが出来た。それでも、最後まで決まらないものがあった。

 

「・・・・・・名前、どうしよう。」

 

何十個も候補を考え、そのたびに何か違う気がして考え直していた。初めての友達と一緒に作るものだからすごい名前を考えたかった。しかし、そう考えているせいで全然名前は決まらなかった。そのため、カルキノスが帰った後もずっと秘密基地の中で悩んでいた。

 

「カルキノスは先に作ってから決めれば良いって言ってくれたけどやっぱり決めるなら早い方がいいよね。でも、どんな名前にすれば。カルキノスに聞いても自分で決めろの一点張りだし。うぅ。本当にどうしたら」

 

そうやってヒュドラが悩んでいると、洞窟の入り口に誰かが立っていた。

 

「あれ?カルキノス何か忘れものでもしたn」

 

「久しぶりですね、ヒュドラ。元気にしていましたか?」

 

「わあ、お母さんだったんだね。久しぶり?いや、一ヶ月前に会ってたっけ。・・・・・・あれ、どうしたの?」

 

ヘラは固まっていた。ほんの一瞬だけ言葉を失いヒュドラを見ていた。

 

「・・・・・・今、なんと?」

 

「どうしたのーって聞いてたよ」

 

「いえ、その前です。その前に貴方は私を何と呼びましたか。」

 

「え?お母さんって言ったけど?あっもしかしてこの話し方おかしかったりする!?カルキノスからは可愛いって言ってもらえたんだけど」

 

ヒュドラは蛇の身体を揺らしやっちゃったよー、どうしよー、と焦っていた。しかし、それ以上にヘラも驚いていた。今までヒュドラは自分のことを『ヘラ様』としか呼ばなかった。喋り方も私を真似ていることは知っていた。外の世界へ出して一年経つがこの子が変わることは無かったのでてっきり変わらないものだと考えていた。だからこそ、この一言、この変化がヘラをとても驚かせた。

 

「うー、やっぱりおかしいのかな。・・・・・・でもカルキノスが好きって言ってくれたから変えたくないんだよね。そういえばお母さん、全然喋らないけど大丈夫?」

 

「(いえ、これは変化というよりも成長、というのでしょう)いえ、・・・・・・少し驚いただけです。」

 

ヘラはゆっくりと優しく微笑むと、ヒュドラの隣に座る。

 

「急に呼び方が変わりましたね。それに喋り方も。何か心境の変化でもあったのですか?」

 

「あのね、友達ができたの。カルキノスっていってね。それで、カルキノスと話してる時に家族の話になったんだ」

 

 

 


 

「そういえばヒュドラって、育ててくれた人いるらしいけど、どんな人なんだ?というか親って・・・・・・いや、すまん。何でもない。育ててもらったってつまりそういうことだよな。悪い。」

 

「気にしなくていいよ。私は生まれてすぐに産み捨てられたらしくて、気づいた時には森の中でね。森の中の色んなものを食べて暮らしてる時にその人と出会ったんだ。なんで拾ってくれたのか分からないけど私はとっても感謝してるの!それからその人に育ててもらって色んなものをもらったり、教えてもらったりしたんだ」

 

「へえ、そうなんだ。じゃあお前の育ての親はその人なんだな。その人って女の人?男の人?」

 

「その人はね、とっても綺麗な女の人だよ。」

 

「なるほど。じゃあその人がお前のお母さんなんだな。」

 

「お母さんって何?」

 

「そんなことも知らないのか、まあ俺もよく分かんないけど自分のことを育ててくれたならその人はお母さんなんじゃないの?」

 

「そうなんだ。今度会った時に呼んでみようかな。」

 

「良いんじゃねえの。多分喜んでくれるだろ。」

 


 

「だからお母さんって呼んでみた。喋り方はカルキノスと話してるのに慣れちゃって。嫌だった?」

 

「・・・・・・」

 

ヘラは少しだけ目を伏せた。しかし、すぐに顔を上げて答える。

 

「いいえ、嫌ではありません。むしろ、嬉しく思います。」

 

「本当!?やったぁ!じゃあこれからはお母さんのことお母さんって呼ぶね!」

 

わーいわーいとヒュドラは無邪気に喜んでいる。それを優しく見ながらヘラは思う。

昔の自分なら、いや、今でも、その呼び方を訂正するべきだと分かっている。あの子はあのヘラクレスを殺す為の道具。その為にネクタールを飲ませ、アンブロシアを食べさせ、元々持っていた不死を強くし、毒草などの毒を食べさせ毒を強くしたり、あの巨神の欠片を取り込ませたりもした。あの子の生来の頑丈さが無ければ今頃死んでいたことは考えるまでもない。今までそうやってきた。外に出したのだってあの山ではもう、隠し通すのが難しくなり、地上に放り出したのが原因だ。それなのに、それを少しも恨まず、更に母と呼ばれてしまっては、距離をとるのは出来なくなっていた。

 

本当は今すぐアレを殺しにいきたいところですが、今日はいいでしょう。今はこの子と話をしなければいけません。

 

「ヒュドラ。良い出会いがあったのですね。」

 

ヒュドラは一瞬考えてカルキノスのことだと分かる。

 

「うん!私の初めての友達で、一番大切な人だよ!」

 

ヘラはそれを聞いて目を細める。

 

あぁ、本当に変わった。子どもは親の知らないうちにいつの間にか成長しているものなのですね。少なくとも昔のヒュドラなら、こんなに楽しそうに笑うことなんてなかったから。

 

「ですが、一つ忠告を。あの少年、カルキノスの中には最も古い『魔』が存在しています。私だけでなく、ゼウス、果てにはカオスですら、彼の内の存在には下手に手出しが出来ません。なぜ、彼の内側にそんなものがいるのかは分かりませんが注意はしておいてください。・・・・・・まあ、アレがいることが観測できているという時点でおかしいのですが。一応、彼の内には危ない存在があるということだけは理解しておきなさい。」

 

「そうなんだ。一応頭の片隅に入れておくね。」

 

「ええ、そのくらいで良いでしょう。・・・・・・さて、あまり楽しくない話はここまでにして、貴方のことを教えてください。最近どうですか?」

 

「えっとね、最近はね、・・・・・・」

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