♢♢♢♢♢
今日も今日とて、カルキノスは早朝から秘密基地に向かっていた。そして秘密基地に到着した途端、目にも止まらぬ速さで何かがカルキノスに突進してくる。カルキノスは咄嗟に右に避けるがそれはカルキノスを通り過ぎる直前に右に方向転換してくる。
「・・・・・・・・・・・・は?」
バーーーーン!!!という大きな音と共にカルキノスは洞窟の外に弾き飛ばされ、木にぶつかる。
「痛え、なんだ今の。とりあえず逃げるか。」
カルキノスは傷だらけで立ち上がり、走りだす直前、胸のところから声が聞こえてきた。それは張り付いた蛇。つまり、ヒュドラだった。
「・・・・・・おい、お前いきなり何しやがr」
「カルキノス!!!出来たよ!!!」
「人の話聞いてんのか。何しやがr」
「オピスの名前!!!何だと思う!!!やっと思いついたんだよ!!!話したくて話したくてたまらなかったんだよ!!!」
「だから!人の話を聞きやがれ!!!」
カルキノスがヒュドラをぶん殴るとヒュドラの首が消し飛ぶ。しかし、すぐに元に戻るとヒュドラは止まらず話し続ける。
「もう!いきなりなんてひどいよ!でも許してあげる!友達だから!ほらほら!オピスの名前は何だと思う!?」
「は?いや待て今お前。・・・・・・まあいいか。とりあえずそのバカ丸出しの質問をやめて離れろ。うるせえし。」
「えー!なんでなんで!早く答えてよー!答えるまで離れないからね!」
「はあ、・・・・・・オピスだろ。」
「すごい!なんで分かったの!?カルキノスもしかして昨日見てたの!?」
「さっきっからお前自分でオピスって言ってるだろうが。とりあえず深呼吸して落ち着け。はい、吸ってー、はいてー、もっかい吸ってー、はく。どうだ?」
「すーー、はーー、すーー、はーーーー。・・・・・・・・・・・・落ち着いたよ。恥ずかしいところ見られちゃったね。」
「ほんとにな。というかさっきの突撃ほんとに気をつけろよ?咄嗟に受け身取れてなかったら死んでたからな?」
「大丈夫だよ。カルキノスは死なないから。・・・・・・よし、じゃあ改めて、おはようカルキノス。良い朝だね。」
「普通に死ぬわアホ。・・・・・・はあ。おう、おはよ。今日も元気だなお前は。」
「もちろん!カルキノスといる時はいつも元気だよ!・・・・・・それで何だけど、どうかな?」
「何が?」
「その、名前。オピスって変じゃない?」
「俺が変って言うと思うか?」
「思う。カルキノスは遠慮とかしないから。」
「確かに言うけど、良いものはいいってちゃんと言うぞ?・・・・・・何でオピスなんだ?」
「えっとね。オピスってカニ型でしょ?だから名前は私を表すようにしたくて。だから蛇って意味のオピスにしてみた。どう?」
ヒュドラがそう言ってからしばらく、カルキノスは黙っていた。それを見ていてヒュドラはどんどん不安になっていく。
「えっと、・・・・・・変だったら言ってね。もう一回考えるから。」
「・・・・・・」
「うぅ、・・・・・・何か反応してよぉ。」
カルキノスはジッとヒュドラを見ていた。ヒュドラはそれを見てどんどん不安になっていく。ヒュドラが縮こまって今にも泣き出しそうになる直前、カルキノスから笑い声が聞こえた。
「あははっ!悪い悪い。でもこれはさっきの仕返しだからな。ちゃんと反省しろよ。」
「もうっ!本当にびっくりしたよ!泣き出す一歩手前までいってたからね!・・・・・・でも、たしかに強くぶつかりすぎたかも。ごめんなさい。」
「おう、最初から謝れば許して終わるんだから悪いことしたら謝れよな。ったく、・・・・・・俺はいいと思うぜ。」
「・・・・・・何が?」
「名前だよ名前。オピスだっけ?たしかに単純だけど、俺たちらしくていいじゃん。カニの身体で蛇の名前。・・・・・・うん。悪くない。」
「そっか。よかったぁ。変って言われたらどうしようかと」
「そんなに心配してたのかよ。バカだなお前。」
「だってここ数日ずっと考えてたんだもん。仕方ないじゃん。カルキノスは相談には乗ってくれるけど案は出してくれないし」
「俺も案は出してたぜ。カルキノス2号っていう案をな。」
「それは嫌。」
「即答かよ」
「絶対嫌、かっこよくないし。私の要素がない。」
「ひでぇな。まあ、俺もふざけて出した案だけどよ。」
二人は笑い合い、朝の森に声が静かに響いていった。
「よし、これで名前も決まった。設計図は━━━」
「もう出来てるよ!」
「オーケー、それなら後は作るだけだな」
「うん!それじゃあ始めよっか!」
「あぁ、オピス作り開始だ!やるぞーー!」
「おーーー!」
こうしてカルキノスとヒュドラによるカニ型ロボット『オピス』の制作が始まったのであった。
♢♢♢♢♢
「こんな感じでオピス作りは始まったんだよ。いやー懐かしいね。」
「・・・・・・ヒュドラ。」
「どうしたの?あっ、少し休む?頭整理する時間欲しいって言ってたしさ。よしっここでとりあえず終了に」
「待て。もう、だいたい思い出した。これからオピスを作っていって色んな動物から素材を集めて、時々失敗しながら進めていって、やっと完成したんだっけ。」
「うん!カルキノスは作る途中でさらに何か足そうとしたり、作り替えようとしたりで大変だったんだよ!」
「そうだったな。それで完成させた後・・・・・・何があったんだっけ?その後がなんか思い出せないんだよな。ヒュドラは分かるか?」
「・・・・・・どうだったかな?いまいち思い出せないや。分からないことはこれから思い出していけばいいんだよ!だから今日はここまでに」
「ダメよ」
その声が聞こえた瞬間二人のいる場所は一瞬にして闇に包まれる。そして見えるようになると二人は夜の花畑にいた。
そしてその中心には黒い人影。カルキノスより少し小さな身体の人型の黒い塊がいた。
「え?なんで?まだ寝てるはずなのに。ってヤバ!今日はこれで終わりにするから!今は困る!明日にして!」
「ふふふ。カルキノスの声がするからつい早めに起きてしまったわ。・・・・・・久しぶりね。カルキノス。」
「・・・・・・」
「どうしたのかしら。久しぶりの再会なのに、もしかして驚きのあまり固まって」
「えっと、・・・・・・お前誰?」
「え?」
人影は一瞬にして凍りつく。そしてしばらくするとヒュドラが笑いだす。
「あはははは!!!ドンマイアr「黙れ」」
ヒュドラは一瞬にして潰れて地面のシミになる。そして人影はふらふらしながらカルキノスに近づいていくと、カルキノスの一歩手前で躓く。カルキノスは思わず受け止めると人影はゆっくりと、喋りだす。
「・・・・・・本当に分からない?いや、分かるわよね。カルキノスは意地悪なところがあるもの。ふざけて言っただけよね。そうと言って、おねがぃ。」
人影の声はどんどんとか細く、弱々しくなっていき、やがて何も喋らずにこちらをすがりつくような顔でこちらを見ていた。いや、真っ暗で顔見えないんだけどそんな気がする。
「すまん。本当に分からん。ほんとに俺ら知り合いか?」
「・・・・・・ふぇ」
その一言を最後に人影は消えて、視界が真っ白になる。その直前に人影の方を見てみると黒が剥がれてポロポロと涙をながす少女が見えた。そうして洞窟、いや、秘密基地に戻る。
「・・・・・・うーん。顔は最後に見れたけど結局誰かは分からずじまい。まだ思い出してない部分を思い出せば分かるのか?」
そういった直後、瞬きをしたその後にはまた花畑にいた。そこではヒュドラが無惨なバラバラ死体になっており、さっきの人影が目の前にいた。
「それよ。あいつがカルキノスの記憶の私の部分に細工をして思い出せなくしてたからだわ。しかも、私が寝ているうちに自分の記憶だけ見せるなんて。てっきり全部見せたのかと思ってでてきちゃったじゃない。そのせいでこんな思いをすることになったのよ。本当に許せないわ。」
「なるほど。だからさっきヒュドラのやつ、あんなに焦ってたのか。つまりお前も俺の知り合いなんだな。」
「知り合いなんてものじゃないわ。だって私は貴方のものだもの。」
「は?どういう」
「私は貴方の目であり、耳であり、血であり、肉であり、力・・・・・・は関係ないわね。そして友であり、家族であり、
「どういうことだ?目であり、血?肉で友?家族で相棒?なんかのナゾナゾか?」
「ふふふ、思い出せば分かることよ。ほらほら私の手を握ってみて。」
そういって人影は手を差し出す。カルキノスは手を差し出すと引っ張られて花畑に落ちる。そして落ちながら二人は話す。
「おわぁ!なんだここ!?地面あったのに落ちたんだけど!?・・・・・・いや、なるほどな。」
「驚いてくれて嬉しいわ!あいつが二人で記憶を思い出すなら私も貴方と二人で行くことにしたのよ!けど、もう大体思い出したみたいだから出会いと滅び、私達の出会いと貴方の村の滅びの二つね!」
「・・・・・・いや、もう思い出しちゃったよ。全部。」
「・・・・・・・・・・・・え?」
落下が止まり、花畑に戻る。そしてそこでは満面の笑みで出迎えるヒュドラの姿があった。
「わあ、おかえり!二人でどこかに行っちゃって寂しかったよ!でもこんなにすぐに戻ってきてくれるなんて優し」
言い終わる前に再びヒュドラは地面のシミになる。そして、すぐに再生する。
「ひどいよ。不死だからって痛くないわけじゃないんだからね。」
「死になさい」
ヒュドラは再び地面のシミになる。そして再生し、
「もう!いきなりはひど」
「死になさい」
「死になさい死になさい死になさい死になさい死になさい死になさい死になさい死になさい死になさい死になさい死になさい死になさい死になさい死ねっ!」
ヒュドラのいた場所が完全に消し飛んだ頃、人影は再びカルキノスに顔を向けると息を整えて話をする。
「ふう。よしっ、これくらいすればしばらく出て来れないはず。・・・・・・改めて、久しぶりね、カルキノス。記憶が戻ったって本当かしら?」
「あぁ、戻ったと思うんだが、まさか五年のうちにこんなに変わるとはな。驚いたよ。」
「ふふふ。私も成長するってことね。嬉しいわ。それじゃあ約束、覚えてくれてるかしら。」
「そうだな。
ただいま、『アルカ』」
黒の塊、・・・・・・いやアルカは感極まったように震えて、それからゆっくり微笑む。
「・・・・・・・・・・・・ふふふっ。・・・・・・ええ、おかえ「おかえり!カルキノス!」り、なさ・・・・・・」
「これでカルキノスも完全復活だね!ねえねえ明日から何する!私はねーヒュドラ2号から8号までの改良をしたいんだ!カルキノスはどう!?」
「あー、そうだな。たしかにやりたいことは沢山あるが、とりあえずお前は怒られてこい。」
「え?一体どういう」
ヒュドラが後ろを振り向くと視界は黒く染まった。反射的に逃げ出そうとするが、足が動かない。いや身体の全てが動かせなくなっている。
「許せないわ。もう、絶対に許せない。一度ならず二度三度と私とカルキノスの再会の邪魔をして。よりによって約束してたことも途中で割り込んで。身体のある貴方に多少は譲ろうと思ったけどダメね。貴方には後悔させてあげる。」
あっマズイとヒュドラが考えた時にはもう遅かった。
「でもとりあえず貴方を殺して封印して、ここに放置してからにするわ。・・・・・・はいこれでおしまい。」
そう言った時にはヒュドラの身体の全身に長い金属の棒が突き刺さり、顔まで刺さっていたので再生しようにもできなくなっていた。
「これでよし。・・・・・・それじゃあカルキノス。今日は一緒に寝ましょうか。」
「いいけどとりあえずその闇祓ってくれ。見えにくい。」
「あ、そういえばつけたままだったわね。・・・・・・そうね、貴方が祓って。出来るでしょう。」
「えーめんど「はやくして」はいはい、ったく仕方ない。」
そう言ってカルキノスは人影、いやアルカに近づくと闇に噛みつく。そして少しずつ削っていき、やがてアルカの姿が見えてくる。その姿は黒い髪に黒いナニカを纏った美しい少女の姿だった。
「・・・・・・もうちょっと削らなくていいのかしら?」
「それ以上だとお前のこと噛みつくことになるだろうが」
別にいいのにとアルカは呟くがカルキノスは聞こえないふりをする。そして、アルカが指を一振りすると花畑の中心にキングサイズの大きなベッドが現れる。アルカはゆっくり歩いてベッドに飛び込むとカルキノスを誘う。
「ほら、カルキノスも一緒に眠りましょ。」
「そうだな。なぜかこっちで寝ると普通に寝るより疲れ取れやすいしな。じゃあおやすみ。」
「ええ、おやすみカルキノス」
そう言ってカルキノスは眠りにつき、アルカは寝ているカルキノスに寄り添うようにして眠りにつくのだった。ヒュドラを置いて。