異世界に転生したら俺が二人になってた。【新生】   作:鳩夜(HATOYA)

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第11話 シャドウナイト

 俺達は小さな穴を抜け、分岐路へと戻った。

 

「……もう一つの道、行こう」

「はい。ここまで来たら、戻る理由はありません」

 

 言葉にした瞬間、胸の奥がざわついた。

 理由は分からない。ただ――嫌な予感だけが、はっきりと存在している。

 

 しばらく進むと、不自然なほど整った長方形の入り口が見えてきた。

 

「……また、か」

「前に閉じ込められた場所と似ていますね」

 

 前回とは比べ物にならない悪寒が背筋を這い上がる。

 ここにいる。

 そう直感するには十分すぎるほどの圧だった。

 

 俺達は深く息を吸い、同時に踏み出した。

 

・・・

 

 内部に入った瞬間、空気が変わった。

 

 冷たい。

 重い。

 まるで呼吸そのものを拒絶されているような感覚。

 

 背後を振り返ると、瘴気が壁のようにせり上がり、退路を完全に塞いでいた。

 

「……逃げ場、なしですね」

「ああ。腹くくるしかない」

 

 視線を前に戻した、その時だった。

 

 玉座。

 漆黒のそれが、部屋の奥に鎮座している。

 

 そして――

 その脇に、一本の剣が突き立てられていた。

 

「……剣?」

 

 次の瞬間、剣を中心に黒い瘴気が渦を巻き始めた。

 

「ネビア、来るぞ!」

 

 瘴気は爆発するように四散し、視界を覆い尽くす。

 一瞬、何も見えなくなる。

 

――ガシャン

 

 重い金属音。

 

 瘴気が晴れた先に立っていたのは、人型の影だった。

 全身を覆う漆黒の鎧。

 そして、先ほどの剣を手にしている。

 

 その存在感は、今までのシャドウとは明らかに違う。

 

「……シャドウナイト」

 

「……っ、底が……見えません……!」

 

 ネビアの声が震えている。

 俺自身も、喉がひくりと引き攣った。

 

「大丈夫だ。やることは変わらない」

 

 そう言い聞かせるように、ネビアの背を叩く。

 

「……先手必勝だ」

 

・・・

 

 ネビアが光の玉を展開し、即座に魔法陣を描く。

 

(ネビア)――ウインドスピア×4

 

 放たれた風の槍は――

 シャドウナイトが剣を一振りしただけで、霧散した。

 

「な……っ!」

 

 剣の一撃。

 それだけで、魔法が“消えた”。

 

「ネビア、全力だ!」

 

 ネビアは歯を食いしばり、[アイススパイク]を二つ同時に展開する。

 

 だが――

 一つは避けられ、

 もう一つは、剣で魔法陣そのものを突き砕かれた。

 

 直後、黒い半月状の剣気が放たれる。

 

「ネビア!」

 

 俺は咄嗟に前へ出て、魔装魂に限界まで闘気を込めた。

 

 ――ドンッ、ドンッ、ドンッ!

 

「ぐ……ッ!」

 

 防いだ。

 だが、衝撃が骨まで響く。

 

 これは……剣技か?

 

 違う。

 

 攻めでも、守りでも、受け流しでもない。

 型が存在しないのに、完成している。

 

 理解できない。

 だから、怖い。

 

 シャドウナイトが剣を掲げる。

 剣の周囲に、瘴気が渦を巻く。

 

「……最悪だ」

 

 瘴気の中から、赤いシャドウウォーカーが次々と現れた。

 

「雑魚を先に!」

 

「はい!」

 

 俺は[ブレードブラスト]を連続で放つ。

 三発目で、木剣が音を立てて崩れ落ちた。

 

「くそ……!」

 

 ナイフに持ち替えた、その瞬間。

 

 シャドウナイトが動いた。

 

 狙いは――ネビア。

 

「――ッ!」

 

 《閃光脚》で割り込み、庇う。

 

 だが。

 

「……重い……!」

 

 直後、背後で声にならない悲鳴が上がった。

 

 振り返った瞬間、視界が歪む。

 

 ネビアの右脚が――なかった。

 

「ネビア!!」

 

 その一瞬の隙。

 

――ザンッ!!

 

 胸を貫く衝撃。

 咄嗟に身体を捻り、致命傷は避けたが、膝が崩れ落ちる。

 

 シャドウナイトが、剣を掲げる。

 

 終わりだ。

 

 そう思った瞬間、走馬灯が流れた。

 

 ネビアと二人で苦労しながら魔法を覚えたことや修行の日々……

 

 それは社畜の頃ではなく……

 ネビアと過ごした日々ばかりだった。

 

「……フィアン……手を……」

 

 震える声。

 

 俺は、力の入らない手でネビアの手を握った。

 

「……ありがとう……」

 

「……こちらこそだ……」

 

 抱きしめる。

 

 そして、意識が――闇に沈んだ。

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