異世界に転生したら俺が二人になってた。【新生】   作:鳩夜(HATOYA)

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第2話 本格的な魔法修行

 気がつけば、俺とネビアはもう三歳になっていた。

 

 赤ん坊だった頃と違い、身体はしっかり動くし、魔力の扱いも少しずつ慣れてきた。

 ……そして俺以上に慣れてきたのはネビアだ。

 

 あれは二歳の頃だ。

 

「フィアン、見ててください」

 

 ネビアが指先に意識を集中した瞬間、空中に細い光の線が描かれた。

 ぐるりと円を描き、複雑な文様を滑らかに繋げていく。

 

 ──ライトペイント。

 

 魔力を指先から光として放出し、空中に描く魔法だ。

 

「……早っ!? ネビア、それもうできんのかよ!」

 

「なんとなく、です。フィアンもすぐできますよ」

 

 そう言われて頑張ったが、どうしても線がぐにゃる。

 魔力の均一化が難しい。

 

 結局、俺がライトペイントを習得できたのはネビアより一週間遅れてだった。

 

 同じ双子なのに結構な差があるのは、少し悔しかった。

 

 そしてその日から──

 一年間、俺たちはライトペイントに全力を注いだ。

 

 指先で描くだけじゃなく、光の玉を“切り出して”浮かべたり、複数を動かして線を描くなど、手段の研究も続けた。

 

 結果。

 

「見てろよネビア、これが俺の新技だ!」

 

 指先から三つの光の玉を切り出し、それぞれ別の軌道で同時に円を描く。

 線の太さ、濃さ、角度──すべて自由自在だ。

 

「すごいです……フィアン。描く速度が速いですね!」

 

「へへっ。負けねぇからな!」

 

 魔法の才能はネビアが上だが、努力と根性で俺もなんとかついていく。

 

 そんなある日。

 

「フィアン、今日もこれ見ましょう」

 

 ネビアが分厚い本を抱えてきた。

 『世界三大言語〜生物言語編〜』という難しそうなタイトルだ。

 

「……またこれか? 文字、まだ全部読めねぇぞ」

 

「挿絵が多いので大丈夫です。読めないところは父さんが教えてくれます」

 

 言われて本を開くと、確かに見やすい。

 生き物の絵と、その言語の成り立ちが描かれていた。

 

 この世界の言語は大きく三つ。

 

・生物言語(いま俺たちが喋っている共通語)

・魔導語(魔法に特化した旧語)

・武道語(気・闘気系の古語)

 

 生物言語はどこでも通じるらしい。ありがたい話だ。

 

 分からない部分はゼブに聞き、少しずつ読み進めた。

 

・・・

・・

 

 そうして数ヶ月後──

 

「では行ってくるわね! 二人とも、何かあったらお隣のおばさんに言うのよ!」

 

 ティタとゼブは出かけていく。

 

 本来、三歳児だけを置いていくのは普通ではない。

 でも……

 

「母さん、たまには息抜きしてきていいですよ。僕たちは大丈夫です」

 

 ネビアの言葉が決定打になり、外出が増え、最終的には二人で仕事に行くようになった。

 

 そして俺たちは、完全に“自由時間”を手に入れた。

 

「よし、修行だ!」

 

「行きましょう、フィアン!」

 

 俺たちは裏庭から森へ抜け、少し進んだ開けた場所へ向かう。

 そこが魔法修行の秘密基地だ。

 

「ちゃんと持ってきましたよね?」

 

「もちろん!」

 

 俺は大事に抱えていた本を掲げた。

 

 『魔法教本 水・火編』

 

 数ヶ月の語学修行のおかげで、文字は完璧に読める。

 ついに本格的な魔法の勉強だ。

 

「火は危ないので今日は水魔法ですね」

 

「了解!」

 

 まずは見習い級──ウォータースプラッシュ。

 

 本に描かれた魔法陣をライトペイントで写し取り、魔力を流す。

 

 ぱしゃっ──!

 

 魔法陣から水が勢いよく噴き出した。

 

「すげぇ……ホースみたいだな!」

 

「この調子で他の魔法もやってみましょう!」

 

 テンションの上がったネビアはページをめくり、

 

・ウォーターボール(球状の水)

・ウォーターバレット(射出する水弾)

 

 と次々挑戦する。

 

「うわっ、ネビア……ウォーターボールでかくない?」

 

「頑張りました!」

 

 俺の二倍。威力も倍。

 ……悔しいが、魔法は完全にネビアの方が上だ。

 

 

「ネビア、同時に光の玉何個だせる?」

 

「七個です!」

 

 手のひらから七つの光の玉が生まれ、同時に舞う。

 ネビアは本当に天才だ。

 

(絶対追いつく……!)

 

 夢中で練習していると──

 

 ふと空が赤い。

 

「ネビアやばい。暗くなってる!」

 

「えっ!?」

 

「帰るぞ!!」

 

 俺は全力で走った。

 しかしネビアはすぐ息が上がり、置いていってしまいそうになる。

 

「乗れ!」

 

「ありがとう、フィアン!」

 

 俺の背に飛びつくネビアを乗せて、さらに加速。

 家に戻ると両親はまだいなかった。ギリギリセーフだ。

 

 ……と思った矢先。

 

「ただいまー……って、ネビア!? 息切らしてるじゃない!」

 

「しかも服がびちゃびちゃよ!!」

 

 ティタの怒号が飛んだ。

 

 その後、俺たちは問答無用で服を脱がされ、風呂へ直行。

 この家の風呂は暖炉の熱を通した小屋にあり、木製の湯船が心地よい。

 

「はー……生き返るなぁ……」

 

「相変わらずおっさんみたいなことを言いますね、フィアン」

 

「今日の走り、すごかったですね。フィアン全然息が切れていない……」

 

「へへっ、体力勝負なら負けねぇよ」

 

「また背中に乗せてくださいね」

 

 そんな会話をしながら湯船に浸かり、外気にあたりながら身体を拭く。

 

「フィアン、明日は火の見習い級を試しませんか? 水魔法で消せば安全ですし」

 

「おっ、いいな。二人がいつも通り外出してくれることを願おうぜ」

 

 こうして俺たちは夕飯を食べ、眠りについた。

 

 ──明日も、もっと強くなるために。

 

 試練の期限、六歳まであと三年。

 やれることは全部やるつもりだ。

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