異世界に転生したら俺が二人になってた。【新生】 作:鳩夜(HATOYA)
数日後、家の中は朝からどこか慌ただしかった。
「二人とも、今日は帰りが遅くなるわ」
ティタはそう言いながら、普段着ではなく革と鉄板を組み合わせた防具を身につけていた。
いつもより動きやすそうで、同時に戦う人の装いだ。
「今日はどこに行くの?」
俺がそう聞くと、ティタはくるりと一周してみせる。
「いつものお仕事よ。少しだけ、危ない場所ね」
「ティタ、その姿はいつ見ても可愛いよ」
ゼブが間髪入れずにそう言うと、ティタは照れたように肘で小突いた。
――いや、革鎧だよな?
横でネビアも同じ顔をしている。
「じゃあ、僕たちも森へ行ってきますね」
ネビアがそう言って外へ向かおうとすると、
「テントの場所よね? そこまで一緒に行きましょうか」
ティタが荷物を担ぎながら言った。
正直に言えば、今日は“ついてこられると困る日”だったが、断る理由もない。
俺とネビアは顔を見合わせ、揃って頷いた。
こうして俺たちは、両親と一緒に森へ向かった。
・・・
しばらく歩いたところで、テントに到着。
ゼブとティタは俺たちを置いてさらに先へ進む。
「ゼブ、ダンジョンはここから先よ」
ゼブの視線の先には、瘴気が濃く漂う一角がある。
――ダンジョン。
俺とネビアは、無言で視線を交わした。
ここに、シャドウナイトがいる可能性がある。
目的は一つ。
場所を知ること。
俺たちはしばらくしてから小さく息を整え、闘気を薄く広げた。
柔型中級剣技――シャドウウォーク。
存在感を限りなく薄め、気配を森に溶かす。
ネビアも同じように魔力を抑え、俺の背後についた。
・・・
ゼブたちは、シャドウをいくつも倒しながら進んでいった。
ティタの剣は鋭く、ゼブの触媒紙は正確だ。
だが――俺が倒した五メートル級のシャドウは、まだ姿を見せない。
やがて、瘴気はさらに濃くなった。
息が少し重い。
視界も、どこか歪んで見える。
その先に、崩れかけた洞窟があった。
「モトゥル、カレナ! いるか?」
ゼブの声に応じて、洞窟の影から二人が現れた。
小柄だが岩のようにがっしりしたドワーフ族の男――モトゥル。
そして、白い肌のエルフ族の少女――カレナ。
「来てくれて助かるわ」
ティタはカレナを抱きしめ、カレナは少し照れたように笑った。
四人は短い打ち合わせを終え、洞窟の中へと入っていく。
――俺たちは、これ以上近づかず、息を潜めて見送った。
・・・
・・
・
・
――森のダンジョン内 ゼブパーティ
「よし、しっかりついてくるんだぞ」
モトゥルが先陣を切り、斧を構える。
「瘴気が濃いな……」
ゼブが呟く。
村を覆う瘴気は、ここでは明らかに別物だった。
[浄化の光]の外に一般人が出られない理由が、肌で分かる。
「四人で潜るのは久しぶりね」
ティタは少し楽しそうに笑った。
その時だった。
「――来るぞ」
モトゥルの低い声と同時に、巨大な影が前方に現れた。
五メートル級。
黒い瘴気に覆われたコアが、はっきりと見える。
「入口でこのサイズか……!」
モトゥルが斧を振るい、コア周辺の瘴気を削ぐ。
「ゼブ!」
「ああ!」
触媒紙が弾け、氷の槍が突き刺さる。
――バリンッ!
コアは砕け、シャドウは消えた。
だが、全員の表情は硬い。
「まだ序盤よ」
「油断できないな」
ゼブはその場に[浄化の光]を設置し、瘴気を払った。
一本道の洞窟。
幅は広いが、逃げ場はない。
やがて、人型に近いシャドウが現れた。
「……シャドウウォーカーだ」
動きが速い。
ゼブの魔法が削り、ティタが斬る。
だが、直後――
「後ろだ!」
天井の瘴気から、さらに二体。
「ぐっ!」
モトゥルが一撃を受け、盾が軋む。
カレナの治癒が間に合い、ティタが前に出る。
炎を纏った剣が閃き、青いシャドウが爆ぜた。
残る一体も、連携で討伐。
――だが。
全員が気づいていた。
剣は欠け、盾は割れ、呼吸が荒い。
さらに奥から、別格の気配が流れてくる。
「……今日は、ここまでね」
ティタがそう言った。
「これ以上進めば、帰れなくなる」
誰も反対しなかった。
四人は撤退を決め、ダンジョンを後にした。
・・・
・・
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