異世界に転生したら俺が二人になってた。【新生】   作:鳩夜(HATOYA)

7 / 15
第6話 俺たちの番

 両親がダンジョンへ入ったその日は、いつもより遅い時間に帰宅した。

 ゼブとティタの後ろには、ダンジョン近くで遠めに見た二人の姿がある。

 

「おお、この子らがゼブ達の子供達か! 可愛い子達だのう!」

 

 そう言って豪快に笑ったのは、がっしりとした体躯のドワーフ族の男モトゥル。

 近くで見ると、圧倒されるほどの筋肉量だ。

 少しの攻撃では、びくともしなさそうな迫力がある。

 

「初めまして。両親がいつもお世話になっています」

 

 俺がそう挨拶すると、ネビアも隣で丁寧に頭を下げた。

 

 その後ろから、ひょこりと顔を出したのは小柄なエルフ族の女性だ。

 白い肌に整った顔立ちで、まるで妖精のような雰囲気を纏っている。

 

「カレナです……は、初めまして」

 

 少し照れたように、他人行儀な会釈を返してくれた。

 

 ――この人が、カレナ。

 

 子供の俺達よりは当然背が高いが、それでもかなり小柄だ。

 

「さあ、フィアン、ネビア! もう遅いから先に寝なさい!」

 

 ティタにそう言われ、俺達はそれ以上話すことなく寝室へ向かった。

 

 その夜、両親がどんな話をしていたのかは分からない。

 だが、雰囲気だけで察するには十分だった。

 

・・・

 

 翌朝。

 

「二人とも、少し留守にするわ」

 

 朝食を終えた後、ティタがそう切り出した。

 

「物資を補充しに、大きな村まで行く必要があるの。ここからだと片道で二、三日ね」

 

「この森は瘴気が濃い。魔装魂を安定して使えないと連れてはいけないんだ」

 

 ゼブがそう補足する。

 

 俺とネビアは顔を見合わせ、同時に頷いた。

 

「大丈夫です。僕たちは留守番してます」

 

「安心して行ってきて」

 

 ティタは少し驚いた顔をした後、ふっと優しく笑った。

 

「……本当に、賢い子達ね」

 

 二人から強く抱きしめられ、俺達はその背中を見送った。

 

 森の中に、両親の姿が完全に消える。

 

「……行ったな」

 

「最大で五日。早ければ三日くらいでしょうか」

 

 ネビアが静かに言った。

 

 俺は頷く。

 

 両親が武具を揃えに出かけている間……

 その間に――俺達に出来る準備は、早急にすべて済ませ突入する。

 

 行くか、行かないか。

 そんな話をする必要はなかった。

 俺達は同じ考えを持っている。

 

「大事なのは、食糧ですね」

 

 ネビアは食糧保管庫を見渡しながら言った。

 

 水と火は、自分達で用意できる。

 ヒーリングライトの触媒紙があれば、怪我の心配も最低限で済む。

 

 つまり、持ち運ぶべきものは限られている。

 

「イモ類と干し肉、それとパンにしましょう」

「賛成だ」

 

 次に問題になるのは武器だ。

 

 木の剣は何本か用意できるが、強い技を使えばすぐに壊れる。

 家中を探したが、鉄で出来た剣は見当たらなかった。

 

「フィアン、これ……」

 

 ネビアが差し出してきたのは一本のナイフだった。

 

「食糧庫にありました。肉を切る用みたいです」

 

 俺はそれを受け取り、鞘から引き抜く。

 

 両刃のフラットな刃。

 長さは二十五センチほどで、木の剣よりはかなり短い。

 

「ネビア、ナイスだ」

 

 思わず声が弾む。

 

「刃の長さは関係ない。[魔装・一閃]なら、重要なのは強度だ」

 

 俺は木の剣二本とナイフを鞄に詰め込んだ。

 

「この数日のうちに、シャドウナイトを倒しましょう」

「もたもたしてたら、両親に先を越されるかもな」

 

 そんなことを話しながら、静かに荷造りを進める。

 必要なものは、すべて揃った。

 

「さて、そろそろ出発しましょう」

「おう」

 

 食事を終えた後、俺達は家を出た。

 

 向かう先は、あの洞窟。

 

 大人四人が苦戦した場所。

 瘴気に満ちた、森のダンジョン。

 

 ――次に足を踏み入れるのは、俺達だ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。