異世界に転生したら俺が二人になってた。【新生】 作:鳩夜(HATOYA)
両親がダンジョンへ入ったその日は、いつもより遅い時間に帰宅した。
ゼブとティタの後ろには、ダンジョン近くで遠めに見た二人の姿がある。
「おお、この子らがゼブ達の子供達か! 可愛い子達だのう!」
そう言って豪快に笑ったのは、がっしりとした体躯のドワーフ族の男モトゥル。
近くで見ると、圧倒されるほどの筋肉量だ。
少しの攻撃では、びくともしなさそうな迫力がある。
「初めまして。両親がいつもお世話になっています」
俺がそう挨拶すると、ネビアも隣で丁寧に頭を下げた。
その後ろから、ひょこりと顔を出したのは小柄なエルフ族の女性だ。
白い肌に整った顔立ちで、まるで妖精のような雰囲気を纏っている。
「カレナです……は、初めまして」
少し照れたように、他人行儀な会釈を返してくれた。
――この人が、カレナ。
子供の俺達よりは当然背が高いが、それでもかなり小柄だ。
「さあ、フィアン、ネビア! もう遅いから先に寝なさい!」
ティタにそう言われ、俺達はそれ以上話すことなく寝室へ向かった。
その夜、両親がどんな話をしていたのかは分からない。
だが、雰囲気だけで察するには十分だった。
・・・
翌朝。
「二人とも、少し留守にするわ」
朝食を終えた後、ティタがそう切り出した。
「物資を補充しに、大きな村まで行く必要があるの。ここからだと片道で二、三日ね」
「この森は瘴気が濃い。魔装魂を安定して使えないと連れてはいけないんだ」
ゼブがそう補足する。
俺とネビアは顔を見合わせ、同時に頷いた。
「大丈夫です。僕たちは留守番してます」
「安心して行ってきて」
ティタは少し驚いた顔をした後、ふっと優しく笑った。
「……本当に、賢い子達ね」
二人から強く抱きしめられ、俺達はその背中を見送った。
森の中に、両親の姿が完全に消える。
「……行ったな」
「最大で五日。早ければ三日くらいでしょうか」
ネビアが静かに言った。
俺は頷く。
両親が武具を揃えに出かけている間……
その間に――俺達に出来る準備は、早急にすべて済ませ突入する。
行くか、行かないか。
そんな話をする必要はなかった。
俺達は同じ考えを持っている。
「大事なのは、食糧ですね」
ネビアは食糧保管庫を見渡しながら言った。
水と火は、自分達で用意できる。
ヒーリングライトの触媒紙があれば、怪我の心配も最低限で済む。
つまり、持ち運ぶべきものは限られている。
「イモ類と干し肉、それとパンにしましょう」
「賛成だ」
次に問題になるのは武器だ。
木の剣は何本か用意できるが、強い技を使えばすぐに壊れる。
家中を探したが、鉄で出来た剣は見当たらなかった。
「フィアン、これ……」
ネビアが差し出してきたのは一本のナイフだった。
「食糧庫にありました。肉を切る用みたいです」
俺はそれを受け取り、鞘から引き抜く。
両刃のフラットな刃。
長さは二十五センチほどで、木の剣よりはかなり短い。
「ネビア、ナイスだ」
思わず声が弾む。
「刃の長さは関係ない。[魔装・一閃]なら、重要なのは強度だ」
俺は木の剣二本とナイフを鞄に詰め込んだ。
「この数日のうちに、シャドウナイトを倒しましょう」
「もたもたしてたら、両親に先を越されるかもな」
そんなことを話しながら、静かに荷造りを進める。
必要なものは、すべて揃った。
「さて、そろそろ出発しましょう」
「おう」
食事を終えた後、俺達は家を出た。
向かう先は、あの洞窟。
大人四人が苦戦した場所。
瘴気に満ちた、森のダンジョン。
――次に足を踏み入れるのは、俺達だ。