原作者の知らないドラゴンに転生したので、ひたすら意味深ムーブしてたら真の実力者と勘違いされた件 作:TSストライカー
原作者の知らないドラゴンってなんだよ(困惑)。
知らねぇよ、アニメのオープニングでちょっとだけ映ったドラゴンだよ。
原作にはドラゴンなんて出てこないよ。
でもアニメだとなぜかそのクールのボスみたいな扱いだったよ。
原作者も困惑してたよ。話、面白かったからいいけどさ。
いわゆるアニオリ回ってやつだな。
長期連載漫画で、アニメが原作に追いついた時に展開されるやつだ。
なんでそんな話するのかって?
「俺がそのドラゴンに転生したからだよ!!」
独り言を抜かしたが勘弁してくれ。
一人の期間が長すぎてちょっとおかしくなりつつあるんだ。
なんせこの姿だ。外に出ようにも出れない。
金色に輝く鱗、蝙蝠のような翼、刺々しい蛇腹状の尻尾。
どう考えてもあのドラゴンである。アニメのファンだったからよく覚えている。
原作のある異世界に転生したら、何をすべきか。原作破壊である。
知らねぇよ、俺の存在がそもそも原作破壊なんだよ。
何もせず大人しくしとけって話だよ。
しかしこんな洞窟に延々寝転がっているわけにはいかない。
幸い、池の水を飲んだら勝手にでかい魚が口の中に入ってくるので、餓死の心配はないが。
「こんなところで一生暮らすだけの人生……ならぬ竜生、嫌過ぎる……」
なんとかして騒ぎにならずに、外に出る方法がないかな。
そういえば、このドラゴン人型に変身してたな。変身とかも出来るのかな。つーか卵から生まれたわけじゃないし、気がついたらこの大きさだったから転生じゃなくて憑依なのか? ドラゴンの自我はいったいどこに……まぁ、あいつカスだったからいいか。
じゃあとりあえず人型に変身してみるか。
さよなら人外転生、こんにちは人生。ドラゴンなんて生きにくいからしょうがないね。
俺が念じると、パァアアアと辺りが光り輝き、周りのスケールが大きくなった。
いや、俺が縮んだのである。
さて、どれどれ人型になっているかな。池に反射された自分を見ている。
腰まで伸びた金髪に、ルビーのように赤く輝く瞳。そしてつるつるてんの矮躯。
見るからに少女のそれである……ん?
「俺、雌だったのか!?」
いや原作だとたしか男に変身していたはず。普通に失敗したんだ。
待て待て、変身しなおして……あ、一度龍に戻らないとできないのか。
面倒だな、変身解除、変身、変身解除、変身、変身解除、変身!!
ダメだ、やっぱり金髪赤目の美少女になってしまう!!
しかも練習したらすっごい疲れる!!
ちょっと休憩しよう。ていうか全裸なんだけど。
……………まぁ、誰もいないからいいか。
ぐぅ、ぐぅ。
とまぁ、しばらく寝ていたわけである。
すると誰かに肩を叩かれ起こされた。
目を開けると、茶髪ポニーテルの少女がいた。
「ちょっと、君。大丈夫!?」
「んあ?」
起き上がると、布団が被されていた。
なんだか温かいと思ったら焚き火がされている。
その横にはテントが設営されていた。
周りには筋骨隆々のプロレスラーみたいなやつ。
なんだか陰険そうな片目隠れの黒髪男。
そしていかにも好青年そうな銀髪の騎士がいた。
こいつら、見覚えがあったような……。
「おまえたちはなんだ?」
「ああ、えと。私たちは冒険者パーティ”ヘイヴン”っていうんだ。私、ミキ! よろしくね!」
ブイッ、とピースサインを作るミキとやら。
俺は彼女を見つめたあと、視線を他の三人に向けた。
「わしはグスタフと申す」
プロレスラー風の男が、自慢気に鼻を鳴らす。
次は自分の番だと判断した片目隠れの男は、腕を組みながら口を開いた。
「……………………ルイだ」
「僕はユーサーです。よろしくお願いします」
最後は騎士風の青年が恭しく一礼をした。
”ヘイヴン”。そういえば原作にも出てきたな。
主人公の便利な小間使いって印象だったが。
っといかんいかん。なんと反応すべきか。
助けてくれてありがとうございます、かな?
よし、丁寧に行こう。
「クク、なにゆえこのようなところまで来たのだ? 龍にでも食われに来たか?」
…………口が思い通りに動かないな。
もしかして、憑依元の性悪な性格がまだ残ってたりする?
こんな言い方じゃ、ドラゴンと密接な関係があると勘違いされるだろ!!
いや実際そのとおりなんだけど!! ていうか俺だし。
ヘイヴンの皆さんも俺の口ぶりに固唾を呑んでしまっているし!!
これでドラゴンだとバレたら討伐されるだろ!!
……いや、もしかしたら仲良くなりに来たのかもしれない。
そうだといいな、そうであれ。
「私たち、この洞窟に住む金色のドラゴンを倒しに来たんだよ」
討伐されりゅううううううううううううう!!
嫌だ、絶対バレたくない!! 仮にスペック差があったとしても、俺現代人だぞ!?
ファンタジーバトルなんてゲームの中でしかやったことないの!!
っていうかなんでバレたんだ?
俺が転生憑依する前に好き勝手してたのか、このドラゴン。
なんてことするんだよ、手遅れじゃないか。
「君、なにか知ってる?」
ミキさんがにこやかに俺に語りかけてくる。
知りませんって言及しないと!!
このままだと殺されてしまう!!
「さぁて、どうだかな。ククク……」
俺のバカ!!!
こんなんじゃ関係あると言っているようなものだろ!!
ほら、なんか集まってヒソヒソ話し始めたじゃん!!
そういうの聞こえるのよ、俺。五感がいいから。
「なにか知ってそうな口ぶりじゃな」
「そもそもなんであんな幼い子がこんなところに?」
プロレスラー風の男と、ポニーテルのミキがそう言う。
声がでかいよ。
「龍への生贄として連れてこられたとか。ですかね?」
「あり得る線だな」
白銀の騎士ユーサーと片目隠れのルイが言う。
そうそう、そんな感じに推理しといてくれ。
「もしかすると龍の巫女かもしれないわね」
「村で言っておったな。竜の力を一身に宿し、封じる伝説の存在とか」
「おとぎ話じゃないですか?」
「ともあれ、なにか持ち帰らないことには成果もない」
彼らがいっせいにこちらを向いた。
もはや庇護すべき対象を見る目ではない。
やってしまった……。
「えと、君の名前は?」
「名前か……」
原作者の知らないドラゴンに当然名前などあるはずもない。
どうしたものかと考えていると、突如とある事を思い出した。
前世で俺の嫁と公言していた大好きなキャラの名前。
たしかフリ……フリー……。
「我の名前はフリーゲルだ。何か文句はあるか?」
「よろしくね、フリ子ちゃん!!」
「……略すな」
フリーゲル、ふぅん。絶妙に元ネタを思い出せなかったが、なかなかいい名前じゃないか?
フリ子ちゃんなどと呼ぶのはやめていただきたいが。
「フリ子ちゃんは、ここでドラゴンを見なかった?」
ずずっ……と距離を詰めて問い詰められる。
下がろうとするが、背後は石の壁。なにげに手首を掴まれて、脈も確認されている。
くっ、どうする? どう言えばいいんだ……!?
とりあえず知りませんと言うしか……!!
「我がそうだと言ったらどうする?」
焦りでなんだか笑えてきた。
その態度に怖気づいたのか、ミキちゃんが俺から離れる。
そしてナイフを腰から引き抜いた。
「あ、貴方がドラゴンですって……!?」
「ミキ、戦うのはまだ早計ですよ!!」
「そうじゃ。ただの小娘だったらどうする!?」
「落ち着け。ガキのたわごとだ」
片目隠れのルイと、プロレスラー風のグスタフがミキを抑える。
しかし、ユーサーは剣の柄から手を離していない。
「それで君はもしかして……」
そうユーサーが言ったのも束の間、壁からロックワームが飛び出してきた。
その口は人間を丸呑みに出来る程に大きく、正しい全長がわからないほどに長い。
ドラゴンの俺にはただのおやつみたいなモンだったが……。
人間にはとんだ怪物だ。
ワームがグスタフに噛みつき、そのまま地面に潜った。
とっさに避けるヘイヴンの連中。俺のことはルイが抱え込んでいる。
しっかりしたお姫様抱っこだ。布団しか着ていないので、手の感触がなんともこそばゆいが。
そんな中、ミキちゃんがワームの上を駆けていた。
時折回転して、ワームに斬撃を食らわしている。
あんな軽業、流石に俺でもできそうにない。
ユーサーはレイピアを構え、何やら詠唱している。
彼の周りには白銀の魔法陣が輝いていた。
「我が敵を切り裂け────シャイニング・ブレイド!!」
光の白刃が飛び出し、ワームの胴体に傷をつけていく。
しかし両断とまではいかない。ロックワームはそれこそ岩のように硬いのだ。
ルイも俺を抱えながら、なにやら本を取り出して開いた。
すぐさまユーサーと同じように魔法陣が展開する。
「わわっ……!」
俺は驚いて、ルイに強く抱きついてしまった。
瞬間、三重になる魔法陣。
「なっ……!?」
目を見開くルイだが、構うこと無く詠唱を終わらせた。
「我が敵を撃ち貫け────フレイム・ランス!!」
次の瞬間、洞窟に大穴が空いた。
ルイが撃ち放ったフレイム・ランスのせいである。
しかしその結果に、ルイを含んだ三人は唖然としていた。
吹き飛んだ胴体の残りからグスタフがなんとか這い出てくる。
「ふぅ、突然丸呑みにされるとは驚いたわい……? どうしたんじゃ皆……」
そうして洞窟の天井に開いた大穴を見て、グスタフも目を丸くしたのだった。
ミキちゃんが降りてきて、ルイの手を掴む。
自然、ルイは俺を地面に降ろした。抵抗する必要もないので、そのまま降りる。
「る、ルイ!? 今の魔法は!?」
「わ、わからねぇ。突然魔力が流れ込んできて……」
その発言で、ヘイヴンの四人はいっせいにこちらを見た。
……そりゃあドラゴンが抱きついたら余波で魔力が流れ込みますよね。
と、とにかく弁明しないと。
「あ、貴方、本当にいったい……?」
「ふん、そろそろ理解る頃だと思っていたが。見た目通りの馬鹿らしいな」
俺の馬鹿!! 口が勝手に悪態をついてしまう!!
こんなのまともに生きるの無理だろ!! 畜生!!
転生前の人格の呪い的なアレだ!!
「なるほど、確定ですね」
「うむ、彼女こそがドラゴンを封じた龍の巫女じゃ……!!」
…………なんか話が妙な方向に行ってません?
でも、ドラゴンそのものと思われるよりマシか。
マシなのか?
「クク、クククク、ハーッハッハッハッハ!!」
俺はそのまま高笑いするしかなかった。
□登場人物□
フリーゲル ……俺。フリ子。金髪赤目の143cmぐらい。髪は腰まで長い。現在装備なし。
魔法で人間の姿なだけで普段は金色赤目のドラゴン。原作者も知らない。
【ヘイヴン】 ……冒険者パーティ。原作だと主人公のいい小間使い。
ミキ ……茶髪ポニテ。おそらく盗賊だと思われる。明るいがお転婆。
ルイ ……片目隠れ黒髪。おそらく魔術師だと思われる。寡黙で粗暴。
グスタフ ……プロレスラー風の男。おそらく武闘家だと思われる。老人のような口調。
ユーサー ……白銀の騎士。おそらく騎士だと思われれる。敬語で穏やか。
□魔物□
ロックワーム ……人を丸呑みするぐらいデカく、とてつもなく長い。
しかしドラゴンの俺にとってはただのおやつ。
□魔法□
シャイニング・ブレイド
祈祷術の一種。神から賜る聖なる力を剣状にして撃ち出す。
邪悪なものには絶大な効果をもたらす。
フレイム・ランス
火炎術の一種。炎を槍の形にして撃ち出す。
使い手により威力が顕著に変わる。