少しでも早く書き置き分を無くすために今日も連続投稿です
今回は前回とは打って変わってシリアスめでいきます
それではどうぞ!
「……ねぇ、新八。銀さんちょっと日本語のゲシュタルト崩壊が起きてるんだけどさ、この朝刊の芸能欄、なんて書いてある?」
万事屋の居間で、坂田銀時は昨日ワンダーのバンジョーを浴びすぎたせいで若干バグった耳をほじりながら、新聞を広げていた。
「えーっと、なになに……『複合都市最大の歌姫・星野アイと、次世代トップスター・アナスタシア、そして地獄の重低音・魔皇ミードによるタッグバンド【Glacier & Stargazer】の合同ドームツアーが決定! さらにスペシャルゲストとして宇宙の旅人ワンダー&シルヴィアの生演奏参戦も電撃発表!』……って、情報量が多すぎて頭痛が痛いよ!!」
新八が淹れたての茶を思いきり吹き出しながらツッコむ。
「完全に異種格闘技戦ネ。機械骸骨のアンプから響く魔皇のデスボイスの横で、ロシアの妖精と完璧なアイドルがステップ踏んで、そこにバンジョーのハッピーミュージックが乱入するとか、客の脳細胞がケミカルな意味で消滅するアル」
神楽がサクサクと酢昆布を齧りながら、他人事のように鼻をほじる。昨日から始まったワンダーの朝のバンジョー目覚ましですでに商店街の正気度は削られまくっているというのに、エンタメ界まで宇宙規模の混沌に飲み込まれようとしていた。
そんな、相変わらず手元資金【30円】の万事屋が「チケット転売で一儲けできないか」と薄汚い算段を立てていた、その時である。
ガララッ!!
万事屋のドアが、いつになく厳かな音を立てて開け放たれた。
「……坂田殿。少し、貴殿らの力を貸してほしい」
入ってきたのは、対ホロウ第六課の課長であり、その圧倒的な剣技で街の治安を担う星見雅。そしてその後ろには、大きな身体に威風堂々たる雰囲気を纏った魔物の武人、ギュメイ将軍が静かに佇んでいる。さらに、なぜか真選組の近藤勲、土方十四郎、沖田総悟の3人も、いつものふざけた様子を封印し、隊服に身を包んで神妙な面持ちで控えていた。
「あれ、雅ちゃんにギュメイのおっさん。それに真選組のゴリラどもまで揃ってどうしたの? また裏の山でハシュマル米の密輸でも摘発しにいくわけ?」
銀時がソファに寝そべったまま尋ねるが、雅の表情はいつになく真剣だった。
「いや、今回は特務としての公務ではない。私と、そこのギュメイの『個人的な依頼』だ」
「個人的な依頼ぃ?」
銀時がゆっくりと身体を起こす。
ギュメイ将軍が、その鋭い眼光を少しだけ和らげ、重々しい声で言葉を継いだ。
「……古き友との、約束があってな。その約束を果たしに行くにあたり、万事屋……お前たちの『何でも屋』としての、そしてあの戦火を潜り抜けてきた者としての力を、貸してほしいのだ」
「古い友達ねぇ……」
銀時は髪をガシガシと掻きむしり、チラリと土方たちの顔を見た。あのマヨラーの土方すら、今はタバコを咥えもせず、ただ静かに銀時の目を見返してくる。その空気だけで、これが単なる「迷子のペット探し」のような依頼ではないことくらい、嫌でも伝わってきた。
「まあ、30円じゃ動かないのがウチのモットーなんだけどさ……。そんなガチのツラされたら、断る方が寝覚めが悪いだろ。いいよ、付き合ってやるよ」
――数時間後。
万事屋一行が雅たちに連れられてやってきたのは、複合都市の賑やかな喧騒から遥か遠く離れた、境界線の狭間にある静かな丘の上だった。
周囲には遮るものもなく、ただ心地よい風が草波を揺らしている。
その丘のてっぺん、一本の見事な桜の木が枝を広げていた。
まだ季節外れのその木は静かに佇んでおり、その根元に、ぽつんと、古びた『墓』が立っていた。
文字も薄れかけ、ただそこに誰かが眠っていることだけを示す、静かすぎる墓標。
「ここだ」
雅が、その墓の前で静かに足を止めた。
風が草波を揺らす音だけが響く丘の上。雅が静かに一歩を踏み出し、花も葉もつけず、まるで死んでいるかのように立ち枯れた木の根元へ近づいていく。
そこに佇む古びた墓石には、はっきりとその名が刻まれていた。
――『天津気刹那』
「待たせた、刹那。……今こそ、そなたとの約束を果たそう」
雅がその名を呟き、そっと墓石に触れた、まさにその瞬間だった。
――ザ、リッ――
世界からすべての音が消え、視界の色彩が瞬時にモノクロへと反転する。
空間そのものが「裏返る」ような強烈な悪寒。次の瞬間、万事屋一行の目の前の景色は、完全に別の『領域』へと書き換わっていた。
枯れていたはずの木は、視界を埋め尽くすほどの『満開の花をつけた桜の木』へと変貌し、狂ったように鮮やかな花びらを散らしている。
そして、その激しい桜吹雪の向こう側。墓の傍らに、静かに、しかし絶対的な死の気配を纏って佇む『影』があった。
身の丈ほどもある禍々しい大太刀を携え、サイバー風な輝きを放つ白い装甲に身を包んだ、鎧武者を模したサイボーグ。
遠き日の約束を……今もなお、守り続ける者……
その姿を完璧に網膜に捉えた瞬間、銀時の脳裏に、備わっている他作品のメタ知識がゴウゴウと音を立てて警告を発した。
「……おい、嘘だろ。冗談じゃねーぞ。おい、誰だあいつをここに呼んだバカは」
銀時の額から、ドッと冷や汗が吹き出す。その手は自然と、腰の木刀『洞爺湖』へと伸びていた。
「ぎ、銀さん……あの佇まい、あの圧倒的な『即死ギミックの塊』みたいな威圧感……まさか、あの週刊少年マガジンが誇る、神ゲー『シャングリラ・フロンティア』の……!」
新八がガタガタと歯の根を鳴らしながら、その名を口にしようとする。
「新八、言うなアル! あいつの名前を呼んだら、ウチらの首が一瞬で胴体からおさらばするネ! あいつはプレイヤーを1秒で即死コンボに叩き込む、神代の遺産『墓守のウェザエモン』アル!!」
神楽が傘を構え、いつになく真剣な表情で野生の勘を尖らせる。
他作品の知識があるからこそ理解できる。眼前にいるのは、愛する人の墓を数百年守り続け、生者の侵入を拒絶し続ける「理不尽な最強の亡霊」なのだと。
「……やはり、この領域に入れば、かつての姿のまま現れるか」
ギュメイ将軍が腰の刀の柄に手をかけ、一歩前に出る。その重厚な鎧が、ウェザエモンから放たれる凄まじい剣気を受けて、ビリビリと微かに鳴り響いていた。
「万事屋。……かつて、この複合都市ができる遥か前。我らは、その墓に眠る刹那という女性と、そして彼女を護り続けるウェザエモンと出会った」
雅が静かに息を吐きながら言葉を紡ぎ、土方が煙草に火をつけて静かに煙を吐き出しながらその先を引き継ぐ。
「だが、こいつは『過去の妄執』に囚われたアンデッドだ。刹那の魂を真に救い、こいつをこの永い呪縛から解き放つには……俺たちの手で、この『無敗の守護者』を叩き伏せるしかねぇ」
「……征くぞ、我が古き友よ」
星見雅が、腰の刀をゆっくりと引き抜く。その刀身が、満開の桜の光を反射して冷たく煌めいた。
対するウェザエモンは、ゆっくりと、しかし正確に、大太刀の柄をそのサイバーな五指で握りしめた。
その頭部のセンサーが、侵入者である万事屋、対ホロウ第六課、そして真選組をロックオンし、赤く不気味に発光する。
「――討ツべき敵、此処ニ……我が刃ハ、今モ尚、刹那ノ為ニ――」
神話級のボスキャラクターが放つ、大気を裂くような駆動音と圧倒的な殺圧。
複合都市の狭間で、かつて交わされた「約束」を果たすための、生存時間わずか10分の超高難易度レイドバトルが、今まさに幕を開けた。
「――晴天流、居合――『断風』――」
ウェザエモンの白い装甲から凄まじい駆動音が響いたかと思った瞬間、大気が文字通り一刀両断された。目にも留まらぬ超高速の真空刃が丘を削りながら押し寄せる。
「うおあああっ! 初手から殺意が高すぎるだろォォォ!」
銀時が叫びながら『洞爺湖』の木刀で受け流すが、その衝撃だけで身体が数メートル後方へ吹き飛ぶ。
「総悟、左だ! 雅殿、右から回り込め!」
土方が指示を飛ばすと同時に、ウェザエモンが次の即死コンボへと移行する。大太刀を天高く掲げた瞬間、満開の桜の空にどす黒い暗雲が立ち込め、無数の雷霆が降り注いだ。
「――『雷鐘』――」
「ひぎぃぃぃ! 連続落雷とかマジ勘弁してネ!!」
神楽が夜兎の超反射神経で雷を避けながら傘の銃弾を叩き込むが、ウェザエモンの硬質な装甲は火花を散らすだけだ。それどころか、ウェザエモンは落雷のエネルギーをそのまま自身の装甲へ吸収し、次の技を発動する。
地面から湧き上がった暗雲が、巨大な雲の腕へと成形された。
「――『入道雲』――」
「させん……っ!」
星見雅が風を纏った鋭い一閃で雲の巨腕を切り裂く。だが、霧散した雲の向こうから突如としてウェザエモンの巨大な鋼鉄の手が伸び、ギュメイ将軍の巨体をガシリと掴み上げた。
「――『大時化』――」
「ぬ、おおおっ!?」
百戦錬磨の武人であるギュメイ将軍が、抗う間もなく地面へと叩きつけられ、クレーターが穿たれる。間髪入れずにウェザエモンは大太刀を地面へと深く突き立てた。
「――『火砕龍』――」
大地が爆ぜ、地面の裂け目から龍の形をした地獄の業火が吹き荒れる。炎は生き物のように万事屋一行へ襲いかかり、さらにその燃え盛る炎が空を焦がして、有害な黒い火山灰の雲へと姿を変えた。
「――『灰吹雪』――」
「げほっ、ごほっ! 視界が……っ、これただの灰じゃなくて、まともに吸ったらスリップダメージで死ぬやつですよ!!」
新八がメガネを灰で真っ白にしながら必死に叫ぶ。晴天流の波状攻撃は、1ミリの隙も与えない。
だが、この街の最強たちもタダでは転ばない。
「土方さん、足元がガラ空きでさァ!」
沖田が灰の霧を突っ切り、菊一文字RX-78をウェザエモンの関節部に叩き込む。
「我が太刀、受けてみよ……!」
雅とギュメイ将軍の息の合った同時連撃が、ウェザエモンの白い装甲を激しく捉え、ついにその体勢を大きく崩すことに成功した。
「今だァァァ! 全員で叩き込めェェェ!!」
銀時の叫びと共に、真選組の面々と第六課、そして神楽の傘から放たれた全火力がウェザエモンに直撃し、視界を覆うほどの爆煙が上がった。
――やったか!?
誰もがそう思った、次の瞬間。
爆煙の向こう側から、あまりにも冷徹な、そしてゲームプレイヤーなら誰もが絶望する「システム音声」のような駆動音が響き渡った。
『――警告、戦術ダメージ限界値超過……。コール・サモン……エクスポート、戦術機馬「麒麟」――』
「……は?」
銀時の顔から血の気が引く。
ゴゴゴゴゴと地鳴りが響き、ウェザエモンの背後の空間が再び歪む。
そこから現れたのは、サイバーな白と金の装甲を纏い、エンジン音のような不気味な咆哮をあげる、巨大な鋼鉄の戦術機馬だった。
「ちょっと待てェェェ!!! 仲間呼ぶの反則だろ!! こっちはアンタだけで手一杯だぞコラァァァ!!」
新八の魂のツッコミが満開の桜の丘に虚しく響く。そして麒麟を見た途端、雅とギュメイ将軍が即座に刀を構えてェザエモンに肉薄した。
「ウェザエモンは我らが引き受ける! 万事屋、真選組! その機馬を奴に近づけるな!!」
「応よ! 暫くそのクソボスを釘付けにしといてくれや!」
銀時は『洞爺湖』を構え直し、残された麒麟へと視線を向けた。鋼鉄の馬はその目を不気味な赤に染め、ブースターを噴射させて猛り狂っている。メタ知識が銀時たちの脳内で最悪の警告を鳴り響かせていた。
「おいおいおい、ちょっと待てネ! あいつのスペック、完全に競馬の枠を超えてるアル! メタ知識によるとあいつ、原作じゃ『脚の生えたダンプカー』とか言われてる超重量級の質量兵器ネ! まともに轢かれたらウチら全員ミンチ肉アル!!」
「それだけじゃないですよ神楽ちゃん! 見てくださいよ、あの馬の背中!!」
新八が指差した先、麒麟の装甲が機械音を立てて展開し、中から無数のミサイルポッドとレーザー砲身がニョキニョキと生えてきた。
ピピピピピピピピ――ッ!!
「馬がロックオンマーカー出してきたァァァ!! なんで馬から近現代兵器のハイテクな駆動音が聞こえるんだよォォォ!!」
新八が叫ぶ暇もなく、麒麟の背中から無数の追尾ミサイルが桜吹雪を巻き散らしながら一斉に発射された。 同時に、胸部のレンズから極太の熱線レーザーが照射され、丘の大地をドロドロに融解させていく。
「どきやがれコンチクショウ!!」
沖田がバズーカを連射してミサイルを空中で迎撃し、爆風の煙を隠れ蓑にして神楽が夜兎の怪力で地面の巨大な岩を引っぺがし、麒麟の顔面へ向けて力任せに投げつけた。
ドゴォォォン!! と岩が砕け散るが、麒麟は文字通りダンプカー並みの突進力でその破片を突き破り、前脚を高く掲げて銀時へと踏みつけてくる。
「危ねぇだろーがこのお馬鹿さんがァァァ!!」
銀時は間一髪で地面を転がって回避するが、麒麟が踏みつけた地面は直径数メートルのクレーターと化していた。掠っただけでも即死確定の、あまりにも理不尽な戦闘ギミック。
「土方さん! あいつ、ウェザエモンの方に無理やり行こうとしてまさァ! 完全に合流されたら俺たちの生存ルートが消滅するぜ!」
「分かってるわ! 逃がすかよォォォ!!」
土方が煙草を投げ捨て、麒麟の側面に回り込んで刀を叩きつける。火花が激しく飛び散る中、真選組の隊士たちが一斉にワイヤー付きの捕縛縄を麒麟の脚に絡みつかせ、力任せに引っ張った。
「ウオオオオ! 止まれェェェ! この暴れ馬ァァァ!!」
「ハァァァッ!!」
神楽もワイヤーの端を掴み、夜兎の膂力を全開にして麒麟のブースターの推進力に対抗する。
キィィィィィンと金属が悲鳴を上げるような音が響き渡り、麒麟の突進が強引にその場に縫い止められた。
飛び交うレーザー、降り注ぐミサイルの雨。満開の桜が激しく散る極限の戦場の中で、万事屋と真選組は文字通り命がけで「最強の暴れ馬」に食らいつき、雅たちの戦場への合流を必死に阻止していた――。
「うおおお! 引くなァァァ! 押し戻せ、このハイテク違法重機馬ァァァ!!」
土方の怒号が響く中、神楽がワイヤーを全身に巻き付け、夜兎の怪力で「麒麟」の巨大な足をギリギリで踏みとどまらせていた。
飛び交うミサイルの爆風とレーザーの熱線で、満開の桜の丘は一瞬にして焦土と化していく。新八のメガネはすでに爆煙で煤まみれ、沖田のバズーカも銃身が焼き切れる寸前だった。誰もが限界を迎えようとしていた、その時。
――ガ、リィッ――
突如として、あれほど理不尽な初見殺しを連発していたウェザエモンの動きが、ピタッと完全に停止した。
構えられた大太刀の先。その赤いセンサーの視線は、対峙していた星見雅、そしてギュメイ将軍の首元に釘付けになっていた。
2人の首にかかっていたのは、かつて複合都市ができる遥か昔、あの墓に眠る女性――『天津気刹那』から託された、古びた【ペンダント】だった。かつて交わした約束の証が、満開の桜の光を反射して、鈍く煌めく。
『あ、あ、あ…………そう、か……』
ウェザエモンのノイズ混じりの音声から、それまでの冷徹なシステム音が消え、掠れた「人間の声」が漏れ出た。
『我が…………願い、は…………。守る、事……ではなく…………託す、事…………』
その言葉と同時に、ウェザエモンの白い無敗の装甲に、ピキピキと無数のヒビが入り始める。
その隙間から溢れ出したのは、彼の魂の残火とも言える、眩いほどの『蒼い炎』。
「な、なんだ!? ボスの様子が……っ!」
新八が叫ぶと同時に、万事屋と真選組が命がけで抑え込んでいた戦術機馬「麒麟」も動きを止め、機械音を立てて変形を開始した。
馬の形を捨て、ウェザエモンの背後に佇む、巨大な「人型の鎧」のような姿へ。複合都市の時空の狭間で、数百年の妄執が、現世の絆によってついに反転する。だが、それは「降伏」を意味するものではなかった。武人として、守護者として、かつての友の末裔たちに最大最高の敬意を払うための、真の最終試練。ウェザエモンは蒼い炎を全身から噴き上げながら、大太刀を再び、今度は完璧な正眼の構えへと戻した。
『行くぞ…………我が、古き友の、末裔よ。我が、誓いを……踏み躙る、であれ、ば……』
頭部のセンサーが、かつてないほど激しく、純粋な闘志の青へと染まる。
『我が――【晴天大征】にて…………潰えよ』
ウェザエモンの背後の人型鎧が、その巨大な質量を以て、天をも衝くような構えを取る。生存時間残り僅か。正真正銘、一撃喰らえば世界ごと消滅しかねない、墓守の「最後の即死結界」が発動しようとしていた――!
(第2章・第16話「彼岸への道編」 完・次回へ続く)
はい、というわけでまさかのウェザエモン戦です
ぶっちゃけるとこの話はシャンフロアニメのウェザエモン戦(録画)を見直して衝動的に書きました
あの辺は本当に名シーンの連続だと思ってます