はい、やっとこさ暇ができたので連続投稿復活です
今回は新たなレギュラーメンバー候補の登場です
「……新八ぃ。銀さんね、もう自分の人生の何が間違ってたのか分かんなくなっちゃった。あのチート級の即死ボスと命がけで戦って、手元に残ったのが【30ポイント】って何? どこのドラッグストアのポイントカードだよ。次回の買い出しでトイレットペーパー1巻きと交換できんの?」
万事屋の居間で、銀時は死んだ魚の目を限界まで虚無に染めながら、30円の財布をパチパチと開け閉めしていた。
「諦めてください銀さん。僕たちの手元資金はどれだけ世界を救っても30円に収束する運命(仕様)なんです。……でも、さすがに今回は僕もちょっと精神的にキてます。もう本格的に、どっかの怪しい霊媒師にでもお祓いしてもらった方がいいんじゃないですかね、この万事屋の土地自体を」
新八が珍しくツッコミを放棄して溜息をついていると、
「フン、お祓いなんてぬるいネ。呪われてるならその呪いの神様を引きずり出して、ハシュマル米のオカズにして食っちまえばいいアル」
神楽が酢昆布を貪っている、その瞬間だった。
ドズズズズズズゥゥゥン!!!!
万事屋のビルがガタガタと激しく揺れ、外から未曾有の質量が衝突したような凄まじい轟音が響き渡った。またである。この街の住人にとって、この音は「あ、また近所に何か降ってきたな」という日常茶飯事の合図に過ぎない。
「おいおいおい、今度は何だよ! 三傭兵の事務所の前あたりからすげぇ煙上がってんぞ!」
銀時たちが慌ててベランダから外を覗き込むと、『邪兎屋』の隣にある『三傭兵事務所』の目の前に、どこからどう見ても日本のどこにでもある、年季の入った二階建ての木造一軒家が、庭ごと綺麗にジャストフィットしてぶち込まれていた。
「おいおい、何だこの騒ぎは。俺たちの事務所の前に違法駐車ならぬ違法建築か?」
煙の中から現れたのは、人間サイズでありながら圧倒的な武のオーラを放つ知能機械人、ガンダムGP-羅刹。
「……フッ、ただの落下物にしては座標の固定が完璧すぎるな」
隣で冷徹に分析するのは、同じく人間サイズの知能機械人、アストレイブルーフレームセカンドL。
「おのれ、死神たる私の漆黒の闇を遮る不届きな家め!」
後ろから死神スライダークが愛刀の刃をギラギラとさせながらブツブツ言っている。
この濃すぎる三傭兵事務所の目の前で、降ってきた民家の庭先から次々と個性的な面々が咳き込みながら姿を現した。
「ゲホッ、ゲホッ! ちょっと何なのよこれ! ターボババア、またアンタの呪いの仕業!?」
ギャルっぽい見た目ながら強い霊力を持つ綾瀬桃(モモ)が怒鳴れば、
「ち、違うよ綾瀬さん! 宇宙人の仕業でもなさそうだし……っていうか、ここどこ!? 周りの建物の情報量が多すぎて僕の脳のキャパが――」
オカルトマニアの高倉健(通称オカルン)が、メガネをズレさせながら周囲のガンダムや三傭兵たちを見てパニックを起こしている。さらに、その後ろからは自称・美少女の白鳥愛羅(アイラ)、イケメン幼馴染の円城寺仁(ジジ)、怪獣スーツのインナー姿の坂田金太、宇宙人のバモラ、景色に馴染みすぎている祖母・綾瀬星子。さらには、招き猫の姿に変えられたターボババアが「ニャーアハハ! 面白い場所へ飛ばされたじゃねえか!」と笑っていた。その一行を見た瞬間、銀時とオカルン、探知機をピピッと鳴らした金太の視線がバチバチッと交差した。他作品の「メタ知識」を持つ者同士が放つ、特有の電波が空間で火花を散らす。
「……ッ!? 綾瀬さん、警戒して! あの天然パーマの人とメガネ、普通の人間じゃない……! 僕のメタ知識が告げている……あの人たち、『金魂』じゃなくて本物の、少年ジャンプの元祖・メタ発言の王様『銀魂』の万事屋一行だ!!」
オカルンがガタガタ震えながらモモの背後に隠れた。
「ええっ!? 何それ、アンタの得意なメタ知識? よく分かんないけどジャンプの先輩ってこと!?」
「おいおいおい待て待て、そこのメガネ掛けたロボマニアのデブゥ(金太)!!」
銀時がダッシュで階段を駆け下り、金太を指差して吠える。
「お前、さっきから三傭兵のオーガさんと劾さんを見て、脳内で『ビルドダイバーズとSEED ASTRAYの外伝キャラが人間サイズでドラキエの死神と組んでるの、クロスオーバーの配分が歪すぎる』とか不遜なメタツッコミしてんじゃねーよ!!」
「な、なんだとォ!? 僕の脳内イメインネーションに不可能はないんだから、他作品のガンダムが人間サイズで傭兵やってたって一瞬で設定を噛み砕けるんだよ! そっちの木刀の天然パーマこそ、平成のメタ知識だけで令和のオカルト漫画にマウント取ろうとするなよ!!」
金太が速攻でメタ知識全開の反論を繰り出す。
「新八ィィィ! 確定だ! 確定演出入ったアル!!」
神楽が叫ぶ。
「あいつら、ウチらと同じ、他作品の設定やメタ事情を完全に把握した上で喋るタイプの、一番関わっちゃいけない奴らアル!!」
「なんでウチの近所は『千年城』やらが建った後に、今度は『スピリチュアルとメタ知識のハイブリッド集団』を呼び寄せるんだよォォォ!!」
新八のメガネが割れんばかりのツッコミが響く中、お互いに「世界の裏事情」を知り尽くした2つのジャンプ作品が、この複合都市の地盤をさらに歪ませる最悪にして最高の邂逅を果たしてしまった――!
「おいおい、少年ジャンプの未来を担う期待の新星サマが、挨拶代わりにウチの事務所の前に違法建築たぁいい度胸じゃねえか。なあ、劾」
ガンダムGP-羅刹が、その人間サイズの鋼鉄の拳をバキバキと鳴らす。
「待てよオーガ。彼らは意図してここに落ちたわけではないようだ。……が、三傭兵事務所の営業妨害分のツケは払ってもらうぞ」
アストレイブルーフレームセカンドLが、冷静に大剣の柄に手をかけた。
「ひぃぃぃ! なんで外伝のガンダムが2機も人間サイズでオカルトヤンキーみたいな恐ろしい威圧感放ってるの!?」
オカルンが白目を剥いてガタガタ震える。その後ろでは、坂田金太が「フ、フン! ガンダムタイプが何だ! バモラ、僕のグレートキンタのコクピットのハッチを開けろ!」と虚勢を張るが、洗礼は三傭兵だけに留まらなかった。
「ちょっと! 新しいご近所さん!? 爆破していい!? 爆破していいよねアルちゃん!」
便利屋68のムツキがバッグから大量の爆弾を取り出し、隣の『邪兎屋』のアンビーが「新しいターゲット、排除する?」とデカいブレードを抜く。
「待て待てお前らァ! 既婚者である俺の、レゼとの甘い新婚生活の新居を汚すんじゃねえェェェ!!」
真選組の前から爆豪勝己が両手から爆破を撒き散らしながら突っ込んできて、お向かいの『坂本商店』の坂本が「あ、危ないからお団子食べなよ」と、超高速で投げたみたらし団子が金太の口にジャストミートしてめり込んだ。
「新しいお友達だね! 一緒にオクラホマミキサーを踊ろう!」
さらに空からは、ワンダーがシルヴィアに乗ってバンジョーをかき鳴らし、お屋敷の裏庭からは『水星の魔女お屋敷』の1/1ガンダムが違法駐車のままビームサーベルの熱線をチカチカさせている。
「な、なんなのよこの街ぃぃぃ!!! スピリチュアルとか宇宙人とかの次元を超えてただの世紀末じゃないのよォォォ!!!」
綾瀬桃(モモ)が自慢の超能力を構える暇すらなく、ご近所連合軍の圧倒的な『洗練』を食らい、ダンダダン一行は一瞬で白旗を上げた。他作品のメタ知識で「このキャラはこういう能力」と知っているはずのオカルンと金太ですら、全員が同時に襲いかかってくるクロスオーバーの物量には勝てなかった。
「……ほらな? 言ったろ。この街の奴らはな、メタ知識を前提とした上でさらに物理で殴ってくる脳筋の集まりなんだよ」
銀時がやれやれと首を振り、埃を払った。
「お前らの家の間取りだの呪いのババアだのの話は後だ。とりあえず、あいつらにこれ以上更地にされる前に、ウチの一階に避難するぞ」
――数分後。昭和レトロな雰囲気が漂う『スナックお登勢』の店内。
「……うわぁ、落ち着く……っていうか、カウンターの奥にいるおばあさん(お登勢)、めちゃくちゃ強者のオーラ出してる……」
ジジや愛羅がガタガタ震えながらおしぼりで顔を拭う中、カウンターの端には、いつもの常連たちが静かに座っていた。
ORDERの篁老人が「……フシュー……」と大根を包丁で切っており、大佛がその後ろでACのパーツを磨き、神々廻がガンダム・ガミジンのキーを指先で回している。
「おい、銀時。またお前、妙な子供たちをゾロゾロ連れてきて。ウチは託児所じゃないんだよ。それと家賃更新料の残りはどうした」
お登勢が紫煙を燻らせながら睨みつける。
「いやいやお登勢さん、こいつら、ウチらと同じ『世界の裏事情』を持った、いわば同業者みたいなもんなのよ。……ほら、オカルンだっけ? お前らにこの世界の状況、ちょっと説明してやるよ」
「――で、これが第1章の最終回で、神話の魔獣クラーケンを水着姿の最強どもが一瞬で超特大イカ焼きにして完食した時の写真ね。夕陽が綺麗だろ?」
「いや、おかしいでしょ!! なんで神話の魔獣がソースの焦げた良い匂いさせて夕陽に溶け込んでるんですか!?」
スナックお登勢のテーブル席で、銀時がドサッと広げた現像済みの写真の束を見ながら、オカルンが目玉を飛び出させてツッコんだ。
「これだけじゃないアル。こっちの写真は悪魔学校の校庭にポップした鏖魔ディアブロスを学級全員で狩猟・調理した時の記念写真ネ。五条悟と黎斗神が満面の笑みでピースしてるアル」
「何これ……。霊媒師生活数十年の私でも、これだけジャンルがバグった心霊写真は見たことないよ……」
モモの祖母・綾瀬星子が、キセルを咥えたまま写真の束を指先でめくり、呆れたようにため息をつく。
万事屋一行は、自分たちが飛ばされてからの激闘(ルパンVS銭形、フリーレン一行とのダンジョン攻略、カイザーコーポレーション潜入、新横浜サイズの100キロ鬼ごっこ、そして前回のウェザエモン戦)の記録を次々と見せ、この『複合都市』という魔境のシステムを説明していた。
「……なるほど。異なるアニメやゲームの世界が、地脈のバグか何かで一つの街として定着しちゃってるんだね。しかも僕たちや坂田さんたちみたいに、一部のキャラには他作品の外的事情を知る『メタ知識』が最初から備わっている……」
オカルンがメガネを指でクイッと上げ、メタ知識保有者としての「洗練された分析」を口にする。
「そうそう、流石は期待の新星、話が早くて助かるわ。……で、本題なんだけどさ、星子さん、いや星子ママ」
銀時が急に揉み手をしながら、星子の前ににじり寄った。
「そんなスピリチュアルのガチプロであるアンタにさ、ちょっとウチの万事屋の『ガチな呪い』について診てもらいたいわけ」
「呪い? アンタたち、これだけの修羅場を潜り抜けてピンピンしてるんだから、憑き物なんてとっくに消し飛んでるでしょ」
星子が怪訝そうな顔をするが、新八がガタッと立ち上がり、切実な表情で30円しか入っていない財布を差し出した。
「違うんです星子さん! 物理的な呪いじゃなくて、経済的な呪いなんです! 僕たち、第1章から何十回も世界を救ったり、大企業の裏データを強奪したり、超高難易度のレイドボスを倒したりしてきたんです! なのに、なぜか手元資金が毎回この【30円】に強制リセットされる仕様になってるんですよ!!」
「そうアル! 前回なんてチート級のサイボーグ倒して、貰えたのがお役所仕事の『地域貢献30ポイント』ネ! これ絶対に、この作品のメタ的な構造か、背後にいる作者の薄汚い悪意の呪いがかかってるアル!!」
万事屋一行の必死の訴えに、モモや愛羅、ジジたちは「えぇ……それはただの不景気なんじゃ……」とドン引きしている。
銀時はすがるような目で、テーブルの上の招き猫(ターボババア)を掴み上げた。
「頼むよターボババア! アンタのクソ強力な呪いのパワーでさ、この『どれだけ稼いでも30円に収束する呪い』を上書きして、せめて『どれだけパチンコで負けても30万円に収束する呪い』に変えてくれよ!!」
「ニャーアハハハ! バカ言え、そんな都合の良い呪いがあるかよ!」
招き猫のターボババアが、銀時の手をペシッと引っ掻いて拒絶する。
「っていうかよ、さっきから診てやってるけど、お前らのその『30円リセット』、霊的な呪いでも何でもねえよ。ただの【メタ的な世界観の強制力】だ。そんなもんアタシらの妖力や霊力でどうこうできるわけねえだろ!」
「そこをなんとかお祓いしてよォォォ! ほら、オカルン! お前からもなんかオカルトのウンチクで『30円の呪縛を解く方法』とか提案してよ!」
「無理ですよ坂田さん! メタ知識の保有者として言わせてもらいますけど、『銀魂の万事屋が金持ちになる』なんて設定、原作の概念そのものの崩壊を意味しますからね!? むしろ30円あるだけシステム的に温情ですよ!!」
オカルンのあまりにも的確すぎるメタな正論に、銀時は「う、うるせぇぇぇ!! 令和の最先端オカルト漫画が平成の元祖メタ漫画に冷たい現実を突きつけるなァァァ!!」と頭を抱えてのたうち回った。
「頼むよぉぉぉ星子ママぁぁ! ポイントカードの人生はもう嫌なんだよぉ! 30円の呪縛を解いてくれたら、パチンコで勝った分の数パーセントを必要経費としてスピリチュアルな協会に寄付するからさぁ!!」
「ちょっと、ジャンプの偉大な先輩が床にへばりついて拝み倒すのやめてくださいよ! 見てるこっちの情緒がバグるわよ!」
モモがドン引きして叫ぶ中、銀時はスナックお登勢の床にスライディング土下座を敢行していた。新八も「僕も1回でいいから普通の1万円札でお釣りを受け取りたいんです!」と涙目で訴え、神楽は「30円じゃ酢昆布が1箱しか買えないアル、育ち盛りの夜兎を飢え死にさせる気ネ!」と星子の着物の裾を引っ張っている。
あまりの必死さとトホホっぷりに、星子は呆れ果ててキセルをトントンと灰皿に叩きつけた。
「ハァ……分かったわよ。そこまで言うなら、その『30円に収束する構造』とやらをスピリチュアルな観点からちょっと調べてあげるわ。……ただし、一つだけ『条件』があるんだけど――」
「条件!? いいよ何でも飲むよ! 編集部にガソリン持って突っ込めって言うなら銀さん明日にもライター持って――」
「そんな物騒な条件出すわけないでしょ! いい、アタシの条件はね――」
星子がその「条件」の核心を口にしようとした、まさにその瞬間だった。
ガララララッ!!
「スナックお登勢」のドアが、いつになく景気の良い音を立てて勢いよく跳ね上がった。
「ヘイお待ち! 新しいご近所さんが降ってきたって聞いたからよぉ! 複合都市飲食店連合特製・ウェルカム満腹フルコースのお届けだぜ!!」
威勢の良い声を上げて入ってきたのは、お馴染み『邪兎屋』の行きつけであるラーメン屋のチョップ大将! その大きな器からは、新世代のエーテルが香る極上チャーシュー麺の湯気が立ち上っている。
「新入りの若い子たち、長旅で腹が減っているだろう! ベルナ村特製のココットフォンデュだよ、遠慮せずに食べな!」
ベルナ屋台のおかみが、モンスターハンターの世界から巨大なチーズ鍋をカウンターにドンと置けば、
「みんなー! 歓迎スイーツだよ! キラキラキラルン、マカロンにデコレーション!」
宇佐美いちか(キュアホイップ)が、五感を刺激する可愛すぎる特製スイーツタワーを笑顔で差し出し、その横から砂藤力道が「俺の特製シフォンケーキも食ってくれ! 糖分補給には最適だぞ!」と、ヒーロー科仕込みの高カロリーお菓子を並べる。
「……おばあさん、この街の歓迎の儀式は、胃袋を満たすことから始まるらしいな。……天の道を往き、総てを司る男の料理だ。味わうといい」
白い割烹着を完璧に着こなした天道総司(仮面ライダーカブト)が、究極のサバの味噌煮を美しくテーブルへ静置する。
「ウチの『潘の特製スパイス肉まん』も忘れないでね! ほかほかだよ〜!」
パンダの獣人・潘引壺が、湯気あふれる巨大なセイロを抱えてニコニコと笑っている。
「おやおや、若い人たちがたくさんいて賑やかでいいねぇ。これ、ワシからの奢りだよ」
『トリコ』の世界からやってきた伝説の料理人・節乃ばあさんが、一舐めすれば寿命が延びるレベルのスープを小鉢に分けて差し出し、
「皆さん、お疲れ様です! 焼き立てのアップルパイをどうぞ!」
五十嵐響子が、完璧なアイドルの笑顔と共に家庭的ながらプロ級のパイを配る。
さらには、昨日万事屋をダンスの渦に巻き込んだペッピーノ&ペッピーナの2人が、「ヒィーハーーーッ!」と叫びながら、焼きたてでチーズが限界まで伸びる特大ペパロニピザをテーブルへ叩きつけた。
「な、ななな、何これぇぇぇ!!!???」
モモが、テーブルを埋め尽くした「各次元の神レベルの料理」の絶景に絶叫した。
「すごい……! ラーメンにチーズにピザにマカロンにサバの味噌煮……!? どの料理からも、漫画の集中線みたいなあり得ないオーラが出てるよ!!」
オカルンがメガネを落としかけてパニックになり、ジジと愛羅は「美味そうすぎるーーーっ!」とヨダレを滝のように流している。バモラも肉まんを見て目をキラキラさせていた。
「ニャーアハハハ! 最高じゃねえか! 星子、お祓いの条件なんて後回しだ! まずは飯だ、飯を食うぞォォォ!!」
招き猫のターボババアが真っ先にピザに飛びつく。
「あーあ、条件言う前にタダ飯の弾幕に捕まっちゃった。……ま、いっか! お前ら、この街の飲食店連合の奢りはガチで美味いからな! 条件は後で聞くから、今はとにかく食えェェェ!!」
銀時が30円の絶望を綺麗さっぱり忘れてラーメンの箸を割り、神楽はすでに潘の肉まんを一口で3個吸い込んでいた。条件を言おうとした星子も、「……まぁ、このスープ、ただの出汁じゃないわね」と節乃のスープを一口啜って目を見開いている。こうして、ダンダダン一行へのスピリチュアルな「条件」は、美味しすぎる各次元のグルメの湯気の中に、綺麗にフェードアウトしていくのだった――。
「ふぅ……美味かったわねぇ。特にあのおばあさんのスープ、あれは霊力の底上げにもなる極上の呪物みたいなもんじゃないの。あのピザ屋のイカれた兄ちゃんたちのピザも悪くなかったわ」
飲食店連合の豪華すぎるご馳走をすっかり平らげ、綾瀬星子は満足げにキセルをふかした。招き猫の姿のターボババアも「ニャーアハハ! 満足満足! これなら文句はねえな!」と、肉まんでパンパンになったお腹を叩いている。
モモやオカルン、金太たちも「この街の食べ物、美味しすぎて脳が溶けるかと思った……」と、完全にフードコマ状態(食後の幸福な脱力)に陥っていた。
「ヘッヘッヘ、満足していただけましたかね、星子ママ。……で、そろそろ例の『条件』ってやつを教えてもらえます? ウチら万事屋、ポイントカードの呪縛を解くためなら、明日にでも編集長の後頭部にチョップくらいかます覚悟はできてるんで」
銀時が再び揉み手をしながらにじり寄ると、星子はフッと笑ってキセルの煙を彼の顔に吹きかけた。
「いいわ、あの条件は取り止めよ。これだけ美味いタダ飯をご馳走になったんだ、アタシのプライドにかけて、あんたたちのその『財布の病気』、今ここで無償で診てあげるわ」
「よっしゃァァァ!! さすがジャンププラスの良心!! 太っ腹ァァァ!!」
「ちょっと銀さん、それ以上は親会社のプラットフォームの壁を刺激するからやめて!!」
新八が慌てて止める中、星子はすっと目を細め、カウンターに置かれた万事屋の「30円しか入っていない財布」に、シワの刻まれた手をかざした。同時に、招き猫のターボババアも隣に座り、不気味に目を光らせて財布の背後にある「世界の歪み」を凝視し始める。
「…………ちッ、何だよこれ。気味の悪い……」
ターボババアが小さく舌打ちをした。星子の額からも、それまでの余裕な表情が消え、一筋の冷たい汗が流れ落ちる。
「……星子さん? ど、どうなんですか? やっぱり僕たちの財布には、悪徳企業の怨念とか、クラーケンの呪いとかが憑いてるんですか!?」
新八がゴクリと唾を飲み込んで尋ねると、星子はゆっくりと手を下ろし、呆れと戦慄が混ざったような顔で銀時たちを見据えた。
「……あんたたち、よくこれまで五体満足で生きてこられたわね。これ、怨念とかそんな可愛いもんじゃないわよ。『あまりにもしつこくて、根深い世界の因果』が財布の底にガッチリと張り付いてるわ。言っちゃ悪いけど、こんなの簡単には剥がせない」
「ええええええ!? 剥がせないの!? スピリチュアルのガチプロがサジ投げるレベルの呪いなの、これ!?」
銀時がガガーンと効果音が聞こえそうな顔でショックを受ける。
「当たり前でしょ! あんたたちの背後にある『お約束』っていう概念の力、アタシらの世界の深淵にいる宇宙人や妖怪の呪いより、遥かにタチが悪いわよ!」
星子は呆れたようにため息をつき、万事屋の3人の頭をまとめてキセルでパチンと叩いた。
「ま、今回はアタシとターボババアの霊力で、その因果の底を【今のところ押さえるだけで精一杯】ってところね。完全に解呪したけりゃ、定期的にアタシの家に通ってきなさい。地道に因果の歪みを削っていくしかないわ」
「定期的にお祓い通い確定ーーーっ!!! 病院のリハビリかよォォォ!!! つまり、今回も手元資金は相変わらずの【30円】のまま据え置きってことですかァァァ!!!」
新八の魂の絶叫がスナックお登勢の店内に木霊する。
「ま、まあまあ坂田さん、メガネさん……。とりあえず、その『30円に強制収束する世界線の暴走』が、星子さんのおかげで『30円を維持する最低限のセーフティ』として固定されたと思えば、最悪の事態(借金地獄)は免れてるわけですし……!」
オカルンがメタ知識保有者として必死にフォローを入れるが、銀時と神楽の目は完全に死んでいた。
「フン……いいネ。毎週あの家に通って、そのたびにおばあちゃんのタダ飯を勝手に冷蔵庫から吸い尽くしてやるアル……」
「そうだな……お祓いのたびに綾瀬家の家計を物理的に圧迫して、ウチの30円の恨みを食費で相殺してやるわ……」
「やめてよ!? 呪いを抑えてもらう側の態度じゃないでしょ、あんたたち!!」
モモが思わず拳を握りしめてツッコんだ。
結局、ダンダダン一行という最強のスピリチュアル集団を味方に付けたものの、万事屋の極貧生活の仕様は変わらずの【30円】。しかし、お互いに世界の裏事情を知り尽くした「メタ知識保有者」のご近所さんがまた一つ増え、複合都市の日常は、より賑やかで、より騒がしい方向へと舵を切るのだった。
(第2章・第19話「まさかの邂逅編」 完)
はい、というわけでまさかの『ダンダダン』の面々(メタ知識保有者)がご近所さんとして参戦です
多分今後の準レギュラーになるかと思います