やっと仕事やら台風やらが落ち着いた……
ようやく投稿再開できる
「……はぁ。やっぱりアイドルの楽屋にはマイナスイオンなんて流れてなかったね、新八。あそこはただの『デュエマの環境デッキの煮こごり』だよ。銀さんもう、街で可愛い女の子を見かけるたびに、背後にパワー14000の巨大カブトムシとか世界を滅ぼす神様(ゼニス)が浮いてないか、ビクビクして網膜が千切れそうなんだけど」
万事屋の居間で、銀時は30円しか入っていない財布をパチパチと虚しく開け閉めしていた。その横では、前回のアイドルインフレ博覧会を経て「この人たちをガチで介護しないと、カードの効果の余波で物理的に消滅する」と確信したオカルン、モモ、アイラの3人が、すっかり万事屋の常駐スタッフのような顔でコタツに入っていた。
「諦めてください銀さん。でも、こうしてダンダダンのみんなが本格的にシフトに入ってくれることになりましたし、これから地道にまともな依頼をこなしていけば――」
「いや、地道にって言ってもよ、新八。そもそもウチ、今まともな依頼が1件も来てないんだけど。今月の収入予測、完全にこの【30円】でフィニッシュなんだけど」
神楽が「暇ならオカルンのタマ(呪物)でも探すパシリの依頼でもデッチ上げるネ」と鼻をほじっていると、
ドンドンドンドン!!
「 万事屋、真選組! 緊急要請です、速やかに出動してください!」
万事屋のドアを激しく叩く音と共に、お馴染みの凛とした声が響き渡った。
慌ててドアを開けると、そこには特務捜査班の朱鳶が息を切らせて立っており、その後ろには「やれやれ、今回の事件は少し毛色が違うねぇ」と呟く青衣。さらには、隣の真選組屯所から呼び出された近藤勲、土方十四郎、沖田総悟の3人を、公安局の尾刃カンナが「おい、ゴリラども。お巡りの仕事だ、とっとと歩け」と犬耳をピクリと動かしながら連行してくるところだった。
「あれ、警察3人娘に真選組の税金泥棒どもまで揃ってどうしたの? またどこぞの宇宙刑事やパトレンジャーが銀行強盗相手に過剰防衛して街を更地にしたの?」
銀時がやれやれと首を振りながら、全員で警察のパトカーに乗り込み、街外れへと移動を始める。
運転席の朱鳶が、バックミラー越しに真剣な面持ちで口を開いた。
「いえ、今回はホロウ災害でも過剰防衛でもありません。……街外れにある『複合都市中央美術館』に、【犯行予告状】が届いたのです。それも、同時に2枚も」
「予告状ぉ? ああ、あのわざわざ『今からお宝盗みに行きますんでヨロシク☆』って紙切れ送りつけてくる、自意識過剰な泥棒の伝統芸能ネ」
神楽が肉まんをモグモグしながら言う。
「そう。1枚目は、あなたたちも第1章で遭遇している、あの神出鬼没の『ルパン三世一味』からのものです」
土方が煙草に火をつけながら、「あいつらか。またウォーカーギャリアとかいうロボットでチェイスを始める気か」と忌々しそうに呟く。
「問題は、もう1枚の方なんです……」
朱鳶の隣で、青衣がナビの画面を操作し、もう1枚の予告状の画像を後部座席の万事屋とダンダダン一行に見せた。そこには、ルパンのユーモラスなマークとは一線を画す、スタイリッシュでどこかレトロな鳥のエンブレムが刻まれていた。
「……これまた、私たちの元いた世界でも噂に聞く、聞き覚えのある名前が書かれていました。その名は――【怪盗団モッキンバード】」
その名を耳にした瞬間。
銀時、新八、そしてメタ知識保有者のオカルンの3人の脳内で、他作品の裏設定ページが一斉に音を立ててめくれ上がった。
「モッキンバードォォォ!!!???」
銀時と新八が、完璧にハモった驚愕の声を車内に響かせる。
「ちょっと坂田さん、メガネさん! 僕のメタ知識のノートにも記述があります! ゼンゼロの世界において、かつて新エリー都の歴史の裏で暗躍し、富豪たちの不当なお宝を盗み出しては弱者に分け与えていたという、あの伝説の義賊……! アニメやゲームの枠を超えて、本物の『大怪盗の二大巨頭』が、一つの美術館のお宝を巡って激突しようとしてるってことですかァァァ!?」
オカルンがメガネをズレさせながらガタガタと震え出した。
「確定だ! 確定演出入ったアル!!」
神楽が窓の外を指差して叫ぶ。
「平成のレジェンド泥棒(ルパン)の横に、令和の最新スタイリッシュ怪盗団(モッキンバード)が並んだネ! これ完全に、警備のために美術館を包囲した朱鳶ちゃんたちが、また過剰防衛で美術館ごと国宝を爆破解体するフラグがビンビンに立ってるアル!!」
「泥棒の縄張り争いの警護にウチらを巻き込むなァァァ!!! 30円のウチらが大怪盗のトリックに勝てるわけねーだろォォォ!!!」
新八の悲痛なツッコミがパトカーの中に響く中、一行を乗せた車は、大怪盗たちの華麗なる(そしてこの街特有の過剰な物理爆発が予想される)戦場へと向かって、猛スピードで突き進んでいくのだった――!
「うおー、もの物々しい。っていうか警備の数が完全にデモ隊を鎮圧する時のそれじゃん。朱鳶ちゃん、やる気満々すぎない?」
複合都市中央美術館に到着した坂田銀時は、敷地を埋め尽くすパトカーと、盾を構えて一糸乱れぬフォーメーションを組む警察隊の姿にドン引きしていた。
真選組の土方や沖田、そして「手伝ってあげる」と健気に同行してきたオカルン、モモ、アイラのボランティア3人組も、あまりの緊迫感にゴクリと唾を呑み込む。刻一刻と予告時間が迫る中、銀時はパトカーのボンネットに腰掛け、今回のターゲットについて確認も兼ねて朱鳶に尋ねてみた。
「ねぇ、朱鳶ちゃん。ルパンの方は第1章でウォーカーギャリア乗り回すただの泥棒だって知ってるけどさ。その『モッキンバード』って怪盗団は、この複合都市ではどんな感じで営業してんの?」
朱鳶は警察手帳のメモを開き、真剣な顔で説明を始めた。
「記録によると彼らはただの泥棒ではありません。不当に隠された真実を白昼の下に曝け出すため、あるいは不当に奪われたものを取り戻すためにのみ盗みを働く、いわば『義賊』です。……ただ、最近になって、この複合都市のバグのせいか、新メンバーが増えたという不穏な噂がありまして……」
「新メンバーネ? どうせあれアル、またどっかの世界から引き抜かれてきたヤバいインフレの塊ネ。ウチらのメタ知識のページがまた高速でめくれてるアル」
神楽が酢昆布を齧りながら言う。その時、オカルンが腕時計の針を見て「あ、坂田さん! 予告時間の午後8時、ちょうどです!」と叫んだ。
――シュウウウウウウン……パッ!!!
その瞬間、美術館の広大な敷地を照らしていた全ての照明が突如として一斉にシャットダウンし、辺りは完全な暗闇に包まれた。
「停電!? いや、自家発電装置が――」
朱鳶が叫ぶよりも早く、夜空に浮かぶ満月をバックに、美術館の巨大な屋根の上にパッと眩しいスポットライトが照射された。
そこには、世界中の誰もが知る、あの緑のジャケットを着た男と、その相棒たちが並び立っていた。
「ヘイヘイヘイ! 複合都市のお巡りさんたち、今夜もご苦労サマ! 今宵のターゲットは、俺たちルパン三世一味が綺麗さっぱり頂いていくぜぇ!」
ルパン三世が軽快に不敵な笑みを浮かべ、隣で次元大介が帽子の目深さを直しながらマグナムを構え、石川五ェ門が静かに斬鉄剣の柄に手をかけて佇んでいる。しかし、驚愕はそれだけで終わらなかった。そのルパン一味のすぐ隣。これまた月光を浴びて、スタイリッシュなコートを翻した『怪盗団モッキンバード』が、堂々とその姿を現したのだ。
「フッ、ルパン。この美術館に眠る『ある不当な真実』……曝け出すのは、我らモッキンバードだ」
青い瞳を光らせ、伝説の怪盗団のリーダーとしての威厳を放つヒューゴ。そして、朱鳶が言っていた「噂の新メンバー」として彼の両隣に並び立っていたのは、他作品のメタ知識を持つ万事屋とオカルンの脳内を1秒でフリーズさせる、あまりにも衝撃的な『怪盗のインフレ混成部隊』だった。
「神秘と秘密で包み込む キュアアルカナ・シャドウ!さあ、迷宮へ誘いましょう」
紫色のしずく型の装飾が多数あしらわれている黒を基調としたノースリーブワンピースの上から黒いケープを羽織って、不気味ながらも美しい圧倒的なオーラを放つ、名探偵プリキュアのキュアアルカナ・シャドウ。
「フフ、皆さん、こんばんは。不当に隠された美術品は、すべて慈愛を以て私が『救済』いたしますね」
純白のスーツとマントの怪盗服に身を包み、優しく微笑みながら長銃身の拳銃をステッキのようにくるりと回すブルアカの『慈愛の怪盗』こと清澄アキラ。
その屋根の上の壮観すぎる大怪盗の二大巨頭連合を完璧に網膜に捉えた瞬間、銀時と新八、そしてオカルンの3人は、同時に顎が外れるほどの絶叫を夜空に響かせた。
「ひ、ひぃぃぃぃ!!! モッキンバードの新メンバーって、『大怪盗の黒プリキュア』と、『ブルアカのワイルドハントの脱獄大怪盗』じゃないですかァァァ!!! 混成部隊のジャンルとレアリティの配分が歪すぎるだろォォォ!!!」
オカルンがメガネをズレさせながらガタガタ震える。
「確定だ! 確定演出入ったアル!!」
神楽が叫ぶ。
「平成のレジェンド泥棒と、令和のスタイリッシュ義賊の横に、ガチのプリキュアとヘリを私物化して世界を騒がせる大怪盗が並んだネ! これ警備してる朱鳶ちゃんたちの過剰防衛の前に、美術館ごと国宝がトリックの余波で粉砕されるフラグが天井突破したアル!!」
「大怪盗たちの華麗なキャットファイトにウチらを巻き込むなァァァ!!! 30円のウチらがプリキュアと大怪盗のトリックに勝てるわけねーだろォォォ!!!」
新八の悲痛なツッコミが響き渡る中、屋根の上の怪盗たちは不敵に笑い、同時に美術館の天窓をブチ破って内部へと一斉に飛び込んだ!その直後、内部は一瞬にして敵も味方も入り乱れる大乱戦の渦と化した。ルパンがワイヤーガンで飛び回れば、次元のマジックのような早撃ちが炸裂し、五ェ門の斬鉄剣が美術品のレプリカを綺麗に両断していく。さらに清澄アキラが「救済の時間です」とステッキのような銃を乱射し、キュアアルカナ・シャドウが不気味な紫色の光線で警察の包囲網を翻弄する。
「おのれ、これ以上の不法行為は容赦しません!」
朱鳶とカンナが過剰な弾幕で応戦し、青衣が電磁三節棍でルパンの足を引っかける。新八と土方が刀を振るい、変身したオカルンとサイキックを全開にしたモモがアキラの弾丸を必死に弾き飛ばす。しかし、その凄まじい大乱戦の最中だった。
「――フッ、チェックメイトだ」
ヒューゴが闇に紛れた一瞬の隙を突き、展示ケースから不当に隠されていた目的の美術品を見事な手際で鮮やかに奪い去った。
「しまっ……! ターゲットを奪われました!」
朱鳶が顔色を変えるが、万事屋と真選組、そして第六課の警察3人娘の連携は伊達ではない。即座にフォーメーションを切り替え、お宝を手にしたヒューゴとアキラ、シャドウの3人を完全に逃げ場のない中央ロビーへと包囲することに成功した。
「観念しな、モッキンバード。お前らのスタイリッシュな逃走ルートは、ウチの税金泥棒どもと過剰防衛の塊(警察)によって完全に封鎖されてんだよ」
銀時が洞爺湖を肩に担ぎ、勝ち誇ったように鼻をほじった。だが、包囲されたはずのヒューゴは、焦るどころか不敵にニヤリと口元を歪めた。
「フッ……さすがは複合都市の治安維持部隊。だが、甘いな。我らモッキンバードの新メンバーはこれだけではないのだよ」
「は? まだインフレの隠し玉がいるわけ?」
銀時の顔が引きつった、その瞬間。
バリバリバリガラガラドシャァァァン!!!
美術館の巨大な天井が、まるで紙屑のように豪快に踏み抜かれ、無数の瓦礫と共に一人の影がロビーのど真ん中へと華麗に降り立った。
【ハッハッハッハッハッハッ!】
変身ベルトから、空間を揺るがすような不敵な笑い声のシステム音声が鳴り響く。
【ライダー! ノクス! ノクス! ノクス! シャドウ!】
青と白のツートンカラーのアーマーに身を包み、怪しくオレンジ色に光るバイザーを輝かせた謎の戦士。
「闇に染まったこの街の腐敗……妹に代わって、俺がすべてを影に沈めよう」
仮面ライダーノクス(この世界ではキュアアルカナ・シャドウの兄)が、圧倒的なヒーロー(怪盗)のオーラを放って着地した。
「ひ、ひぃぃぃぃ!!! プリキュアの兄貴が仮面ライダーになって怪盗団の用心棒として降臨したよォォォ!!! 家族揃ってなんて物騒な闇の血統なんだよォォォ!!」
オカルンがメガネをズレさせながらガタガタ震える。しかし、本当の絶望はノクスの足元ではなく、天井に開いた巨大な穴の向こう側にあった。ゴゴゴゴゴと地鳴りが響き、夜空を遮るようにして、巨大な鋼鉄の影がロビーの全員を冷酷に見下ろしていた。
【怪盗! ガッタイム!!】
カシャアアアン!! と凄まじい駆動音が響き渡り、天井の穴から、3機のダイヤルファイターが変形合体した巨大ロボットの顔面がヌッと突き出された。怪盗戦隊ルパンレンジャーが誇る、巨大な質量兵器――【ルパンカイザー】である。
「新八ィィィ! 確定ネ! 完全に確定して世界線の治安が更地に戻ったアル!!」
神楽が巨大ロボットの見下ろす圧倒的な質量に吹き飛ばされそうになりながら叫ぶ。
「モッキンバードの新メンバー、仮面ライダーのパワーで天井ブチ抜いた後に、ルパン一味の巨大ロボットと『怪盗ガッタイム(共闘)』してウチらを美術館ごと踏み潰しにきたネ!!」
「怪盗団が隠し玉に仮装じゃなくてガチの巨大ロボット呼んでくるんじゃねぇぇぇ!!! これもう泥棒の捕物帳じゃなくてただのレイドバトルだろォォォ!!!」
新八の悲痛なツッコミが、ルパンカイザーの重厚なエンジン音にかき消される。仮面ライダーの乱入、そして巨大怪盗ロボの降臨により、美術館の警備戦線は、一瞬にして街ごと消滅しかねない最大級の超重量級バトルロイヤルへと突入しようとしていた――!
「待てェェェいルパン! 逃がさんぞォォォ!!」
ルパンカイザーの巨大な質量を前に美術館が物理的に半壊しかけたその瞬間、地鳴りのようなサイレンと共に、特車のパトカーを激しく横滑りさせて銭形警部が戦場へと乱入した。
「とっつぁんのイングラムだァァァ! おいお前ら、あのパトレイバーの盾に隠れろォォォ!!」
銀時の叫びと同時に、銭形が操縦するイングラムが電磁警棒を構えてサイズ差など知ったことかと言わんばかりにルパンカイザーの巨体にガチの関節技を仕掛けにいく。さらに朱鳶と青衣のハイテク重火器、カンナの容赦のない銃撃、そして変身したオカルンとモモのサイキックがノクスとシャドウの足止めに狂ったように炸裂した。
だが、大怪盗たちの初見殺しなコンビネーションは、その一歩先を行っていた。
「ヘイヘイ、そんな大雑把な攻撃が俺たちに当たると思うなよ?……グッティ、やっちまいな!」
操縦席のルパンレッドが不敵に笑い、ダイヤルを回す。
カシャアアアン!!
「え!?」
新八の目が点になった。イングラムの警棒と、朱鳶たちの全火力がルパンカイザーに直撃する――まさにそのゼロ距離の寸前で、巨大ロボが『3機のダイヤルファイターとグッドストライカー』にパカッと【ゲッターロボじみた超高速分離】を敢行したのである。全ての攻撃がただの虚空を切り裂き、バラバラになった飛行メカが警察たちの頭上を軽快にすり抜けていく。
「ちょっと待ってネ!? 当たる寸前でバラバラになるとか格ゲーの無敵判定のバグアルかコラァァァ!!」
神楽が夜兎の怪力で瓦礫を投げつけるが、さらにキュアアルカナ・シャドウが杖を掲げ、ノクスがベルトを操作した。
【シャドウ!リデンプション!】
「――晴天の光を遮り、影よ、世界を覆え」
2人が放った影のエネルギーが美術館の全視野を真っ黒な闇で包み込み、清澄アキラの銃撃が煙幕代わりに炸裂する。数秒後、朱鳶のライトが闇を照らし出した時には、天井の大きな穴の向こう側、満月をバックにルパンのウォーカーギャリアとモッキンバードたちを乗せたダイヤルファイターとグッドストライカーがお宝を抱えて夜空の彼方へと華麗に消え去っていくところだった。
「クソォォォォォ!! またしても目の前でまんまと逃げられたァァァ!!」
土方が地面を殴りつけ、銭形警部が「おのれルパン、次こそは必ず逮捕してやるからなァァ!」と夜空に向かって咆哮する。
「……あーあ。結局お宝は盗まれるわ、首謀者は全員逃げるわ……。朱鳶ちゃん、これウチらボランティアの応援として駆り出されたわけだけど、また『地域貢献30ポイント』でフィニッシュ? 銀さんもう今月の30円を握りしめてパチンコ屋のトイレットペーパーを1巻きずつ盗む怪盗団『モルモット』に転職するわ」
銀時が洞爺湖を杖代わりに、完全に魂の抜けた魚の目で嘆いていると、
「……待ってください、坂田殿。ロビーの展示台に、何か残されています」
青衣が電磁三節棍の先で指し示した場所。ヒューゴがお宝を奪い去った跡地には、青く光る1枚の『データドライブ』が、ぽつんと置き土産として残されていた。
「これ、モッキンバードのエンブレムが入ったデータだわ……。ちょっとオカルン、アンタのスマホで読み込んでみなさいよ」
モモに促され、オカルンがガタガタ震える手でデータをスキャンすると、画面に膨大な内部告発資料が映し出された。
「……ッ!? 坂田さん、これ、この美術館に展示されている国宝や美術品の多くは、裏社会の不当なルートで売買された『盗品』か、ガチの『偽物』ばかりだっていう証拠データです! モッキンバードは、この美術館の裏の悪徳な汚職を白昼の下に曝け出すために、最初から仕組んでたんだ……!」
「な、何ですって……!? 治安維持局、ただちにこのデータを本部に送信! 美術館の経営陣の身柄を確保します!」
朱鳶が犬耳をピシッと立てて即座に無線を飛ばす。大怪盗たちの真の目的は、美術品の強奪ではなく、街の真実を暴くことだったのだ。そのおかげで、今回の事件は「警察の完全な大失態」から一転して「万事屋の協力による巨悪の汚職摘発」という、素晴らしい大戦果へと書類上書き換えられることになった。
「……フッ、やるじゃない。あの泥棒たち、ウチらに貸しを作りたくなかったってわけね」
モモがやれやれと微笑む。
そして、この想定外の『置き土産』は、万事屋のあの不滅の仕様(呪い)に対して、かつてない奇跡を引き起こそうとしていた――。
「いやー、持つべきものはやっぱりスタイリッシュな令和の義賊だねぇ! お役所仕事の地域貢献ポイントじゃなくて、ガチの諭吉が詰まった封筒がウチの机の上に鎮座してるなんて、第1章以来の奇跡だよ!」
美術館の汚職摘発の手柄により、異例の「現金支給」の臨時報酬を無事に受け取った万事屋一行と真選組の面々は、ホクホクの満面な笑みを浮かべて商店街へと帰還していた。今回はモッキンバードの置き土産データのおかげで、一階のお登勢さんの「家賃強制更新料徴収システム」をすり抜けることにも奇跡的に成功。財布の中身は数次元分のインフレを見事にはじき返した、正真正銘の「大金」で満たされている。
「本当ですよ! ダンダダンのみんながボランティアで手伝ってくれたおかげで、今回は1円も経費を引かれずに済みました! これなら今月のジャンプも酢昆布も買い放題です!」
新八が封筒を大事そうに抱えて喜び、変身を解いたオカルンやモモ、アイラも「よかったね坂田さん! これで餓死する心配はなくなったじゃない!」と我が事のように胸を撫で下ろしている。
「フン、ウチは現金もいいけど、命がけで怪盗ロボの無敵判定を避けたんだから、自分への最高のご褒美が必要ネ! 銀ちゃん、早く冷蔵庫に入れてあった『あの特注品』を出すヨロシ!」
神楽に催促され、銀時は「分かってるって。この瞬間のために、パチンコのなけなしの貯金を叩いてお向かいの坂本商店の高級フェアで買っておいたんだからな」と鼻歌交じりで万事屋の冷蔵庫の扉を勢いよく開け放った。同じ頃、お隣の真選組屯所でも、土方十四郎が「フゥ……大怪盗どもに翻弄されて神経がすり減った。こんな時は、あの『特別発注した最高級エッグマヨネーズ(1本5000円)』をダイレクトに吸引するに限る……」と、これまたウキウキで屯所の冷蔵庫を開けていた。しかし――。
万事屋の冷蔵庫のチルド室。そして真選組の冷蔵庫の特等席。そこにあるはずだった、銀時が命より愛する『特製・大盛りいちごパフェ(練乳マシマシ仕様)』と、土方が人生を賭けている『最高級マヨネーズ』の姿が、影も形もなく、綺麗さっぱり消え失せていたのである。
「…………あれ?」
銀時の手がピタリと止まる。
代わりに、それぞれの冷蔵庫のガランとした棚のど真ん中に、スタイリッシュな鳥のエンブレムが刻まれた、実にお洒落な1枚のカードがポツンと残されていた。そこには、流麗な筆記体でこう書かれていた。
――『悪徳企業の手口と我々怪盗の戦術の授業料、確かに頂戴しました。 怪盗団モッキンバード』
「「――――――――ッッッ!!!」」
万事屋の2階、そして隣の真選組屯所から、同時に世界を震撼させるほどの絶望の咆哮が夜空に向かって響き渡った。
「モッキンバードォォォォォ!!! お前ら真実を白昼の下に曝け出す義賊じゃなかったのかよォォォ!!! なんで他人の冷蔵庫の糖分の塊を白昼の下に曝け出して盗んでってんだよォォォ!!!」
銀時が冷蔵庫に頭を突っ込んで号泣し、隣の屯所からは「おのれ泥棒猫がァァァ! 俺の最高級エッグマヨをどこへやったァァァ! 実力行使で逮捕だァァァ!!」という土方の狂ったような怒号と銃声が響いてくる。
「あ、あの、坂田さん……。お金(報酬)は減ってないから実質大勝利なんですけど……一番大事な『心の支え』を完璧なトリックで盗まれちゃいましたね……」
オカルンが引きつった笑顔で慰めようとした、まさにその瞬間だった。
――ピキィィィィィン!!
銀時の財布の中で、謎の不気味な音が響いた。他作品のメタ知識が、最悪の『警告』を脳内に叩き込んでくる。
「……あ、アカン。新八、オカルン……。今、この複合都市の『世界の因果のバグ(強制力)』が、臨時報酬の封筒に直接作用した気がするんだけど……」
銀時が恐る恐る財布を開けると、ついさっきまで数万円の諭吉が詰まっていたはずの封筒の中身が、まるで手品のようにサラサラと光の粒子になって消え失せ、底の方からお馴染みの金属音がチリンと鳴り響いた。そこに残されていたのは、実家のような安心感、そして完全なる絶望のシンボル――【30円】。
「消えたァァァァァ!!! 泥棒に盗まれたわけでも、お登勢さんに回収されたわけでもないのに、世界線の強制力だけで一瞬で30円にリセットされたァァァ!!!」
新八がひっくり返って絶叫する。
「やっぱり剥がれてないじゃないのよあのしつこい呪い(お約束)ぃぃぃ!!」
モモのツッコミが響く中、お宝(パフェとマヨ)を盗まれ、報酬も世界のバグによって無慈悲に強制強制リセットされた銀時と土方は、並んで夜空の満月に向かって「モッキンバードォォォ!! 世界のバグのバカヤローォォォ!!」と涙のプロテストを叫び続けるのだった。
大怪盗たちの華麗な置き土産と、容赦のない世界の仕様。さらにカオスと理不尽の純度を上げた複合都市で、手元資金30円に戻った万事屋一行と、完全に彼らの介護スタッフとして24時間体制のシフトを組み始めたダンダダン一行の「仕事拡大(サバイバル)」は、秋の夜長を越えても、まだまだ終わる気配を見せないのだった。
(第2章・第23話「正義(?)の怪盗編」 完)
はい、今回は怪盗回でした
アルカナシャドウとノクスが兄妹っていう設定はYouTubeで見たるるかちゃんが仮面ライダーノクスに変身するショート動画みて思いつきました
皆さんは好きな怪盗キャラはいますか?