最初は可愛らしいお客様が来たようです
「……ダメだ、もう動けん。俺の魂は昨日、宇宙刑事のレーザーブレードの輝きと共に大気圏の彼方へ消滅した。今日から俺を『坂田・元・侍』と呼んでくれ……」
昨日の一連の宇宙規模の警察沙汰(と、その後の1階のお登勢さんからの大説教)により、坂田銀時は居間の畳の上で完全に干物と化していた。
「僕だってメガネのフレームが歪むくらい疲れてますよ……。でも銀さん、今日中に何か仕事を見つけないと、今日の晩御飯は本当に定春のドッグフード(の残りカス)を神楽ちゃんと奪い合うことになりますからね!?」
志村新八がボロ雑巾のようになった体を震わせながら、ガラガラの喉でツッコむ。
「新八、諦めるネ。私はもう定春の耳を齧ってビタミンを補給する術を身につけたアル」
「ヌー……」(神楽の腕の中で、なぜかまだ拉致され続けているアルマジロのジョンが怯える)
万事屋がかつてないほどの餓死寸前&精神崩壊の危機に瀕していた、その時。トントン、と。いつもの暴動めいた叩き方ではない、信じられないほど上品で控えめなノックの音が玄関から響いた。
「ひゃいっ!? け、警察!? 朱鳶班長がうちの違法駐車(定春)の件で臨検にきたんですか!?」
新八がガタガタ震えながらドアを開けると、そこには……この複合都市の狂気とは一切無縁に見える、信じられないほど愛らしい光景が広がっていた。
「あのぉ……、ここが何でも屋の『よろずや』さん、ですか……?」
そこに立っていたのは、頭に大きな葉っぱを乗せ、どこかぽやぽやとした雰囲気を纏った超絶プリティなエルフの幼女——『えがおのすてきなトリッカル(Ericka)』の世界からやってきた、ウイだった。しかも、そのウイの足元には、頬を赤く染めた黄色い電気ネズミ——みんな大好き、世界的人気コンテンツの絶対的王者、ピカチュウがちょこんと座っている。
「ピ、ピカチュウゥゥゥ!!! 任天堂と株式会社ポケモンの世界最高峰の神獣が、なんで個人経営のソシャゲの幼女と手を組んでうちに来てんだよォォォ!!! 事務所のパワーバランスどうなってんだ!!」
新八が秒速でメタ絶叫を上げるが、銀時と神楽の反応は違った。
「……ま、眩しいッ……! なんだこの、邪気が一切ない純度100%のマイナスイオンは……! 日頃のパチンコの負けオーラが、一瞬で浄化されていく……っ!」
「あ、頭がポカポカするネ……。昨日、聖園ミカ(ゴリラ)を見た時の恐怖が、お風呂上がりのバスタオルみたいに優しく包み込まれていくアル……」
なんと、ウイがただそこに立っているだけで、彼女の持つ固有の能力(周りの人を無条件で幸せにする、ほんわかとした波動)が万事屋の薄汚れた居間に充満し、餓死寸前だった三人の心がみるみるうちに幸福感で満たされていく。
「ピカチュウ〜♪」
ピカチュウが可愛く鳴きながら、銀時の膝の上にぴょんと乗った。
「うおおおっ、ピカさん!? ピカ様!? 待って、俺をそんな可愛い目で見ないで! 汚れた大人の脳みそがメルトダウンしちゃう! 幸せすぎて逆に怖い! これが世界を獲った王者の風格か……!」
銀時はピカチュウを撫で回しながら、すっかり骨抜きになっていた。
「あの、おじさんたち、大丈夫ですか……?」
ウイが小首をかしげる。
「実は私、どうしても探してほしいものがあって、このピカチュウちゃんに案内してもらってここに来たんです」
「いいよ! 何でも探すよ! たとえそれが、任天堂の偉い人のスキャンダルだとしても、この銀ちゃんが命がけで揉み消してやるからね!」
「銀さん、依頼人の前で最低な大人になるのやめてください!! ウイちゃん、気にしないで言ってごらん?」
新八が優しく促すと、ウイはちょっぴり悲しそうな顔をして、小さな手をぎゅっと握りしめた。
「あのね……私がいつも乗っている、カエルの『エル』が……朝起きたら、いなくなっちゃったの。複合都市の大きな通りを歩いてたら、急に大きな黄色いロボットと、パトカーみたいなロボット(※ルパンと銭形)がドカーンって走ってきて……。エル、びっくりしてどこかに跳んで行っちゃったみたいで……」
「あいつらのせいかァァァオオオ!!!」
新八の怒りのツッコミが炸裂する。昨日のロボットチェイスの被害者が、こんな可愛い幼女のペット(カエル)だったとは。
「ウイちゃん、安心するヨ。そのエラ呼吸するカエル、神楽ちゃんがこの街のフランス料理屋の厨房から力ずくで奪い返してやるネ!」
「フランス料理屋に売られた前提で話進めるな! ウイちゃん、そのカエルのエルくんの特徴は?」
「ええと、とっても大きくて、背中にサドルがついてて、私が乗れるくらい、かっこいいカエルなんです……!」
「……ん? 乗れるくらいデカいカエル?」
銀時が少しだけ正気に戻り、頭の中に一つの『メタ知識』が浮かび上がった。
「おい、新八。乗れるデカいカエルって、それ完全に……あの『NARUTO』のガマ親分クラスか、あるいはファンタジー系の結構な凶暴モンスターの部類じゃねーの? 昨日の公園の生態系(プレデターなど)を考えると、下手な場所に迷い込んでたら、今頃どっかの肉食獣の胃袋の中だぞ……?」
「ピカ、ピカチュウ!!」
ピカチュウが、銀時の袖を引っ張りながら、窓の外の『特定の方向』を不安そうに指差した。こうして、万事屋一行は複合都市での「初めてのまともな(?)仕事」として、ウイの幸せオーラに癒されながら、行方不明の巨大カエル・エルを探すため、再び混沌の街へと繰り出すことになるのだった——。
「カエルのエル、どこに行っちゃったのぉ……」
「ピカ、ピカヂュウ……」
ウイがシクシクと涙ぐみ、ピカチュウがその小さな肩をなだめる中、万事屋一行はピカチュウが指差した「ちょっとした茂みのある裏路地」へと足を踏み入れていた。
「大丈夫だってウイちゃん! この銀ちゃんが、その辺のドブ川からおたまじゃくし100匹くらいすくってきて、エキゾチックな巨大カエルに品種改良してやるからよ!」
「品種改良って何ですか!? 別の生き物になっちゃうでしょ! ちゃんとエルくんを探してください!」
新八が声を荒らげた、その時。
路地の奥から「……ベチャ、ベチャ……」という、生理的嫌悪感を極限まで高めたような不気味な足音が響いてきた。
「ん? なんか来たアル。……って、ゲェェェッ!? 何アレ、めちゃくちゃキモいアル!!」
神楽が思わず一歩引くほどの巨体が、暗闇からヌッと姿を現した。
それは、ウイが言っていた「かっこいいカエル」では断じてなかった。
体長数メートル、ぬらぬらとした青緑色の皮膚に、すべてを吸い込みそうな虚無の瞳。それは、異世界アニメ『この素晴らしい世界に祝福を!』の冒頭で、初心者の冒険者(と駄女神)を阿鼻叫喚の地獄へと突き落とす最凶のザコモンスター——ジャイアントトードだった!
「ジャ、ジャイアントトードォォォ!!! 『このすば』の、あのトラウマカエルじゃねーかァァァ!!! ウイちゃん、これが君の言うエルくんなの!?」
「ううん……違うの。エルはもっと……おめめがクリクリしてて、可愛いの……。あれは、ただの知らないデカいカエルさんなの……っ!」
ウイが恐怖でピカチュウの後ろに隠れる。
「違うんかいィィィ!!! ただの野良のモンスターが市街地にポップしてんじゃねーよ!! 複合都市の保健所仕事しろ! 宇宙警察仕事しろよ!!」
新八のツッコミなど意に介さず、ジャイアントトードは巨大な口を開けると、その長い舌を「シュルルッ!」と伸ばした。その狙いは、一番肉質が柔らかそうで美味そうなウイ——ではなく、なぜかその横にいた志村新八だった。
「ぶへぉっ!?」
ベチャァァァン!!と不快な音を立てて、新八の体(主に眼鏡以外)がカエルの口の中にズボッと丸呑みにされる。
「新八ィィィ!!! 始まったよ! 『このすば』名物の、緊迫感ゼロの丸呑みプレイが始まったよ!! 完全にアクアとかカズマが通った道をなぞらされてるよお前!!」
銀時が頭を抱えて叫ぶ。
「ぎ、銀さんたすけっ……! 中が、中がめちゃくちゃ生臭くてヌルヌルして……っていうか僕の扱いザコすぎませんんん!?」
カエルの口から足だけを出してバタバタさせる新八。
「待ってろ新八! 今すぐその不気味なカエルをミンチにして、私の定食のオカズにしてやるアル!」
神楽が怪力に任せてジャイアントトードの脇腹に強烈なキックを叩き込むが、カエルの弾力のある肉体に「ボヨヨ〜ン」と衝撃を吸収されてしまう。
「あ、あれ!? 効いてないネ!? このカエル、打撃耐性が無駄に高いアル!」
「そーなんだよ神楽ちゃん! こいつ、見た目の割に打撃とか斬撃にクソ強いんだよ! アニメでもカズマさんがめちゃくちゃ苦労してたろ!」
銀時は死んだ魚の目をカチッと見開き、腰の木刀『洞爺湖』を両手で強く握り直した。
「だがな……こちとら20年間、どんなギャグ時空の理不尽も『少年ジャンプのパワー』でねじ伏せてきたんだよ! 異世界のザコが、天下の万事屋を舐めてんじゃねーぞォォォ!!」
銀時が地を蹴り、ジャイアントトードの頭上へと高く跳躍する。
「喰らいやがれ! 糖分過剰の、一刀両断(物理)だァァァ!!」
銀時はカエルの脳天に向けて、木刀の先端を容赦なく「突き」の形で突き立てた! 打撃が効かないなら、一点突破の刺突。少年漫画の主人公らしい、的確かつ容赦のない一撃がカエルの眉間に炸裂する!
ドゴォォォン!!!
「ゲコォォォッ!?」
ジャイアントトードは白目を剥き、その衝撃で口の中から新八を「スポーーーン!」と勢いよく吐き出した。そのまま巨体がズシーンと地面に倒れ込み、ピクピクと痙攣した後に動かなくなる。
「はぁ、はぁ……死ぬかと思った……。全身粘液まみれで、僕のアイデンティティ(眼鏡)が完全に曇りましたよ……」
泥だらけのドブネズミのようになった新八が、地面に突っ伏して嘆く。
「ピカ、ピカチュウ〜!」
ピカチュウが「お見事!」と言わんばかりにパチパチと小さな手で拍手し、ウイも「おじさん、すごいです……!」と目を輝かせた。
「ふぅ……。ま、これくらい万事屋にかかれば朝飯前よ。……で、ウイちゃん。このキモいカエルが違うとなると、本物のエルくんは一体どこに——」
銀時がそう言いかけた時、倒れたジャイアントトードの背後の茂みが、再び「ガサガサッ」と大きく揺れ動いた。
「ひゃいっ!? ま、まだいるんですか!? もうカエルはお腹いっぱいですってば!!」
新八が悲鳴を上げる中、そこから現れたのは……?
「ま、まだ別のカエル型モンスターがいるんですか!? もうヌルヌルされるのは御免ですよ!!」
粘液まみれの志村新八が怯える中、ガサガサと揺れる茂みからヌッと姿を現したのは……今度こそ、ウイが探していた本物のカエル——『トリッカル』の世界のエルだった。おめめがクリクリとしていて、背中には立派なサドルがついている。
「あ! エル!! よかった、無事だったんだねぇ!」
ウイが嬉しそうに駆け寄ると、エルの隣から、これまた頭に大きな葉っぱを乗せた、ちっちゃくて勝ち気そうなエルフの幼女がひょっこりと顔を出した。ウイの親友、ヴィヴィである。
「もー、探したんだからねウイ! エルが急に走り出すから、追いかけるのすっごく大変だったんだから!」
「ウイちゃん、よかったネ! これで依頼達成、さあ大人のおじさんたちに今すぐ任天堂レベルの裏金(報酬)を渡すアル!」
「神楽ちゃん、まだヴィヴィちゃんしか出てきてないから! 終わってないから!」
新八がツッコんだその時、エルの背中のサドルに、何やら「緑色の奇妙な物体」がしがみついているのが見えた。
「おい、ちょっと待て。あのエルの背中に乗っかってる、生ゴミのバイオハザードみたいな緑色の二足歩行のカエル、どっかで見たことあるぞ……」
坂田銀時が死んだ魚の目を限界まで細める。
星マークのついた黄色い帽子。お腹にも黄色い星マーク。そして、なんとも言えないマヌケな顔。
「ゲ〜ロゲロゲロゲロ……! つ、冷たい! このカエルの皮膚、水分量が多すぎて我輩のペコポン侵略用強化スーツ(ただの皮膚)がふやけてしまうであります!!」
「ケ、ケロロ軍曹ォォォ!!! 平成のギャグ漫画の金字塔が、他所のゲームの可愛いカエルを私物化してんじゃねーよォォォ!!」
新八がこの日一番のメタ絶叫を裏路地に響かせる。
「ちょっとあんた! さっきから何なのよ!」
ヴィヴィが小さな腰に手を当てて、ケロロ軍曹をツンツンと小突いた。
「ウイのエルを勝手に『新型の二足歩行型侵略兵器ケロン3号』とか呼んで、ガンプラ(ガンダムのプラモデル)の箱を無理やり背負わせようとしないでよ! 迷惑なんだけど!」
「何を言うでありますか、そこのツインテールエルフ殿! 我輩は昨日、この街のお屋敷の裏庭で、本物の1分の1スケール『ガンダム・エアリアル』を目撃してしまったのであります! あれを見たガンプラモデラーの血が、黙っていられるわけでありますか!?」
ケロロはエルの背中の上で、熱弁を振るい始めた。
「あの神々しい最新鋭機を我がケロロ小隊の戦力に組み込むため、我輩はこの『現地調達したカエル型モビルスーツ(エル)』を駆り、偵察任務を行っていた最中なのであります!! 放すであります! 我輩には宇宙を統べる大いなる野望が——」
「……おい、緑の」
銀時がドスの利いた声で、ケロロの頭を上からガシッと掴んだ。
「げげっ!? な、何でありますか、その少年ジャンプのコンプライアンスを何回もぶち壊してきたような凶悪な顔の白髪侍は……!」
「お前さぁ……、さっきから聞いてりゃガンダムだのガンプラだの……。知ってんだぞ? お前んとこのアニメ(サンライズ制作)、うちのガンダムのパロディ回をめちゃくちゃ公式の特権使ってやりたい放題やってただろ。こちとら20年間、パロディやるたびに菓子折り持って各所に謝罪回りしてんだよォォォ!! 本物のガンダムの版権の重みを知らねーでチョロチョロしてんじゃねーよ!!」
「ひ、ひえぇぇぇ! 謝罪の重みがリアルすぎて、侵略宇宙人の我輩でも引くレベルでありますぅぅ!!」
ケロロが銀時の指の力でメキメキと頭を潰されながら涙目になる。
「ピカ、ピカチュウ……」
ピカチュウが、あまりの大人げない銀時の態度に、完全に引き気味の視線を送っていた。
右隣、左隣、お向かい、斜め向かい。
街を歩けばインフレの嵐、そして初めての依頼の結末は、まさかの「宇宙人(カエル)とエルフの幼女のご近所トラブル」。
「銀さん……僕、もうツッコミのストックが完全に空っぽです。この街、カエル一匹探すだけで、なんでこんなに様々な業界の利権が衝突するんですか……」
新八が遠い目をしながら、粘液を拭い取る。
複合都市の片隅で巻き起こる、万事屋と混沌のキャラクターたちによるドタバタ劇。記念すべき「最初の依頼」は、緑色の侵略宇宙人を木刀でひっぱたくという、いつも通りの結末を迎えようとしていた——。
「ゲロゲロォォォ!!! 悪うございました、ガンダム・エアリアルを盗もうなんて大それた野望は今すぐ白紙撤回するでありますから、その洞爺湖って書かれた凶器(木刀)を引っ込めるでありますぅぅぅ!!」
坂田銀時に頭をアイアンクローされ、エルの背中の上でケロロ軍曹が涙目でジタバタともがいていた、その時。
「——そこまでにしといた方がいいんじゃないかしら。ケロロちゃんも、万事屋の皆さんも」
裏路地の入り口から、おっとりとしつつも芯の通った、どこか聞き覚えのある少女の声が響いた。
そこに立っていたのは、緑色の長い髪を後ろで結び、大きな瞳をした雄英高校ヒーロー科の——『僕のヒーローアカデミア』の蛙吹梅雨(あすい つゆ)だった。
しかも、なぜか彼女の右肩の上には、大きな目玉にピンクのほっぺ、赤と白のボーダー服を着た、サンリオ界のレジェンドカエル——けろけろけろっぴがちょこんと乗っかっている。
「つ、梅雨ちゃん(ヒロアカ)だァァァ!!! 週刊少年ジャンプの超大物後輩じゃねーか!! っていうか、なんで肩の上にサンリオの国民的カエルキャラクターをマスコットみたいに乗せてんだよォォォ!!! カエル属性のシナジー効果のクセが強すぎるだろ!!」
志村新八の本日最高風速のメタツッコミが炸裂する。
「この複合都市のパトロール中に、カエルたちが集まって揉めてるって聞いて見に来たのよ。はい、けろっぴちゃん、ドーナツあげる」
梅雨ちゃんが肩のけろっぴに優しくお菓子を差し出す。
「わ〜い! 梅雨ちゃんありがとう! 揉め事は良くないよね!」
けろっぴがサンリオ100%の純真無垢な声で鳴いた。
「けろっぴちゃん可愛いネ! 隣の緑の泥ドブガエル(ケロロ)とは大違いアル! 定春、あの緑のだけ噛んでいいアル」
「ガルルルルッ!」
「ぎゃあああああ!? なんで我輩だけサンリオとジャンプの格差社会で物理的な被害を受けるのでありますかァァァ!?」
ケロロが定春の口に頭を突っ込まれて強制退場させられ、梅雨ちゃんのおかげで路地のカオスは(新八の全身の粘液を除いて)綺麗に収まったのだった。
「はい、おじさんたち! これ、今回のエルの捜索をがんばってくれたお礼です!」
無事に万事屋の居間に戻り、ウイが小さな両手で銀時に差し出したのは、トリッカルの世界の特産品である『きらきら光る星の金貨(1枚)』と、ウイのお手製の『ほんわかお花のクローバー(3人分)』だった。
「……あ、あのね。その金貨、この街の何でも屋組合に持っていくと、今月分の家賃がピッタリ払えるくらいのお金に換金してもらえるんだよ! あと、お花はウイのお守りなの!」
ウイがえがおのすてきな100%のスマイルを浮かべる。
「ピカ、ピカチュウ〜♪」
ピカチュウも、万事屋の3人に「ありがとう」と言うように、嬉しそうにしっぽを振った。
昨日から、極貧の隣人(ニコ&アル)に挟まれ、最強の暗殺者(坂本)に脅され、ロボットチェイスに巻き込まれ、宇宙刑事(ギャバン)の戦闘に巻き込まれ、異世界のキモいカエル(トード)に丸呑みにされ、完全に精神が擦り切れていた万事屋一行。
しかし今、ウイから手渡されたささやかなお礼と、手のひらに乗せられたお花のクローバーの温もりを前に、3人の目からジワリと涙が溢れ出していた。
「……沁みる、沁みるわぁ……。パチンコで5万負けて深夜に食べるカップ焼きそばの100倍、心に沁みるわぁ……。世界はこんなに優しさに満ちていたんだな、新八……」
銀時が金貨を握りしめ、ボロ泣きしながらウイの頭を優しく撫でる。
「本当にそうですね……。この街に来てから、ずっとレーティング上限の暴力みたいな光景ばかり見てきたから、このウイちゃんのマイナスイオンが五臓六腑に染み渡りますよ……」
新八もクローバーを胸に抱き、粘液まみれの顔で男泣きしていた。
「ウイちゃん、ヴィヴィちゃん、大好きアル! 私、今日からこの世界の住民になって、毎日酢昆布じゃなくて星の金貨を食べるネ!」
「金貨は食べるもんじゃねーよ神楽ちゃん! 換金して家賃払うんだよ!!」
こうして、複合都市の混沌に放り込まれた万事屋一行の「初めてのお仕事」は、カエル属性の大渋滞を乗り越え、最高の癒しと共に見事達成されたのだった。
だが、彼らが住むのは、あの『邪兎屋』と『便利屋68』に挟まれた、世界の何でも屋の最底辺エリア。今月の家賃(金貨)を手に入れた万事屋の前に、明日からはさらなるカオスな依頼と、新たな作品のバケモノたちが次々と押し寄せることを、銀時たちはまだ知らない——。
(第1章・第3話「依頼開始編」 完)
はい、というわけで最初の依頼は複合都市とは思えないほど平和な(?)依頼でしたね
しかし、ここは複合都市
こんなきれいな終わり方をする依頼ばかりのはずがありません……!
ではまた次回に!