万事屋一行の『複合都市』生活   作:ex(イクス)

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というわけで第4話です


今回は銀さんたちが火薬と硝煙の中に叩き込まれます
前回との温度差で風邪をひかないようご注意くださいww


第4話:試合開始の笛を吹くだけの簡単なお仕事です、と書かれた求人の9割は生きて帰れない

「モグモグ……うん、見た目はアレだったけど、これ鶏肉みたいでめちゃくちゃ美味いネ! 油がジューシーで酢昆布が進むアル!」

「いや、進むアルじゃなくてね神楽ちゃん。お前それ、一昨日僕を丸呑みにしたあの『このすば』のトラウマカエル(ジャイアントトード)の太もも肉だからね!? よくそんな駄菓子感覚でバクバク食えるね!?」

 

万事屋の居間では、ウイからもらった星の金貨で今月の家賃を無事に支払い終え、すっかり緊張感の切れた日常が流れていた。志村新八のツッコミをBGMに、坂田銀時はソファでゴロ寝しながらパチンコ雑誌をめくっている。

「いいじゃねーか新八。タダで手に入った高級(?)ジビエ肉だぞ。これでお財布も胃袋も大満足。今月のノルマは達成したんだ、俺ァもう今月は一歩も外に出ねーからな」

銀時がだらけきった宣言をした、その時。

ガラガラと小気味よい音を立てて、万事屋の玄関の引き戸が開いた。

 

「あの……すみません。こちらに、どんなお仕事でも引き受けてくださる『万事屋』さんがあると聞いて伺ったのですが……」

 

入ってきたのは、緑色のシックな制服(大洗女子学園の冬服)に身を包んだ、優しそうで少しおっとりとしたボブヘアの少女——『ガールズ&パンツァー』の西住みほだった。

「お、おい見ろよ新八。今度は深夜アニメ界のレジェンド、大洗の戦車道の申し子が来たぞ。……ってことは何だ? ついにうちの定春(あるいはエリザベス)を戦車代わりに使って『戦車道』でも始める気か? 悪いがうちの犬は105mm榴弾砲とか積んでねーぞ」

銀時がメタ知識全開で警戒する中、みほは申し訳なさそうにペコリと頭を下げた。

「いえ、そうじゃないんです! 実は今度、この複合都市の特別演習場で、私たちの学校と、他校の皆さんとの『合同演習大会』を開催することになりまして……。その、試合の『審判』をしてくださる方を探しているんです」

「審判ァ? 審判って、あの白線の上に立って『アウトー!』とか『セーフ!』とか言うあの地味なやつ?」

銀時が片目をあけて尋ねる。

「はい! やっていただくのは、試合開始の合図(コール)と、決着がついた時の終了宣言だけです。試合中は、防壁で守られた安全な審判席に座って見ていただくだけで構いません。報酬はこれくらい出せるのですが……」

みほが提示した報酬額の書かれたメモを見た瞬間、銀時と神楽の目が「¥」の形に変わった。

「……おい新八。耳をすませてみろ。俺の脳内で、パチンコ屋のCRミリオンゴッドが全回転のファンファーレを鳴らし始めたぞ」

「ちょっと待って! 銀さん、神楽ちゃん、顔が完全に悪徳金の亡者になってるから!

みほさん、本当に座って見てるだけでいいんですか? この複合都市のイベントですよ? 昨日の警察沙汰を考えたら、普通の戦車戦で済むとは到底思えないんですけど……」

新八が不安げに尋ねると、みほは「ええと……」と指先を合わせながら、少し引きつった笑顔を浮かべた。

「大丈夫です……! 一応、国際戦車道連盟のルールに則って、車内は特殊なカーボンで保護されてますから、皆さんに危険はありません! ただ……今回は複合都市の『特別ルール』なので、皆さんの戦車が、ちょっとだけ私たちの知っている戦車と違うみたいで……」

「……ん? ちょっと違う?」

銀時が不穏な空気を感じ取る。

「はい! でも、開催日は明日ですし、ルールは簡単ですので! よろしくお願いします!」

みほの押しに弱い笑顔と、提示された破格の報酬額(パチンコ10回分)に目が眩んだ万事屋一行は、「まぁ、座って見てるだけなら……」と、深く考えずにその依頼の契約書にハンコを押してしまうのだった。

こうして、万事屋一行は翌日、複合都市の広大なミリタリー演習場へと足を運ぶことになる。しかし彼らはまだ知らなかった。西住みほの言う「他校のちょっと違う戦車」が、少年漫画や他ゲームの『国家を揺るがす最終破壊兵器』の部類であるということを——。

 

 

「おいおいおいおい、待て待て待て待て!! 聞いてねーぞ、みほちゃん!! あれのどこがIV号戦車(いつもの)だよォォォ!!!」

 

翌日、複合都市の広大なミリタリー演習場。

審判席(という名の、ただの土嚢が積まれた防空壕)に到着した瞬間、坂田銀時は持っていた審判用の拡声器を地面に叩きつけそうになっていた。

「銀さん、落ち着いて! ほら、大洗女子学園の皆さんが早めの練習走行をしてるだけ……って、走行音が完全に重戦車を通り越してモビルスーツの地響きになってるんですけどォォォ!!!」

志村新八は、審判用のホイッスルを喉に詰まらせそうな勢いでメタ絶叫を上げた。

彼らの視線の先、砂煙を上げて爆走していたのは、かわいい女の子たちが乗るにしてはあまりにも禍々しく、あまりにも長大な「鋼鉄の怪物」だった。

それは『機動戦士ガンダム MS IGLOO』に登場する、ジオン公国軍の試作モビルタンク——ヒルドルブだった。

全高5メートル超、全長14メートル弱。超弩級の30サンチ(300mm)砲を搭載した、ガチの宇宙世紀の決戦兵器である。

その長大な砲塔のハッチから身を乗り出し、みほが笑顔でこちらに向かって手を振っていた。

 

「万事屋の皆さん、おはようございます! 今日はよろしくお願いしますね!」

 

「よろしくできるかァァァ!!! 何だあのバケモノ戦車は!!」

銀時が頭をガシガシと掻きむしる。

「おい、お前ら大洗の『あんこうチーム』だろ!? なんでよりによって『1年戦争』の隠れた超重量級キテるメカに乗ってんだよ!! カーボン保護とかそういう次元じゃねーだろ、あれ直撃したら複合都市ごと『ジオンの栄光』に包まれて消し飛ぶわ!!」

「そんなことないですよ!」

ヒルドルブの車内から、秋山優花里が目を輝かせながらマイクで答える。

「西住殿のパンツァー・フォーの号令に合わせて、変形してモビル形態(上半身)にもなれるんです! 履帯(キャタピラ)の接地圧も最高で、これならどんな傾斜でもバッチリです!」

「戦車道に変形機能を持ち込むなァァァ!!! それもうただのロボット格闘技だろ!!」

新八のツッコミが木霊する中、さらにその後方から、地響きと共に大洗の「他チーム」がゾロゾロと入場してきた。

カツーン、カツーン、ガラガラガラガラ……。

「カバさんチームも、アヒルさんチームも、ウサギさんチームも、みんな準備万端よ!」

 

カメさんチーム(生徒会)の角谷杏が、干し芋を齧りながら操縦している機体。

それは、旧ジオン軍の作業用・拠点防衛用モビルスーツ——ザクタンクだった。

上半身がザク、下半身がマギー・トポロジカルなマニピュレーター(作業用アーム)とキャタピラという、完全に泥臭いミリタリーの極みのような機体が、何十台も並んでこちらに向かってアームをガシャガシャと威嚇するように動かしている。

「大洗女子学園が、完全に『ジオン公国・下町土木治安維持部隊』になってるじゃねーかァァァ!!! ガルパンのあの可愛い女子高生たちのキラキラした日常どこ行ったんだよ!!」

「いいじゃねーか新八、私はあのザクタンクって奴のショベルカーみたいな手、結構好きアル」

神楽が審判席の土嚢の上に腰掛け、ジャイアントトードの唐揚げを齧りながらマイペースに呟く。

「あの手でパチンコの台を丸ごと掴んで、確率の基盤をヘシ折ったら大儲けネ」

「お前ら全員、ガンダムの兵器を私利私欲のために使い回そうとすんな!!」

新八が必死に周囲をなだめていると、演習場の反対側のゲートが「ゴゴゴゴ……」と重苦しい音を立てて開き始めた。

「み、みほさん……!! 大洗の練習だけでこれなのに、一体『対戦相手の他校』は、どんな戦車に乗ってくるんですか……!? 嫌な予感しかしないんですけど……!」

新八が冷や汗を流しながら対戦相手の入場口を見つめる。西住みほの言う「ちょっとだけ違う戦車」のハードルが、最初から宇宙世紀レベルまで跳ね上がった今、対戦相手が普通のティーガーやT-34で来るはずがなかった——。

 

 

「ほら見ろォォォ!!! 僕の嫌な予感が1000%の大当たりだよ!! 対戦相手も『ちょっと違う』の次元を遥かに超えて完全にガンダムの宇宙世紀から兵器を密輸してきてるじゃねーかァァァ!!!」

 

対戦相手のゲートが開いた瞬間、志村新八の眼鏡が恐怖のあまりバキバキにひび割れそうなほどの絶叫が演習場に響き渡った。

そこに現れた「他校の合同チーム」は、もはや紅茶を嗜んだりおやつを食べたりするような、のどかな女子高生たちの集まりでは断じてなかった。

 

「ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!」

アンツィオ高校の飯を食うのが大好きな生徒たちが、ノリと勢いだけで乗り込んできたのは『機動戦士ガンダム MS IGLOO 2 重力戦線』の陸戦強襲型ガンタンク。

「フン! 弱小大洗なんて、我がアンツィオの快速(?)重火力で一撃粉砕だぞ! チョビひげって言うな!」

アンチョビがハッチから身を乗り出し、変形ギミックをガシャガシャと動かして突撃形態をとる。

 

「おいおいおいおい、強襲型ガンタンクって、地雷原に突撃して自爆特攻するタイプのクソ重いミリタリーの極みだろーが!! ノリと勢いだけで乗っていい代物じゃねーよ!」

銀時が死んだ魚の目をひっくり返してツッコむ中、さらに大地を揺るがす地響きと共に、超巨体が姿を現した。

 

プラウダ高校のカチューシャが、地吹雪をバックに傲然と見下ろしているのは『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』のジオン軍最高峰の長距離砲撃型MS——ザメルだった。

「カチューシャを誰だと思っているの! このザメルの680mmカノン砲で、大洗なんてまとめてシベリア送り(更地)にしてやるわ!」

「いや、ザメルって! もはや戦車の形すらしてねーよ! 二足歩行するただの超巨大砲撃怪獣だろ!!」

 

新八の喉が早くも潰れそうになる中、サンダース大付属高校のケイは、なぜか宇宙世紀を飛び越えて『機動戦士ガンダムSEED』のザフト軍の後方支援用モビルスーツ——ザウートのコクピットから、アメリカンな笑顔でサムズアップしていた。

「ハァイ! 万事屋のボーイズ&ガールズ! 試合はフェアプレイで、ドカンと派手にいきましょー!」

「SEEDのザコ量産機じゃねーか!! タンク形態に変形できるからって、コズミック・イラから兵器を持ってくんじゃねーよ!!」

 

さらに、聖グロリアーナ女学園のダージリンは『機動戦士ガンダム サンダーボルト』に登場する、あの極悪な重火力を誇るガンタンク(サンダーボルト版)の車内で、優雅に紅茶を啜っている。

「こんな格言を知っているかしら? 『ガンタンクの主砲の射程に入った者は、紅茶が冷める前に灰になる』……」

「そんな物騒なサンダーボルト時空の格言あるかァァァァァァ!! 聖グロの気品が完全に消滅してただの重武装連邦軍になってるわ!!」

 

極めつけは、継続高校のミカだった。彼女がサウリ(カンテレ)をポロンと鳴らしながら、ちゃっかりと大洗の陣地をスルスルと通り抜けていたのは『機動戦士ガンダムUC』に登場する地球連邦軍の特殊部隊用小型MS——ロトである。

「風が言っているよ……。このロトは、元々潜入任務用だから、試合が始まる前に相手の陣地の『限定高級チャーシュー』を回収するのに最適だってね……」

「泥棒する気満々じゃねーか!! っていうかロトって、完全に対テロ特殊部隊用の隠密ロボットだからね!?」

 

右を見れば、ヒルドルブとザクタンク(大洗ジオン治安維持部隊)。

左を見れば、強襲型ガンタンク、ザメル、ザウート、サンボガンタンク、ロト(全ガンダムシリーズ・混成重火力部隊)。

「銀さん……僕、もう分かりました……。これ、戦車道じゃないです。『第2次ネオ・ジオン抗争(あるいはミリタリーMS大戦)』です……。僕たちが『試合開始!』って笛を吹いた瞬間、この演習場ごと半径5キロが消滅しますよ……」

新八がガタガタと震えながら、白旗(審判用)をぎゅっと握りしめる。

「神楽ちゃん……お前が食ってたジャイアントトードの唐揚げ、ちょっと俺にもくれ……。これが俺の、人生最後の晩餐になりそうだからよ……」

銀時は死んだ魚の目を点にしながら、隣の神楽に手を伸ばすのだった。

これ以上ないほど最悪な「ガンダム兵器大渋滞」のメンツが揃ってしまった演習場。いよいよ、万事屋一行の命(と演習場の地形)を賭けた、地獄の合同演習大会の幕が上がろうとしていた——。

 

 

「あー、もう知らねーよ!! 著作権だのサンライズだの集英社だの、大人の利権ごと全部まとめてドカンといきやがれコンチクショーーー!! 試合、開始ィィィイイイ!!!」

 

坂田銀時は、やけくそ気味に審判用の拡声器に怒号を叩き込み、志村新八は魂の抜けた顔でホイッスルを「ピ、ピィ〜〜……」と力なく鳴らした。

その合図と同時に、演習場は一瞬にして「この世の終わり」のような閃光と轟音に包まれた。

 

『パンツァー・フォー!! 30サンチ主砲、てーーーっ!!』

西住みほの号令とともに、あんこうチームのヒルドルブが火を噴く! 超ド級の300mm砲弾が音速を超えて空間を切り裂く!

『生意気な大洗め! ザメルの680mmカノン砲を喰らいなさーーーい!!』

プラウダのカチューシャも、怪獣のような巨体から最大火力の極大砲撃を撃ち返す!

ズドォォォォォォン!!! バリバリバリィィィン!!!

強襲型ガンタンクが地雷原を無視して無限軌道で突撃し、サンダーボルト版ガンタンクが極悪な重火力のガトリングを全弾掃射し、ザウートが中距離からの連続ミサイルポッドをフルバーストでブチ撒ける!

演習場は、戦車道という名の「第2次ネオ・ジオン抗争」並みの火の海と化し、土嚢で守られたはずの万事屋の審判席(防空壕)は、開始わずか3秒で衝撃波によって木っ端微塵に消し飛んだ。

 

「ぎゃあああああ!!! 案の定、最初から爆風で審判席が更地になったァァァ!!! 安全エリアって言ったじゃねーかみほさん!! 完全にレーザー光線が僕たちの頭のすぐ上をミリ単位でかすめてるからね!?」

新八が頭を抱えて地面を這い回る。

「大丈夫ネ新八、私のこの三角コーン(工事現場の遺物)の盾があれば、ザメルの砲撃くらいボヨヨ〜ンと跳ね返せるアル!」

「跳ね返せるわけねーだろォォォ!!! お前それただのプラスチックだから!! 蒸発するから!!」

「ハ、ハハハ……、見ろよ新八。あっちでロトに乗ったミカちゃん(継続高校)が、どさくさに紛れてサンダースのケイのザウートから『アメリカ製高級ビーフ』をスルスルと盗み出してバックしてるぞ。あの泥棒、ロボット使って究極のコソ泥やってるわ……」

銀時はあまりの爆風の嵐に、いつもの天然パーマが完全にアフロヘアーになりながら、虚空を見つめていた。

大洗のジオン治安維持部隊(ヒルドルブ&ザクタンク)と、他校のガンダムタンク混成部隊による、複合都市の地形を書き換えるレベルの泥仕合。

しかし、一刻も早くこの地獄が終わり、無事に(自分たちだけでも)生きて帰れることを祈り続けている万事屋一行は、この時まだ知る由もなかった。

この、全ガンダムシリーズの重火力兵器が入り乱れる大決戦の末に、満身創痍で勝ち残ることになる大洗女子学園の前に——

この大会の『真のラスボス(最後の試合相手)』として、とんでもない規格外のバケモノが、ゲートの奥で静かにスタンバイしているという事実を……!

 

 

「ハァ……ハァ……終わった……。ガンダムタンク大戦という名の、サンライズの作画兵団による無差別絨毯爆撃が、ようやく終わった……」

 

演習場を埋め尽くした硝煙がゆっくりと晴れていく。

ザメルの大砲を叩き落とし、強襲型ガンタンクの突撃をいなし、ロトのコソ泥行為(肉のクソコソ泥)を力ずくで阻止したジオン軍仕様の大洗女子学園(ヒルドルブ&ザクタンク)が、見事にこの大乱戦を制したのだった。西住みほたちは、ボロボロになったヒルドルブの履帯をジャッキで持ち上げ、早くも手慣れた様子でスパナを握って修理を始めている。

「銀さん、僕たち生き残りましたよ……! 審判席は消滅したし、僕の服は爆風で焦げてボロ雑巾みたいですけど、なんとか五体満足です!」

志村新八が涙を拭いながら、ひび割れた眼鏡をかけ直す。

「よくやったネ新八。これでみほちゃんから、あのパチンコ10回分のプレミアム報酬が手に入るアル。今夜はジャミール……じゃなくて、ジャイアントトードの肉を10キロ買って、豪勢に唐揚げパーティーネ!」

神楽が勝利を確信して、残っていた唐揚げの最後の一片を口に放り込んだ、その時

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!

演習場の地下から、先ほどまでのMSの砲撃とは明らかに一線を画す、大地そのものが恐怖で震えるような「重低音」が響き渡った。

 

「……おい、待て。みほちゃんたちの修理が終わった瞬間に、なんで反対側の第0番ゲートのシャッターが、映画のラスボス登場シーンみたいなスモーク演習と共に開いてんだよ?」

坂田銀時の首筋に、冷たい汗がスッと伝わる。

スモークの向こうから現れたのは、大洗のジオン軍仕様をさらに上回る、圧倒的な「悪の帝国」のオーラを纏った漆黒の部隊だった。

 

『——大洗女子学園、見事な戦いぶりだ。だが、黒森峰の“王道の戦車道”の前には、その牙城もここまでだ』

その冷徹で毅然とした声の主は、みほの姉であり、黒森峰女学園の絶対的隊長——西住まほだった。

しかし、彼女がハッチから冷たい視線を見下ろしている「乗機」の姿を見た瞬間、銀時と新八は同時に白目を剥いた。

それは、ガルパンのティーガー戦車ではない。

『機動戦士ガンダム外伝 コロニーの落ちた地で…』に登場する、ジオン公国軍の試作超大型モビルアーマー——ライノサラスだった!

全長数十メートル、動く巨大要塞。あらゆる通常兵器を豆鉄砲のように弾き飛ばす分厚い装甲と、街を丸ごと消し去る超巨大バストライナー砲を搭載した、ジオンの怪物である。

 

「ラ、ライノサラスゥゥゥ!!! 『コロ落ち』の、ジオンオーストラリア方面軍が地球連邦軍を恐怖に陥れた、あの規格外の試作巨大MAじゃねーかァァァ!!! お姉ちゃん、王道の戦車道って何!? ついに戦車の概念すら完全にぶん投げてモビルアーマーに乗り込んでるじゃねーか!!」

新八の喉が、ついに完全に崩壊した。

しかし、絶望はまほのライノサラスだけでは終わらない。

彼女の背後から、さらに異様な駆動音を立てて、黒森峰の「直属部隊」が完璧な隊列を組んで進軍してきた。

 

ガラガラガラガラ……カツーン! カツーン!

それは、ジオン公国軍の主力戦車——マゼラ・アタックの大部隊だった。

しかも、黒森峰の生徒たちが乗るマゼラ・アタックは、ただ走っているだけではない。

『黒森峰マゼラ・アタック隊、全機、第一段階戦闘形態へ移行! 砲塔分離(マゼラ・トップ・フォー)!!』

まほの冷徹な号令とともに、何何十台ものマゼラ・アタックの「砲塔(飛行ユニット)」が、ガシャーーーン!!と車体から切り離され、一斉に大空へと飛び立ったのだ! 空を埋め尽くす戦闘飛行砲塔の群れ。

 

「戦車が空飛んだァァァ!!! マゼラ・アタックの、一番意味のわからない欠陥ギミック(※一度飛んだら二度とドッキングできない)を、黒森峰の伝統の戦術みたいに使いこなすんじゃねーよ!! もうそれ戦車道じゃなくて、ただの空戦型爆撃部隊だろ!!」

「フッ……みほ、これが私たちの『西住流の答え』よ。——全軍、撃て!!」

まほのライノサラスの巨大な主砲が火を噴き、上空のマゼラ・トップ隊(無人機)から無数の175mm砲弾が雨のように大洗のヒルドルブへと降り注ぐ!

 

ズドォォォォォォン!!!

 

「ぎゃあああああ!!! 審判席の土嚢の残りカスすら完全に分子レベルで消滅したァァァ!!! 銀さん! 神楽ちゃん! もう終わりです! この世界の戦車道は、僕たちを特売品のミンチにする前に、宇宙の塵にする気です!!」

「新八ィィィ!! 諦めるな!! ほら、俺たちの手元には、まだあのウイちゃんからもらった『ほんわかお花のクローバー』がある!! このマイナスイオンのお守りがあれば、ライノサラスのバースト・カノン砲の直撃だって——」

銀時が必死にポケットからクローバーを取り出した瞬間、上空から落ちてきたマゼラ・アタックの不発弾がその上に直撃し、クローバーは一瞬で一握りの黒焦げた炭へと変わった。

「……あ。俺たちの心のオアシスが、黒森峰の圧倒的な火力(大人の事情)によって焼き尽くされたわ」

「神様……。家賃は払えたけど、僕たちの精神のライフは完全にマイナスです……。帰らせて……かぶき町の、あの治安の悪いけどロボットが空を飛ばない、普通の世界に帰らせてェェェェエエエ!!!」

ジオンの巨大モビルアーマー・ライノサラスと、空を駆けるジオンのマゼラ・アタック隊。

その規格外の最終決戦の爆風に巻き込まれ、万事屋一行はアフロヘアーを通り越して真っ白な灰になりながら虚空へと吹き飛ばされていくのだった——。

 

 

「——西住流の答え、大洗の地平に刻みつけなさい! 撃てェェェ!!」

 

西住まほの苛烈な号令と同時に、巨大MAライノサラスのバストライナー砲が極大のエネルギーを放ち、上空からは無数のマゼラ・トップ隊が雨アラレと175mm砲弾を降らせる! 演習場は完全に白夜のごとき閃光に包まれた。

「ぎゃあああああ!!! 地球が、地球が僕たちの目の前で消滅するぅぅぅ!!」

志村新八が地面を転がりながら絶叫する。

しかし、その爆炎を切り裂いて突っ込んできたのは、あんこうチームの駆るヒルドルブだった!

 

『秋山さん、変形を! 操縦をモビル形態のショベルアームに切り替えます!』

 

西住みほの凛とした声が響く。

爆風を真正面から浴びながら、ヒルドルブは上半身を瞬時に展開! 展開された巨大な鋼鉄のショベルアームを、演習場のガチガチのコンクリート床にグサァァァッ!!と力任せに突き立てた!

「え!? なにあの挙動!? 嘘でしょ!?」

坂田銀時が目玉をひっくり返す。

アームを支点にして、超重量級の車体が『キィィィィィィン!!』と鼓膜を裂くスキール音を立てながら、物理法則を完全に無視した超高速の旋回——『ショベルアームを使ったコンパスドリフト』を敢行したのだ!

雨のように降り注ぐマゼラ・トップの砲弾をミリ単位で全て回避し、ライノサラスの死角である真横へと一瞬で回り込む!

『パンツァー・フォー!! 30サンチ主砲、零距離射撃ィィィ!!』

ドゴォォォォォォン!!!

ヒルドルブの主砲がライノサラスの装甲の継ぎ目を至近距離で撃ち抜いた!

ジオンの試作兵器同士の意地がぶつかり合った超次元の姉妹対決。黒森峰の絶対的牙城であるライノサラスのハッチから、ついに「白旗」がポコンと力なく飛び出した。

「……みほ、見事な戦車道だったわ。お前の勝ちよ」

まほがハッチから身を乗り出し、誇らしげに微笑む。

「お姉ちゃん……ありがとう!」

みほもまた、ヒルドルブの上から最高の笑顔で手を振り返した。

 

「……って、爽やかに感動の姉妹愛で終わらせてんじゃねーよォォォオオオ!!!」

煙の立ち込める演習場の真ん中で、アフロヘアーになりかけた新八のツッコミが空しく響き渡った。

「何が『ショベルアームを使ったコンパスドリフト撃ち』だよ!! ガルパン特有の『お前それ絶対に物理法則バグってるだろ』っていう神業を、ガンダムの1年戦争の兵器で再現するんじゃねーよ!! 審判席は粉微塵だよ!! そもそも僕たちの安否確認は!?」

「いいじゃねーか新八。終わりよければ全てよし、これぞ大団円ってやつよ」

いつの間にか、銀時と神楽は、大洗と黒森峰の生徒たちが演習場の真ん中に設営した『盛大な打ち上げ会場(特設BBQテント)』の特等席に陣取っていた。

「おい、そこの継続高校のミカちゃん。お前がさっきサンダースからちゃっかりコソ泥してきた『限定高級アメリカンビーフ』、早くこっちの網に乗せろネ。神楽ちゃんがおいしく成敗してやるアル」

「風が言っているよ……。この肉は、万事屋の白髪のおじさんと半分こにすると、今夜の星が綺麗に見えるってね……」

「おじさんって言うな、コソ泥民族。……あ、みほちゃん! プレミアム報酬のギル(現金)、今すぐここに全額キャッシュでお願いしまーす!」

銀時がパチンコへの欲望をギラギラさせながら両手を揉みしだく。

「はい! 万事屋の皆さん、命がけの素晴らしい審判、本当にありがとうございました!」

みほが笑顔で、当初の約束通りの破格の報酬が入った袋を銀時に手渡した。

「うおおおおお!!! 命を削った甲斐があったァァァ!!! これで今月の家賃どころか、明日のミリオンゴッドで天井まで全ツッパできるぜぇぇぇ!!」

「銀さん、少しは学習してください!!」

新八が叫ぶ中、上空では切り離されたマゼラ・トップ(無人機)が、なぜか花火代わりとして「ドカン! ドカン!」と綺麗に自爆を繰り返している。その爆風をバックに、ダージリンが「こんな格言を知っているかしら……」と紅茶を啜り、カチューシャがザメルの上で威張っていた。

右隣、左隣、お向かい、斜め向かいの近隣。

街を歩けばインフレの嵐、そして審判をすればガンダム兵器の大戦争。

しかし、激しい火花を散らした後は、敵も味方も関係なく、笑顔で肉を焼き合う。これこそが、あらゆる世界が混ざり合った【複合都市】の、最高に狂っていて、最高に賑やかな日常のカタチなのだった。

万事屋一行の複合都市サバイバル、最初の大きな山場は、こうして盛大なBBQの煙と、宇宙世紀の爆破花火と共に、賑やかに幕を閉じるのだった——。

 




(第1章・第4話「戦車道編」 完)


はい、というわけで戦車道という名のモビルタンク/モビルアーマー頂上決戦でした
銀さんたち、よく生きてましたねw


それではまた次回!
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