殺したがりと殺されたがりの日常編   作:珠鵜

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この男は私の死を手折った

 殺されることが好きな私は、予期せぬ死亡フラグに内心浮き足立っていた。

 あの規格外に太い螺子で身体を貫かれたらどんなに気持ちよく死ねるだろうかと妄想に耽ったこともある。願いは叶うものだ。現に螺子は私の四肢と腹を貫いて床に突き刺さっている。お陰で廊下は血の海。ごめんね理事長、校舎汚しちゃった。まあ、殺されれば元通りだけど。

 まったく、奇襲だなんて卑怯だな。正々堂々真正面から殺してくれたらいいのに。どちらにせよ避けるつもりはないのだし。螺子は私の動きを的確に封じるように刺されていて、今のところ死ねそうにない。あと一押しが足りない。

 ああ、でも、私が宗像くん以外に殺されるなんて滅多にないことだ。それだけの理由で、私は球磨川禊(くまがわみそぎ)に殺されてみようと思った。

 宗像くんや高千穂(たかちほ)くん、それに雲仙(うんぜん)くんや裏の六人(プラスシックス)が為す術もなかった相手だ。球磨川くん、彼はきっと人を殺せる。それに、きっと人を殺しても自首なんかしないタイプだろう。そんな倫理観を持ち合わせているようには見えない。別に殺したいわけじゃない相手でも殺してしまえるタイプだろう。

――それなのに。

 

大嘘憑き(オールフィクション)

 

 この男は私の死を手折った。

 与えられた傷は瞬きの間に綺麗さっぱり『なかったこと』になっていた。四肢の拘束こそ解かれていないが、これでは死ねたもんじゃない。

 

「どうして……?」

 

 抗議の目を向ける私に、球磨川くんは何がそんなに可笑しいのかへらへらと笑みを浮かべながら、手に持った螺子を私の太ももに突き刺した。廊下が再び血で汚れた。

 

『小さい頃に言われたでしょ? 人の嫌がることは進んでしましょうって』

「っ、それは、意味が違うんじゃないかなっ」

『鰐塚さん。きみは殺されるのが好きみたいだから、傷つけて傷つけてあと少しで死ぬってところで傷をなかったことにして、また傷つけて――っていうのを繰り返そうと思うんだ。どうだい、殺されたがりのきみからすれば発狂ものの嫌がらせだろ?』

「――酷いね」

 

 

 

 結論から言うと、殺してもらえなかった。何度も何度も何度も何度も繰り返し嬲られてはその痕跡をなかったことにされ続けた。最悪だ。そして殺されないことに嫌気が差して泣き出したところで無傷で解放され、変なところで紳士的な球磨川くんはハンカチまで貸してくれた。洗って返さないといけないのかな。……やっぱり、宗像くんじゃなきゃ私をちゃんと殺してくれない。

 

「宗像くんに殺されたい……」

 

 まるで恋する乙女のように、私は宗像くんという存在に焦がれていた。




ハーメルン掲載にあたり字数不足のため加筆
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