HACHIMAN vs カプ厨龍園(転生者)   作:地霊殿の壁

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第1話

───この世界は『ようこそ実力至上主義の教室へ』というライトノベルの世界だと。

 それと同時に、この世界の人間はただのキャラクターではなく皆須らく生きているのだと―――そう、俺は思っていた。

 

 

 Aクラスの名簿に比企谷八幡という名前を見つけるまで……いや、もっと正確に言うなら、バスの中で目が腐ってねぇ比企谷八幡……この場合は正しくHACHIMANか。

 

―――HACHIMANと坂柳有栖が二次小説のプロローグ染みたやり取りをしながら、イチャつき出すまではな。

 

 

 何もかもがありえない要素でできている。

 

 

 つまりはアレを中心として因果か何かが歪められている……HACHIMANというコンテンツを知っている俺が、そういった考えに至るのにそう時間はかからなかった。

 

―――何も対処しなければ、椎名ひよりがアレに掻っ攫われるのに一週間と掛からねぇだろうな。

 

 なにせ、第一話のプロローグですら、ひよりがHACHIMANに対し読書仲間(準恋人)のようになっている作品が腐る程ある。

 

 

──ただ、ある意味、幸運なことにこのクソったれな世界の創作者は坂柳とHACHIMANのカップリングを推しているらしい。

 まぁ逆に言えば、そのついででひより×綾小路(推しカプ)が寝取られ、史実通りに扱われないってことだがな。

 

 

──その事実は綾ひよというカップリングを推す前世カプ厨の()としては極めて不快だし、

 

──最終的な勝利を切望する龍園翔()からしても自クラスの生徒から後先考えねぇ色恋沙汰で引き抜かれる、或いは裏切り者が出るのはクソ程面倒だ。

 

 そういった裏切りを考慮にいれるのが面倒だからこそ、原作の龍園翔は恐怖政治というある意味、確実な手段に出たわけだしな。

 

 

 まぁ、だが、ソレ以上に―――

 女子が()()()()()()()()寝取られるサマなんて見たくねぇんだよクソが。

 入学前から南雲潰しは計画していたが……計画変更だ。

 

───先にあの愚物を()す。

 

 

―――そのためにも、まずはこのクラスを纏め上げる必要がある。

 原作よりも早く、確実にな。

 

 

「……説明は以上、何か質問などは?」

 

「二つほど質問だ。坂上」

 

「……ハイ質問をどうぞ」

 

 

―――タメ語に関して注意は無ぇのか。

 

 事前情報で俺相手に注意しても無駄だと考えているのか、もしくは減点対象になるが故のテンプレ対応か?

 ちっ、ミスったな。

 初動1000ポイント死守を狙うつもりだったが、この言動が些細な減点に繋がれば他クラスへの圧が大きく減る。990と1000、この差は致命的だ。

 

……仕方がねぇ。

 この際、割り切って素行不良によるポイントの増減額を調べ上げるか。

 

 

「……?……龍園君、質問をどうぞ」

 

「1つ目だ。このパンフレットに書いてある、卒業後の進路保証……これについて卒業時点で、全クラスの全生徒が貰えるものであるのかどうかを此処で明言しろ」

 

「……それは……」

 

 

 目を泳がせる坂上。

 

 

「この場での明言はできませんが、此処に入学することの出来た貴方方であれば大丈夫だと思います」

 

「ククッそうか。だったら二つ目だ、月初の十万ポイントってのは毎月、必ず十万貰えるかどうかってのを教えろ」

 

「ポイントは毎月1日に規定の量配られます」

 

「ほう?……毎月十万とは言わねぇんだな?」

 

「…ノーコメントです。質問以上ですか?」

 

「いや、今ので一つ増えたな。この校内で購入出来るものの範囲について、だ。一個人の都合で学内の監視カメラの映像の購入、閲覧は可能か?」

 

「基本的に不可能です」

 

「基本的にってことは可能な場合があるってことだな?もし可能な場合は何ポイントだ?」

 

「それが完全な個人の都合であるのならば、どれだけ少なく見積もっても数百万以上でしょう。場合によります」

 

 

───ってなると生徒会特権の一つか。

 今のところは問題ねぇな。

 

 

「……ククッ了解した」

 

 

 俺は『教師へのタメ語』と書いた下に、正の字で7を表し、メモ帳を閉じる。

 

 

「他の生徒も今のうちにしておきたい質問はありませんか?……無ければ残りの時間は自由とします、チャイムが鳴るまで教室からは出ないよう、それと式には遅れないようにしてください」

 

 

 坂上が教室を出ていくと同時に俺は再び席を立ち教卓に立つ。

 

 

「今、現状を多少なりとも理解している奴はいるか?居たら手を挙げろ」

 

 

 原作ネームド……金田悟、山田アルベルト、石崎大地、伊吹澪、真鍋志保、椎名ひよりに目を向ける。

 石崎、アルベルト、伊吹、真鍋はそれぞれの反応を示しつつも、手は挙げない。

 

 金田はワンテンポ遅れてぬるっと手を挙げるが、椎名ひよりは手を挙げずに、挙げるか悩んでいる様子すらねぇ。

 本を取り出し読み始めているくらいだ。

 

───だが、此処までは概ね予想通り。

 俺は時計を確認する──次、チャイムが鳴るまで残り六分と少しか。

……多少、駆け足で説明するしかねぇな。

 

 

「そうか。此処で手を挙げた人間、手を挙げずとも分かっている人間、何も分かっちゃいねぇ無能ども、それぞれいると思うが全員黙って聞け」

 

「特に椎名ひより、既にわかっちゃいるかもしれねぇが、答え合わせだと思って大人しく聞いとけ」

 

 

 ひよりはその言葉で興味が出たのか、本に栞を挟んでこちらに目を向ける。

───俺はそれを確認し、Sシステムの根幹について話し出す。

 

 チャイムが鳴れば教室から出てくる人間がいる、そいつらに聞かせるわけにはいかねぇからな。

 急ぎ足で尚且つ、クラスポイントなどの核心についても軽くだが触れていく。

 

 

「──つまりは最初の一月、素行不良さえ起こさなきゃ、開幕Aクラスも見えてくるわけだ」

 

「……けど、それって確かなわけ?いやまぁ率先して素行不良を起こす気はないけど」

 

「ほぼ確定だと思われますが。担任は龍園氏の『毎月必ず10万ポイントが貰えるか』という質問に対して毎月1日に規定の量を配ると回答しました。10万を配るという言葉を避けて回答を行う理由としては極めて妥当かと」

 

 

 伊吹が疑問を呈してくるが、そこに金田が率直な回答を伝える。

 

 

 

「ククッ概ねその通りだ。だが、さっきも言ったが、俺はこのSシステムの本懐はクラス順位、クラス間での闘争にのみ存在し、毎月のポイントの額はそのついででしかないと考察しちゃいるがな」

 

 

 そこで丁度、チャイムが鳴る。

 

 

「―――話は終わりだ、この一ヶ月間。たとえ教師が注意しなかったにしろ、素行不良なんて起こすんじゃねえ。良いな?」

 

 

 それだけ言い切ると俺は扉を開け、Cクラスの教室を出ていく。向かうは1年Aクラスの教室だ、あの愚物(HACHIMAN)がAクラスの統率に動く可能性があるからな。

 

 これが八幡なら死んでも有り得ないと断言できるが、HACHIMANだったならば話は別だ。

 だからこそ、出来れば初日のAの動向は見ておきてぇんだが……

 

───教室を出て少し歩いたところで突然、後ろから手を掴まれる。

 

 

「……チッ、オイ何のつもりだ?ひより、その手を離せ」

 

 

「……ふっふふ」

 

「あ?何が可笑しい?」

 

「ああ、いえ……威嚇する割には、私の手をすぐさま振り解かないのが少し意外でしたので」

 

「……馬鹿かテメェ、それでお前がわざとコケて学校側に訴えて見ろ。俺にどんなペナルティが下るか分からねぇだろうが」

 

「そんな低レベルな当たり屋みたいなことを平気ですると思われていたんですか……。少し心外ですね」

 

 

 原作の俺に対する批判か?

……まぁいい。

 

 

「……で、何のようだ。ひより」

 

「よくぞ聞いてくれました!───私は────そう───考え───」

 

 

 テンション高めで語り出すひよりを傍目に、ふと真横のBの教室の出口付近を見れば数人の生徒が会話しながら外に出ているのが目に入る。

 若干好奇、もしくは奇異の目で見られている気がしなくもねぇが……コイツは毛ほども気にしてねぇんだろうな。

 

……だがまぁ、コレを期に、此処で愚物について警告しとくのもアリか?

 今の俺の言葉一つでコイツの意識が変わることはないだろうが、いや逆にアレに興味を抱く可能性もあるか?

 敢えて黙っておくという選択肢も───

 

 

「つまり……つまりですね!貴方は入学前からこの歪な仕組みに───」

 

「チッ……一旦止まれ、ひより」

 

 

 意気揚々と語り続けるひよりをストップさせる。

 気付けば目の前に、というほど近くもないが下から覗き込むような位置にひよりの顔があった。

 

 そういうことはこれから出逢う予定の綾小路にやれ。そして俺にぜひとも(とうと)みを感じさせろ。

───などと内心で私情を付け足しながらも俺は言葉を吐く。

 

 

「自分の謎推理に夢中になるが余り他人との距離感を間違えるんじゃねえ───周りを気にしろ。テメェの妙なテンション感のせいで余りにも目立ちすぎてる」

 

「……あっ」

 

「まぁいい、推理としてみりゃただの与太の域だが、話としては面白えな。将来は小説家にでもなったらどうだ?」

 

「………!」

 

 

 ひよりは少しムッとした表情を見せたかと思えば、少しだけ俯き逡巡したのち、一転して、はっとこちらを見つめる。

 

 

「ククッ、じゃあなひより───」

 

 

 俺はひよりとすれ違うようにして歩き出す。

 Aクラスとは真逆の方になるが仕方ねぇ、どうせ今更行っても間に合わねぇ可能性が高いからな。

 

 そう考えた俺は、すれ違いざま、ギリギリで足を止め、ひよりに向けて言葉を残す。

 

 

「今度は誰の目にもつかねぇ場所で話しかけろ」

 

 

 聞こえたかの確認は取れなかったが、まぁ聞こえてるだろうと思い俺は歩行を再開させる。

 その上で、アイツなら俺の言葉の意味にもしっかりと気づくはずだ。

 

 

 唯一問題なのは、あの場にアイツを残してきた事のみ。

 あの場所はBクラスの目の前、つまりはアイツがいるAクラスの一つ手前になるわけだ。

 

───とはいえ、この場で引き返して隠れて監視し出すのも傍から見て怪しすぎる、か。

 

 此処は何も無いことを信じるしかねぇな───




アンケ、感想、評価、お気に入り等よろです。
コメ欄での展開推理、考察なども全然OKです!

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