青春をやり直したい大賢者、TSする   作:延暦寺

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やはりギルドか、いつ登録する?

学園を後にし、ワシは冒険者ギルドへとやってくる。

 

「懐かしいのう」

 

 ワシはギルドに到着すると、目の前の建物を見上げながらぽつりとつぶやく。

 多少の改修などは行ってはいるようだが、そこには三十年前とほぼ変わらない3階建ての建物が立っていた。

 酒場も併設されているため、酔っ払いたちの喧騒が聞こえてくるのも変わらない。

 以前来たときは、勇者と共に仲間を探しに来た時なので懐かしい。

 扉を開けて中に入ればより一層喧騒が強くなる。

 キョロキョロと見渡せば、受付にはそばかすがチャームポイントの素朴な美人といった感じの茶髪の受付嬢が座っているのを見つけた。

 

「すまんが、ギルドマスターのガルドルに繋いでもらえるかの? アウグスト……様の使いと言えば通じるはずじゃ」

 

 うーん、やはり自分の名前に様付けするのは慣れんなぁ。

 そばかす嬢は一瞬面食らった表情を浮かべるものの「わかりました」と言い奥へと引っ込んでいき、しばくするとパタパタとこちらへ戻ってきた。

 

「お待たせ致しました。ガルドル様がお待ちです」

「うむ」

 

 そばかす嬢につられガルドルの元へとワシは向かう。

 そして部屋の前へとやってくれば、そばかす嬢に礼を言い中へと入る。 

 部屋の中はゼーマンのいた学園長室のように豪奢な様相であった。

 どこの組織も長となると豪華な部屋を持つもんなのかのう。

 

「アウグストかい?」

 

 ワシが部屋の豪華さに感心しているとしわがれた声で名前を呼ばれると、そこにはしわがれた老人が立っていた。

 つるりと禿げ上がった頭に長く伸びた白いひげ。

 細身で一見すると好々爺のようではあるが、そこはギルドマスター。

 ゴリゴリのインファイターで、今でもそこら辺の若者には負けないだろう。

 ある意味、ワシの理想とするスタイルだ。

 

「うむ、ワシじゃよ」

「はぁ~、手紙で事情は聞いていたが本当に女の子になってるんだねぇ」

 

 ガルドルは顎に手をやりながら、しげしげとワシの体を眺める。

 これでワシが本当に女だったら不審以外の何者でもないな。

 

「……っ」

 

 それからしばらくワシの体を眺めていたガルドルは、突如無言で涙を流し始める。

 

「ど、どうしたんじゃ⁉」

「儂は悲しい……お前がそんな姿になって……儂は……儂は……っ」

 

 そうか……友人であるワシが突然オナゴになり、本来のワシはどこにも居なくなった。

 自惚れかもしれんが、それがガルドルにとってはつらいのだろう。

 大丈夫、姿かたちが変わっても中身はアウグストのまま。

 おぬしの友人であることは変わらんよ。

 ワシは、彼にそう伝えようと口を開こうとし……。

 

「なぜ、儂は同じように美少女になれんのか⁉」

 

 すぐさま口を閉じた。

 よかったー! うっかり喋る前でよかったー!

 というか、似たようなセリフをさっきも聞いたなぁ⁉

 え、ゼーマンの言ってた「男は皆、美少女になりたい」というのは本当だったんか?

 

「なぁアウグストよ。主が言ってた若返りの薬は「ゼーマンにも言ったが、アレはもう作れん。一度きりの奇跡のようなもんじゃ」」

 

 やはり聞き覚えのあるようなセリフを抜かそうとしたガルドルに対し、ワシは溜息を吐きながら食い気味に答える。

 ワシの友人達、こんなアホじゃったんだな……。長年友人をやってきて初めて知ったわ。

 ガルドル、「そっかぁ……」じゃないんだよ。

 いい年したジジイがシュンとするな。

 

「はーぁ! それで、何の用だったっけ?」

「露骨にやる気をなくすでないわバカもんが。冒険者登録したかったから手続きをしてほしかったんじゃ」

 

 アウグスト時代にも一応冒険者として登録はしていたが、今のワシはアウグスト・ラージャンではなくアウラ・オーガストだからな。

 新しく登録が必要なのである。

 

「へいへい、手続きしとくよ。ランクはどっから始める? 本来なら皆、鉄から始めるんだが」

 

 冒険者にはランクというものが存在する。

 ランクが上がるごとにより難度の高い依頼を受け、多額の報酬を受け取ることができる。 

 ランクは下から鉄、銅、銀、金、ミスリル、オリハルコンとなる。

 一般的な最高位はミスリルで、オリハルコンはそれこそ世界を救ったレベルの功績が必要となる。

 まぁ、ワシ含め魔王討伐のメンバーは全員オリハルコンだけどな!(自慢)

 とはいえ、そのランクをそのまま受け取るわけにもいかない。

 一見ただの小娘がいきなりオリハルコンとか確実に何かあると言っているようなものじゃからな。

 じゃあ通例通り鉄からだと言われると、鉄は魔物討伐系の依頼も受けられんので却下 。

 鉄は採取や街の雑用などがメインで、銅からようやく簡単な魔物討伐をできるようになる。

 まぁ、依頼なんか受けずに魔物倒しに行けばいいと思われるかもしれんが、せっかくじゃから冒険者生活も送りたい。

 第二の人生はとことん楽しむと決めているんでな。

 

「銅からで頼む。魔物討伐で今の体の試運転をしたいしの」

「了解。ま、お前さんならすぐにミスリルまで行くと思うがね」

「そんな生き急いでも仕方ないから、ゆっくりスローペースで冒険者生活を楽しむことにするよ」

 

 ワシがそう答えれば、ガルドルは「そうか」と短く答え、何やら紙に書くとワシに手渡してくる。

 

「これを受付に渡せば銅ランクのプレートを受け取れる。ついでに登録料も免除しておいたわ」

「おお、すまんの。恩に着る」

 

 ワシは礼を言いながら紙を受け取り、頭を下げ部屋から出ていこうとする。

 

「あ、アウグスト。もし薬出来たら真っ先に儂に持ってきてくれな」

 

 後ろからそんな言葉を投げかけられ、ワシは苦笑いを浮かべるだけだった。

 

 その後、ワシは受付に戻ってくると先ほどのそばかす嬢に紙を差し出す。

 他の受付嬢でも良かったんだが、袖振り合うも他生の縁というか、せっかく最初に話しかけたんだから、この子に手続きをしてもらいたくなった。

 

「これは、ギルドマスターの指令書⁉ しかも、銅ランクから? あなた、いったい何者なの……? アウグスト様の使いとも言っていたし……」

「アウグスト、様はワシの師匠のような存在でな。アウグスト様とガルドル様は友人同士で、ちょっとだけ便宜を図ってもらったんじゃ。これを聞いたら贔屓だなんだと騒がれるじゃろうから内密にの?」

 

 ワシのでっちあげの説明にそばかす嬢は怪訝な表情を浮かべるものの、ガルドルの指令書は本物のため、それ以上ツッコむべきではないと判断したのか無言でうなずく。

 

「承知しました。それでは、こちらが銅ランクのプレートになります」

 

 そう言って、そばかす嬢は首にかける銅製のドッグタグをワシに渡してくる。

 これがランクを証明するものになり、銀ランクであれば銀製、金ランクなら金製とどんどん高価になっていく。

 

「こちらはアウラ様の魔力を登録することでアウラ様専用となります。受けた依頼や、倒した魔物の情報などはこちらに登録されることになります。それゆえ、魔物討伐の虚偽の報告などは出来なくなりますので、ご了承ください」

 

 その説明にワシはうんうんと頷く。

 まぁ、その仕組み……ワシが作ったんだけどな?

 

 これができる前、虚偽の報告をする冒険者や、プレートを奪ってランクを詐称するあくどい冒険者が居て、どうにか対策できないかとガルドルに相談されてワシがつくった。

 仕組み自体は簡単だが、これをギルドの職員であれば誰でも作業ができるようにするのが大変だったんじゃよなぁ……。

 

「他に何か質問はございますか?」

 

 ワシが過去の苦労に思いを馳せているとそばかす嬢が話しかけてくる。

 おっと、いかんいかん。年寄りはすーぐ思い出に浸っていかんな。

 

「大丈夫じゃ」

「わかりました。それではご健闘を。……あの、これは職員としてじゃなくて個人として言わせてもらうけど、本当に大丈夫? ガルドル様が認めたのなら大丈夫だと思うけど、あまり無理はしないでね?」

 

 きりっとした表情を崩すとそばかす嬢は心配そうにしながらコソッとワシに話しかけてくる。

 うーん、いい子じゃのう。孫に欲しいくらいじゃ。独身じゃけど。

 

「こう見えてワシは結構強いんでのう。心配は無用じゃ……えーと」

「あ、私はリマっていうの」

「リマちゃんか。心配してくれてありがとうの。じゃが、本当に大丈夫じゃ」

 

 そばかす嬢あらためリマ嬢にワシは胸をドンと叩きながらそう言うが、なおも心配そうであった。

 ま、論より証拠。討伐系の依頼をサクッとこなして証明するしかあるまい。

 ワシは手ごろなゴブリン討伐の依頼を受けると、心配そうなリマ嬢の視線を背中に受けつつ、討伐に向かうのであった。

 

 ゴブリンは繁殖力が異様に強く、定期的に討伐が必要となる魔物じゃ。

 単体ではそう強くもなく銅ランクでもどうにか倒せるレベルではあるが、これが群れとなると銀、金ランク相当の難易度となる。

 しかも、運悪くその群れから上位種が誕生しようものならさらに難易度は上がる。

 それ故に、群れが発生しないよう定期的に狩る必要が出てくるのじゃ。

 

 今回の依頼は最低5匹狩れば依頼達成。

 それより先は倒せば倒した分だけ微量ではあるが報酬が上乗せされる。

 金に関してはたいして執着しとらんし今回は5匹狩るだけでいいだろう。

 

「おぉ、おるわおるわ」

 

 そんなこんなで依頼に書かれていた場所にやってくると、粗末な腰みのを付けた緑色の小人がギャギャギャと甲高い声を上げ闊歩している。

 数は十匹ほど。他の冒険者から奪ったのかボロボロの剣やこん棒などを携えていた。

 ちょっとばかし数が多く、普通の銅ランクであれば苦戦するじゃろうが所詮ワシの敵ではない。

 

「まぁ、まずは小手調べといこうか。『火球(ファイアーボール)』」

 

 ワシは少し離れた場所からゴブリンに向かって人差し指を向けると魔力を集中させ魔法を放つ。

 火球(ファイアーボール)は火属性魔法の最下級魔法。小手調べには充分である。

 指先から炎の球が放たれると、それはどんどん大きくなりワシと同じくらいの大きさにまで膨れ上がると、そのままゴブリン達の元へと突っ込み大きな火柱を立てる。

 

「ん?」

 

 そして、ゴブリン達が断末魔の悲鳴を上げる間もなく消し炭になると、そこにはデカいクレーターが残っているだけであった。

 

「……やっべ、さてはこれやらかしたな?」

 

 




学園長、ギルドマスター、大賢者のクソバカトリオ。
なお、最高戦力。
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