青春をやり直したい大賢者、TSする   作:延暦寺

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100%中の200%じゃ

「ババア! 居るかババァ!」

 

 最下級魔法がまさかの上級並の火力を生み出したことで、何かとんでもないことをやらかしたと察したワシは、魔法の師であり賢人と知られる魔法道具屋を営むババア……ルクレアのもとへとやってきた。

 

「なんだい藪から棒に。初対面の小娘にババア呼ばわりされる筋合いはないよ」

 

 雑多な道具に囲まれ手狭な店の中に入ると、ぼさぼさの銀色の髪をボリボリと掻き、長い耳をピョコンと揺らしながらババアが気だるげに店の奥から出てくる。

 見た目は二十代前半で、一般的には見目麗しいとされる人物ではあるが、その正体は悠久の時を生きるエルフであり、ワシよりも遥かに年上のまごうことなきババアである。

 

「……んん? あんた、もしかしてアウグストかい? なんだってそんなちんまい姿になってるんだ」

 

 さすがワシの師。姿形が変わっても一瞬で正体を看破されてしまった。

 

「いやまぁ、これにはちょっと複雑な事情があっての」

「おおかた、若返ろうとして失敗したんだろう」

 

 おう、バレておる……。

 まぁ、若返って第二の青春を謳歌する計画は事前に話していたし、彼女の頭脳なら察するのも容易いか。

 彼女はその知識を生かし、今まで様々な魔法道具を生み出してきた。

 はるか昔に開発した、魔力が無くても簡単に火を起こせる携帯道具などは、今も平民達に広く使われているしな。

 若返りの参考になるような魔法道具はないかと相談したこともある。

 結局そんなのは無かったので「じゃあ、自分で作ったるわい!」と研究を始めたのだ。

 その際、うっかり「使えないババアめ」と呟いたせいで大喧嘩したのが懐かしい。

 

「んで、女になったから男に戻りたいって話かい?」

「そっちの方は踏ん切りがついとるからもうええんじゃ。実はの……」

 

 ワシは先ほどの魔法事故についての話をルクレアに伝える。

 フンフンと話を聞いていたルクレアは腕を組みながらフームと唸る。

 

「あくまで仮説だけどね。普通、魔力量は老いるごとに目減りしていく。アンタも全盛期に比べりゃ随分と落ちていたはずだ」

「うむ、流石のワシも老いには勝てんからのう」

 

 ルクレアの言葉にワシは頷く。

 種族によって違いはあるが、人間はそれが顕著で二十代が全盛期で、そこから徐々に目減りしていく。

 ワシはルクレアの下で学び、魔力が減りにくくなる技法も学んでおるが、それでも老いには勝てず全盛期よりも魔力は少ない。

 

「だが、アンタの若返りは単なる肉体の巻き戻しじゃなく、別の存在への()()に近い。その結果、全盛期の肉体が持つ上限値に、元の魔力量がそのままスライドして加算されたんじゃないかねぇ」

 

そう言って興味深げにワシの体を眺めるルクレア。

なるほど。性別まで変わったイレギュラーな若返りのせいで、魔力の計算式がおかしくなったわけか。

 

 転生というのは、まだきちんと解明されてはおらんが長い歴史の中で、転生したと思われる存在は度々確認される。

 明らかな幼児が行ったことない地域のことを詳しく知っていたり、武術に長けており大人顔負けの武勇を誇る、など。

 確定こそできないが、性別すら変わってしまったワシは転生扱いになっておるのかもしれんな。

 

「と言っても、原因が魔力とも限らん。一応、魔力量の方を確認しとくか」

 

 ルクレアはそう言うと、目盛りの付いた水晶玉のようなものを取り出す。

 これは見覚えがある。ルクレアの発明品の1つで魔力量を測るための魔法道具だな。

 大雑把にとはいえ、個人の魔力量が分かるので教育機関や軍でも重宝されている。

 

「ほれ、これの上に手を置きな」

 

 ワシは言われるままに魔法道具に手を置き魔力を込める。

 ――瞬間、パンッと小気味いい音が響いたかと思えば、目の前の水晶玉が粉々に砕けてしまう。

 

「……?」

「……?」

 

 魔力測定用の道具が壊れるなどという珍事にワシ達は首をかしげながらお互いに顔を見合わせる。

 そして、その後何もなかったかのようにルクレアが新しい魔法道具を取り出しワシの目の前に置いたので、気を取り直して道具に手を置き魔力を込める。

 が、結果は同じ。

 先ほどと同様にパンッと小気味いい音が響き、道具は粉々に砕け散ってしまう。

 

「お前……バケモンだな」

「なぜじゃ⁉」

 

 目の前の光景を傍観した後、ルクレアは唐突にそんなことを述べる。

 

「いいか? 私の造る道具は一級品でちょっとやそっとじゃ壊れやせん。そんな道具……特に魔力測定器が壊れるとしたら原因は一つ。測定器の許容範囲を遥かに超えた魔力を測定したことになる」

 

 その言葉にワシが口を開こうとするがそれを遮りルクレアは「ちなみに」と続ける。

 

「今の測定器は私が制作した中でも一番の許容量を誇る。アンタに全盛期の魔力量にも充分耐えれる品物だ」

 

 自慢じゃないが、ワシの全盛期の魔力量は人類でも最大量を誇る。

 今でこそ全盛期よりも衰えてしまったが、それでも普通の人間よりは多い部類だ。

 そんなワシの全盛期でも耐えられるはずの測定器が壊れたということは、今のワシはそれ以上の魔力を持っているということになる。

 え、何? 今のワシ、全盛期以上なの?

 だから下級魔法でもえげつない火力出たの?

 

「今のワシ、化け物じゃないか」

「だからそう言ってるだろうがスカタン」

 

 ようやく事態を呑み込めたワシに対し、ルクレアは呆れたような表情で盛大にため息を吐くのじゃった。

 

「ババア! どうしよう! ワシ、このままじゃ人間滅ぼしちゃう! さっきも火球(ファイアーボール)でデカいクレーター作ってしもうた!」

「それはもう魔王の台詞なんだよ、このバカ弟子が……っ」

「いひゃいいひゃいっ」

 

 ルクレアはワシの両頬を掴むとみょいんみょいんと引っ張る。

 おい、ババア! 「モチモチほっぺだね……」じゃないんだ!

 堪能するな! 頬が伸びて戻らなくなったらどうしてくれる!

 

 ひとしきりワシの瑞々しい肌を堪能したルクレアは、ようやくワシの頬から手を離す。

 

「で、クレーターの方はどうしたんだい?」

「あぁ、そこは安心してくれ。土魔法でちゃんと整備し直しておいたわ」

 

 流石にあのままで放置はまずいんで、ちょちょいと埋め直してからここにやってきたのだ。

 自慢じゃないが、ワシは全属性の魔法を操ることができる。

 

 普通であれば一人1属性。

 これは大多数の人間がそうで、シングルと呼ばれる。

 続いて2属性扱えるのをデュアル、3属性をトライアル。

 全属性を扱えるものをプリズムと呼んでいる。

 ちなみにプリズムはワシ一人だけである。ふへへ。

 ワシの師であるルクレアでさえ、6属性のセクステットなので師を上回っている数少ない点だ。

 

「流石に後始末はしてきたか。んで、魔力量の方だね……」

「割と真剣に頼むババア――いや、師匠。ワシは青春を送りたくてゼーマンのところに行って学園の入学試験の申込にも行ったんじゃ。このままじゃ、うっかりすべてを壊しかねん……っ」

「――はぁ、仕方ない。弟子の頼みを聞いてやるのも師匠の務めだ」

「流石は師匠! 好き!」

 

 ワシの言葉に「都合がいいねぇ」と呆れながらもルクレアは、しばらく奥に引っ込んでいく。

 何やらごそごそと盛大な音を立てたかと思うと、木箱いっぱいの何かを抱えて戻ってくる。

 中を見れば、腕輪やら耳飾り、指輪など多数のアクセサリーが入っていた。

 

「これは封環具(レストレイン)。魔力を抑制するための魔法道具だ」

「なぜそんなものを……?」

 

 思わずこれが出来た経緯を聞いてしまうが、ルクレアの不穏な笑みを見てすぐに質問を引っ込める。

 まぁ、その効果からあんまり良くない使われ方をしているのは想像に難くない。

 と言っても、大半は魔法を使う犯罪者の拘束具とかそんなんだろうが。

 

「これらは、どれも装着者の魔力を大幅に減じることができる」

「ふむ……」

 

 ワシは箱の中から適当な指輪を拾い、装着してみる。

 

「――おっ」

 

 付けた瞬間、あくまで体感だ魔力量が減った感覚がある。

 試しに腕輪も付けてみると、先ほどよりもハッキリと減った感覚がある。

 

封環具(レストレイン)は付ければ付けるほど、効果が重複してより魔力を封じれる。まぁ、あと何個か付ければ学園を火の海にすることはないだろうね」

 

 ルクレアの言葉を聞き、ワシはいろいろ試した結果――両腕に腕輪、指輪を3つ、足にアンクレットを付けることで、チョーカーを付けることで魔力を9割減まで抑えることに成功した。

 

「なんか、すごいジャラジャラしとって成金趣味みたいになっとるなぁ」

「――普通、そこまで付けたら魔力を完全に封じるどころか指一本動かすことすらままならなくなるんだけどねぇ。ほんと、バケモンだよ」

 

 と、ルクレアにツッコまれつつもワシは満足げに封環具(レストレイン)を眺めるのだった。

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