モブ娘転生 ~推しの主人公がいないのでモブの私が代わりをしていたら、SSRヒロインたちの依存先になりました~   作:百合スキー

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MISSION1:イメチェンしよう

 

 

 そんな……!

 そんな事ってある……!?

 

「この世界には主人公たるルルカ様がいらっしゃらないなんて────!!」

 

 突然だが、私は学校の屋上で叫んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こほん。

 状況を整理しましょう。

 

 私は紅葉山リリア。この魔導学院都市におけるモブよ。

 モブというのは比喩表現ではないわ。どこにでもいるような平凡な顔立ち、平凡な能力、平凡な制服、あらゆる要素を加味したうえで、メタ的に────。

 

 つまりこの世界の原作的にもモブなわけ。

 そう、私は転生者だ。前世が男だったか女だったかなどはもう定かではない。

 

 ただ覚えているのは、赤信号に突き飛ばされて死ぬ前の横断歩道。

 そこでもずっとやってたソシャゲのメインストーリー。

 

 この世界の原作、リリカルアカデミアのことのみ。

 そして、今の私にとって、それだけで充分だったのである。

 

「なぜなら主人公たるルルカ様と会えるから……!!」

 

 ルルカ様、というのは公式が便宜的につけた名前だ。一応、好きな名前をつけることが出来る。立ち絵もあり、炎のように燃える赤髪を肩ほどまででまとめた麗しい御仁なのだ。

 

 見た目だけではない。性格もソシャゲ主人公ながら女傑の一言。

 彼女の生き様に私がどれだけ救われただろうか。

 

 今日この時まで、魔法あふれるこの世界で生きてこれたのだって────!!

 

「全部っ、全部っ、ルルカ様のおかげ………!! それなのに……ううーっ!!」

 

 ルルカ様は間違いなく私と一緒に入学してくる予定だったはず。

 それなのに全ての学園、全てのクラスを回ってもリリカ様らしきお人はいなかった。

 

 この世界は、主人公不在の異世界なのかしら。

 

「いひっ!! いひひひひっ!! 会ったこともない相手を思って叫んでるー!!」

 

 屋上の更に上。

 階段を囲う豆腐小屋みたいな場所の屋根の上で、可愛らしい声が響く。

 

 白瀬ミココ。金髪輪っか状にまとめた小憎たらしい美少女。私と同じ年なのにいまだ小学生みたいな体躯をしている。いや私がけっこう発育が早い方みたいだけど。

 

 レディとして全然成ってなくて、今も屋根の上でゴロゴロ転がっていた。

 ああ、桜色のパンツが丸出しだわ。

 

 でも前世のソシャゲじゃSSRヒロイン────。

 つまり最高レアであり、人気投票でも上位だった人気ヒロインなのよね。

 

 正直、私も好き。ああ、好き。でも幼馴染に転生したのだから、立場というものがあるわけ。

 舐められるわけにはいかないの。ビシッと言ってやるわ!!

 

「なによっ!! 文句あるの、ミココ!!」

「いやぁ、相変わらずリリちゃんは面白いなと思ってさ~~」

 

 パッ、と屋根の上から降りてきた。

 ふわりっ、と華麗に着地する姿はさながらメインヒロインのように可憐。

 くそぅ、やっぱり人気投票上位なだけはあるなぁ。

 

 そのままタタタッと近づいてきて、私の顔をじーっと見つめてきた。

 

「な、なによ……」

「いやぁ、次はどうするのかな~と思ってさ」

 

 どうする? どうするか……。

 私はルルカ様に会うために必死こいてこの難関学校を選んだんだけど……。

 原作だと、この学校に入学すると聞いていたから!!

 

 いないんなら平凡な学校に転校したって……。

 

 …………いいえ、ダメよリリア!!

 ルルカ様がいないのならば、誰がこの学園都市を救うの!? なんかあれだけ好きだったメインストーリーの記憶すら曖昧だけど、大変なことになるのはわかっているの!!

 

 ならばどうすればいいか!!

 

 

 

 

 

 

「私が主人公になる……」

 

 

 

 

 

 今度は私の目の前でミココが寝転がりながら大爆笑を始めた。

 

「主人公ォ!? 主人公ってなに!? いひっ、いひゃひゃははははははっ!!」

「うるさいわね、ミココ!! とりあえずやるべきことは……」

 

 何はともあれやるべきことは決まっている。

 このような品行方正なモブっぽい見た目じゃあルルカ様の代わりにはなれない。

 それならば、どうすればいいか……もちろん……!!

 

「────イメチェンを始めましょう!!」

 

 ミココの爆笑が、なんかヤバいタイプの悪役みたいになったところで私は彼女に寝技を仕掛けてやった。ククク、私は古流武術も嗜んでいるのよ。この体格差で勝てるわけないじゃない。

 

「いひっ、やめっ、やめて、リリちゃん腕はそっちにまがらなぁあああああああああああ!!」

 

 そんなわけで、私はその日のうちに美容院の予約を入れた。

 

 

 

 

 

◆MISSION1:イメチェンしよう◆

 

 

 

 

 

「リリちゃんって意外とお化粧とかお洒落とか得意だよね。興味なさそうなのに」

「貴方を着飾るためだけど!?」

 

 美容院でバッサリ髪を肩ほどまでに切り落とし、真っ赤に染めた私はついでに制服も改造するために服屋に向かっていた。うちの学校、制服改造もアリなのよね……。

 

 ミココもなんか可愛らしい真っ赤なワンピースみたいな感じにしてるし……。

 本当は黒のブレザーとスカートなのに。

 

「ええ~~私、別にお洒落興味ないもん」

「そんなきれいな顔しててもったいないわよ。ていうかそんなコト言ったらその制服は何」

「私に合う制服にしてって言ったら服屋が勝手にオーダーメイドしてさ~~」

 

 本人はサイズを合わせてほしい程度の気持ちで言ったらしい。

 でもまぁ、こんな傑物が来たんじゃ服屋さんもやる気出しちゃうのもわかるわね。

 私は流石にオーダーメイドじゃなくていいけど。ルルカ様に寄せるぐらいで。

 

「貴方みたいな美人が近くにいるくせして、本人が美容にやる気ないんだもの。

 そりゃあ周りは必死こくわよ」

 

「いひひっ、そりゃなんだかありがたいね~」

「ていうか中学の時、釣り合ってないってイジメられかけたんだから……っ!!」

 

 貴方はミココちゃんに不釣り合いなのよ、とかどうとか言われて。

 幸いモブと言っても、課金すればするほど成果が出るタイプで良かった……!!

 これといって特徴のない顔っていうのも、けっこう便利なものよね。

 

「ああ、安心してよ。あいつらきっちり締めといたから」

「ええ……そりゃ初耳だけど。具体的に何したのよ」

「どこまでなら許せる?」

「…………」

 

 聞かないで置こう。相当エグいことやってそうだし。

 私が絡まれた程度でそんなことしなくていいのに。ミココは甘いわね。

 

 さて、服屋に行く前に財布の中身を確認しておかないと。

 幸いにもお小遣いは毎日けっこうな額貰っているし、普段無駄使いはしない性質だけど。

 

「…………ミココ、銀行に行くわよ!!」

「美容院で思ったよりお金使っちゃった~~?」

 

 ニコニコしながら方向転換する私についてくるミココ。今日の彼女、美容院でこち末(※長寿ギャグ漫画のこと)読んだぐらいしかしてないけど、楽しいのかしら。

 

 一応聞いておこう。

 

「ミココ、今日私についてきてて楽しい?」

「え? 楽しかったよ~~、こち末七八六話」

「……まぁ、いいわ。服買ったら貴方に付き合ってあげるから、行くとこ考えておいてね」

 

 と言って思わず頭を撫でてしまった。

 

「いひひひっ、じゃあとことん連れ回すからねっ」

 

 幼少からのくせなのである。SSRヒロインに対して、この所業。

 前世のオタクどもが知ったら、マジでリンチにされそうだわ……。

 

 さて、銀行についたけどATMでお金を下ろせば……。

 

 

 

 

 その時、ドォオオオオオオオオオオオオンという爆音が響いた。

 

 

 

 

 銀行から飛び出してきたのは、ヘルメットを被った作業着の連中。

 この魔法学園都市、そこそこに治安が悪い面もあるのは知っていたけれど……。

 

「あ、女の子が人質にされてるね~~」

 

 フードで顔を隠した女の子が杖銃を向けられ、銀行強盗に掴まれていた。

 

 あの杖銃からは魔弾が放たれる。

 私たちのように魔力があれば死ぬことはないけれど……。

 

「どうする~~? このままATMの裏に隠れていればやりすごせそうだけど」

 

 ちょうど入口にあったATMのおかげで、外にいる銀行強盗からは見えない位置にいるらしい。

 モブがするべき行動は……やり過ごすことよね、当然。

 

 だけれども、ルルカ様ならどうするか……!!

 

「当っ然っ!! 助けるに決まってるでしょ!!」

「いひひっ、言うと思った!!」

 

 太もものホルスターから杖銃を取り出す。

 私のは引き延ばすことが出来る可変タイプで、この近~中距離なら拳銃モードが良さそうね。

 ミココのは元々拳銃タイプで、しかも二本も持っていた。

 

「じゃあ私が突っ込んでかき乱すから、リリちゃんは隙を見て人質を救出して」

「簡単に言ってくれるわね……」

「それぐらいできなきゃ、主人公なんて務まらないよ?」

 

 ニヤリ、と笑って飛び出すミココ。

 すぐさま二丁杖銃が魔弾を撃ち出し、銀行強盗の一人を吹き飛ばす。

 

「な、なんだぁっ!?」

「正義の味方だよっ!!」

 

 彼らの機関銃タイプの杖銃がミココを狙う。

 けれど、魔法の効果か非常に素早く動くミココには当たらない。

 

 あんな魔法を使いながら二丁拳銃で当てるのだから、ミココの眼力は大したものね。

 たしか魔眼だったかしら。目も赤いし。

 

 さて、状況が収まる前に人質を持っている銀行強盗に近づいて────と。

 ちょうどミココが三人目の銀行強盗に連射しているときだったわ。

 

「動くなっ!! こいつがどうなっても……」

 

 人質を活用しようと思った次の瞬間、私がそいつの手を掴み投げ飛ばした。

 そのまま杖銃を向ける。これが古流武術の力よ……!!

 

「貴方、大丈夫?」

 

 ちゃんと相手が気絶したのを確認したら、フードの女の子に手を差し伸ばした。

 どうやら腰が抜けてしまっているみたい。

 

「は、はい……貴方様は……っ!?」

「紅葉山リリア。通りすがりの正義の味方よ」

 

 ああ、ルルカ様。貴方の決め台詞を使ってしまいました……!

 しかしこの世界に存在しない貴方がいないんだから、仕方ないわよね。

 

「リリちゃ~~ん、そろそろ行かないと、警邏隊が来て私たちも拘束されちゃうよ~?」

「あ!!! じゃあ貴方、代わりにここの処理よろしくね!!」

 

 そう言いながら、私たちはその場をあとにした。

 フフ、ちょっとは主人公っぽかったかしら……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……リリさま……」

 

 ────続く





【紅葉山リリア】
コモンですらないモブだった娘。ソシャゲのモブってなんか可愛い子多いよね。
自分磨きがけっこう好きなため、古流武術やお洒落を欠かさない。最近イメチェンした。
リリカルアカデミアのルルカ様が推し。一応転生者だが前世の性別は不明。

髪は黒から赤になった。姫カット。眼は金色。
制服はミニスカノースリーブシャツにブレザーを羽織る形。
中学生にしては発育が良い方。

【白瀬ミココ】
リリアの幼馴染。でも原作には幼馴染なんていない。
SSRヒロインであり人気投票も上位。二丁拳銃使いでスポーツが得意。
でもあんまりお洒落には興味がない。

髪は金。輪っか状にまとめている。眼は赤色で魔眼。制服は赤いワンピース風。
小学生みたいな体躯をしている。
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