朝飯を済ませて集会所を出ると、道の先にゼイユが立っていた。俺の鞄へ目を向け、持ってきたかと聞いてくる。仮面を入れた辺りへ手を添えて頷くと、彼女は自分の家へ向かって歩き出した。
「おじいちゃんには話してあるから。どんなポケモンだったか、アンタたちからも説明してよね」
「ああ。名前まで分かるといいんだけどな」
アイも俺の隣を歩いた。畑の脇を抜けてゼイユの家へ着き、玄関で靴を脱ぐ。廊下の奥の部屋には朝日が入っていて、おじいさんが座卓の湯飲みを端へ寄せていた。
「よく来てくれたね。昨夜のお面を、見せてもらえるかな」
俺は座布団に座り、鞄を膝の脇へ置いた。パーカーで包んだ仮面を出す間に、屋台で小さな影を見つけた時のことを話す。
「最初は子供だと思ったんです。仮面をつけて、一人で建物の裏へ行ったから。でも、石段で振り返った時に手と足が見えて……人間じゃなかった」
「草をまとったような姿でした。ボクたちが近づくと下がって、山へ逃げる時に、この仮面を落としたんです」
アイが言い添えた。俺は卓の上で布を開き、仮面を二人へ向けた。おじいさんが身を寄せ、緑の表面と額の飾りへ顔を近づける。
「追いかけなかったのかね」
「返そうとしたんだけど、また逃げちゃったの。暗い山へ入ったから、追うのはやめたわ」
ゼイユの答えを聞き、おじいさんは頷いた。仮面を手に取ると、片手で裏を支え、もう片方の指で縁の細工を確かめていく。額の飾りに触れたところで手を止め、窓へ向けて傾けた。
「ここが欠けているね。石段へ落ちた時の傷かな」
「たぶん。近くに欠片も残ってました」
紙に包んでいた欠片を渡す。おじいさんは傷口と見比べ、紙の上へ置いた。仮面の表をもう一度見てから、俺たちへ顔を上げる。
「そのポケモンは、小さな身体に、大きな仮面をつけていたんだね」
「そうです。外れた時は、仮面に隠れてた顔もちょっと見えました」
「……オーガポンだろう。この仮面を持つ、キタカミで鬼と呼ばれてきたポケモンだ」
俺は卓の上へ戻された仮面を見た。昨夜は、この仮面の下から小さな手が出ていた。返そうと差し出すと一段だけ石段を下りて、俺の後ろを見て止まった。
「あいつが……鬼?」
「待って。鬼って、ともっこさまと戦った鬼でしょ? あんな小さいポケモンだったの?」
ゼイユが座卓へ膝を寄せた。おじいさんは仮面を布へ寝かせ、額の飾りが卓に当たらないよう、下へ布を重ねた。
「お前にも、話しておかなければならないな。ユアくん、アイくんも聞いてくれるかね。村に伝わっている鬼の話には、抜けてしまった大事な出来事があるんだ」
アイが姿勢を直した。俺も鞄を足元へ移す。おじいさんは、これは自分の父から聞いた、一族に代々伝わる話だと言ってから、ゆっくり話し始めた。
「遠い昔、この里へ異国から一人の男と、一匹のポケモンがやってきた。そのポケモンがオーガポンだった。二人は村の人に見慣れない姿をしていたために恐れられ、村へ入れてもらえなかったそうだ」
ゼイユの眉が寄った。口を開きかけたが、おじいさんが続きを話すと、仮面へ視線を戻した。
「歓迎されずに悲しんだ二人は、鬼が山の洞窟で暮らすことにした。村から離れていても、互いを大切にして、つつましく暮らしていたそうだよ。そんな二人を不憫に思ったのが、村のお面職人だった。男が異国から持ってきた宝石を使って、四つの仮面を作ってやったんだ」
おじいさんが、仮面の額へ指を近づけた。朝の光を受けて、飾りの内側に細かな色が浮かぶ。
「顔を隠せば、二人も祭りへ来られる。村の人たちと一緒に過ごせるようにと作った仮面を、二人はたいそう喜んだ。これも、その四つのうちの一つ。碧の仮面と伝えられている」
「じゃあ、昨日あいつが仮面つけてたのも……」
言いかけて、俺は昨夜の屋台を思い出した。仮面をつけた子供が何人もいたから、俺もすぐにはポケモンだと気づかなかった。
「男とオーガポンは、仮面をかぶって祭りへ来るようになった。二人の持つ仮面は見事だったので評判になり、噂は遠くの土地まで広まったそうだ。その噂を聞きつけたのか、仮面を欲しがる三匹のポケモンが、里へやってきた」
おじいさんは俺たちを見た。
「イイネイヌ、マシマシラ、キチキギス。オーガポンが留守にしている間に、三匹は洞窟へ入り、大事にしまわれていた仮面を奪おうとしたんだ」
「……ともっこさまが?」
ゼイユの声が上ずった。おじいさんは頷き、彼女が口を閉じるのを待って続けた。
「男は仮面を守ろうとしたが、三つは奪われてしまった。守りきれたのは、碧の仮面だけだったという。オーガポンが洞窟へ戻った時には、住処は荒らされ、男の姿もなかった」
俺は仮面の額を見た。何か聞きたかったのに、すぐに言葉が出なかった。おじいさんが湯飲みを手に取ったところで、ようやく口を開く。
「その人は、どこかへ逃げたんですか」
「男がその後どうなったかは、伝わっていないんだ。洞窟には争った跡と、守られた仮面が残っていた。オーガポンは大切な相手を失い、碧の仮面をかぶって村へ下り、三匹を追った。そして、奪った仮面を持っていた三匹と戦い、倒したんだよ」
ゼイユの手が座卓の縁へかかった。アイは仮面から目を上げ、おじいさんへ尋ねる。
「村の人たちは、洞窟で何があったかを知らなかったんですね。三匹を攻撃するオーガポンだけを見たんですか」
「ああ。事情を知らず、怒る鬼を恐れた。そして、三匹が自分たちの村を守ってくれたと思ってしまった。三匹をともっこと呼び、亡骸を葬って、英雄として祀るようになった。オーガポンは悪者にされ、一匹で山へ帰っていったそうだ」
昨日、アイが看板を見て抱いた疑問は、争いが始まった原因が書かれていないことだった。仮面を奪われた話を聞くと、鬼が村へ下りてきた理由まで変わってしまう。
「看板には、村を守るために戦ったってあったのに。仮面を奪われたから、追ってきたのか……」
「お面職人は知ってたんでしょ? 村の人に、本当のことを言わなかったの?」
ゼイユがおじいさんを見た。返事を待つ間も、卓へ置いた指が動いていた。
「言ったんだよ。だが、誰も聞こうとしなかった。村を救った英雄を悪く言う者だと、職人の方が責められた。真実を訴えても異端者として扱われ、村で孤立してしまったそうだ」
おじいさんが湯飲みを置いた。
「そのお面職人が、わしたちの先祖だ。村では話せなくても、子供には本当の話を残した。そうして家族の中で伝えてきたのが、今の話だよ。仮面の作り方も家に伝わっている。この細工を見て、祭りで売る仮面ではないと気づいたんだ」
ゼイユが息を吸った。俺たちを一度見てから、おじいさんへ向き直る。
「そんな話、あたし、聞いてない……。ずっと、ともっこさまが村を守ってくれたんだって思ってたのに」
「話す時を決めかねて、延ばしてしまったな。すまなかった」
「そういうことじゃなくて……! 仮面を奪った方を、英雄だって祀ってるのよ? オーガポンの方は、大事な人までいなくなったのに、鬼だって怖がられて……おかしいじゃない」
最後の言葉で声が強くなった。ゼイユはおじいさんの返事を待たず、仮面へ目を落とした。額の欠けた部分に指を近づける。傷口へ触れる前に手が止まり、膝へ戻った。
俺は楽土の荒地でスグリと話したことを思い出した。人を襲う鬼なら、なぜ隠れて暮らしているのか。あいつは何度も山へ行って、考えていた。
「スグリも、鬼さまは悪いやつじゃないと思うって言ってた。何回も探しに行ったけど襲われなかったし、人を襲いたいなら、ずっと山に隠れてるのは変だって」
ゼイユが俺を見た。
「……そんなことまで話したの?」
「神社で少し聞いて、最後の看板で、理由も話してくれたんだ」
彼女は座布団の端をつまみ、膝の脇へ押し込んだ。
「スグ、家でも鬼の話ばっかりするから。好きだから庇ってるだけだと思って……まともに聞いてなかった」
小さくなった声を聞いて、俺は口を閉じた。スグリが疑っていた通り、鬼が悪者だという話には、合わない部分があった。あいつの話を聞いておいてよかったと思ったが、今ゼイユへ言うのはやめた。
ゼイユがアイへ目を向けた。アイは彼女を見ていたが、何も付け加えなかった。ゼイユは唇を結び、座卓へ向き直る。
「……おじいちゃん。このお面、直せる?」
仮面の下の布を指で押さえ、飾りを見やすい向きに少し動かした。
「持ち主がいるなら返さなきゃ。こんな傷ついたままじゃ、嫌でしょ」
おじいさんは仮面を持ち上げ、拾った欠片を傷口へ近づけた。形が合う部分はあったが、脇には隙間が残っている。
「面は直せるよ。ただ、細工に使った結晶が足りない。同じ質の結晶を足さなければ、この隙間を埋められないんだ」
「取ってくるわ。どこにあるの?」
「鬼が山の頂上に、てらす池があるだろう。あの池の、けっしょうのかけらが使える。持ってきてくれれば、修理はわしがしよう」
ゼイユが頷いたので、俺も鞄へ手を伸ばした。すると彼女が俺とアイを見て、声を落とした。
「スグには、まだ言わないでね。昨日会ったことも、今のおじいちゃんの話も」
俺は鞄から手を離した。
「なんで。あいつ、ずっと会いたがってたんだぞ」
「だからよ。会えたって聞いたら、すぐ山へ行っちゃうでしょ。いるかどうかも分からなかった時から、何回も探しに行ってるんだから」
ゼイユは俺から目を逸らさずに続けた。
「昨夜、オーガポンが逃げた道も暗かった。昼間に出たって、会えるまで探すつもりなら、暗くなっても帰ってこないかもしれない。まずお面を直して返すことを、あたしたちでやりたいの」
「一緒に連れていけばいいじゃん。手伝いたいって言うと思うけど」
「一緒にいる時だけならね。あたしたちが集会所へ戻った後も、あの子が家で待ってるとは限らないでしょ」
俺はアイを見た。アイはゼイユの話が終わるまで聞いて、それから頷いた。
「うん。今日は三人で材料を取りに行こう。ボクも、今はスグリくんに話さない」
俺はアイの顔を見直した。ゼイユへ何か言うのかと思っていたのに、アイは返事を終え、俺の言葉を待っている。
「……お前も黙ってるのか?」
「うん。ユアは、どうしたい?」
スグリの顔が浮かんだ。鬼さまの話をする時、あいつは俺の方を向いて、普段より長く話してくれた。その相手に、会ったことを黙っておくのは嫌だった。
けれど、山へ一人で探しに行く心配を、俺が大丈夫だと言い切れるわけでもない。知り合ってまだ数日だ。家でどんなふうに過ごしているのかも、俺はほとんど知らない。
「……今は言わない。お面を直して、返すことを先にする。でも、ずっと黙ってるつもりはねぇからな」
「分かってるわよ。ずっとなんて言ってないでしょ」
ゼイユが返した。俺はもう一度頷き、鞄を膝へ引き寄せた。
おじいさんに仮面を預け、見比べるために小さな欠片だけを持っていくことになった。池の浅い場所にもかけらが落ちているので、大きな結晶を無理に割らずに探すよう教えてくれた。削って形を合わせるので、欠けた部分より少し大きなものがあればいいという。アイが紙包みを袋へしまう間に、ゼイユが水と食べ物を用意しに立った。
ーー
村の道を離れると、畑の脇にあった草が、木々の下まで続いていた。ゼイユは山へ入る分かれ道で足を止め、俺たちが追いつくと、登りやすい方の道を示した。
「頂上まで行くんだから、水、途中で全部飲まないでよ」
「そんな一気に飲まねぇって。お前は何回も登ってんの?」
「何回かはね。池まで行かなくても、山には来るし。石が多くなるから、足元ちゃんと見てなさい」
道の上へ出た根をまたぎ、坂を登った。木々の隙間から村の屋根が見えたが、道を曲がると隠れてしまう。しばらく歩くうちに土が減り、靴の下で砂利が動くようになった。
岩の脇からキラーメが浮かび上がり、俺たちの通る道を横切った。アイが足を止め、青い身体が崖の方へ離れるのを待つ。ゼイユも数歩登った場所から振り返り、俺たちが来るまで立っていた。
日陰で休んで水を飲んだ。風が通ると汗のついた服が冷え、鞄の肩紐をずらして肩を回す。ゼイユが食べ物を配り、空いた岩へ腰を下ろした。
「結晶、すぐ見つかるといいな」
「見つけて帰るわよ。おじいちゃん、浅いところにも落ちてるって言ってたでしょ」
「ボク、欠片を持ってるから、拾ったら見比べよう」
アイが鞄の小さな袋を示した。三人で食べ終え、包みをしまって立ち上がる。足を乗せる場所を選びながら斜面を登ると、木々が低くなり、風が頬へ直接当たった。
岩の道を北へ進み、ゼイユについて曲がった先に、上へ続く石段があった。段を上り切ると、水面が見える。近づくにつれて池の奥まで開け、小さな橋が渡されているのも目に入った。
「てらす池よ。……ほら、底を見て」
岸から覗くと、水の下に大きな結晶があった。尖った先端が水面へ伸び、青や紫の光が波に揺れている。岩の影になった部分も暗く沈まず、結晶の縁から光が漏れていた。
「すげぇ……。こんな池、見たことねぇ」
「うん。橋の下まで光ってるね」
アイが少し腰を屈め、水の中を見た。俺も鞄を背負い直して岸を歩く。大きな結晶の周りには、細かなかけらが見えたが、岸から手の届かない場所にあるものも多かった。
ゼイユが浅瀬の脇へしゃがんだ。俺たちも乾いた岸を分かれて探し、見つけたかけらをアイの持つ欠片と並べた。色は似ていても薄すぎるものや、細かな割れ目の入ったものがある。
「これ、削ったらなくなりそうだな」
「もう少し厚いのを探そう。おじいさんに見せるまで、使えるかは決められないけど」
アイが薄いかけらを元の場所へ戻した。俺は岸に沿って、岩が水へ張り出した辺りまで歩く。ゼイユはその岩の手前にいて、隙間へ顔を近づけていた。
「ユア、ちょっと来て。この下にあるの、見える?」
隣へしゃがむと、浅い水の中で平たい結晶が光っていた。指ほどの長さがあり、端にも厚みがある。ゼイユは鞄を下ろし、手を伸ばしたが、指先が少し届かなかった。
「岩に乗ると滑りそうだな。俺が腕、支えようか」
「お願い。アイ、かけらを包む布、出しておいて」
アイが鞄を開けた。俺は足を広げてしゃがみ、ゼイユの片腕を支える。彼女はもう片方の手を伸ばし、結晶の縁へ指をかけた。水に浸かった手がゆっくり持ち上がり、結晶が岩の隙間から出てくる。
岸へ戻ったゼイユが手のひらを開いた。アイの広げた布へ結晶を置くと、濡れた表面が光った。俺たちは拾った欠片を隣へ置き、角度を変えて見た。
「同じ光だな。大きさも、これなら足りそうだ」
「割れ目も少ないね。持って帰ろう」
アイが結晶の水を拭き、布で包んだ。俺の鞄へ入れることにして、服の間へ挟む。ゼイユが覗き込み、揺れないかと聞くので、鞄をそっと持ち上げて確かめた。
「大丈夫。服で挟んであるから。俺も下りは急がねぇよ」
「そうして。石段、濡れてる場所もあったから」
「分かってるって」
ゼイユは濡れた手を拭いてから、自分の鞄を背負った。俺たちは水を飲み、池を離れる。石段を下りる時には、登りで見えなかった村の方の斜面が、木々の間から見えた。
ーー
畑まで戻ると、畝に長い影が伸びていた。村の道へ出たところで俺は肩紐を緩め、鞄を抱えて歩いた。ゼイユの家へ着くと、彼女が玄関からおじいさんを呼ぶ。
朝の部屋へ入り、座卓へ結晶を出した。おじいさんは窓際で透かして見て、仮面の欠けた部分へ近づけた。
「これなら使えるよ。よく見つけてきたね」
ゼイユが卓の脇へ座った。
「直すの、今からできる?」
「ああ。少し待っていておくれ」
おじいさんは道具を持ってきて、仮面に残った砂を小さな刷毛で払った。ゼイユが手伝うことはあるかと聞くと、手元を空けてくれればよいと答える。彼女は卓の湯飲みを下げ、道具を置く場所を空けた。
俺とアイは卓から離れて座った。山を下りた脚が重く、足を伸ばすとアイの鞄へ当たりそうになったので、少し身体をずらす。おじいさんは結晶を削っては仮面へ当て、細かく形を合わせていた。
ゼイユがお茶を持って戻ってきた。湯飲みを受け取り、息を吹きかけて飲む。彼女も座ったが、おじいさんが仮面を持ち上げるたびに手元を見ていた。
削る音が途切れ、窓から入る光が卓の端へ移った頃、おじいさんが結晶を取りつけた部分を確かめた。仮面を傾け、表と裏を見てから、俺たちへ向ける。
「できたよ。飾りも、もう外れない。これなら返してやれる」
俺は両手で受け取った。欠けていた額の飾りが埋まり、傾けると、新しく足された部分も隣の結晶と一緒に光った。昨夜、白く見えていた傷口は隠れている。
「……ちゃんと直ってる」
ゼイユへ渡すと、彼女も飾りを確かめた。指で縁を支え、布の上へ静かに下ろす。
「あとは、返さなきゃね。探しに行く時、あたしも行くから」
「うん。でも、昨日の道へ行けば会えるのかな。山のどこにいるかまでは、見てないんだよね」
アイが言った。おじいさんの話に出てきた洞窟も、俺は場所を知らない。逃げた道を追って行っても、近づいただけでまた逃げられるかもしれなかった。
「返し方も考えようぜ。昨日みたいに、三人で近づくと怖がるかもしれねぇし」
「分かった。今日は、おじいちゃんに預かってもらう?」
ゼイユが尋ねたので、俺とアイも頷いた。おじいさんは仮面を布で包み、座卓の脇にある棚へ置いた。彼女が包みの端を整え、飾りが下へ当たっていないか確かめる。
俺は空になった袋を鞄へ戻した。パーカーを羽織って立ち上がると、アイも湯飲みを卓へ置いた。廊下へ出た俺たちに、ゼイユが玄関までついてくる。
「返しに行く相談するなら、あたしも呼んでよね」
「呼ぶって。道も知らねぇんだから」
靴を履いて外へ出る。門を抜ける時、ゼイユが家へ戻る足音が聞こえた。俺は軽くなった鞄を肩へ掛け直し、アイと並んで集会所へ続く道を歩いた。