繋がりの王者   作:宵取与一

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色々試行錯誤しながら少しずつ書き方変えてます。
むつかちい……


3話

ポケモンスクールの裏には、小さなバトルコートがあった。

授業や実技訓練で使う場所らしい。

周囲は柵で囲まれていて、足場も整えられている。今は誰も使っていないようで、聞こえるのは遠くから聞こえる街の喧騒だけだった。

 

アイは慣れた様子でコートの反対側へ歩いていく。

その隣にはドオー。

相変わらず眠そうな顔をしていた。

 

正直、強そうには見えない。

でも、見た目だけじゃ分からない。

旅に出てから、それは嫌というほど知った。

 

「一匹だけ?」

 

アイが聞いてくる。

 

「ああ」

 

俺は頷いた。

ラルトスしかいない。

クチートは興味はあるようだが、参加の意思は示さなかった。

アイも納得したように頷く。

 

「ボクもドーだけで行く」

 

そう言ってドオーの頭を軽く叩いた。

ドオーは間延びした声で鳴く。

その姿だけ見れば、昼寝の場所を探しているようにしか見えない。

ラルトスが一歩前へ出る。

小さな背中。

少し緊張しているのが分かる。

でも逃げる気はない。

俺はそんなラルトスの背中を見つめた。

 

旅に出てから何度か戦った。

野生のポケモン相手なら負けていない。

ラルトスだって強くなっている。

だから正直に言えば、少し自信があった。

負けるつもりなんてない。

 

アイは静かに構える。

 

「……行くぞ、ラルトス」

 

『うん』

 

返事は短かった。

でも力強い返事だ。

その瞬間だ。

 

「まずは様子見かな」

 

アイが言う。

次の瞬間。

 

「ドオー、どろかけ」

 

早い。

開始の合図も何もなく、ドオーが前脚で地面を叩く。

大量の泥が一気に飛んできた。

 

「なっ!?」

 

『っ!』

 

ラルトスが慌てて飛び退く。

だが避けきれない。

泥が肩や足に当たり、動きが鈍る。

 

「ラルトス!」

 

『だいじょうぶ』

 

ラルトスは軽くふらつきながらも体制を立て直す。

ダメージは大きくない。

でも、嫌な攻撃だった。

泥により視界が悪くなり、動きも少し制限される。

そして何より、アイが最初から迷っていない。

それが妙に気になった。

 

「もう一回」

 

再び泥が飛ぶ。

 

「テレポート!」

 

慌てて叫ぶ、瞬間、ラルトスの姿が消えた。

泥が空を切る。

次の瞬間にはドオーの後ろ。

 

「今だ!」

 

『ねんりき!』

 

ラルトスの瞳が光る。

念力がドオーを包み込み、その巨体がゆっくり浮き上がった。

 

「よし!」

 

手応えはあった。

だが、アイは全く焦っていなかった。

 

「ドオー、そのまま体重を前に」

 

落ち着いた声。

ドオーは暴れない。

慌てない。

浮かされたまま、体重を前にかけた。

その姿に違和感を覚えた瞬間だった。

ドオーの体が強引に地面へ落ちた。

念力を無理やり振り払ったのだ。

 

「え?」

 

思わず声が漏れる。

その隙を、アイは見逃さなかった。

 

「マッドショット」

 

泥の弾丸が放たれる。

近い。

避ける時間がない。

 

『っ!』

 

ドオーが放った泥の弾丸が直撃し、ラルトスが吹き飛ばされた。

 

「ラルトス!」

 

ラルトスは地面を転がるが、すぐに立ち上がる。

でも効いている。

見れば分かる。

それなのに、アイは変わらず落ち着いていた。

俺だけが焦っている。

その事実が余計に焦りを大きくした。

 

「ねんりき!」

 

とにかく攻撃をしようとラルトスが放った念力がドオーに直撃する。

 

だが、

 

「受けて」

 

アイは避けさせない。

ドオーはそのまま攻撃を受けた。

 

体が揺れる。

 

効いている、はずなのにそれでも倒れない。

 

「なに……?」

 

「ドオーは頑丈なポケモンだからね」

 

当然みたいに言う。

その間にもアイは次を考えている。

 

「どろばくだん」

 

巨大な泥の塊がラルトスに向けて飛んでくる。

 

『っ!』

 

ラルトスが横へ飛び、何とか攻撃を回避した。

 

けれど。

 

「その先」

 

アイの声。

嫌な予感がした。

 

「マッドショット」

 

今度はラルトスが交わした所へ、泥の弾丸がとんでくる。

 

「え……」

 

読まれている。

ラルトス着地地点を。

ラルトスの動きを。

俺達の…次の行動を。

 

 直撃。

 

ラルトスが膝をついた。

心臓が跳ねる。

なんでだ、ラルトスは頑張っている。

むしろ俺よりずっと。

なのに追い詰められているのはラルトスだった。

 

一手先。

 

いや、もっと先。

 

アイは最初からそこまで見えているように見えた。

 

「ラルトス!」

 

『まだ……』

 

小さな声。

傷だらけになりながらも、それでも立ち上がる。

体は泥だらけで息も荒い。

でも前を見ることをやめない。

その姿に胸が痛くなる。

アイもラルトスを見ていた。

そして少しだけ表情を変える。

 

「強いね」

 

アイはぽつりと言った。

 

「え?」

 

「そのラルトス」

 

真剣な目だった。

 

「本当に強い」

 

その言葉に嘘は無かった。

だからこそ、次の言葉が重かった。

アイは俺を見る。

 

「問題はキミ」

 

言葉を失った。

ラルトスではなく俺だ。

俺が原因だと言われている。

 

「キミはラルトスを見てるつもりになってる」

 

アイは続ける。

 

「だけど、見ているつもりで見えてない」

 

「……なに言って」

 

「ラルトスはもっと動ける」

 

静かな声だった。

責める声ではなく、ただ事実を言っている。

 

「でもキミが迷うせいで、思うように動けない」

 

俺は何も言えなかった。

反論できなかった。

さっきだってそうだ。

指示を出す時、一瞬考えた。

一瞬迷った。

アイは迷っていないのに。

その差が、ずっと積み重なっている。

 

「ドー」

 

アイが静かに言う。

 

「終わらせようか」

 

ドオーが前へ出る。

地面が震える。

 

「マッドショット」

 

最後の一撃。

 

「ラルトス!」

 

叫ぶ。

 

でも、何を指示するべきか分からなかった。

避けるのか、受けるのか。

テレポートか、ねんりきか。

一瞬。

本当に一瞬。

俺はまた、迷った。

その間に、泥の弾丸がラルトスを飲み込む。

 

『……っ』

 

小さな声。

 

そしてわラルトスはゆっくり倒れた。

静寂が訪れる。

遠くから聞こえる街の音だけが耳に届いていた。

俺は動けなかった。

 

 負けた。

 

 それも、はっきりと。

 

 完敗だった。

 

ラルトスは最後まで立とうとしていた。

倒れた後も、少しだけ体を動かそうとしていた。

でも動けない。

 

悔しかった。

負けたことがじゃない。

ラルトスを負けさせたことが。

俺が迷ったせいで。

俺が足りなかったせいで。

アイはドオーの頭を撫でる。

それから静かにこちらを見た。

 

「……話そうか」

 

その声は優しかった。

勝者が敗者を見下す声じゃない。

同じ旅人として向ける声だった。

俺は倒れたラルトスを見つめながら、小さく拳を握った。

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