繋がりの王者   作:宵取与一

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5話

 

ーー殺される。

 

諦めかけたその時。

横から飛び込んできた何かによって、コドラの身体が吹き飛んだ。

 

 轟音。

 

鋼と岩がぶつかる激しい音が洞窟中に響く。

コドラは悲鳴のような声を上げながら地面を転がり、岩壁へ激突した。

 

俺は一瞬、何が起きたのか理解できなかった。

 

「……え?」

 

どうやらそれは、ラルトスも同じようで、俺の前に立ったまま固まっている。

さっきまで俺たちは追い詰められていた。

あと少しで捕まるところだった。

 

 なのに。

 

一瞬で状況が変わった。

 

 土煙が舞う。

 

 視界が霞む。

 

その向こうに大きな影が立っていた。

 

「な……」

 

俺は目を見開く。

 

突如現れ、俺たちを助けてくれたポケモン。

そのポケモンを、俺は知っている。

 

 青い身体。

 

 力強い四肢。

 

 頭部から伸びる鋭いヒレ。

 

 まるで鮫のような顔。

 

その姿を見た瞬間、俺は名前を叫んでいた。

 

「ガブ!!!」

 

ドラゴン・じめんタイプのポケモン。

 

『ガバイト』

 

荒々しい見た目とは裏腹に、信頼した相手にはとことん忠実なことで知られている。

そして何より、このガバイトのことを俺は知っているどころじゃない。

 

何度も遊んでもらったことがある。

 

一緒に昼寝をしたこともある。

 

ガバイトがこちらをちらりと見る。

そして、ニヤッと笑ったように見えた。

 

離れたところで、吹き飛ばされたコドラがゆっくり立ち上がる。

 

 怒りの咆哮。

 

完全に頭に血が上っていた。

しかし、フンッと鼻を鳴らし、ガブは動じない。

むしろ、守るように俺たちの前へ出た。

 

「ユア!」

 

聞き慣れた声が響く。

 

「……父さん!」

 

洞窟の出口の向こうから駆け寄ってくる人影。

父さんだった。

 

 そして。

 

「ユア!」

 

母さんもいる。

俺はその場に立ち尽くした。

 

夢じゃない。

本当に、本当に来てくれたんだ。

 

「父さん!」

 

気付けば走り出していた。

父さんも駆け寄ってくる。

 

 次の瞬間。

 

俺は強く抱き締められていた。

 

「この馬鹿!」

 

父さんの声が震えていた。

 

「どれだけ心配したと思ってる!」

 

「ご、ごめん……」

 

「本当にごめんで済むと思ってるのか!?」

 

怒鳴っている。

でも、その声は少し泣きそうだった。

母さんも駆け寄ってくる。

 

「怪我は!?」

 

「だ、大丈夫……たぶん」

 

「たぶんじゃない!」

 

そう言いながらも俺の肩や腕を確認している。

本当に心配してくれていたんだ。

胸の奥が少し痛くなった。

 

「ごめん…なさい」

 

今度はちゃんと謝る。

母さんは大きくため息を吐いた。

 

「帰ったらお説教だからね」

 

「うっ」

 

「覚悟しなさい」

 

それはそれで怖かった。

だが、今はそれどころじゃない。

 

背後から咆哮が響いた。

 

コドラは完全に怒り狂っている。

ガバイトへ突進する。

鋼の身体が一直線に迫る。

 

 だが。

 

「ガブ」

 

父さんが静かに言う。

 

「止めろ」

 

ガバイトが動いた。

コドラの突進を正面から受け止める。

 

いや、受け止めたというより押し返した。

コドラの身体が浮き、そのまま吹き飛ばされる。

 

「すご……」

 

思わず声が漏れる。

俺もポケモンは好きだ。

強いポケモンもたくさん知っている。

 

 でも。

 

実際に見るのは全然違った。

ガバイトの強さは圧倒的だった。

 

コドラが再び立ち上がる。

しかし今度は慎重だった。

2度も吹き飛ばされて、むしろ冷静になった、のだろう。

目の前の相手が格上だと理解したようだ。

 

父さんは静かに前へ出る。

 

「お前も必死だったんだろうな」

 

コドラを見る。

怒ってはいない、ただ落ち着いた声だった。

 

「縄張りを守りたかっただけなんだろう」

 

コドラが低く唸る。

 

「だが」

 

父さんの目が鋭くなる。

 

「お前の気持ちもわかるが、俺の息子に手を出した時点で、お前は敵だ」

 

ガバイトが一歩前へ出る。

それだけで空気が変わる。

コドラも感じ取っているようだ。

 

 勝てない。

 

そう理解したはずだ。

しばらく睨み合いが続く。

洞窟に緊張が満ち、そして、先に視線を逸らしたのはコドラだった。

 

 低く唸る。

 

悔しそうに、警戒するように。

それでも、最後には背を向けた。

 

重い足音を響かせながら洞窟の奥へ消えていく。

やがて姿も見えなくなった。

 

静寂が戻る。

俺はようやく息を吐いた。

終わった。

 

本当に終わったんだ。

 

そう思った時だった。

父さんの視線が俺の足元へ向く。

 

「ユア」

 

「な、なに?」

 

「そのラルトスは誰だ?」

 

俺は固まった。

ラルトスも固まった。

そして俺たちは同時に顔を見合わせる。

 

そういえば。

 

まだ説明してなかった。

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