ふと外をみると、懐かしいあの満点の星空が広がっていた。
郊外を去り、親分たちとともに過ごす新エリー都ではこの星空を見れない。
らしくもなく俺は静かに空を眺めていたが、気にするやつは一人もいなかった。
それも当然で、今日俺たちは"チートピア"にあつまり、夕方からどんちゃん騒ぎの後で、すっかりみんな出来上がっている。
珍しくあのアンビーが酒を飲み顔を赤らめている程だ。
酒と肴が豊富にある中で、食えもしないし中心から離れて静かにソファへ座って空を眺める、つまらない俺に気づくやつがいないのは当然だった。
今日は珍しく"カリュドーンの子"と店長達..."パエトーン"に協力依頼を出すほどの大仕事だった。
親分がとってきた依頼だ、もちろん合法なはずがないし安全性が高いわけでもない。ただ今回のは今までで本当に危険だった、なにせニネヴェ級のエーテリアスがうじゃうじゃいるのだ。
幸運なことにあちらは格下であるこちらに、致死ではあるがちょっかいをかけるような攻撃だけで、本格的な攻撃をしてこず逃げに徹すれば命の危険はそこまでなかった。
だが不幸なことに、そいつらの体の破片を持ち帰ることが仕事だった。
パエトーンやカリュドーンの子、そして邪兎屋の3陣営をもってしても命がけであり、アンビーが、親分やパエトーンではなく俺に戦闘指示を仰ぐほどだった。
赤牙組との抗争でホロウに落ちた、あの絶体絶命のとき以来といえば今回の過酷さが伝わるだろうか?
俺が戦闘指示を出すことに店長達やルーシー以外にも、猫又と親分は不服そうだったが...
だがアンビーがもし俺に指示を仰がなかったら?俺が自分から発言するのは危機が目前となってからだろうから、もしかしたら...話に聞く"あの時"のように誰か犠牲になっていたかもしれない。
こういっちゃなんだが俺は戦闘のエキスパートだ、そういった判断はお手の物であるが空気が読めない。
だから俺なんかが意見していいのか迷ってしまう。スターライトナイトのようなヒーローならば、スパっと言えるのだろう。俺はたまらなくなって羨望と自分への嫌気でいっぱいになった。
急にチートピア中に大きな声が、いや歓声が響いた。何事かと中心を見やると、どうやらライトと姉御が飲み比べをしていて決着が着いたらしい。二人ともスターライトナイトのように真っ赤になっているが今回はライトが勝ったらしい。
ぼんやりと眺めていたら、姉御がゆっくりと立ち上がってあたりを見回し、俺を見つけたのか笑みを浮かべながら千鳥足でこちらに向かってきていた。
「おーい姉御ォ、大丈夫なのか?そんなに酔っぱらっちまって。いくらなんでも酔いすぎだぜ!水でも飲んで...うぉッ?!」
コップを取ろうと腰を持ち上げかけた俺へ、抱きつくように姉御が飛びついてきた。
咄嗟のことで対応もできず二人してソファに寝転がってしまう。
「きゅ、急にどうしちまったんだ?まさか...ライトの次の相手をしろってことか?!もしそうだとしたら無理だぜ!なんせ俺には口が...」
「久しぶりに撫でてくれよ...兄さん...」
兄さん?一体誰と勘違いしているのだろうか、そんな疑問をほんの刹那の間だけ考えた。
だが俺の体は意思に反して勝手に動きだし、勝手に過去の記憶を思い出させる。
「...シーザー、よくここまで頑張って...おやすみなさい」
頭を撫でながら語りかける。
―――――シーザーに”兄さん”と呼ばれること。それが封印した過去の記憶を思い出す鍵