会話の後に、私達はまず彼らの拠点に向かう事になった。
まずは蓮に報告を、と発言したが
「せっかくの門出だ、まずは身なりを整えろ」と言われてしまっては反論できない。
コンクリトゥスはサルーンに残り、ヘーリケンの者にクァンツの死を伝えるとの事だった。
...最も死の原因は誤魔化すとのことであったが。
「着いたぞビリー、これが俺たちの拠点だ!」
「これは、トラック?」
赤い大型のトラックが目の前にあった。
コンクリトゥスが根無し草、と言っていたのは比喩ではなく本当に拠点を持っていなかったのだ。
カエセルは私に着いてくるように顔で合図をすると扉を開け中へと入っていく。
そのまま案内されると鏡のある狭い一室へ、恐らく更衣室であろう場所へと着いた。
目の前の鏡を見てみると、髪は灰色と黒色が混ざり垂れ下がり、体は光沢の代わりに細かい灰色が至る所についた機械人がいた。
...考えるまでもなく埃やオイルで汚れにまみれた私であり、長い年月眠りについていたことを証明する見た目だ。
身なりを整えろ、その言葉に納得する。
「ビリー」
名を呼ばれ鏡から彼へと視線を移すと同時に、荷物を投げ渡された。
「外に洗浄用のホースがある、その荷物の中にタオルや機械人用の洗剤もある。
...水しか出ねぇが、お前さんなら大丈夫だろ?」
私はその言葉に頷き、手元の荷物を眺める。
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「おぉ、活かしてるじゃねぇか!汚れでわからなかったが見た目も凝られてるんだな」
機械人...もといボンプ用と書かれた洗剤で全身を綺麗にした後、髪をアップバングに整え、服を着た。
ヒートシンクの役割がある私の髪はドライヤーがなくとも自力で髪を乾かせる。
髪型を整えようと考えた私は、視界を取りやすく、清潔に見えるためアップバングを選んだが、正解であったようだ。
服は黒いライダージャケットであり、持ち主である二人に比べて細身の私には全体的にたるんでいる。
素材は弾性があり、砂や汚れを付着させずらいであろう反面、一度汚れてしまえば簡単には落とせない事がわかった。
そして、最も特徴的なのが
「背中のロゴに書かれているのは...イノシシでしょうか?」
「そうだぜ、なんでだ?って顔してるな。なに、俺の好きな動物だからよ。
実際に見たことこそないが”猪突猛進”この言葉が心に来たんだ」
ヘーリケンの支配する町中でみた住民とは違い、その眼には強い意思が見て取れた。カエセル、彼には何か目的があるのだろう。そしてそのためならイノシシのように進む。意思の強さを考えるならば、目的ではなく理想や執念と言い換えるべきかもしれない
「カエセル、戻ったぞ」
話が終わったのだろう、コンクリトゥスが戻ってきた...蓮を連れて
支払を済ませるのならばここでなくとも良いはずだ、なにかあったのだろうか
「蓮、なぜここに?何か危険があったのですか?」
「え?あ、違うよ!君が、ビリーがおめかしするっていうのと...名前をもらったって聞いて!居ても立っても居られなくて付いてきたんだ」
「...ありがとうがざいます、蓮」
彼に危害は無かったようだ、そして短い付き合いであったにも関わらず、私のことを気にかけてくれていたようであった。
「私もこの姿をあなたに見せられて嬉しいです」
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「さて、蓮。50万ディニーだがこの中にある。...後で互いに多い少ないとトラブルになるのは避けたい、今ここで数えられるか」
「二人のことは信用してるけど間違いだってあるもんね、うん。数えられるよ」
「...わかった、では俺たちが数えている間にだ。ビリー、カエセル、お前たちはアイアンタスクの修理を頼む。カエセル、どこに置いたか忘れてはいないだろうな?」
「誰が忘れるか!そんなヘマ、俺はしたことないぜ!」
コンクリトゥスは何か言いたいような目つきであったが諦めて蓮と金額を数えることにしたようだ。
蓮たちが帰ってきた後、皆で車内の大広間へ移動したが、私はカエセルと共に再び外へ。しばらくの間は彼と時間を待つしかないようだ
「アイアンタスクとはこのトラックの名称でしょうか。それにしては...」
「あぁ、アイアンタスクとはこのトラックのことだ。んで壊れてる場所はコイルスプリングだ」
彼はそう告げると道具を使い壊れたコイルスプリングを露出させる
「...それにしてはコイルスプリングのサイズがあってないようですが...」
「え?...え、マジだ」
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「...慎重さを身に着けろと言ったはずだがな」
「そ、それは今日だろ。パーツを買ったのは昨日だぜ!」
「はぁ...」
ため息を吐くのも無理はないだろう。
カエセルはパーツを間違っていることに気が付き、すぐに室内へと踵を返した。
「パーツ、間違えちった」と告げるとコンクリトゥスはすぐに事態を飲み込み、呆れ果てていた
「...今日は出費が続くな、明日までに直せなければ不味い。今すぐ買ってこい」
「あー、いやえっとそれがな?アイアンタスク用のコイルスプリングって高いだろ?実はこれも結構高くて...」
「無用の長物を買ったせいで資金がないと?」
「...あのさ、だったら50万ディニーは今度でいいよ?しばらくホロウに行く予定はないし...」
「いや、義理は通す。俺たちの不注意のせいだ...。それにビリーが許さんだろうしな」
コンクリトゥスが私の意思を蓮に伝え、私は無言で肯定を表す
「そ、そうだ!折角だからここらへんで簡単な依頼をビリーと一緒に受けようぜ?!そうすりゃビリーに仕事を教えられるし、俺らはビリーの仕事っぷりもみれて、パーツも買える!一石三鳥だ!」
「パーツについてはマイナスがゼロになっただけだろう...。だがそうするしかあるまいな」
コンクリトゥスはぼやきながらも納得すると、蓮に大金を渡した
「数え間違えがあったら言ってくれ、足りない分は後日払おう。悪いがこれから仕事だ」
「うん、わかった。これでビリーの所有権はおじさん達のものだね...あ、僕たちは隣の町に行くからここでお別れだね」
「このアイアンタスクで暫くお別れですね。蓮...どうかお元気で」
「ビリー、また会おうね!今度は野々と三人で!」
皆がアイアンタスクから出て、蓮と別れの言葉を交わす。
彼は話し終えるやいなや、手を振りながら元気に駆け出して行った。
...私が彼の背中を眺めていると、赤い大男が視界の端に映る
「驚いたな、ビリー。所有者ではなくなった蓮を心配するとは...その一人称や喋り方といいカエセルに何か命令されたのか?」
「...私にも元から感情はあります。喋り方のせいでそうは思えないかもしれませんが...命令は受けていません、私の判断によるものです」
「...そうか、もし不快に思ったのなら謝罪しよう。それと、これから頼むぞビリー」
コンクリトゥスの言葉には先ほどまであった危険なものを扱うような声の硬さが柔らかくなっていた
諸事情により投稿が遅れたことをお詫び申し上げます