二百分の一の王国   作:mikouri

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第三部 神話胎動篇
#11 竜殺し、あるいは民害発生個体たる悪竜の討伐および王権威信獲得過程に関する記録(上)


 

 ティンドレット領主館の客間の壁には狩猟図の織物が掛けられ、暖炉には火が入っている。卓は磨かれ、椅子は深く、窓からは三つの街道が交わる街の屋根が見えた。

 雨と泥の敗走は終わり、ディマビオの強襲を退け、火は消し止められ、今は快適な温かい部屋にいる。

 それは少し前まで想像もしていなかった光景だったが、だからといって暇になるわけではない。

 

 リルは卓の上に地図を広げた。

 ティンドレットから北西へ伸びる街道。途中で細く分かれ、山地へ入る道。さらにその奥、古い鉱山道と猟師道が絡む一帯に、黒い印が打たれている。

 

「ヴォルグ山。そこに、悪竜がいる」

 

 リルはその一点を指さして言った。

 

「ヴォルグとは古い言葉で裂け谷を指すらしい。だが今では、その山に棲む竜の名でもある」

 

「竜が山の名を着おったというわけか。あるいは、山が竜の名を着せられたか」

 卓の横に座るジャドが言った。

 

「そして悪竜ヴォルグは、炎を吐き、翼と爪と牙と巨体を持つ怪物だ。それによって、周辺の村はいくつも被害が出ている。王家軍も認識はしているが、手を出せていないようだ」

 

「つまり、竜退治(ドラゴンスレイ)ですか!」

 

 速やかに意図を汲み取って反応したのはディエゴだった。燃えるような赤髪の男が目を輝かせている。声に熱が混じっていた。

 彼は街の鼻つまみ者(チンピラ)だったが、今ではリルに心酔し、舎弟を自称している。気のいい男だが、少々前のめりにすぎるところがある。

 

 フェリペは議事録を記しながら、章題をつけるなら『リル一党の転機 ~竜殺し~』あたりだろうか、と考えていた。

 レビは興味なさそうに小さな身体を椅子にもたれさせている。王家兵を殺す話ではないので、彼にとっては半分ほど他人事だった。

 

「若様、俺も行きます。竜でしょう。なら、前に出る奴が要る」

「まだ話は途中だ」

 

 逸るディエゴをリルが制する。

 

「陛下未満の陛下。竜討伐とは、たいへん勇ましい」

 

 マル=シレスは暖炉のそばで葡萄をつまんでいた。上半身は侍従のような黒の礼装。腰から下は道化の色布。足首の鈴が、彼が椅子に脚を組み直すたびに、ちり、と鳴った。

 少し前まで刺され、斬られ、歯は折られ、衣装はずたずたになっていたはずだが、今はその名残がどこにもない。そのことを誰も口にしなかった。

 

「王家正規軍も手を焼いている悪竜でございましょう。いかに若様の御武勇が山を割り海を退けるほどであっても、生身で火を吐く竜に斬りかかれば、焼き肉の出来上がりでございます」

 

「だから術師を使う」

 

 リルは視線を動かした。

 客間の端に、フォルク卿の客分として同席していた若い術師がいた。

 テオ。

 年若い。背筋はまっすぐで、顔立ちには育ちの良さと神経質さが同居している。術師の外套は旅支度に整えられていたが、袖口や襟元の留め方にはまだ学房の匂いが残っていた。

 リルにとっては施療院で、外法治療に異議を申し立ててきた、苦い記憶に新しい人物でもある。

 

「テオなら、炎を防げる。先日、家々の火を術で消していたらしいな」

 テオの眉が神経質そうに動いた。

 

「消した、というより、延焼を止めました。火の勢いを弱め、燃え移る先の建物に防火約定をかけ、崩れそうな梁を一時的に保たせた」

「竜の炎も防げるのだな」

「逸らすことはできるでしょう。ただ、やってみなければわかりません。通常の火と竜の炎はおそらく異なります」

「現地確認が必要ということだな」

 

 バルトロメアは宙を見つめている。通常の熱傷と竜の火によるものがどう違うのかを想像しているのだろう。

 

「竜って、本当に悪魔の下僕なんですか」

 ピートが、おずおずと手を上げた。子犬のような印象のある、工兵見習いの少年だ。

「神殿説話では、そう語られます」

 テオが答えた。

「女神に反逆した悪魔の眷属。空を裂き、地を焼き、人を食う、秩序に従わぬ獣。悪の象徴ですね。もっとも、民間ではもう少し派手な英雄譚として好まれますが」

「宗教画のモチーフとしても人気ですな。高く売れます」

 これはアンドレイ。

 

「困っている村の人たちを助けるために、悪い竜を倒すんですね。おとぎ話みたいに」

 ディエゴとは微妙に違うきらめきが、ピートの瞳にある。

 

「それもある。だが、それだけではない」

 

 リルの返事に、そのきらめきが止んだ。

 

「俺たちはまだ、王家に逆らうならず者の集まりにすぎない。どれだけ正しいことを言っても、力がなければ潰される。力があっても、名がなければ盗賊と変わらない。悪竜ヴォルグを討ち、王家が捨てた村を救った。その名が必要だ」

「名、ですか」

「民を救うためにも、俺たちには名声が要る。俺が助けると言った時、信じさせるだけの名が要る。それが今の俺たちには足りない」

 

 ピートは返事をしなかった。すぐには理解が及ばないのだろう。

 リルは先日の施療院の一件を思い出していた。

 あの時自分に信用があれば、治療を拒み死んでいくものは、いくらか減ったに違いない。少しひっかかる考えだったが、それを呑み込む。

 

「美しいですねえ。救済も、宣伝も、同じ竜の腹に収まるわけでございます」

 マル=シレスが、暖炉のそばで微笑む。

 

「まとめると、炎は術師殿に何とかしてもらって。竜は若様が斬って。駄目なら最後は道化殿が何とかするってことっすか」

 ヨハンが椅子の背にもたれ、鼻で笑った。よく言えば柔和そうな、悪く言えば軟弱そうな顔つきの、物事に真剣に取り組まない悪癖のある男だった。

 

「実際には道化殿に殺してもらうが、若様が竜を殺したことにして名誉をいただくってわけだ」

 さらにケナスが続け、周囲が固まった。彼の骨ばった顔つきは、見るものに陰険そうな印象を与え、実際陰険だった。

 

「その前座に術師殿を連れていく。見栄えがいいですもんね。道化殿だけじゃ、あまりにも露骨だ」

 さらに石を投げつけるような言葉に、テオの口元がきつく結ばれる。

 ヨハンは笑ったまま、目だけを逸らした。

 

「いや、ケナスさん。それは――」

「何だよヨハン。おまえも今、同じようなことを言っただろ」

「そこまでは言ってないっすよ」

「言い方の問題だろ」

「違いますって」

 

 ヨハンは弱く否定していた。テオやリルをかばいたいというよりは、ケナスと同じに扱われたくなかったのだ。

 

「頼ってるのは事実だ。道化殿がいなくて勝てるとも思ってねえ。だが、道化殿だけで勝つ形を避ける必要はある」

 トルカが口を開く。

 

「うむ。同じことではござらんよ」

 ジャドが、静かに続く。

 姿勢は崩さず、膝の上で指を組んでいる。酒場で乱痴気騒ぎを起こしているときとは対照的な静かな態度だった。旧い武門の娘であり、背丈と胸が大きいため、会議でも酒場でも目立つ。

 

「一人の化け物に竜を殺させるのと、若が兵と術師と道化を使って竜を殺すのとでは、まるで違う。少なくとも、語る側には違って聞こえる。それが名声である」

 

「語る側、ね。女は戦場より噂話の方が得意ってわけですか」

 ケナスの嘲りに、客間の空気がさらに凍りついた。

 

「謝れ」

 ディエゴの椅子が鳴った。わかりやすく憤っていた。

 

「誰に」

「ジャド姐さんにだ」

「へえ。女扱いされたくない女もいるんじゃないのか」

「てめえ、もう一度言ってみやがれ」

「やめろ。ディエゴ、座れ」

「でも、トルカさん」

 

「お気遣い痛み入る。ディエゴ殿。されど、口で負けるつもりはない。女でござるゆえ」

 ジャドは淡く笑う。

 

「ケナス殿。勝った者の武勇を語ること。民へ何を見せるかを選ぶこと。それを噂話と呼ぶなら、好きになされよ。ただ、口の悪さを胆力と取り違えるのはおやめなされ。見苦しい」

 

 ケナスの顔が、わずかに歪み、舌打ちする。沈黙が落ちた。

 渦中の存在であるマル=シレスは、葡萄を一粒、口に放って、他人事のように笑っていた。

 

「俺は竜を殺す」

 

 静まった場に、リルの声が響き渡る。

 

「だが、道化に竜を殺させるために行くんじゃない。道化と、術師と、兵の力を扱えるようになるために行く」

 

 リルはテオを見た。

 

「マルが止まれば俺たちは詰む。ティンドレットでそれもわかった。なら、マルではない術師がどこまで使えるかを見る必要がある」

 

 テオの表情が動いた。

 

「僕は道具ではありません」

「俺もだ。だが、必要なら俺は俺自身を道具として使う。おまえたちも使う」

「それを正しいと?」

 テオの瞳孔が細まる。

「正しいとは言っていない。俺が責任を取ると言っている」

 

 テオは黙った。マル=シレスが、鈴を鳴らした。

 

「よろしゅうございましたね、テオ殿。代替品としての栄えある第一歩でございます」

「黙ってください」

「おや、劣化品という語の方が? それとも保守部品?」

 

 テオは、満足そうにしているマルを睨みつけた。

 

 ここまでの屈辱を受けて、テオには抜ける選択肢がなかった。

 ティンドレット北門の奇妙な術、そして施療院で見せた治療をテオは知っている。

 既存の約定術体系を鼻歌交じりに踏みにじる道化から、目を逸らすことができない。それを間近で観察し、見破りたい。恐ろしい犬星の妖術で済ませるつもりはない。

 

「そこまでだ、マル」

 

 ため息をついて、リルは地図の黒い印を押さえた。

 

「竜を殺し、村を救い、名を取る。誰が不満を抱こうが構わん」

 

 炎の音が、暖炉の奥で小さく鳴った。

 

「勝った後に抱け」

 

 *

 

 その夜、リルはワヌレイの部屋を訪ねた。

 

 扉を叩くと、中で何かが落ちる音がした。

 続いて、布の擦れる音。小さな悲鳴。しばらくして、扉が細く開く。

 

「若様」

 

 ワヌレイは毛布を肩にかけていた。まだ顔色は悪い。病み上がりの頬に、妙な緊張だけが戻っている。

 

「起きていたのか」

「寝ようとはしました。でも、廊下で、竜とか、山とか、炎とか、そういう言葉が聞こえてきたので」

「聞き耳を立てていたのか」

「立ててません。勝手に入ってきたんです。竜とか炎とかいう言葉が、勝手に耳に」

「そうか」

「はい」

 

 ワヌレイは、そこで急に背筋を伸ばした。

 

「あの、若様」

「何だ」

「ワヌレイは行きませんからね」

 

 リルは少しだけ眉を上げた。

 

「何の話だ」

「竜退治です!」

 

 ワヌレイの声は裏返っていた。

 

「ワヌレイは病み上がりですし火は怖いですし犬も狼も猪も怖いのに竜はもっと怖いですしそもそも竜退治にワヌレイがいても邪魔ですしたぶん泣きますし足もすくみますし吐くかもしれませんし」

「誰も行けとは言っていない」

 

 リルが言うと、ワヌレイは口を開けたまま止まった。

 

「……え」

「おまえの言う通り病み上がりは連れていけない。そのことを伝えに来た」

「え、本当ですか。ワヌレイ、行かなくていいんですか」

「行きたいのか」

「嫌です無理です行きたくないですワヌレイはここでぬくぬくしてたいですお布団温かいです温かい汁美味しいです」

「なら残れ」

「でも残っていいと言われると、それはそれで」

「面倒だな、おまえは」

「はい……ワヌレイもそう思います……」

 

 しゅん、となるワヌレイを前に、リルは、少しだけ息を吐いた。

 その息が何を意味するものかを考える前に、ワヌレイが顔を上げた。

 

「若様は、行くんですよね。竜って、本当に火を吐くんですか」

「そう聞いている」

「ディマビオの時だって、すごく怖かったです」

 

 ワヌレイは毛布の端を握った。

 

「街が燃えるだけで、あんなに息ができなくなって、熱くて、音がして、みんな叫んでて。あれでも怖かったのに。竜の火は、もっと怖いんですよね」

「おそらくな」

「でも若様、絶対に前に出るじゃないですか。それが嫌です」

 

 リルは、そこで少し苛立った。

 

「ではどうしろと言う」

 

 ワヌレイは、びくりと肩を震わせた。それから、口をつぐんだ。

 答えなどない顔だった。

 

「……死なないでください」

 

 ようやく出てきた言葉は、正しいだけの、あまりにも役に立たないものだった。

 

「わかっている」

 

 自分の声が思ったより冷えていたことに、言ってから気づいた。

 

 苛立つ理由はないはずだった。

 竜の火は怖く、しかしリルは前に出るし、そのために死ぬかもしれない。

 ワヌレイは何も間違ったことを言っていない。

 

「はい」

 

 ワヌレイが小さく頷くのを見て、リルは扉の方へ向き直った。

 

「明日は出る。おまえは休め」

「若様」

「何だ」

「ワヌレイ、行きたくはないです。でも、若様が帰ってこないのも嫌です」

 

 リルは、振り返らなかった。そうするべきでないと思ったので、リルはそのまま部屋を出た。

 廊下は静かだった。

 竜のいる山へ向かうことより、閉じた扉の向こうにワヌレイを残したことの方が、しばらく胸に残っていた。

 

 *

 

 翌朝、リルはティンドレットを発った。

 同行するのは、マル=シレス、トルカ、ジャド、サイモン、そしてテオだった。

 

 それ以外のいくらかの兵たちが見送りに立った。

 

「俺は、待ちます。役目があるというなら、いつでもついていきます」

 ディエゴは最後まで自分が連れ出されないことに納得行かない様子だったが、殴ることしかできない男は今回の作戦には不要だった。みすみす死体を増やすつもりはない。

 

「ま、死なないでくださいよ」

 ヨハンはリルと目が合うと、軽く肩をすくめる。

「おまえも、こいつらを揉めさせるな」

「俺にそこまで期待します?」

「していない」

 ヨハンは苦く笑った。

 

 ケナスは見送りに来なかった。

 

 *

 

 山道へ入ると、ティンドレットの市場の匂いは遠ざかり、湿った土と針葉樹の匂いが濃くなる。道は細く、石が多い。馬は使えない。荷を分けて背負い、斜面を踏みしめて進むしかなかった。

 ヴォルグ山は、遠くから見ると黒かった。

 木々が濃いからではない。山肌の一部が焼け、岩が露出し、谷筋に古い煙の跡が残っているからだ。頂近くには雲がかかり、風が吹くたび、そこから灰のようなものが薄く流れた。

 

「悪趣味な山でございますねえ」

「山は、ただ山であるだけです」

 

 マル=シレスが軽く口にすると、テオが即座に返す。

 

「悪趣味なのは、そこに積まれた来歴(ヒストリア)の方です」

「む。来歴というのは、何だ」

「おや。術師様の授業が始まりますか」

 

「話すなら、歩きながら話してくれ」

 リルが問い、道化が茶化し、そしてサイモンが後方を見ながら言った。

 サイモンは弓を負った、陰気な射手だった。会議ではほとんど口を開かないが、北門戦でリルたちを正確に援護したのは、この者の矢だ。

 

「来歴とは、対象が背負っている過去です」

 

 テオは足元の小石を示した。

 

「小石は、ただ小石であるだけではありません。山だったこと、岩だったこと、砕かれ、転がり、踏まれてきたことを持っている。約定術は、そうした過去にも触れます。今の姿だけでなく、何であったか、何として扱われてきたか。それが来歴(ヒストリア)です」

 

 テオは小石を道端へ戻した。

 

「約定術は、対象の今だけを見るわけではありません。何であったか。何として扱われてきたか。何になりうるか。そこへ触れる」

 

「そもそも、約定術ってのは何なんだ。()()のことなのはわかる」

 少し歩いて、トルカが言った。

約定術(コントラクト)とは、世界に対して一時的な約束を結ばせる技術です」

 テオは息を吐いた。

 

「世界と約束?」

「物や身体や土地には、それぞれ『自分はこうである』という慣性があります。石は石である。傷は開いている。土地はぬかるんでいる。声は出る。術師はそこへ働きかける」

「ええ。石に『少々お痩せになっては?』『今だけ軽くなってくださいまし』と囁くのでございます」

「……。重要なのは、対象の定義を壊すわけではないということです。石は石のまま。傷は傷のまま。身体は身体のまま。ただ、その定義に含まれる可能性を一時的に広げる」

 

 ──少々、彼らの装備に礼儀を教えました。

 古砦などで見せたあれも、異常に大規模な、道化なりの“約束の結び方”であり、“定義のずらし方”だったということか、とリルは考えた。

 

 昼を過ぎた頃、道はさらに細くなった。

 

 山の斜面に沿って、古い巡礼路の跡が続いている。ところどころに小さな石祠があり、そのいくつかは黒く焦げていた。祠の前には、干からびた花や、獣の骨や、何かを縛っていた縄の切れ端が残っている。

 ジャドが祠の前で足を止めた。

 

「供物か」

「おそらく」

 

 テオは膝をつき、焦げ跡を見た。

 

「古いものもあります。数年ではない。もっと前から、ここへ何かを置き続けている。最初は、山の神か獣除けだったかもしれません。ですが、今は違う。ヴォルグという魔物(マレフィカ)へ向けた供物です」

 

 リルは祠を見下ろした。そこに置かれたものは、もう腐っている。だが、置いた者の恐怖は腐らない。

 

「魔物とは、何だ」

 

 リルの問いに、テオは少し考えてから答えた。

 

「通常の生物、死体、土地、現象、あるいは概念が、魔術的作用によって変質し、世界から『怪物』として承認されてしまった存在です」

「わからん」

「人間が長く、あるものを怪物として扱い続ける。恐れる。名をつける。供物を捧げる。神官が祈る。領主が禁足令を出す。役所が別の帳簿に載せる。子供に語り継がせる」

 

 テオは焦げた祠に触れないよう、手をかざした。

 

「すると世界が、少しずつ受け入れてしまう。これは、そういうものなのだと」

「なら、村人が竜を作ったと言うのか」

「責めるわけではありませんが、原因の一部ではあります」

「では、竜の炎も?」

「最初は、可燃性の体液やただの熱い息だったのかもしれません。しかし、村が『竜は炎を吐く』と語り、供物を捧げ、祈る、その積み重ねが、竜に本当の炎を吐かせる」

 

「最初は竜が吐いたものでも、その次は人が吐かせ続けた、ということか」

 ジャドが頷く。

「胸糞の悪い話だな」

 トルカが顔をしかめた。

 

「魔物の話は、大抵そうです。人間が作っておいて、あれは魔物だ。だから討伐してよい。あれは最初から怪物だった、と言う」

「ではヴォルグを殺すなと?」

「いいえ。殺すべきです。もう、そういう段階を過ぎています」

 

 夕方、山道の脇に小さな野営地を作り、一夜を明かした。

 

 *

 

 翌朝、風が変わった。

 山の風は冷たい。だが、それだけではなかった。

 焦げた木と、湿った灰と、獣の脂が焼けたような匂いが混じっている。普通の山火事の跡ではない。火が通った場所と、通らなかった場所の境がはっきりしすぎていた。

 

 木々の幹は、片側だけ黒く焼けている。

 枝先には灰が積もり、踏めば薄い粉が舞った。草はところどころ緑を残しているのに、道端の石祠だけが中まで焦げていた。

 

 ヴォルグが通った跡だ、とテオは言った。

 

「火が歩いたような跡だな」

「歩くものが、ここは焼かれるべき場所だと押しつけたんです」

 テオは焦げた石を測るように見ていた。

 

「わかりやすく言え」

「竜が通った、ということです」

「最初からそう言え」

「最初からそう言うと、わかったつもりになるでしょう」

 

 テオは真面目に言い、トルカは小さく舌打ちした。

 マル=シレスは、そのやり取りをたいへん楽しそうに聞いていた。

 

「術師様の説明は、山道によく合いますねえ。長く、曲がりくねって、途中で何度も足を取られる」

「あなたにわかりやすく説明する必要はありません」

「ええ。私めはわからないふりも得意でございますので」

「ふりではないのでは?」

「おや、辛辣」

 

 楽しそうなマルに、テオは返事をしなかった。

 

「つまり、ただ通っただけでなくここを“竜の通り道”として定めた。その痕が、木や土や供物場に残っている。そういうことでございますね」

 

 テオは意外そうに瞬きし、それからすぐに顔をしかめた。

 

「……理解しているではありませんか」

「ええ。術師様の講義は有用でございます」

「ならば茶化さないでください」

 

 山道を越えると、谷が開け、そこに村が見えた。

 

 家は十数軒。石と木で組まれた低い家々が、谷底に身を寄せるように並んでいる。畑や柵、井戸もあり、煙突からは細い煙が上がっている。人の暮らしの形は残っている。

 しかし、鶏の声も犬の声も、斧を振る音も、鍋を叩く音も、子供の泣き声もない。静まり返っている。

 リルたちが村の入口に近づくと、最初に現れたのは老人だった。

 痩せた男だった。背は曲がり、顔には深い皺が刻まれている。だが、手には山鍬(やまぐわ)を握っていた。武器としてではなく、杖として身体を支えさせていた。

 

「誰だ」

 老人が言った。声は枯れていた。

 

「リル=グレス。ティンドレットより来た。悪竜ヴォルグを討つ」

「……王家の方か」

「違う。王家は来ない」

「ええ、そうでしょうな。存じております」

 

 山鍬を握った老人は、ロージと名乗った。

 

 少し遅れて、家々の戸が開き、人々が顔を出す。

 痩せた女。腕に包帯を巻いた男。老人の背後に隠れる子供。

 髪を短く切られた少女。腹を抱えた妊婦。

 

 リルは村の奥を見た。

 谷の奥、山腹へ向かう道に、木の門のようなものがあった。二本の杭を立て、横木を渡しただけの粗末なものだ。そこに、古い布がいくつも結ばれている。

 赤と白の布。黒く焦げたものもあり、その下に、石の台があった。

 台の上には、まだ新しい血。

 

「あれが供物場か」

「ええ。昨日は、山羊を」

「一昨日は」

 

 ロージは答えなかった。

 その目はやり場のない、そして疲弊に負けた怒りに満ちていた。

 代わりに、背後の女が泣き出した。声を出さず、口元を押さえて、肩だけを震わせる。

 

「娘です」

 肩を震わせていた、背後の女が言った。

 風が吹いた。供物場に結ばれた布が、乾いた音を立てる。

 

「名は」

「メム、です」

 

 リルは頷いた。そして、それを帳面に記した。

 

 村人たちは、まだリルを信じていない。

 王家は軍をよこすといい、神官は鎮まると言い、村の男たちは今度こそ追い払うと言った。

 そのどれもが嘘となった今、若い武門の男が来て、竜を殺すと言っている。

 信じろという方が無理だった。

 

「ヴォルグは古い採石場にいます。山の腹が裂けたような場所がある。そこに」

 

 老人は山腹を指した。

 テオは供物場に近づき、血の乾いた石台を見ていた。

 

「ここで長く捧げている」

「ええ。捧げれば、ひと晩は越せる。捧げねば、村ごと焼かれる。それを決めた者はもう死にました。神官は最初の冬に祈り、札を貼り、竜鎮めの鐘を鳴らし……そして鐘ごと喰われました」

「丁寧な怪物でございますねえ。制度ごとお召し上がりになるとは」

 マル=シレスが、小さく息を吐いた。

 

 村人たちの何人かは、恐怖とも好奇ともつかない目で犬耳の道化を見ていたが、怪しんで騒ぐほどの気力はとうに残っていない。

 

 テオがリルへ向き直る。

 

「供物場の術的残滓は強いです。ヴォルグは、単に食っているだけではありません。捧げられるもの、恐れられるもの、待たれるものとして定義を強めています」

「恐れられるほどに強くなるということでございますね。いやあ、羨ましいご商売で」

 

 テオが誠実に説明し、マルが雑にまとめた。

 祈祷や呪文ばかりが、約定術ではない。来歴と約定によって造られ、行為のひとつひとつによって世界に干渉するヴォルグもまた、広義の約定術師と言えた。

 

「炎は逸らせるか」

「一度見ないことには対策はできませんが、初見で焼かれないように準備はします。ただし、完全には防げません」

「ああ」

 

 リルは剣の柄に触れた。

 

「逸らせ。俺が踏み込む」

 

 *

 

 採石場へ続く道は、かつて人の手で削られた道だった。

 幅はある。荷車を通すためだろう。だが今は片側が崩れ、もう片側には焦げた木が倒れている。切り出されずに残った岩が、不揃いな墓標のように立っていた。

 鳥がいない。虫も鳴かない。岩の隙間を抜ける風の音だけが響く。進むほどに不気味な静けさに覆われていった。

 

 テオは道の途中に札を置いた。

 

 細い糸を石に結び、札から札へ渡していく。サイモンがその位置を見て、射線を確認する。トルカが退路を見た。ジャドは後方の道を覚え、リルの背後を守れる位置を選んだ。

 

 リルは採石場の入口に立った。

 そこは、山の腹が抉られた場所だった。

 

 灰色の岩壁が半円状に開け、中央は広い平地になっている。かつて石を切り出した跡が段々に残り、谷側へ向けて古い滑り台のような搬出路が伸びていた。

 

 その奥に黒いものがあるのを最初、リルは岩だと思った。

 だが、岩ならば息をしない。

 灰が舞う。翼が、わずかに動く。

 四肢は太く、爪は曲がり、首は長い。鱗は黒というより、焼けた鉄のような色をしていた。ところどころ赤黒くひび割れ、内側に火が残っているように見える。

 

 竜。

 悪竜ヴォルグ。

 

 リルは剣を抜いた。

 ヴォルグの頭が上がる。

 それは人が語るより小さく、人が戦うには大きすぎた。

 黄色い、濁った眼が開いた。

 見られ続けたものの濁りがあった。

 恐れられ、名を呼ばれ、供物を置かれ、討伐を諦められたものの眼。

 

「来ます」

 テオが低く言った。

 

 ヴォルグの喉が膨らんだ。

 火が来る、と思うより先に、周囲の空気が変わった。物理的な熱の放射ではない。

 採石場全体が、ここは焼かれる場所である、と()()されたのだ。

 岩の影も、砂利も、切り出し跡も、古い搬出路も、すべてが赤く意味を帯びる。

 

 テオが札を踏んだ。

 

「右へ!」

 

 風が折れた。

 熱と光と圧力が、採石場を斜めに舐める。テオの札が焦げ、糸が弾け、炎の面が不自然に歪んだ。

 リルの左肩を熱が掠め、外套の端が燃える。

 踏み込む。ヴォルグの爪が来る。岩を砕く一撃を正面から受けず、横へ逃がす。剣を入れる。鱗に火花が散った。刃は通ったが、浅い。

 サイモンの矢が飛び、左眼の下の鱗の薄いところに矢が刺さった。ヴォルグが首を振ると、黒い血が石の上に落ちて、泡立つ。

 

「テオ!」

「二度目、来ます!」

 

 ヴォルグが口を開くと、喉の奥が赤くなるのが見える。

 テオが別の札を投げた。札は空中で裂け、火の前に薄い膜のようなものを作る。

 

「低く!」

 

 炎は一度目より重い。

 熱が髪を焼き、喉の奥を乾かす。テオの術が炎を右へ逸らす。しかし、逸れきらない。リルは前に出ようとしたが、足元の石が熱で割れた。踏み込めない。

 ヴォルグは火の向こうから首を下げる。爪が来る。リルは剣で受けた。受けた瞬間、腕が軋む。

 重い。ただの質量ではない。

 竜という存在の、人が恐れ続けたものの重みが、剣越しに来る。

 トルカとサイモンの援護を受け、リルはもう一度踏み込んだ。

 剣がヴォルグの前脚を裂く。今度は深い。だが、竜は止まらない。傷口の周囲の鱗が赤く光り、血が固まるように塞がっていく。

 

「治っている!?」

「治癒ではありません! ヴォルグは、()()()()()()()()()()()()()()()()と定義されている。傷の方が、竜に合わせて意味を失っています!」

「それも来歴か。つまり?」

「細かい傷では勝てません!」

「最初からそう言え!」

 

 リルは奥歯を噛んだ。

 負けているわけではない。作戦はうまくいっている。

 テオの術は機能し、サイモンの矢も届き、トルカもジャドも動けている。

 だが、ヴォルグを殺すところまで、力が届かない。

 このままでは、火と熱で一方的にこちらが消耗する。

 

「撤退する」

 

 リルのその声に、誰も反論しなかった。

 テオが最後の札を切った。

 炎が岩壁へ逸れる。熱で石が弾け、白い煙が上がる。その隙に、トルカが先導し、ジャドが後方を固め、サイモンが牽制を入れる。

 マル=シレスは、最後まで手を出さなかった。

 

「賢い竜でございます」

 ただ、ヴォルグがリルたちを追わず、採石場の奥で首をもたげているのを見て、薄く笑った。

 

「どういう意味だ」

 リルが問う。

 

「ここから先は、向こうの舞台なのでしょう。あそこでは、殺しきれない」

 

 *

 

 撤退した先は、採石場から少し下った岩陰だった。

 村までは、まだ戻らない。

 

「あの炎は何だったんだ? 口から直接出たわけじゃないみたいだが」

「火が飛んできているのではなく、採石場そのものが、火に従わされているんです」

 テオの説明は相変わらず難解だった。

 

「殺せねえ相手じゃねえとはわかったが、王家があれに手を出さねえ理由もわかった」

 トルカが吐き捨てた。

「刃が通らねえが、兵器は山に上げられねえ。兵を増やせば飯が要る。術師を揃えても焼かれねえ保証はない。勝って救えるのは山村いくつか。負ければ一隊まるごと灰だ」

「割に合わない、か」

 リルが唸る。

 行政判断としてはそういうことになる。正しいが、間違っている。

 

「炎は逸らせた、おまえの術は通じた。だが、殺せない」

「……はい」

 テオは膝をつき、焦げた札を並べていた。指先が震えている。火傷ではない。怒りと疲労だ。

 

「目と翼は狙える。だが、止めるには足りない」

 サイモンが矢筒を確かめる。

 

「若が踏み込める間合いまで持っていけても、刃が浅い。首か胸を割らねえと無理だ」

 トルカは岩にもたれていた。

 

「二度目は、火をもっと逸らせるか」

「角度は読めました。左右の岩壁と搬出路を使えば、多少は逃がせます」

「なら」

「多少です。二度目は、ヴォルグもこちらの術を覚えます。札の数も足りない。あの炎を何度も受け流すのは無理です」

「供物場を断つのはどうだ。あれがヴォルグの来歴を強めているなら、まずそこを」とジャド。

「意味がないとは言いませんが、即効性はありませんし長年の恐怖は消えません。ヴォルグが山を下りる可能性があります」

「村人を逃がす」

「全員は難しい。老人と子供が遅れる」

 

 沈黙が訪れる。

 風が、岩陰を抜け、焦げた札の端を小さく揺らす。

 マル=シレスは、少し離れた岩の上に座っていた。膝に肘をつき、白い手袋の指先を合わせている。発言はしない。ただ、聞いている。

 それが、妙に腹立たしかった。

 何もしていない道化が、沈黙だけで皆の意識の中心へ迫っていた。

 

「もう一度、正面から行く」

「今の繰り返しだ」

「精度を上げる」

「竜だって上げる」

 

 同じことをしても届かないどころか、次はもっと悪い。テオの札は減り、こちらの疲労は増え、ヴォルグも学んでいる。わかっている。

 それでも、別の言葉を口にしたくなかった。

 届けば殺せる。だが届かせる一手がどこにもない。

 

「……マル」

 言ってから、自分の声が思ったより低いことに気づいた。

 

「はい」

 道化の鈴が、ちり、と鳴った。

 マル=シレスは、待っていたように顔を上げた。

「何かあるのか」

「ございます」

 

 その即答が場をさらに冷やした。テオの顔が強張り、トルカが眉間に皺を寄せ、ジャドが小さく息を吐き、リルが歯噛みする。

 

「なぜ先に言わなかった」

「皆さまのお知恵を拝見したく」

「趣味だろう」

「はい」

「言え」

 

 マルは岩の上から降り、まるで夕餉の献立でも提案するような軽やかさで、白い手袋を胸に当てて言った。

 

「道化を生け贄にしましょう」

 

 全員が、彼を凝視した。

 マルは、自分の喉元を白い指で軽く叩いた。

 

「悪竜ヴォルグは、人を食う。ならば、食わせればよろしい。腹を裂く必要はございません。私めが喉元まで招かれます。外側から裂けぬなら、内側から壊す。たいへん素直な話でございます」

「無謀です。咀嚼圧、胃酸、熱、体内の約定環境、すべて不明です」

 即座にテオが返した。

「不明なものは、実に楽しい」

「ふざけるな!」

 叫んだ。

 マルは笑っていた。

 しかし、リルには道化の言葉が冗談ではないとわかっている。

 

「駄目だ」

 自分でも、思ったより早く声が出た。

 マルが、面白そうに目を細める。

 

「なぜでございましょう」

 リルはすぐには答えなかった。

 別の光景が、頭の奥で開いていた。

 

「あんなことをもう一度するつもりか」

「何のことでございましょう」

「自分に刺さった鋲を、自分で押し込んだ。勝つために」

 

 あの時は、ただ異様で、理解が追いつかなかった。

 痛みも、血も、笑いも、すべてが自分の知る戦いから外れていた。

 

 だが、今ならわかる。自分の身体に刺さった杭を、自分で深く押し込むことを、あの道化は勝ち筋として選んだ。

 痛みを避けるためでも、生き残るためでもなく、勝敗を壊すために、自分を壊す方向へ使った。

 リルは、結果としてそれを許し、自分はその勝利を受け取った。

 

「私めには、あの鋲ほど上品な趣はございますまい」

「茶化すな」

「必要ならば、やります」

「必要にしない。俺の作戦に、おまえが自分を壊すことを入れるな」

 

 岩陰に風が吹いて、マルの犬耳が、わずかに揺れた。

 

「では、私めは丁重に扱われる道具で?」

「おまえを大事にしたいわけじゃない」

「それは残念」

「おまえが自分を壊す作戦を許せば、俺がそういう勝ちを選んだことになる。それが嫌だ」

 

 マルは、しばらくリルを見ていた。そして、深く一礼した。

 

「承知いたしました」

「別案を出せ」

「はい」

 

 マルはあっさり言った。

 

「次の案では、私めは、ほとんど何もしません。

 リル様を()()()()()()()でございます」

 

 全員が再び黙った。

 テオが、ゆっくりと顔を上げる。

 

「今なんと」

「リル様を、大きくする、と」

「つまり、人間を、竜に届くほど大きくするというのですか」

「はい」

 

 マル=シレスは楽しげに笑った。

 

「食われるのが駄目なら、食われない大きさになればよろしい」

「滅茶苦茶だ。荒唐無稽です。身体の比率、質量、血流、骨格、装備、足場、すべて破綻します」

「ですので、外法(アウターロウ)でございます」

「説明になっていません!」

「説明にならないものを、外法と呼ぶのです」

 

 テオが頭を抱えるのをよそに、リルはヴォルグ山の上を見た。

 黒い雲が、また赤く光っている。

 村では、今夜も誰かが供物場を見て、明日、何を捧げるかを考えているはずだった。

 マルに頼らない強さが欲しかった。

 だが、今ここで欲しいものを選んでいる余裕はない。

 勝つために、何を使い、どこまで使うか、何を使わせないか。

 必要があるのはその決断だ。

 

「やる。頼む」

 

 リルは言った。

 テオが振り返った。

 

「本気ですか」

「他に案は」

「……ありません」

「ならやる」

「失敗すれば、あなたの身体が壊れます」

「壊すな」

 

 リルはマルを見た。

 

「はい、なるべく」

 マルは嬉しそうに答えた。

 

「なるべくではない」

「では、できるだけ」

「同じだ」

 

 トルカが額を押さえた。

 

「どれぐらいだ」

 

「おおむね十倍です」

 マルが指を立てる。

 

「おおむねで人を大きくするな」

「細かく申し上げると、話が長くなります」

「竜に食わせるよりは、まだ武勇譚として語りやすくあるな」

 ジャドが静かに息を吐いた。

 

「大きくなれば、的にもなる」

 サイモンはヴォルグのいる採石場の方を見た。

 

「炎は逸らします。逸らさなければ、全員死にます」

 テオは何かを飲み込んだ様子で、苦々しげに言った。

 

「それでは皆さま」

 鈴が鳴る。マル=シレスは、岩の上に立って、丁寧に一礼した。

 

「竜殺しの二幕目と参りましょう」

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