転生したら甲斐の虎の弟になった   作:淡々鬼

11 / 11
一気に10年くらい進めたので出来事の補足。
1565年:武田信定・一条信龍を総大将とする約2万が伊達領に侵攻し米沢を陥落させる。
    同時期に最上家が武田家に臣従。
1566年:北条氏康・武田晴信の連合軍が山之内上杉家を滅ぼし、関東管領上杉憲政は切腹、関東管領が途絶える。
1567年:武田義信が病死。以降、今川・北条との関係が冷え切る。
1568年:田村、二本松畠山などの奥州の小勢力が武田家に降る。一方で伊達家が米沢を奪還する。
   武田信定、兄晴信の6男である武田信清を養子に迎える。
1569年:駿河へ侵攻し、今川家が滅亡。
    これに反発した北条家と戦い、一時は小田原に到達するが撤退(三増峠の戦い)
1570年:畿内において姉川の戦いが発生。浅井・朝倉が織田・徳川に敗れる。
1571年:北条氏康が病死し、武田・北条間の同盟が成立。
    伊達・相馬らと武田家が講和し、奥州に一時の平穏が訪れる(北部の南部家や安東家は除く)


いざ瀬田に旗を立てん

 1572年、この年、歴史が動いた。

 1569年の駿河侵攻、三増峠の戦い以降、目立った動きを見せていなかった『甲斐の虎』武田信玄が西上作戦を開始、その総数は5万から6万に及び、武田家の最大動員兵力であった。

 

 これに対し、三河・遠江の徳川家康は盟友・織田信長に援軍を要請するが、同時期に朝倉・浅井・本願寺・三好などの反織田勢力が再び挙兵したことにより僅かに3千の援軍にとどまる。

 

 武田軍は部隊を4つに分け三河・遠江に侵攻。更に織田方の岩村城に秋山虎繁が侵攻。

 これを陥落せしめる。

 

 そして、武田軍の別動隊の一つ飯富政景が率いる約5千が諏訪より徳川領に侵攻。

 同時期に甲府より武田晴信の本隊約5万が出陣。

 

 物語の開始はそれより3日ほど遡る。

 

***

 

 甲斐国

 

 数多の武士が民が戦の準備を始めている。

 若い者から老いた者まで、甲府より5万、信濃諏訪より5千、木曾より3千が出陣する。

 我らにとっても初めての大戦となる。

 

 なにより、今まで奥州方面を担当していた信定様、信龍様、長尾様らも此度は本軍に加わると聞く、武田の総力戦となる。

 これまでの晴信様の丁寧な侵攻とは違う。一気に織田・徳川を踏みつぶそうとしておられる。

 

 何を焦っておられるのだろうか。それほどまでに織田・徳川が脅威ということか、あるいは……

 

 いや、これ以上はやめておこう。

 

「飯富殿、珍しいですな隠居された貴方が顔を出されるとは」

 

 飯富虎昌殿、かつては武田義信様の傅役を務められたが、義信様の死後は隠居なさっておられた。

 

「お館様より、呼び出されてな。火急の用だそうで急いできたまでのことよ。高坂殿こそ、出陣の調整か?」

 

「ええ、私は戦場には向かいませんからなあせめて、皆が一人でも多く帰って来られるように物資はしっかりと輸送できるようにしなければいけませんから」

 

 私は晴信様より、万が一のための留守を任された。

 総力戦に参加できぬのは武士として悲しくはあるが、愛しい方より任されたこの任務は遂行せねばならぬ。

 

 

***

 

「飯富にございます」

 

「入れ」

 

 飯富殿がこられた。兄の方かな。

 弟の方は諏訪におるはずだ。

 

「信定様、信繁様、それに信廉様まで皆さまご一緒で、して、お館様は何処に?」

 

「兄上は病床に伏せておる」

 

「なんと!」

 

「声がでかいぞ、飯富。兄上はこの戦を焦っておるのかもしれぬ。普段に比べ調略も少ない。おそらく、自分の命が尽きる前に織田信長を殺すつもりだろう」

 

「それほどまでにひどいので?」

 

 信繁と信廉の顔が沈む。恐らく私も同じような顔をしているのだろう。

 

「ああ、医師の見立てではもって一月とのことだ」

 

 しばらく誰も声を出さない。

 みな沈痛な面持ちで向かい合うだけだった。

 

 バンッ!と突然襖が開く。

 

「誰が、死ぬって?」

 

「兄上」

 

「問題ない、死なねえよ。俺は、少し体調が悪かっただけだ」

 

 瘦せ我慢だな、皆、気づいている。

 前よりも痩せている。

 

 だが、誰も休むようには言わない。

 兄上の目が文句を許さないと、この戦で死ぬと言っているように思える。

 

「信繁、準備は整ったか?」

 

「9割ほどは、後数日もすれば出陣できるかと」

 

「そうか、ちょっくら和尚の元へ向かってくるわ」

 

 一瞬の間、その間に兄上の姿は部屋より消えた。

 

「…へ?」

 

「虎昌!兄上を追うぞ!」

 

「え、ええ!」

 

 兄上の言う和尚は恵林寺の快川和尚のことだろう。

 体調が悪いのだ、どこかで倒れられるわけにもいかぬ。

 急がねば。

 

***

 

 1572年、武田晴信が出家、以後、武田信玄を名乗る。

 

 

 そして、1572円10月3日

 

 武田軍約6万弱が三河・遠江に侵攻を開始する。

 

 武田軍は武田信玄率いる本隊が甲府より信濃諏訪を通り、約2万の軍勢で遠江北部に進軍。

 武田信定・長尾景虎が甲府より駿河を通り約2万で遠江南部に進軍。

 別動隊として飯富政景が信濃諏訪より三河北部へ進軍。

 馬場信春が1万の兵で本隊の後方に進軍したのち犬居城にて別れ、只来城へ進軍。

 

 一方、この動きと連動し、秋山虎繁が約3千程の軍を率いて美濃岩村城へと進軍しこれを陥落させる。

 

 

 各軍の主な将は以下の通り。

 

 武田本隊(補足)

 武田信玄(武田家当主)

 武田信義(武田義信の子。側室との子ではあるが次期武田家当主。12歳)

 武田信繁(武田信玄の弟。真の弟と称される。信濃葛尾城主)

 武田信廉(武田信玄の弟。信玄の影武者も務める。信濃高遠城主)

 内藤昌豊(上野箕輪城主。武田信繁と並び真の副将と称される)

 山中勘助(武田家軍師。隻眼隻腕だがその実力は非常に高い)

 土屋昌次(奥近習六人衆の一人。武田家の出世頭)

 小山田信茂(武田家家老。投石部隊を率いる)

 甘利信忠(小荷駄隊を率いる。元両職(武田家の家臣内での最高位)甘利虎泰の子)

 穴山信君(武田家一門衆。河内の国衆)

 大井信為(武田家一門衆。西郡の国衆)

 武藤喜兵衛(信玄の側近。信定の家臣真田幸隆の三男)

 曽根昌世(信玄の側近。喜兵衛と並び信玄の両眼と評される)

 

 遠江南部方面軍(補足)

 武田信定(武田信玄の弟。武田家一門衆筆頭。越後春日山城主)

 長尾景虎(越後長尾家当主。軍神と呼ばれる。越後春日山城下の御館に住まう)

 一条信龍(武田信玄の弟。奥州方面の取次担当。会津黒川城主。)

 武田信清(武田信玄の六男。信定の養子)

 真田幸隆(信定の家臣。攻め弾正の異名で知られる知将)

 宇佐美定満(越後琵琶湖島城主。幸隆と並ぶ知将)

 直江景綱(越後与板城主。なんでもこなす器用貧乏)

 木曾義昌(信濃木曾城主。今義仲と称される猛将)

 芦田信守(出羽鶴ヶ岡城主。庄内支配担当)

 最上義光(出羽山形城主。出羽の驍将)

 本庄繁長(越後村上城主。越後きっての猛将)

 長尾景勝(越後坂戸城主。景虎の甥。無表情)

 沼田景義(信定の側近。摩利支天の再来と恐れられる)

 

 三河北部方面軍(補足)

 飯富政景(赤備えの大将。武田軍最強)

 保科盛信(武田信玄の五男。保科家の養子)

 原昌胤(武田家家臣。一時失脚していたものの復帰)

 三枝昌貞(信玄の側近。政景の娘婿)

 

 武田本隊別動隊

 馬場信春(不死身の鬼美濃と呼ばれる老将)

 武田信豊(武田信繁の子。信貞の娘婿)

 小幡信貞(上野国峯城主。上野最大の国人)

 室住虎光(信濃柏鉢主)

 初鹿野忠次(馬場信春の甥)

 

 1572年遠江国浜松城

 

 この浜松城はかつては曳馬城と呼ばれ、1570年に徳川家康が入城し、浜松城と改められ、以降、徳川家の居城かつ、遠江支配の最重要拠点として扱われている。

 

 そんな城で最近は連日軍議が行われていた。

 

「報告は以上でございます」

 

「なんか、最後の方、説明が適当になってないか?」

 

「それは書いている者が面倒になったのと、鬼美濃が思いのほか忍びを警戒していましてなあ」

 

「お前なあ…」

 

 黒装束に身を包み、主君に報告する忍びの名を服部半蔵正成。忍びであり武士である、後世で最も有名な忍びではないだろうか。

 

 その向かいに座られる人物こそが30歳の若さで三河・遠江を支配されるお方、徳川家康公であられる。

 

 愚民共が図が高い!

 

「後、康政はなんでナレーションをごく当たり前かのように行ってんのさ」

 

「二人ともメタいですぜ」

 

 そしてこの軽装で戦に出てかすり傷一つ負わない、筋肉を本多平八郎忠勝という。

 

 あの、端っこで混乱しているのが佐久間信盛、織田家の筆頭家老らしいが正直、柴田や木下の方がありがたい。

 

「思っておっても言ったら駄目では?」

 

「織田からの援軍は2万、しかし、その大半は三河に置き、滝川一益が率いております。ここに来ているのは私と平手殿、水野殿の3千に」

 

「我が徳川軍は8千程、合わせて1万1千」

 

「信長様は現在、兵を畿内から退かせ、こちらに全軍を向かわせようとしておられる」

 

「それまで籠城せよと」

 

「如何にも」

 

 水野殿が言う。水野殿は家康様の叔父にあたるお方。彼が説得するのが最も早い。

 

「我が方の城は2日に一つ落とされておる。今日も一つ落ちた。これ以上、傷つく民を、仲間を放っておけと申すか」

 

「大名とはそういうものよ、民を見捨て、大戦に勝たねばならぬ」

 

「勝ったとして、民がなくては国を立て直せぬ。今、この瞬間も武田は我が民を凌辱し、虐殺しておるのだぞ」

 

「それでも、それすらも耐えるのこそが大名というものじゃ」

 

 突然、佐久間殿が口を開く

 

「双方の言い分、最もじゃ、一度、武田と当たるのは如何か。確かこのあたりに堅城と名高き、二俣城なる城があったはず。個々の側にある天竜川付近にまで出て、徳川殿が民を見捨てておらぬと表明すれば、民も安心し、希望はもてるはずじゃ」

 

「武田と…ぶつかると」

 

「如何にも、それとも我らを殺し降伏しますかな?」

 

 いざ、武田と戦うとなると足が竦む。織田と戦った方が何倍もましであろう。

 しかし、織田は盟友。家康様は必ずや織田に与し、戦われる。

 

「…出るぞ」

 

「はっ」

 

「おうよ!」

 

「なれど、此度は武田の強さを知るための出陣、少数の兵で、武田の先鋒を少し削る」

 

 徳川家康、約3千の兵で二俣城付近に出陣。

 

 後に一言坂の戦いと呼ばれることになる三方ヶ原の戦いの前哨戦の幕開けである。




いろいろと矛盾してるような気もするけど多めに見てね。

武田信義:武田義信の子。側室との間の子供。正史にも存在はしていたらしいが義信事件の後側室の実家に引き取られ、後に幕臣となり、東国半分の秤の製造などを独占したんだとか。(正史ではそのため守隨姓だよ)

この世界の義信事件:義信は今川家への対応で晴信と揉めはしたけど、事件を起こすことはなかったよ。そのため、飯富虎昌を筆頭に義信事件で処罰された面々は生きているよ(勝頼も諏訪家のままだね。政景も山県姓にならず飯富姓を使っているよ。似たような例だと第四次川中島の戦いでの戦死者もだね)

最上義光と武田家:この世界線において最上家は武田家に降り、三方ヶ原にも参戦しているよ、正史だと今後起きる武田家の崩壊の際に彼を筆頭とする奥州・上野・越後なんかの国衆の動きにも注目だね。


年数を一気に進めるのあり?なし?

  • あり
  • なし
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

転生者がfate世界でノッブの家臣になって英霊になるまで(作者:ゼロさん)(原作:Fate/)

織田信長の家臣『有須浦 増麻(アスラ ゾウマ)』は転生者である。型月特有のYAMAで体を鍛えたアスラは身長2m60cmの巨大な体と転生する際に貰ったチート。そしてガバガバな知識チートと倫理観でノッブに擦り寄り出世を目論むのだ!▼転生者「あなや〜!凶弾(チャカ)をいっぱい撃てば人が死ぬなり〜!」▼ノッブ「コイツ拾ったの間違いだったか⋯?」▼作中で薬物に関する描…


総合評価:1458/評価:7.39/完結:10話/更新日時:2026年06月17日(水) 14:53 小説情報

超古代に『剣』の概念を生み出した男の話(作者:柴犬ダックス)(原作:Fate/)

タイトルそのまま。▼メソポタミア文明よりも以前の神代の黎明期。▼神獣達が大地を闊歩し、まだ人類が石器を用いてた時代に転生した主人公が、ガイアに『剣』の概念をブチ込む物語。▼


総合評価:1209/評価:8.79/連載:2話/更新日時:2026年08月15日(土) 00:11 小説情報

世界を救え?できらぁ!(作者:星5すり抜けとNTRは悪い文明)(原作:Fate/)

なお本人はNTRエロ同人誌の世界線で一度人理を救ったものとする。


総合評価:1397/評価:6.77/連載:14話/更新日時:2026年08月19日(水) 21:00 小説情報

ダンジョンでプーサーになった転生者が女の子になった主人公と出会うのは間違っているのだろうか(作者:カフェインましまし)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

ダンまち世界に転生したら姿はプーサーで主人公が女の子になっていた世界だった。


総合評価:2242/評価:7.14/連載:7話/更新日時:2026年06月09日(火) 00:00 小説情報

姉様、姉様、ごめんなさい(作者:イエスアマゾネス)(原作:Fate/)

死亡フラグ100%の種族にTS転生


総合評価:3264/評価:8.49/連載:5話/更新日時:2026年06月02日(火) 03:02 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>