転生したら甲斐の虎の弟になった   作:淡々鬼

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鳥居峠の戦いと魚津の戦い

 1582年 信濃国 諏訪上原城

 

 木曾谷を治める一族である木曾家は木曾義仲の子孫を自称する一族であり、現当主の木曾義昌の父親である木曾義康の代に武田家に臣従し、以降、義昌が武田信玄の娘を正室に迎えたことにより武田家の国境を守る一門衆として遇されている。

 

 そんな木曾家において政変が起こる。

 木曾義昌を弟の上松義豊らが追放し、織田家の軍勢を木曾谷に引き入れたのである。

 

 これに激怒した武田信義は武田信豊・望月信永を大将とする5千の軍勢を派遣する。

 さらに続けて武田信義自らも1万の軍勢を率いて木曾谷に進軍する。

 

 一方、2月3日にこの報告を聞いた織田信長は武田家の討伐を決定し、嫡男・織田信忠を大将に3万の軍勢を先鋒とし、信濃に侵攻する。

 

 さらに徳川家康が駿河に、織田家臣の金森長近が飛騨より信濃にそれぞれ進軍を開始。

 この二日後には関東の北条氏政が武田家との同盟を破り、織田家の事実上の降伏、上野へ侵攻。

 奥州の伊達輝宗・最上義光らも各々武田領に侵攻する。

 

「此度の件、面目次第もございませぬ!この木曾義昌。必ずや謀反人、上松義豊を討ち取り、織田家の侵攻を撃退して見せる所存!何卒、某に先鋒をお任せください!」

 

 武田の本軍が入った諏訪上原城において武田信義の前で土下座をしているのは木曾義昌。

 木曾の当主であったが弟の謀反により、追放され、織田家を招き入れる原因を作ってしまった将である。

 

「よい、義昌、お主はこの本軍よ1千の兵を率いて先陣の信豊と合流し、木曾を奪還せよ!」

 

「御意!」

 

 かくして、武田家と織田家の全面戦争が開戦する。

 

 信長の嫡男、織田信忠は先陣として森長可、岡忠正らを木曾に派遣。

 さらに若い二人を補佐させるため河尻秀隆を伊那方面に派遣する。

 

 これを受け、伊那街道の最初の武田家防衛陣地である滝沢の領主下条信氏は防衛の準備を行うがこれを弟の下条氏長が追放し、織田家に滝沢を明け渡す。

 

 更にこの数日後には第二の防衛線である松尾城の小笠原信嶺も織田家に降伏し、織田軍は無傷で伊那の半分を手に入れる。

 

 更にこの小笠原の降伏と同日に浅間山が噴火。

 この噴火により信濃・甲斐の武田軍の戦意は更に低下する。

 

 2月15日には越中の魚津城に柴田勝家が3万の軍勢で侵攻したことを受け、武田信定が救援のために1万の兵で魚津へ向かう。

 さらに会津の一条信龍も米沢で伊達輝宗と戦っており、越後及び奥州からの援軍も期待できない状況に陥る。

 

 そして2月16日。

 

「木曾は我が土地ぞ!取り返せ!」

 

 木曾義昌の号令の元、武田軍と織田(木曾軍)が激突。

 

 かつての木曾の当主である義昌が味方に付いたこともあり、武田軍は鳥居峠と呼ばれる地を奪還する。

 

 以降、この鳥居峠を拠点に義昌は深志城の馬場昌房と連携し、この地を守備する。

 

「そうか、勝ったか!」

 

「はっ!」

 

 この戦での勝利は武田家を歓喜させ希望を皆にもたらした。

 

 しかし、その希望は長くは続かないかった。

 

「きゅ、急報!飯田・大島の両城が陥落!城将の保科正直、武田信廉両名は逃走したとのこと!」

 

「も、申し上げます!御一門衆の穴山梅雪様、謀反!徳川に走りましてございます!」

 

「……は?」

 

 間の抜けた声。

 希望が断たれたことを示すには十分すぎる現実。

 一門衆の裏切り、一門衆の逃走。

 それは武田の崩壊を示すには十分すぎる証拠であった。

 

 武田信義、諏訪上原に諏訪勝頼の3千を配置し、甲府へ撤退。

 

***

 

 越中魚津城

 

 武田信定率いる武田軍約1万と柴田勝家率いる織田軍約3万が2月19日に激突する。

 

 その日も雨が降り、雷が鳴り響いていた。

 織田軍の兵士たちの脳裏にこびりつくトラウマを思い出させるには十分な物であった。

 

 約5年前に加賀国手取川での一戦での大敗。その時も雨が降り、雷が鳴り響いていた。

 

「全軍、突撃」

 

 そのような織田軍の恐怖など知らず、信定の軍配が振り下ろされる。

 武田軍の突撃。

 織田軍の約3分の1ほどの兵であったが、暗闇で大声を上げながらの突撃。

 織田軍は武田軍の兵数を見誤る。

 

「退け~!」

 

「無理じゃ!死にとうない!」

 

 我先にと織田軍の兵が逃げ出す。

 

「おい!かかれ!かかれ!」

 

 それでもなお、柴田勝家は、その配下は戦おうとする。

 僅かに数刻の戦。

 

 それでも多くの将が死んだ。

 魚津城において武田信定が柴田勝家を破る。

 

 織田軍は毛受勝照らを失う大敗を喫する。

 

「お見事にございます。信定様」

 

「昌幸か、全く、少しは休ませてほしいものだ」

 

「不甲斐ない若者ばかりで申し訳ございませぬ」

 

「いや、良い、せめて高坂が生きて居ればもう少し、保てただろうに」

 

「高坂様ですか?」

 

「あいつはまだ30代の後半だったからな、あいつさえいれば少なくとも北信濃と上野に侵攻しようなんて考えに織田はならなかっただろうさ」

 

「左様で」

 

「高坂に景虎、景家、信繁どいつもこいつも私より若いのに先に行きよった。長生きするというのも存外悲しいものじゃな」

 

「殿、救援感謝いたします!しばらくはこの地は大丈夫でしょうから、信濃や上野へ援軍に」

 

「そういえば信守、お主がまだおったな」

 

 芦田信守が城から出てきたのを見て信定が言う。

 

「私はまだ死にませんよ!」

 

「はっはっは、頼んだぞ。戦が終われば久しぶりに春日山で酒でも飲もう」

 

「是非とも」

 

 空はすでに晴れていた。

年数を一気に進めるのあり?なし?

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