転生したら甲斐の虎の弟になった   作:淡々鬼

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戦闘描写が難しい


葛尾城攻防戦

1553年 葛尾城

 

 目の前に集まっているのは真田幸隆、屋代正国、香坂宗重、芦田信守、禰津常安といった信濃の諸将達。

 

「先日、越後に逃れた村上義清がこの城に5千の兵を率いて向かってきておるという報告が届いた」

 

「こちらは3千、十分に守り切れましょうが…」

 

「あの義清だぞ、そんなことは分かっておろう」

 

「あの男は勝てぬ戦は挑まぬ、何か策があるのでは?」

 

「義清は半月ほど前までこの城の主だった、城の構造も分かっておるし、民たちも旧主の帰還となれば裏切るやも」

 

 各々が意見を出し合っていくがどれも村上義清という男への警戒があった。

 この村上義清という男は2度に渡って兄上を退けた相手であり、兄上の初めての相手でもある(負け戦の)。

 

 この2度の敗戦はどちらも大敗であり、特に1度目の敗戦となった上田原の戦いでは家臣団の筆頭格である板垣信方と甘利虎泰という二人の宿老を失い、小笠原長時らの反撃を受けることになったというトラウマがある。

 

 あれはひどかった信繁が長時を破ってくれたからよかったが、負けていたら信濃を放棄せざるを得なかったかもしれなかったからな。

 

「急報!急報にございます、越後の長尾景虎が総勢3千の兵を率いてこちらに向かっています!」

 

「そうか、これで敵は合計8千と言ったところ。兄上はこちらは兄上の援軍を加えれば1万程にはなろう。耐えしのぐぞ!」

 

「御意」

 

「幸隆、すぐさま、城の防衛を固めよ、正国と常安は周辺の小城の民と兵をこの城に収容せよ」

 

「「「はっ!」」」

 

 

 

 数日後

 

「二の丸が突破されました!」

 

「罠が機能していません!」

 

「……幸隆、私には敵が一人に見えるのだが、気のせいではないよな」

 

「はい、幻覚でも見えているのでしょうか…」

 

 たった一人によって城が半壊させられたのである。

 

「おかしいだろ!なんだ、あの怪物は」

 

 

 ドーン!!

 

「ここですか、大将がいるのは」

 

「……」

 

「……」

 

「……なんか、すみません」

 

「急に謝らないで、怖いから」

 

「…もう使い物ならないよこの城、儂が精一杯改修したのに」

 

「泣きたいのは義清では?」

 

「そう考えたら冷静になれたわ」

 

 哀れ義清、奪還しようとしたかつての居城が見るも無残な姿にされてしまって。

 

「…まあ、いいや、こいつを除けば見方が善戦してるし、幸隆、残存兵の指揮を任せる。信守、私とともにこいつを足止めして死んでくれ」

 

「はっ」

 

「御意、なれど、生きて下されよ」

 

「行かせると思っていますか」

 

「どっからこんな怪力が出てるんだよ、女」

 

 一度打ち合っただけで、刀にひびが入る。

 

 お気に入りの奴だったんだけどな。

 

 幸隆は本丸を出て、兵たちの指揮に向かった。

 

「信守!」

 

 鮮血が舞う。信守が倒れる。

 

 キンッ!

 

 金属がぶつかり合う音がする。

 

「ハアッ!」

 

 城の壁に掛けてあった愛用の薙刀を持って女と対峙する。

 

「甲斐守護、武田晴信が弟、武田信定参る」

 

 10、20、30と打ち合い続けるが少しづつ押され始める。

 

 体中が痛い、それでも、諦めるものか。

 

 その言葉は気づいたときには出ていた、それが何かは分からない。

 ただ、妙にしっくりとくる言葉だった。

 

***

 

「陰雷」

 

 同時に空が雲に包まれ雷鳴が鳴る。

 

 一瞬の隙

 

 そう、たった一瞬、しかし、致命的な隙を男は見逃さなかった。

 

 その一撃は女の、長尾景虎に届く

 

 

 ……はずだった。

 

 

「殿、いらぬ世話とは思いますが申し訳ございませぬ」

 

 真田幸隆の鉄壁を潜り抜けて景虎配下の越後の猛将達が間に合ってしまった。

 

 

 

 もはや、これまでか。

 

 しかし、武田方の諸将は気づいていた、まだ状況は最悪ではないことに。

 

 未だ、真田軍と戦う城下の長尾方の諸将は気づいてしまった、状況が最悪に近いことに。

 

 本丸に攻め入った長尾軍の猛将達は確信していた、自らの勝利を。

 

 

 そして

 

 

 

 甲斐の虎は采配を振るう

 

「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」

 

 風林火山の旗をたなびかせ、向かうは弟が守る城。

 

 見えるは城より立ち上る煙と倒れる武田の旗印。

 

 なれど、未だ城は落ちず。

 

 なぜなら、この戦国最強の男の弟が守る城であるが故。

 

 さあ、恐怖せよ、驚け敵よ。

 

 さあ、恐れるな、信じろ味方よ。

 

 駆けよ先陣よ、一度破りし敵に恐怖を刻め。

 

「全軍、突撃」

 

 

 そのことに気づいたときにはすでに手遅れであった。

 横っ腹に向かうは武田軍最強”赤備え”。

 

 率いるは猛将・飯富虎昌。

 その一撃は余りにも重く、余りにも響いた。

 

 

「景虎殿を救え!」

 

 されど、村上義清、虎を二度に渡り打ち破ったこの男もただでは負けない。

 ただ撤退するのではない。踏みとどまる。

 

 自らの撤退は恩人とその家臣の死に繋がることを理解するが故。

 

 兵が死のうとも将があればいくらでも再起できると信じるが故、男は奮戦する。

 

 

***

 

「このままではまずいですね。また会いましょう」

 

 女はそういうや否や本丸から飛び降りて行った。

 女の家臣たちも立ち去った。

 

「ちゃんと化け物しかいないのかねえ戦国は」

 

 

***

 

 村上義清という男は決して凡人ではない。

 なんなら、戦国の世でも上位に入るほどの戦上手である。

 

 しかし、そんな男でも最上位の人外どもとの間には隔絶した差が存在する。

 

 奴らを人の常識に当てはめてはならない。

 

 その龍は彼の常識を軽々と覆した。

 

「引きますよ、義清」

 

 真田幸隆の2千程に加え、武田晴信の本軍も葛尾には向かっていた。

 そんな中でその軍勢を軽々と突破した景虎に気付けば義清は、否、義清だけではない戦場は魅せられてしまっていた。

 

 長尾軍は颯爽と立ち去っていく。

 

 

 

 しかし、これで戦が終わったわけではない。

 

 この戦より4か月後

 

 第一次川中島の戦い 開戦

 




簡単な両軍の武将解説。

独断と偏見で本作の両軍の武将を紹介するコーナーです。

武田軍

武田晴信:魔術をかじっていたという設定があるお方。取り敢えず武田家の一族は基本的に魔術回路があるという方針で行こうかなと決めた元凶。(そんなに詳しい描写はしない予定)

武田信定:晴信の弟。本作の主人公。晴信の代名詞が風林火山だったのでそれに続く陰雷を魔術にしようというのは決めていたわけだが、魔術の属性にそれっぽいのがなくて困っている。いざとなれば日本の魔術体系ということにでもしようかな(作者が型月にわかなのご了承ください)。

武田信繁:描写が一話の題名のブラコンと作中で語られてる真面目、小笠原を破ったくらいしかまだない人。真の副将と呼ばれたりしたお方。この人も強化だけではあるが魔術を使える設定にしようかなと思っている。

武田信廉・一条信龍:作中未登場の武田兄弟。前者は芸術に秀で、晴信の影武者をしても気づかれないほど顔や体格が似ていたそう。後者は武勇に秀で、甲斐一条家の養子になった方。武田一族の中でも有名な方。

飯富虎昌:武田家の重臣で赤備えを率いた猛将。かの有名な山県政景の兄。

真田幸隆:真田信繁の祖父であり、真田昌幸の父親。チート一家真田家の元となったといっても過言ではない人物であり、長男信綱は信州の武田家臣団の筆頭格の猛将。次男昌輝は一説には弟の昌幸と曽根昌世ではなく彼が信玄の両眼と言われたと言われる名将、なんなら別家も建てていた。三男の昌幸は徳川キラーにして表裏卑怯。四男の信尹は昌幸を支えたのち徳川家康に仕え、旗本真田家を作る。孫の信之は生涯無敗にして90代まで現役の怪物、その弟の信繁も日ノ本一の兵と称えられている。幸隆本人も攻め弾正の異名を持っている。彼にとっての守りは攻め、彼にとっての攻めは策謀ということで罠を仕掛けたけど全部軍神に突破されている。

屋代正国、香坂宗重、芦田信守、禰津常安:信濃の国人達。信守は何とか一命をとりとめた模様。知名度は個人的に信守>正国>常安>宗重。

長尾軍

長尾景虎:軍神様。越後の龍。初めての自らの命が脅かされた戦で内心ウキウキしていた。私の初めてを奪った責任取ってもらいますからね。

村上義清:元葛尾城主。晴信の初めてを奪った人。武田家にとってはトラウマである。

小笠原長時:信濃守護。義清が武田軍を破った後で武田領に5千で進軍したが武田信繁に5百で破られた。現在は越後に逃走している。

斎藤朝信:長尾家の重臣。信定と景虎の一騎討ちに割って入った男。

直江景綱:景虎の側近。本人の強さはそこそこ。幸隆を突破できなかった。
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