転生したら甲斐の虎の弟になった   作:淡々鬼

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遅くなってすみません。


第一次川中島の戦い

 1553年9月

 

 この日、信濃国北部に位置する川中島は濃霧であった。

 隣に立つ人の顔すら見えないほどの濃霧の中、4万とも呼ばれる人々がこの地に足を踏み入れていた。

 

 一方は多くの者たちが赤く塗られた甲冑に身を包み、馬に乗るものの割合が他よりも多く、凡そ10人に一人ほどが馬に乗っていた。

 

 一方は目立った特徴こそないものの指揮が異様に高く、さながら天にも昇るのではないかという熱気を放っているようにも見える。

 

 赤い甲冑の一団の中から白い甲冑を着た人物が姿を現した。

 身の程は低く、どこか気弱そうな表情をした男である。

 

 男の名を武田信定、甲斐の虎こと武田晴信の弟にして、此度の戦の先鋒である。

 

***

 

 日ノ本の武士が扱った魔術、あるいは妖術は何だったのかを説明しよう。

 

 簡単に言えば基本的には古くより続く名門とされる武家の一族に発現する一種の呪いであり、加護である。

 

 主に戦国の世では足利将軍家、畠山家・細川家・斯波家などの三管領、今川・吉良などの将軍家に近い名門、北畠などの元貴族の家、そして、武田、島津、伊達といった鎌倉以来の守護大名などが保持していた。

 

 一族ごとに発現する魔術の特色は大体、決まっていたとされる。

 

 

 

                           時計塔のとある魔術師の書記

 

***

 

 

「皆の者、恐れることはない。我らには諏訪大明神の加護がある!」

 

 信定が弓に矢をつがえると、矢の周りに稲妻が走り始める。

 

「諏訪大明神よ我らを守り給え」

 

 放たれた矢は一寸の狂いもなく、その怪物の元へ届く。

 

 その矢の速度は実に光速に達し、常人であれば避けることはおろか反応することすらできなかったであろう。

 

 

 

                 ”常人であれば”

 

「危ないですね」

 

 その怪物は矢を虫でも叩くのかのように叩き落した。光速の矢を。

 

「我らには毘沙門天の加護があるぞ!景虎様こそが毘沙門天の化身なり!」

 

 景虎の傍らに控えていた老人が声を張り上げる。

 それに続くように周りにいた武士たちが、雑兵が声を張り上げ、士気を高める。

 

 

「全軍、私に続け!」

 

 景虎の宣言、兵たちは皆続く。

 取り残されるのは傍らに控えていた老人、宇佐美定満と数十人の武士たち。

 普段からじゃじゃ馬のごとく暴れている長尾氏の将兵に胃を痛めている者たちである。

 

「為景め、やはり、お主には届かなかったか」

 

 宇佐美定満、かつては景虎の父、為景と渡り合いし謀将、この時既に60を越える年を生きる。

 

「お主ら、景虎様に続くぞ」

 

 長尾軍約8千 出陣

 

 霧は既に晴れていた。

 

 

***

 

「長尾軍がこちらに来ておりますな」

 

「問題ない、全軍、前進せよ。目の前に立つ敵は全て切り捨てよ、狙うのは長尾景虎の首のみと心得よ!」

 

 武田軍先鋒約3千進軍を開始。

 

 

「信定が出たか、信繁、虎昌。義信のことをくれぐれも頼むぞ」

 

 武田義信、晴信の長男、既に元服を済ませ、今川義元の娘を正室に迎えているとはいえ、まだまだ、若く、後見人には晴信の弟の信繁、武田家屈指の猛将、飯富虎昌がつけられていた。

 

 

***

 

「二人とも、速くいくぞ!長尾は強兵が多い、それに叔父上は虫も殺せぬような優しいお方じゃ。きっと苦戦して居るに違いない。早う救わねば」

 

 自らの兄の面影を色濃く残した血気盛んな若武者の姿を見て信繁は思わず苦笑した。

 その横では虎昌が吹き出していた。

 

「なんだ?信繁叔父上に虎昌?」

 

「いや、失敬。確かに普段の信定兄上のみを見ていればそのように見えるのでしょうなあ、と思いまして」

 

 普段の信定は穏やかな性格で押しに弱い。

 部屋に虫が出たら信繁や信廉といった弟に退治してもらうなどということをよくしている。

 

「あの方の恐ろしいところは戦場に出た際の豹変ぶりです。最近は鳴りを潜めていますが一時は本当にすごかった」

 

「ああ、敵対者は皆殺しと言わんばかりの動きであった。それに、貴方の父君、晴信兄上が武田の名跡を継いだ際に山之内上杉や諏訪などといった者たちが我らに戦を仕掛けてきた際には諏訪方の兵の多くを殺害している。降伏した者たちも含めてです」

 

「…なんと、あの温厚な信定叔父上がか」

 

「故に北信濃の村上方の武士たちの間では『甲斐の凶将』などと呼ばれていたそうです」

 

「あの方は単純に戦が上手いですからな、それに真田を始めとする信濃衆も多くがあの方につけられています」

 

「まあ、ここまで言っておいてなんですが。越後の長尾景虎は人の域を超えた怪物だと聞きます。急ぐとしましょう」

 

「ああ!急ごう」

 

 武田軍第二陣約5千出陣

 

 武田家の跡取りとしてこの時は注目されていた武田義信が今後、如何にして廃嫡されるのかはこの時はまだ誰も知らない。




補足

この世界線における戦国時代の日本では基本的に一部の血筋の者たちのみが魔術を使うことが出来ます。
 
 主に平安あるいはそれ以前から一定の権力を保っていた家や源氏の系統の武士団などです。
 斯波・畠山・細川を始めとする応仁の乱の主力の多くの家は乱のごたごたの中で魔術についての教えが失われていたりしているため、本作に登場する大名で魔術を使用するのは武田家・今川家のみにする予定です。


後、アンケートを設置したのでぜひ答えてください。(今後の展開の参考にします)

生前編の後をどうするか

  • 好きなようにやれ
  • Fate/Zero編
  • Fate/stay night編
  • Fate/Grand Order編
  • 生前だけで終わり
  • オリジナル聖杯戦争
  • Fate/strange Fake編
  • Fate/Apocrypha編
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