1553年9月
「チィッ!!」
何合打ち合った?
少しぐらい疲れろよ!
少しづつではあるが確実に死が近づいているのを感じる。
目の前で斬りかかってくる女の斬撃を受け止めるので精一杯、反撃などできるはずもなく
…カランと音がする。
手から刀がすっぽ抜ける。
「まだまだ!」
すぐに脇差を抜いて応戦するが、まあ、厳しいわけで。
「ナァッ!」
血が噴き出て、落馬する。
既に武器はなく、左腕の感覚もない。
視界はぼやけ、口の中も血の味がする。
そんな危機的状況において私の頭の中を埋め尽くしたのは何か…
武器がない?怪我がひどい?
断じて否!
まだ、決着がついていないのに、別のところを見るなよ
まだ、私は戦えるぞ
まだ、私は生きているぞ
まだ、私は死んでいないぞ
まだ、貴様との決着はついていなぞ
何を失望している
貴様の好敵手はここにいるぞ
断じて、兄上などではない
兄上が貴様の好敵手など私程度に足止めされる貴様には力不足よ
私がいる限り、貴様の好敵手は私だけだ
私だけを見ろ
私だけと戦え
貴様をそのたびに満足させてやる
史実?決まり事?
そんなものくそくらえだ!
さあ、歴史を私の手で変えようか
長尾景虎、貴様は私が満足させよう
神などと崇められ、調子に乗るなよ
精々、私だけを見て、私だけを追いかけて来い
常に貴様の前を歩いてやろう
貴様は神などではないと証明してやろう
今日が、
「神が堕ちる日だ」
「紫電」
***
「さあ、死ぬまで私と踊ろうか」
瞬間、信定の姿が消える、常人であれば捉えることのできない、その速度を景虎は見切り、打ち合おうとする
「信定様!」
刀も持たずに景虎に向かう信定を見た真田幸隆が刀を投げ渡す。
「ありがとうな、幸隆!」
「ご武運を」
再び、両者は向き合い。
瞬間、2人の『人間』の姿が消える。
常人には視認することすら不可能な斬り合いの幕が上がる。
***
信定と景虎が再び斬り合いを始めてすぐに戦況が変わり始めた。
「全軍!突撃せよ!」
その凛としたたたずまいはその若武者の育ちの良さを感じさせる。
若武者は赤一色の鎧を身に纏い、5千程の兵をもってして到着する。
武田軍第二陣、着陣。
赤一色の鎧兜に身をまとった赤備えの一団が長尾軍先鋒を蹴散らし始める。
「敵を血祭りに上げよ!」
***
「白雷」
白い雷を鎧に纏わせて攻撃を防ぎ
「紫電」
紫の電気を体に纏わせ、動きを早くし
「黒雷」
黒い雷を刀に纏わせ、攻撃する
どれも、届かない。
攻撃を防ぎきれず、速度は目でとらえられ、攻撃は全て防がれる。
何かが足りない。
『信定、魔術ってのは想像が大事だ、想像するのをやめた瞬間に武士も魔術も武術も全て終わってしまう。上手くいかなくなってしまう。逆に絶対に勝てると思えば勝てる。…いや、想像ってよりかは思い込みかもしれんな。晴信には内緒じゃぞ、奴には自分で分かってほしいからのう』
いつの日かの父との記憶。
想像、思い込みが勝負の分かれ目だと教えられた。
神に勝つ…か、随分と難しい話だ。
だが、負ける気はしないな。
「長尾景虎、貴様の命、貰い受けよう」
「そう簡単に渡しませんよ」
景虎が笑う。
私も笑う。
この
「「ハアッ!」」
「はぁ、はぁ、俺の勝ちだ」
「景虎様が敗れるなど…嘘だ」
「直江様、武田軍の中に孤立しますぞ!」
「撤退する、退け!景虎様、急ぎますぞ」
「信定様、追撃の指示を」
「幸隆、疲れた。城に戻るぞ」
「えっ!?はっはは!」
ここに第一次川中島の戦いは長尾軍の敗戦で幕を降ろす。
以降、武田軍に対する北信濃における攻撃は村上義清の残党による僅かな抵抗のみとなるのであった。
そして、1553年10月
「来ちゃいました」
「来るんじゃねえよ!」
「すみません、止めきれませんでした」
「いえいえ、あの方ももう三十代なのに嫁を取っていませんでしたから」
「取り敢えず、婚姻と越後制圧?を記念して乾杯!」
「…展開が急すぎません?」
「晴信兄上はほとんど登場していませんな」
「影の薄い儂よりましですよ」
1553年10月 長尾景虎が武田信定に輿入れ。
1554年12月 武田晴信、上洛。甲斐・信濃・越後の三国守護に任命される。
戦闘描写が難しいんだ、結構雑な気もするけど、武田家は海を獲得したぞ。
甲相駿三国同盟の時期を勘違いしていたため前話の一部の文を削除しました。
生前編の後をどうするか
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