局長辞めて、チンピラやって、ムショ脱獄。そこから始まる学園都市生活   作:シタン基板

1 / 1


主人公はヴァルキューレを自主退学したファンキーな人間です。よろしくお願いします。


囚人よ、無法者へと帰還せし

「きっと何度も何度でもいい、その道を間違えたってもいい

もう一度始めるだけでいい、進んでみよう

最初の一歩を踏み出す為に、今日の印を残して〜♪」

「……何しているんですか、先輩」

「うん?何してるって、見りゃ分かるでしょ。ふんふんと鼻歌歌ってるだけだよ」

「……声を出して歌うのは、鼻歌とは言いませんよ」

「ほーん?なら俺の口が閉まってなかったのね、そりゃメンゴ。

でも、わざわざ騒音(そんなこと)で会いに来た訳じゃないでしょ。()()()()()()殿()?」

「……その名で呼ぶのはやめてください、()()()()()

 

ヨルムと呼ばれたその人物は、先程までの笑顔はどこへやら。どうも呼ばれたくない名だったのか、途端に不機嫌そうな表情をした。

 

「俺から煽ったのは悪かった。だがそっちも俺の地雷を踏み抜いた。これで一対一だ。第3ラウンドと行くか?」

「………いいえ、私も先輩と戦う気はありません。それに私にとって、今でも先輩が局長です。ただ、私は代わりにこなしているだけ。だから、戻ってきてくれませんか?」

「───呼び方の訂正はもういい。そして、戻るつもりは永遠(とわ)はない。あそこに居ても、結局使い潰されるだけだ」

 

彼の態度は先程までと売って変わり、真実を伝えようと諭すように語った。

 

「カンナ、今のお前は昔の俺と同じだ。上の連邦は腐り、下の事情を知らぬ部下達は徒労に走らされる。それを知るのは自分だけの板挟みの中、壊れるか、壊れないかを常に提示され続ける。これ程個人に与える苦痛はない」

 

「だから俺は戻らない。そもそも、俺は自主退学済みで、既に生徒ですらない罪人だ。加えて、この問答はこれで97回目だ。百になろうと、千になろうと、俺はNOと答え続けるぞ。俺はお前達にはなれないんだ」

 

それは本当に何度となく繰り返された会話だったのだろう。その言葉を聞いて諦めた様子でカンナは「………また明日、会いに来ます」と言って部屋から出ていった。

 

 

「………俺に期待しないでくれ、カンナ。既に俺は決めた。後は、来るのを待つだけだ」

 

独房を、再び静寂と暗闇が覆う。

 

そしてその日、ヨルムと、七囚人が一斉に脱走を果たした。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

オッス、オラヨルム!元々公安局の局長をしていたが、仕事多すぎ&組織が腐敗してて頭がうんち!(せいかいのおと)になって、そのまま後輩のカンナに役職をシュゥゥゥーッ!!超!エキサイティン!!してやったぜ。ああ^~たまらねえぜ。

 

それで、公安局をやめてヴァルキューレも退学したはいいが、それはキヴォトスにおいて致命的な状態だった。要するに一文無しになったんだよね。

このままじゃまずい。そう思った俺は何とか生きる方法を模索し、たどり着いた。

 

そうだ、ブラックマーケットを襲おう(某アビドスオオカミ並感)。

 

はっきり言って、あっこは何をしても許される場所(違います)。ならば、あそこから色んな物品を根こそぎ奪い、別のブラックマーケットで売り払って金を得れば何も問題ないようじゃがの〜。

 

ついでにそこに居る奴らもボコして矯正局に叩き込めば、働いている後輩達も仕事になるだろう。こんな一石二鳥なプランを思いつくとか、やりますねぇ!

 

そうして俺が発案した悪党強奪プランを続けて数ヶ月。裏の世界で俺は夜廻(ヨマワリ)だの正義(エゴイスト)だの呼ばれる様になり、挙句の果てには俺を無法者(アウトレイジ)の王だとか崇める集団も現れ始めた。

 

だがそんな混沌とした日々は、唐突に終わりを迎えた。

無能だと思っていた連邦生徒会が、重い腰を上げて俺という害虫の処理にやって来た。

SRTとヴァルキューレの混成部隊。それからゲヘナ・トリニティ・ミレニアムの3大学園の生徒から構成されたドリームチーム。その二つの戦力が俺という個人に差し向けられた。

 

まあ、うん。あれはちょっとヤバかったね。もし俺の功罪を天秤に掛けていなかったり、カンナ達ヴァルキューレの生徒達の申し出がなかったら、俺は両方の勢力を相手にするところだった。

 

で、この事態を引き起こした俺はというと、学園都市の浄化と犯罪者の減少及び確保に貢献したこと。反対に生存の為とはいえ物品の違法売買を行った等の罪を鑑みて、矯正局にてその身を拘束することになった。

 

加えて、俺が暴れたことでキヴォトスの犯罪率が以前より激減したことも考慮されたのか、ヴァルキューレ及び公安局に復学することを条件に、即刻釈放するよう連邦生徒会が取り決めた。

 

ありえない程温情な結果で終わったが、おそらくは全て、連邦生徒会長が仕組んだことだと俺は予想している。

何故なら、彼女からは誰かと似た苦労人の雰囲気と、俺がもたらす影響をどうにかコントロールしたいという思いが伝わってきたからだ。

 

まあ彼女が何を望むかはさておき、こうして俺は矯正局で今日まで暮らしていたのだが、ある日俺宛に一通の手紙が届いた。手紙の送り主は教授とだけ記載されており、このような内容だった。

 

『始めまして、無法者の化身よ。私は教授。顔を合わせられないのは残念だが、こちらもリスクを負いたくない為の策だ、許してくれ。

 

さて、私はこの手紙が届いてから数日以内に、矯正局で仕掛けを発動させ囚人達を解放する。もし君も逃げたいというのならば、共に逃げる手伝いをしよう。それに対する対価もいるが、君ならばすぐに用意できるだろう。

では当日、返答を楽しみにしているよ。

 

P.S.この手紙は読み終わると自動的に焼却される。気をつけてくれ。』

 

教授。恐らくニヤニヤ教授本人からだと推測した。彼女のことは局長時代から知っていた。武器の密輸元、取引されたクレジット、盗まれた物品……何故か足取りが掴めない事件には、おおよそ彼女が関わっているからだ。しかしそんな人物から接触してくるとは、たまげたなぁ。

 

だが、たまげている場合ではない。俺が脱走するのであれば、()()を裏切らなければいけない。

 

「先輩、やはりあなたは変わりませんね。例え公安局をやめても、その心は以前の局長のまま。それなら、何故帰ってこないのですか!!」

 

尾刃カンナ。俺の一個下のかわいい(他意はない)後輩だ。

本当は生活安全局志望だったらしいが、あの顔では無理だと判断されこっちに回されたらしい。

 

それを聞いて思わず、『ハッハッハッ、そんなことで夢が消えたのか。まあその般若みたいな顔じゃあ、犯人も脱兎の如く逃げていくだろうよ』とか煽ってしまい、暫くの間後ろから殺意を感じていたのが懐かしい。

 

 

 

だが、俺が公安局をやめて矯正局に入ってから、彼女は毎日必ず俺に面会しに足を運んでいる。

 

一度、もう来なくていいぞと伝えたが、『先輩が戻ってくるまで会いに来ますから』とか何とか言って現在に至る。

一体社畜時代の俺を見て何を学んだのだろうか。こんな情けない者に何を求めているのだろうか(クソボケ)。

 

それはさておき、彼女に中間管理職的立場を与えてしまったことに罪悪感がないかと言われると、そうでもない。彼女が現在の公安局長であることを考えれば、俺を連れ戻したいのはよく分かる。

 

だが俺は脱サラしたんだその手には乗らん!

 

「いや、まあ、うん。取り敢えず、また明日話そう。もしかしたら意見が変わるかもしれんからさ。ね?」

 

意訳:はよ帰れ。そう言ったのが伝わったのか、カンナはそれ以上何も言わず速やかに帰っていった。

まあ、これが最後かもしれがね。へへへ。

    

 

◆◆◆

 

 

とまあ、一人語りの長い回想になったが、現在に戻ろう。

俺は再び犯罪者に戻ることを選んだ。申し訳ないが、社畜はNG。ワイに2回目やれるわけないんだって、それ言われてるから。

 

「久しぶりのシャバの空気なわけだが、一先ずはこの場を離れよう。代価はその後聞かせてもらおうか、教授?」

 

俺は近くに寄ってきたドローンに話し掛ける。何も頭が可笑しくなったんじゃない。これが教授の目であり手足だ。今も七囚人達に別個で指示しているんだろう。

実際に話し掛けると、ドローンから音が流れる。

 

『それで構わない。何、これでも君には期待しているんだ。長い間矯正局にいて腕も鈍っているだろう?彼女達で肩慣らしをするといい』

 

本当にリアルタイムで見ているらしい教授ドローンは、俺の後ろにアームを指す。それに合わせて後ろを向くと、2人の生活安全局局員が立っていた。

 

「戻ってください、先輩!まさか逃げるわけじゃない……です、よね?」

「あー、大先輩が相手?だったら、私とキリノじゃ止められないかもね〜。でも、わざわざ見逃すわけにはいかないね」

 

「キリノ、フブキ……」

 

逃げればいいかと思っていたが、後輩がいる手前逃げるわけにはいかんね。

目撃者は消す必要がある。

 

「俺にお前達を傷つける気はない。だが、弱さは命取りになる。先立として、軽く稽古をつけてやろう」

 

頼むから早く逃げてくれないかなーと思いながらも、戦いのゴングは鳴り響いた。

 




現喰(げんくい)ヨルム。年齢:18歳。元ヴァルキューレ警察学校、公安局所属。現在は自主退学した為に生徒ではない。

かつてはヴァルキューレの象徴そのもの、キヴォトス随一の正義として、公安局局長の職務につく。だがある時を境に局長の座を退き、ヴァルキューレを自主退学。その姿を完全に消してしまった。

それから数ヶ月後。彼はブラックマーケットを襲撃し、違法行為に手を染めた者を粛清する存在へと変わり果てていた。
しかし、彼はその圧倒的な強さとその気高きカリスマ性から、ある二つ名で呼ばれるようになった。

それこそが、無法者(アウトレイジ)の王、追放(エグザイル)のヨルムである。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。