原神×ウルトラマン ウルトラコクセイ&ウルトラカンウ 作:いぼんこ1234
閃光が消える。
熱線が通り過ぎる。
そこにはもう何も残っていなかった。
彼女達が存在した痕跡すら。
白銀の巨人は動きを止めた。
信じられなかった。
ほんの数分前まで。
あそこにいた。
戦っていた。
人々を守ろうとしていた。
そして。
死んだ。
親子を守るために。
二人は死んだ。
「――――ッ!!」
声にならない叫びが漏れる。
胸の奥が焼ける。
怒りだった。
悲しみだった。
悔しさだった。
次の瞬間。
白銀の巨人は飛び出した。
「シュワァァァッ!!」
轟音。
拳。
怪物の顔面へ叩き込まれる。
怪物の頭が大きく跳ね上がる。
さらに。
もう一撃。
「ハァッ!」
轟音。
海面が割れる。
怪物の巨体が吹き飛んだ。
璃月港が揺れる。
兵士達が息を呑む。
今までとは違った。
怒りだった。
白銀の巨人は止まらない。
飛び上がる。
蹴り。
肘打ち。
拳。
轟音。
轟音。
轟音。
怪物が押される。
後退する。
初めてだった。
あの怪物が。
明確に追い詰められている。
ピコン!
ピコン!
ピコン!
胸の宝珠が激しく点滅する。
だが。
白銀の巨人は気にしない。
もう止まれない。
止まるわけにはいかない。
彼女達が命を懸けて守った人々がいる。
だから。
終わらせる。
ここで。
必ず。
怪物が熱線を放つ。
蒼白い閃光。
白銀の巨人は正面から突っ込んだ。
「ハァァッ!!」
熱線を掻き分ける。
白銀の装甲が焼ける。
金色の火花が散る。
それでも止まらない。
拳が怪物の胸へ突き刺さる。
轟音。
怪物が悲鳴を上げた。
初めてだった。
明確な悲鳴。
明確なダメージ。
兵士達の顔が変わる。
「押してる……!」
「勝てる……!」
「やれるぞ……!」
誰かが呟く。
希望だった。
絶望しか無かった戦場に現れた。
最後の希望だった。
しかし。
ピコン!
ピコン!
ピコン!
ピコン!
胸の宝珠の点滅が速くなる。
赤い光が激しく明滅する。
白銀の巨人の呼吸も荒くなる。
肩で息をする。
動きが鈍る。
それでも。
拳を振るう。
怪物へ向かう。
終わらせるために。
◇
怪物も理解していた。
このままでは負ける。
だから。
逃げた。
突然だった。
怪物が大きく後退する。
白銀の巨人が追う。
だが。
それが罠だった。
怪物の尾が唸りを上げる。
轟音。
「ッ!?」
白銀の巨人の身体が吹き飛んだ。
海面へ叩き付けられる。
巨大な水柱が立ち上がる。
怪物が飛び掛かる。
爪。
牙。
尾。
猛攻。
白銀の巨人は防ぐ。
反撃する。
だが。
遅い。
先程までの勢いが無い。
ピコン!
ピコン!
ピコン!
ピコン!
宝珠が鳴り続ける。
怪物の爪が肩を裂く。
「ジュワァッ!」
さらに尾が叩き付けられる。
轟音。
港が揺れる。
白銀の巨人が転がる。
立ち上がる。
また殴られる。
吹き飛ぶ。
それでも立ち上がる。
ピコン!
ピコン!
ピコン!
ピコン!
宝珠の点滅はさらに速くなる。
怪物が咆哮した。
蒼白い熱線が口元へ集まる。
白銀の巨人は構える。
もう避けられない。
◇
轟音。
閃光。
熱線が直撃した。
「ジュワァァァッ!!」
苦痛の叫びが璃月へ響き渡る。
白銀の装甲が砕ける。
金色の光が散る。
熱線は止まらない。
身体を焼く。
命を削る。
それでも。
白銀の巨人は倒れない。
膝をつきながら。
歯を食いしばるように。
耐える。
だが。
限界だった。
ピコン!
ピコン!
ピコン!
ピコン!
ピコン!
赤い光が激しく明滅する。
そして。
ピーーーッ……
音が変わった。
赤い光が消える。
胸の宝珠が黒く沈む。
白銀の巨人の身体から力が抜けた。
膝が崩れる。
腕が落ちる。
立てない。
怪物がゆっくり近付いてくる。
白銀の巨人は見上げる。
もう動かない身体で。
ただ。
怪物を睨む。
怪物が咆哮した。
勝利を確信した咆哮だった。
次の瞬間。
巨大な尾が振り抜かれる。
轟音。
白銀の巨人の身体が吹き飛ぶ。
海へ落ちる。
巨大な水柱が立ち上がった。
そして。
そのまま。
動かなかった。
璃月港に。
静寂が訪れた。
◇
「起きなさい。」
穏やかな声だった。
暖かな風が吹く。
どこまでも続く琥珀色の花畑。
夕暮れ色の空。
静かな世界。
その花畑の中で、白銀の戦士は二人を見下ろしていた。
「起きなさい。刻晴。甘雨。」
風が吹く。
花々が揺れる。
やがて。
刻晴の指先が僅かに動いた。
続いて甘雨も。
ゆっくりと目を開く。
最初に視界へ映ったのは、夕暮れの空ではなかった。
白銀の戦士だった。
刻晴はしばらく瞬きを繰り返す。
そして目の前の人物を認識した。
「……あなた。」
璃月港で怪物と戦っていた戦士。
最後まで戦い続けた存在。
白銀の戦士は静かに二人を見つめていた。
刻晴はゆっくりと身体を起こす。
痛みは無い。
疲労も無い。
だが最後の記憶だけは鮮明だった。
蒼白い熱線。
閃光。
そして消滅。
「そう。死んだのね。」
隣では甘雨も静かに起き上がっていた。
「刻晴さん……。」
甘雨も周囲を見渡す。
琥珀色の花畑。
夕暮れの空。
暖かな風。
どこにも戦場の気配は無い。
やがて白銀の戦士が口を開いた。
「……ごめん。君達を守れなかった。ベムラーも倒せなかった。」
声は静かだった。
だが、その言葉には強い後悔が滲んでいた。
刻晴はしばらく黙る。
そして小さくため息を吐いた。
「変な人ね。私達を殺したのはあなたじゃないでしょう?」
白銀の戦士は何も言わない。
刻晴は肩を竦めた。
「それに、あなたがいなかったら璃月港はもっと酷い事になっていたわ。あの親子も。大勢の人達も。」
甘雨も静かに頷く。
「はい。私もそう思います。」
白銀の戦士は俯いたままだった。
風が吹く。
花畑が波のように揺れる。
やがて。
白銀の戦士が小さく呟いた。
「聞いてもいいかな。」
「何?」
刻晴が首を傾げる。
白銀の戦士は二人を見る。
真っ直ぐに。
「どうして君たちは命を懸けてまで他人を助けたの?」
静寂が訪れた。
刻晴は少し考える。
そして盛大にため息を吐いた。
「そんなの分からないわよ。
強いて言えば放っておけなかっただけ。」
夕暮れの風が頬を撫でる。
「助けられるかもしれない人がいて。助けられるかもしれない状況だった。それだけ。」
刻晴は空を見上げた。
「でも…私の人生、こんな終わり方だなんて。」
少しだけ悔しそうに笑う。
「やりたい事も。やるべき事も。まだ山ほどあったのに。」
その言葉には、隠し切れない未練があった。
白銀の戦士は黙って聞いている。
そして今度は甘雨へ視線を向けた。
「君は?」
甘雨は少し考えた。
風だけが吹いている。
甘雨は自分の手を見る。
そして小さく笑った。
「私は……。仕方がありません。怪獣災害でしたし。私達は最善を尽くしました。」
刻晴が横を見る。
それは甘雨らしい答えだった。
だが白銀の戦士は何も言わない。
ただ待つ。
そして。
長い沈黙の後。
甘雨が小さく呟いた。
「ですが……。」
声が少しだけ弱くなる。
「三千年以上生きてきましたが。こんな終わり方では少し悔しいですね。」
微笑む。
だが、その微笑みは少し寂しかった。
「まだ璃月も見ていたかったですし。皆さんの未来も。
もう少しだけ見ていたかったです。」
そして。
少しだけ視線を落とす。
「それに。刻晴さんとも――」
刻晴が目を瞬く。
「え?」
甘雨ははっとしたように顔を上げた。
「いえ。」
刻晴はじっと甘雨を見る。
甘雨は静かに視線を逸らした。
夕暮れの風が吹く。
琥珀色の花々が揺れる。
白銀の戦士はそんな二人を静かに見つめていた。
そして初めて。
ほんの少しだけ表情を和らげた。
夕暮れの風が吹く。
琥珀色の花々が揺れる。
しばらくの沈黙の後。
刻晴が白銀の戦士を見る。
「あなた、一体何者なの?」
「私はルミネ。ただの旅人だよ。」
そして。
夕暮れの空を見上げる。
「もっとも。私の旅もここで終わりみたいだけど。」
その言葉に。
刻晴と甘雨は顔を見合わせた。
不思議だった。
その口調には恐怖も未練も無い。
ただ。
長い旅を終えた者の静けさだけがあった。
風が吹く。
花畑が揺れる。
ルミネは二人を見る。
「お願いがあるんだ。」
「お願い?」
刻晴が首を傾げる。
ルミネは頷いた。
「私の旅を引き継いでほしい。」
沈黙。
刻晴が目を瞬く。
甘雨も言葉を失った。
「ちょっと待って。」
刻晴が思わず言う。
「話が飛びすぎてるわ。」
ルミネは小さく笑った。
「そうかも。」
そして胸へ手を当てる。
光を失ったはずの宝珠。
だが。
その奥で。
微かな金色の光が揺れていた。
刻晴の表情が変わる。
甘雨も息を呑む。
「私は色んな世界を旅していた。」
ルミネは静かに語り始める。
「色んな星を見た。色んな人と出会った。」
風が花々を揺らす。
「楽しいこともあった。辛いこともあった。」
「でも。」
少しだけ寂しそうに笑う。
「結局、旅の終わりには辿り着けなかった。」
夕暮れの空を見上げる。
その瞳は。
ずっと遠くを見ていた。
「だから。」
ルミネは二人へ視線を戻した。
「君達に託したい。」
刻晴は眉をひそめる。
「託すって何を?」
ルミネは答える。
「全部。」
その瞬間。
金色の光が強く輝いた。
琥珀色の花園が眩く照らされる。
刻晴が目を見開く。
甘雨も立ち上がった。
ルミネの身体から。
無数の光の粒が零れ落ちていく。
まるで身体そのものが光へ変わり始めているようだった。
「なに……これ。」
刻晴が呟く。
ルミネは穏やかだった。
まるで最初から知っていたかのように。
「私の命。私の力。私の旅。」
ルミネは二人を真っ直ぐ見つめる。
「全部君達に託す。」
甘雨の顔色が変わる。
「待ってください。そんな事をしたら――」
ルミネは静かに頷いた。
「うん。私は消える。」
夕暮れの風が吹く。
花畑が大きく揺れた。
刻晴が一歩前へ出る。
「馬鹿じゃないの?」
ルミネは少し笑った。
「よく言われる。」
「笑い事じゃないわよ!」
刻晴の声が花園へ響く。
だが。
ルミネは怒らない。
ただ。
二人を真っ直ぐ見ていた。
「君達なら続きを見られる。」
「璃月の未来も。人々の未来も。私が見られなかった景色も。」
ルミネは小さく微笑む。
「だからお願い。私の旅を引き継いで。」
金色の光がさらに強く輝いた。
夕暮れの花園を包み込みながら。
二人へ向かってゆっくりと流れ始める。
ウルトラウーマンルミネ
様々な次元を旅していた旅人。怪獣ベムラーを追ってテイワットの璃月に降り立つも、その地でベムラーに敗れ、瀕死の重症を負う。その目の前で親子を守り散っていった刻晴と甘雨に感銘を受け、その命と力を譲り渡し、昇天した。