原神×ウルトラマン ウルトラコクセイ&ウルトラカンウ 作:いぼんこ1234
風が吹いていた。
刻晴が目を開く。
次の瞬間。
猛烈な風圧が顔を叩いた。
「え?」
眼下には璃月港。
海。
そして遥か下の大地。
「えぇぇぇぇ!?」
刻晴は思わず叫んだ。
慌てて手足を動かす。
すると身体がさらに加速する。
「ちょっ、待ちなさい!」
当然止まらない。
少し離れた場所。
甘雨も同じように空へ放り出されていた。
「きゃっ――!」
三千年以上生きてきたが。
流石に宙を舞った経験はない。
「刻晴さん!」
「甘雨!」
二人は空中で顔を見合わせる。
だが。
次の瞬間。
風に流される。
「どうやって止まるのよこれ!?」
「私に聞かないでください!」
次の瞬間だった。
ドォォォン!!
二つの巨大な影が璃月港郊外へ激突した。
大地が揺れる。
土煙が舞い上がる。
刻晴は咳き込みながら立ち上がった。
「げほっ……。」
そして。
違和感に気付く。
視界が高い。
異常なほど高い。
見慣れた街道。
見慣れた木々。
何もかもが小さい。
「……え?」
刻晴は自分の手を見る。
白銀の腕。
紫のライン。
そして遠くの建物を見る。
沈黙。
「ちょっと待ちなさい。」
もう一度。
自分の手を見る。
建物を見る。
自分の足を見る。
建物を見る。
「私、大きくなってない?」
璃月港の建物は決して小さくない。
だが。
今の刻晴から見れば違った。
見下ろしている。
そう表現した方が正しい。
少し離れた場所。
甘雨も立ち上がっていた。
そして。
同じように周囲を見渡す。
白銀と青の身体。
胸の青い宝珠。
長く伸びた髪。
そして。
建物よりも遥かに高い位置にある自分の視線。
「……。」
数秒の沈黙。
「流石に。」
甘雨は小さく呟く。
「ここまで大きくなった経験はありません。」
「ある人がいたら会ってみたいわよ!」
その時だった。
遠くから悲鳴が聞こえた。
二人は同時に顔を上げる。
璃月港だった。
煙が上がっている。
建物が崩れる音。
そして。
怪獣の咆哮。
「っ!」
刻晴の表情が変わる。
「考えてる暇は無いわ!」
刻晴は石畳を強く蹴った。
そのつもりだった。
ところが。
踏み込んだ瞬間、足元の石畳が爆発したように砕け散り、その反動で身体が弾丸のような勢いで真上へ射出される。
まるで地面を蹴った力が異常な倍率で増幅されたかのようだった。
「うわっ!?」
耳元で風が悲鳴を上げる。
景色が一瞬で縮み、街並みも山並みも足元へ流れ去った。
気付けば数百メートル上空。
刻晴は慌てて手足を動かし、姿勢を立て直そうとする。
「またぁ!?」
甘雨も後を追う。
こちらも刻晴と同じように地面を蹴って駆け出そうとしただけだった。
しかし。
踏み込んだ瞬間、足元の地面が爆ぜるように陥没し、身体が猛烈な加速に押し上げられて青空へ向かって一直線に射出される。
刻晴とまったく同じ現象だった。
「きゃっ!?」
風圧で髪が激しくなびく。
眼下の景色がみるみる遠ざかり、気付けば刻晴と同じ高度まで達していた。
「刻晴さん!」
二人は必死にバランスを取りながら、不格好な軌道で空を飛び、璃月港へ向かう。
◇
怪獣の姿が目に入った。
港湾地区で暴れている。
巨大な腕が振るわれるたびに建物が紙細工のように砕け、木材や石材が宙へ舞う。
悲鳴を上げながら人々が路地へ逃げ込み、港には混乱が広がっていた。
「急ぐわよ!」
刻晴は身体を前へ傾ける。
すると空気を切り裂くように速度が跳ね上がった。
だが次の瞬間。
そのまま地面へ降りようとして――
「え?」
止まれなかった。
急速に広場が迫る。
石畳の模様が見えたと思った瞬間にはもう目の前だった。
ドォォォォン!!
刻晴の身体が隕石のような勢いで港の広場へ激突する。
衝撃波が周囲へ広がり、石畳が何十枚も吹き飛んだ。
地面は大きく陥没し、砕けた石片が雨のように降り注ぐ。
巨大な土煙が噴き上がった。
「痛ったぁぁぁ!」
少し離れた場所。
甘雨も着地を試みる。
こちらは多少ましだった。
それでも。
やはり止まりきれない。
地面を滑るように接地した直後、勢いを殺しきれず一直線に突っ込む。
ドガァッ!!
倉庫の壁へ激突した。
分厚い石壁が派手な音を立てて崩れ、木箱や資材が周囲へ飛び散る。
「うぅ……。」
瓦礫を払いながら立ち上がる。
その時だった。
怪獣の咆哮が響く。
空気が震え、周囲の窓ガラスがびりびりと鳴る。
二人は顔を上げる。
巨大な怪獣が。
瓦礫を踏み砕きながら、ゆっくりとこちらへ視線を向けていた。
沈黙。
刻晴は拳を握る。
甘雨も身構える。
自分達が何者になったのか。
なぜこんな姿になったのか。
まだ何も分からない。
だが。
一つだけ分かることがあった。
目の前の怪獣を止めなければ。
璃月港は守れない。
刻晴は大きく息を吸う。
そして。
怪獣を真っ直ぐ見据えた。
「なんだかよく分からないけど。」
拳を握る。
「とにかく行くわよ、甘雨!」
甘雨も頷いた。
「ええ。刻晴さん!」
怪獣の咆哮が響く。
刻晴と甘雨は同時に怪獣へ向かって駆け出した。
先に飛び出したのは刻晴だった。
「はぁぁぁっ!」
勢いのまま拳を振り抜く。
だが。
力加減が分からない。
拳は怪獣の肩を掠めるだけだった。
その代わり。
衝撃波が背後の倉庫群を吹き飛ばした。
ドォォォォン!!
建物が崩れる。
木材が宙を舞う。
刻晴は青ざめた。
「そっちじゃないのよ!?」
怪獣は平然としている。
むしろ。
少し怒ったように咆哮した。
「まずいです!」
甘雨が飛び込む。
反射的に両腕を前へ突き出した。
青い光が集まる。
無数の光弾。
ドドドドドドドッ!!
怪獣へ降り注ぐ。
数発は命中した。
だが。
残りは盛大に逸れた。
港の空き倉庫。
荷揚げ用のクレーン。
人気の無い広場。
あちこちで爆発が起きる。
「そんな……!」
甘雨が目を見開く。
刻晴が叫んだ。
「落ち込んでる場合じゃないわ!」
◇
怪獣が突進する。
二人は慌てて散開した。
怪獣の巨体が港湾施設へ激突する。
轟音。
瓦礫。
悲鳴。
刻晴は歯を食いしばった。
「止まりなさい!」
再び飛び込む。
今度は蹴り。
だが。
力が入りすぎた。
怪獣を飛び越えた。
「えっ?」
次の瞬間。
背後の倉庫街へ突っ込む。
ドガァァァン!!
壁が吹き飛ぶ。
「痛っ!」
甘雨も続く。
刻晴と違い、飛行そのものは少しずつ安定している。
だが。
戦闘は別だった。
怪獣の腕を避ける。
避けた先で。
勢い余って建物へ激突する。
「きゃっ!」
瓦礫が降り注ぐ。
◇
怪獣は容赦しない。
巨大な尾が振り抜かれる。
ドォォォォン!!
刻晴が吹き飛ぶ。
石畳を削りながら転がった。
「うぅ……。」
立ち上がる。
だが。
その隙に怪獣が迫る。
甘雨が飛び込んだ。
咄嗟に怪獣を押し返そうとする。
その瞬間。
胸の宝珠が輝いた。
青い光。
巨大な衝撃波。
怪獣は数歩後退する。
だが。
甘雨はふらついた。
「……?」
身体が重い。
息が少し苦しい。
まるで全力疾走を続けた後のようだった。
◇
怪獣が再び咆哮する。
刻晴も立ち上がる。
だが。
こちらも妙だった。
身体が重い。
肩で息をする。
戦闘は数分も経っていないはずなのに。
異常な疲労感だった。
その時。
ピコン――
聞いたことのない音が鳴った。
刻晴は顔を上げる。
胸の宝珠。
青かった光が。
赤く点滅していた。
「え……?」
少し離れた場所。
甘雨の胸でも。
同じように赤い光が点滅している。
ピコン――
ピコン――
一定の間隔で鳴り続ける。
甘雨は胸を押さえた。
「これは……。」
呼吸が浅い。
力が抜けていく。
刻晴も同じだった。
さっきまで自由に動いていた身体が。
急に鉛のように重くなる。
「なによ……これ。」
怪獣がゆっくりと立ち上がる。
大したダメージは受けていない。
一方で。
二人だけが消耗していた。
ピコン――
ピコン――
赤い光が不気味に明滅する。
意味は分からない。
だが。
絶対に良くない。
それだけは本能的に理解できた。
怪獣が咆哮する。
次の瞬間。
巨大な尾が唸りを上げた。
「まず――」
避けられない。
ドォォォォン!!
怪獣の尾が二人まとめて薙ぎ払った。
「きゃあぁぁぁっ!?」
「きゃっ――!」
二人の身体が同時に宙を舞う。
建物を巻き込みながら吹き飛び。
石畳を削り。
瓦礫の中へ叩き付けられた。
轟音。
土煙。
崩れ落ちる建物。
そして。
ピコン――
ピコン――
瓦礫の中で。
二つの赤い光だけが明滅していた。
怪獣の咆哮が。
璃月港へ響き渡る。
ピコン――
ピコン――
赤い光が明滅する。
瓦礫の中。
甘雨はゆっくりと身体を起こした。
「っ……。」
胸が苦しい。
身体が重い。
呼吸をするだけで力が抜けていく。
少し離れた場所では。
刻晴も瓦礫を押し退けながら立ち上がっていた。
怪獣は無傷に近い。
一方。
自分達は満身創痍だった。
怪獣が咆哮する。
その声だけで大気が震える。
そして。
再び二人へ向かって歩き始めた。
「こんなのどうしろっていうのよ……。」
刻晴は歯を食いしばる。
飛び方も。
止まり方も。
光の使い方も。
何も分からない。
怪獣はまだ余裕がある。
このままでは勝てない。
その時だった。
甘雨はふと自分の手を見る。
白銀の指先。
その奥に。
慣れ親しんだ感覚が残っていることに気付いた。
「……そうです。」
甘雨は静かに呟く。
巨人の力は分からない。
だが。
自分が三千年以上使い続けてきた力なら分かる。
怪獣が咆哮する。
甘雨は右手を掲げた。
青い光が集まる。
空気が震える。
光が形を成していく。
やがて。
巨大な弓となった。
「これは……。」
甘雨自身も目を見開く。
だが。
握った瞬間に理解した。
使える。
左手を引く。
光が集まり矢となる。
さらに。
冷気が渦を巻いた。
氷元素。
何千年も使い続けてきた自分の力。
「はぁっ!」
弦を放つ。
ドォォォォン!!
巨大な氷の矢が怪獣へ突き刺さる。
氷が爆発する。
怪獣が初めてよろめいた。
「効いた……!?」
刻晴が目を見開く。
甘雨は振り返る。
「刻晴さん!この巨人の力ではなく、私達が元々持っていた力を使いましょう!」
刻晴は一瞬固まる。
そして。
すぐに理解した。
「なるほどね!」
右手を掲げる。
頭に浮かぶのは。
長年使い続けてきた剣。
その瞬間。
紫色の光が集まった。
雷光が奔る。
一本の紫色の光剣が姿を現した。
形は刻晴が使い慣れた片手剣そのものだった。
「出来た!」
思わず笑みが浮かぶ。
握り慣れた感触。
それは間違いなく剣だった。
怪獣が突進する。
刻晴は正面から飛び込んだ。
「はぁぁっ!」
紫の光剣が閃く。
雷元素が爆ぜる。
斬撃。
雷撃。
爆発。
怪獣の身体が大きく揺れた。
今までとは違う。
確かな手応えだった。
「これなら戦える!」
甘雨も空へ飛ぶ。
今度は先程よりずっと安定していた。
光の弓を構える。
氷元素が集まる。
無数の氷の矢が空を埋め尽くした。
「行きます!」
ドドドドドドドッ!!
氷雨が怪獣へ降り注ぐ。
怪獣の動きが鈍る。
そこへ。
刻晴が飛び込む。
雷光。
斬撃。
そして。
巨大な雷が怪獣の身体を貫いた。
怪獣が苦痛の咆哮を上げる。
今までとは違う。
確実に効いている。
刻晴は笑った。
「最初からこうすれば良かったのよ!」
だが。
ピコン――
ピコン――
赤い光は鳴り続けていた。
甘雨は胸を押さえる。
苦しい。
先程よりも。
確実に。
刻晴も肩で息をしていた。
力を使う度に。
身体が重くなる。
それでも。
怪獣もまた傷付いている。
勝機はあった。
怪獣が怒りの咆哮を上げる。
刻晴は光剣を構えた。
甘雨も弓を引く。
「甘雨!」
「はい!」
二人は再び怪獣へ向かって駆け出した。
怪獣もまた咆哮を上げる。
傷付いている。
だが。
まだ倒れる気配は無い。
◇
甘雨は空へ舞い上がった。
光の弓を構える。
狙うのは怪獣の身体。
「はぁっ!」
弦を放つ。
氷元素を纏った巨大な矢が怪獣へ突き刺さる。
ドォォォォン!!
冷気が爆発する。
怪獣の身体が白く凍り付き始める。
だが。
まだ動ける。
怪獣は咆哮しながら甘雨へ腕を振り上げた。
その瞬間。
刻晴が飛び込む。
「よそ見してるんじゃないわよ!」
雷元素を纏った斬撃。
ドォォォォン!!
雷光が怪獣の身体を駆け抜けた。
次の瞬間。
氷と雷が激しく反応する。
超伝導。
轟音と共に怪獣の身体から氷片が吹き飛んだ。
怪獣が苦しそうな声を上げる。
今までより明らかに効いている。
甘雨の氷元素によって冷やされた身体。
そこへ刻晴の雷元素が流れ込んだことで超伝導反応が発生したのだ。
怪獣の身体を覆っていた硬い外殻が砕け散る。
防御が崩れる。
「効いてる!」
刻晴は地面を蹴った。
そして。
怪獣の腹部へ全力の蹴りを叩き込む。
ドォォォォン!!
今度は違った。
明らかに。
怪獣の身体が大きく沈み込む。
超伝導によって物理耐性を削られた怪獣へ。
刻晴の蹴りはまともに突き刺さった。
怪獣の巨体が浮き上がる。
そして。
海へ向かって吹き飛んだ。
巨大な水柱。
轟音。
怪獣は海の中へ落下する。
◇
海面が荒れ狂う。
怪獣が立ち上がろうとする。
だが。
その身体は既に大量の海水を浴びていた。
すなわち怪獣には大量の水元素が付着していた。
甘雨はそれを見逃さなかった。
「刻晴さん。」
甘雨は静かに告げる。
「まだです。」
両手を掲げる。
膨大な氷元素が集まった。
空気が震える。
空が青白く輝く。
巨大な氷の宝珠が空へ昇っていく。
怪獣が海から起き上がろうとした。
だが。
遅い。
甘雨は静かに告げる。
「琉璃のように落ちなさい。」
元素爆発――
降衆天華。
巨大な氷の宝珠が空へ留まる。
次の瞬間。
無数の氷柱が雨のように降り注いだ。
ドドドドドドドドドッ!!
氷。
氷。
氷。
怪獣へ降り注ぐ絶え間ない氷の嵐。
海水を纏った怪獣の身体は瞬く間に凍り付く。
凍結反応。
脚。
腕。
胴体。
そして全身。
怪獣は海ごと巨大な氷像へ変わった。
身動き一つ取れない。
◇
「今です!」
甘雨が叫ぶ。
刻晴は頷いた。
身体は重い。
呼吸も苦しい。
だが。
ここで決める。
刻晴は光剣を構えた。
雷元素が収束する。
周囲に紫電が走る。
怪獣を中心に。
無数の雷光が踊り始めた。
「剣光よ、世の乱れを斬り尽くせ!」
元素爆発――
天街巡遊。
次の瞬間。
刻晴の姿が消えた。
紫の閃光。
斬撃。
さらに斬撃。
そして斬撃。
無数の雷光が凍結した怪獣を切り裂いていく。
ドォォォォン!!
轟音。
海面が揺れる。
氷が砕ける。
雷が炸裂する。
そして。
海水を纏った怪獣の身体には。
次々と感電反応が発生していた。
紫電が全身を駆け巡る。
爆発。
痙攣。
爆発。
痙攣。
雷元素と水元素が激しく反応し続ける。
凍結によって動けない怪獣は回避することすら出来ない。
ただ一方的に。
怪獣は感電と斬撃のダメージを浴び続けていた。
ピコン――
ピコン――
二人の胸では。
赤く点滅する宝珠から警告音が鳴り続けている。
だが。
今は止まれない。
この一撃で。
必ず終わらせる。
ドォォォォン!!
轟音が海を揺らす。
雷が炸裂する。
氷が砕け散る。
感電反応。
斬撃。
感電反応。
斬撃。
刻晴と甘雨の猛攻は止まらなかった。
凍結した怪獣は回避することすら出来ない。
ただ一方的に。
雷と氷の嵐を浴び続ける。
やがて。
怪獣の身体に無数の亀裂が走った。
外殻は砕け。
全身は傷だらけ。
明らかに大ダメージを受けていた。
「やった……!」
刻晴が息を切らしながら叫ぶ。
だが。
次の瞬間だった。
怪獣が咆哮する。
凍結した氷を砕きながら。
海面を割りながら。
ゆっくりと立ち上がった。
「そんな……。」
甘雨が呟く。
まだ倒れない。
傷付いている。
だが。
まだ生きている。
◇
ピコン――
ピコン――
ピコン――
赤い光が先程よりも速く鳴る。
刻晴は息を呑んだ。
身体が重い。
いや。
重いなどというレベルではない。
立っているだけで精一杯だった。
甘雨も同じだった。
呼吸が苦しい。
視界が揺れる。
光の弓が消える。
刻晴の光剣も消滅した。
そして。
二人は同時に膝をつく。
「はぁっ……。」
「っ……。」
立ち上がれない。
身体から力が抜けていく。
胸の宝珠は。
激しく赤く点滅していた。
◇
怪獣が二人を見る。
そして。
怒りに満ちた咆哮を上げた。
今までの苦痛。
傷。
怒り。
全てをぶつけるように。
怪獣は二人へ向かって走り出す。
地面が揺れる。
海が震える。
刻晴は歯を食いしばった。
だが。
身体が動かない。
甘雨も弓を出そうとする。
しかし。
光は集まらない。
もう限界だった。
◇
怪獣の拳が振り下ろされる。
その瞬間。
琥珀色の光が二人を包んだ。
ガキィン!!
轟音。
衝撃。
だが。
二人には届かない。
巨大な琥珀色の防壁が。
怪獣の攻撃を受け止めていた。
「え……?」
刻晴が顔を上げる。
甘雨も目を見開く。
その時。
静かな男の声が響いた。
「天動万象。」
◇
空が輝く。
次の瞬間。
巨大な流星が降ってきた。
怪獣は咆哮する。
だが。
避けられない。
ドォォォォォォォォォォン!!
世界が揺れた。
海が割れる。
大地が震える。
流星は怪獣へ直撃した。
凄まじい岩元素が爆発する。
黄金色の光。
岩柱。
結晶。
そして。
怪獣の身体が琥珀色の岩に覆われていく。
脚。
腕。
胴体。
頭部。
全て。
怪獣は巨大な岩像となった。
完全に動きを止める。
◇
甘雨は震える声で呟いた。
「帝君……。」
目には涙が滲んでいた。
その光景を。
その力を。
見間違えるはずがなかった。
◇
その時だった。
二人の耳に。
先程別れたばかりの旅人の声が聞こえた気がした。
『今だよ。』
刻晴は顔を上げる。
甘雨も同時だった。
姿は見えない。
だが。
確かに聞こえた気がした。
ルミネの声だった。
◇
不思議だった。
次の瞬間。
二人は理解していた。
この身体の力を。
どう使えばいいのかを。
刻晴は立ち上がる。
甘雨も立ち上がる。
胸の宝珠は激しく鳴っている。
もう時間は無い。
これが最後だ。
二人は互いを見る。
そして頷いた。
同時に腕を十字に組む。
胸の宝珠が輝いた。
赤い光が。
最後の力を解き放つ。
「はぁぁぁぁぁぁっ!!」
「やぁぁぁぁぁぁっ!!」
二筋の光が放たれた。
紫と青。
二つの光線が重なる。
怪獣へ直撃する。
ドォォォォォォォォォォン!!
轟音。
閃光。
そして。
怪獣の身体が砕けた。
岩が割れる。
光が貫く。
怪獣は断末魔の咆哮を上げ。
次の瞬間。
爆散した。
◇
静寂。
海風だけが吹いている。
刻晴は小さく笑った。
「勝った……。」
甘雨も微笑む。
だが。
次の瞬間。
身体が光に包まれる。
胸の宝珠は既に光を失い始めていた。
エネルギーは完全に尽きていた。
「刻晴さん……。」
「甘雨……。」
二人の身体が崩れるように粒子へ変わる。
ゆっくりと。
空へ溶けていく。
璃月港を見下ろしながら。
そして。
最後に見えたのは。
歓声を上げる人々だった。
ウルトラコクセイ/ウルトラカンウ
ベムラーの攻撃で死亡した刻晴と甘雨がルミネにその命と力を半分ずつ譲り受け、ウルトラウーマンの力を得た姿。その一人当たりの力はルミネと比べ半分になっており、さらに本人達が力の使い方を理解していない事もあり、怪獣には苦戦を強いられるが、本人達が元々持っていた神の目の力と戦闘技能でカバーする。