「うん…今日はここまでだね…。先生、それとコハルちゃんも。手伝ってくれてありがとね」
そう言って、スッと立ち上がる少女。桃色の髪を団子状にまとめ、体操服を着たこの少女の名は聖園ミカ。かつてはトリニティ総合学園の生徒会”ティーパーティー”の一人と言う高い地位にいたが、とある騒動の末ティーパーティーから除名、一般の生徒としてボランティアへの従事を命じられている。
「いえ、私は大丈夫です! それよりもミカ様。これ、どうするのですか?」
そのミカの隣にいる少女…コハルが、ミカのすぐそばに置いてあった白い袋を指差す。
「これ…。うーん…まあ、もう使えないし、捨てるしかないよね。勿体ないけど」
「―――もう! あの人たち懲りずにまたミカ様にこんな事を…っ!」
その袋の中身…ボロボロの体操服を取り出しながら、ミカはため息を吐く。明らかに人為的にボロボロにされているその体操服に、コハルもご立腹だ。
「ミカ様! ここは一つガツンと言ってみるのはどうですか!?」
「ミカ様が友達とかの色々を思って我慢しているのは知っています。ですが、流石にこのしつこさはいきすぎです! 清廉潔白を信念とするトリニティ生がこのようにルールを乱して良い訳がありません!」
「それは……そうかもしれないけど…。でも、そんな力づくで解決しても意味がない様な…。そもそも恨まれるような悪い事をしたのは私だし…」
ヒートアップしていくコハルだが、それに反比例するかの如く冷静に呟くミカ。やがて二人の視線は傍にいた男の方へ向く。
「先生はどう思う? やっぱり少し注意した方がいいと思う?」
ミカの質問に先生と呼ばれた男は考え込む。コハルは視線で「うんと言って!」と訴えかけているが、少しして男は口を開いた。
「―――私が後でそれとなく注意してみる? ミカが直接言うのはまだ早い? …うん、分かった。先生がそう言うなら」
「先生なんで!? ルールを破っているのはあの人達だよ!?」
男の言葉にミカは素直に頷くが、コハルが納得がいかないとばかりに怒鳴る。
「ルールは確かに守るべき? だったら…っ! ―――ミカ様があの人達に迷惑をかけたのもまた事実? ルールで感情は抑えられない? そんなの、ルールを破っていい理由には」
「落ち着いてコハルちゃん。感情をもルールで縛ろうとしたら、少し前までアリウスを支配していたっていう人と一緒だよ。だからそれは駄目。絶対」
男の説得にも耳を貸そうとしないコハルだったが、更にミカからも
その日の夜。ミカは悶々とした様子でベッドで横になっていた。昼間のボランティア時の男とコハルとの会話の事を考えていたのだ。
ルールで感情を縛るのは良くない。勿論それはそうなのだが、ならば自分…聖園ミカの感情はどうすればいいのか? 当然だが、ミカとて悪口を言われたら悲しいし、イジメられたら怒りは湧くのだ。そして、いじめっ子たちとは違い、ミカにはそのルールを
とはいえ、この暴力と言う札を切るのは許されていない。ティーパーティーを除名されたのも凄く簡潔に言えばこの札を切ろうとしたからだ。ましてや、自分の感情の為に振るったとなれば、親友に、幼馴染に、コハルに、そして大好きな先生にも、今度こそ見放されるだろう。そんな事は耐えられない。
「力…。ルール…。うーん、難しいね…」
頭を押さえて考えこむミカだが、不意にスマホの画面が輝く。見ると一通のメールが届いていた。
「なんだろ…。………世界の…危機ぃ…? まーた胡散臭いメールが…」
明らかに白けた様子でメールを確認していくミカだが、それと同時に謎のプログラムとやらが勝手にダウンロードされている事に気づいた。
「プ…プログラム? アプリじゃなくて? えー…。悪魔召喚プログラム? 悪魔…
溜め息と共にそのプログラムとやらを消去しようとした、その時だった! 突然、強烈な
「な……あ、う、な、なに…これ……」
唐突な異変に、何とか傍に立てかけてあった銃を手にしたものの、そこでミカの意識は暗い闇に飲まれてしまうのだった…。
ブルアカでの”先生の発言を生徒に言わせる”方法は、小説では少し難しいですね…。