真・女神転生 聖園ミカの終末世界紀行   作:塞翁が馬

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”悪魔”とは

 シブヤの探索を続ける三人。しかし、情報の入りはあまり良くない。

 

 何故かはわからないが、明らかに住人に避けられているのだ。最初はよそ者だからかもと推察した三人だが、住人をよく観察していると、その誰もが主にミカに対して程度の差はあれ嫌悪の視線を向けている様なのだ。

 

「う…嫌な事を思い出す視線だ…。でも、私はここの人達には何もしてない筈なのに何で…?」

 

「ミカ。怒らないで聞いて欲しいんだが…。多分、お前が”悪魔”だからだと思う」

 

 悲しそうに言葉を漏らすミカに、中道は少し遠慮がちに…しかし、ハッキリと自分の考えを口にする。

 

「何で私が悪魔なの? どう見ても悪魔じゃないじゃん」

 

「見た目や種族の話じゃない。大破壊から三十年間、ここの住人たちは悪魔には力で搾取され、それに対抗する天使にも厳しい法を押し付けられ、それを守れないなら粛清されてきたのだろう。力でルールを押し付けてくる奴らなど種族に関係なく”悪魔”にしか見えん。救いを謳うメシア教の寄付が全く集まっていないのが、天使も悪魔とみられている何よりの証左だ」

 

 悲しげな顔から一転、不機嫌そうに頬を膨らませるミカに、中道はその理由を説明する。だが、それでも納得いかないのか、貴方の意見も聞かせて! とばかりに、法二に視線を送るミカ。

 

「僕は天使様の示す法と秩序は重んじるべきだと思います。ただ、怠惰で法を犯すのは論外ですが、家庭的…あるいは身体的、精神的に法を守るのが難しいという人々にまで押し付けるのは流石にどうか…とは思います。なので、そういう人達からは悪魔とみられるかもしれませんね…」

 

 しかし、法二からも返ってきたのは中道と似たような返答。申し訳なさそうに語る法二を見るに、天使様の前でいう事ではないかもしれないが…という心境がハッキリと感じられる。

 

「で、でも、し、シンジュク…? では受け入れて貰えてたよ? 町に入った直後もここまで露骨な視線は感じなかったし」

 

「あそこはオザワという”人の形をした悪魔”が牛耳っていたからな。オザワ以外なら何でもマシに見えるだろうし、そのオザワを倒したというのなら勇者、英雄扱いもされるだろう」

 

 それでも…と言った感じの一縷の望みをかけたミカの反論も、中道に容赦なく断じられてしまう。

 

「あ、あの…。少し宜しいですか…?」

 

 ムスッと不機嫌そうな顔をしているミカに掛かる声。振り返ると、メシア教徒と思しき少年が立っていた。

 

「もしかして、オザワを倒してシンジュクを開放した高位の天使様って貴女様の事でしょうか?」

 

「へ…? あ、うん、多分そうだと思うけど、何で知ってるの?」

 

 唐突な質問に少し戸惑いながらも返事をするミカ。そして、ミカの疑問に付いて来て…とばかりの目線を送りながら走り出す少年。

 

 そうして少年を追いかけた先には街頭テレビが置いてあり、ニュースらしきものが流されていた。

 

『………突如現れた高位の天使様により、新宿を支配していた男、オザワは倒されました。非道を尽くしたオザワから遂に新宿は解放されたのです。悪事は必ず裁かれます。そして、市民は善良で神を信じる限り、必ず救われるのです。皆さま、希望を失ってはいけません。この天使様を遣わされた神に感謝の祈りを………』

 

 テレビに映っているメシア教徒と思しき女性が、祈りの姿勢のまま綺麗な声で語り続けている。

 

「そうだ…。やはり、信じる人は救われるべきなんだ…。希望を捨ててはいけない…!」

 

 その内容に何やら感銘を受けているらしい法二。

 

「―――これだけ情報の取得が早いのなら、実際に手を下した力也の事も当然知っている筈。が、力也についての情報を流す気は無い様だな…」

 

 一方、中道は冷静にニュースの背景を推察している。

 

「な、なんだろう…。喜んでくれてる…んだよね? でも、このニュース…なんか……なんか…」

 

 そして、当事者であるミカもこのニュースに何か違和感を覚えている様だ。

 

「天使様! お願いがあります! どうか、メシア様をお助け下さい!!」

 

 そんな三人の思考を破るように、ここに三人を連れてきた少年が叫ぶと共に、ミカに向かって思い切り頭を下げた。

 

 

 

 

 

「愛子!!」

 

「間違いない…三流愛子さんだ…!」

 

「あの人が…ミナガレアイコ…」

 

 少年に連れられてきたとある一室。そこで、一人の少女…愛子が眠りについていた。

 

「愛子! 起きろ愛子!! ………どうしたんだ? なぜ起きない?」

 

 大声で呼びかけ、頬を軽く叩いたり体を揺さぶったりしてみる中道。しかし、愛子が起きる気配はない。

 

「死んでる…訳ではないですね。本当に深く眠っているだけ…。いつからこのような状態に?」

 

「少し前から…。他の人たちがどうやっても目を覚まさなくて…」

 

 愛子の呼吸を確認した後、改めて症状を少年に聞く法二。しかし、どうにも有益な情報は得られそうにない。

 

「た…助けて…」

 

 と、その時だった。なんと愛子が口を開いたのだ!

 

「助けて…中道……」

 

「愛子! 俺だ、中道だ! 聞こえるか!!」

 

 助けを呼ぶ愛子に大声で応える中道。しかし、愛子は助けを求め続けるのみで中道には反応しない。

 

「とにかく、一度サイコダイバーと名乗っていた彼の下に戻りましょう。彼ならもしかしたら何か解決策が浮かぶかもしれません」

 

 悲し気に愛子を見つめ続ける中道に、法二が提案する。少し間を置いてから、中道は一つ頷いた。

 

「こんなに感情をだしたナカミチを見るの初めてかも…。それだけ大事な人なんだね…」

 

 そんな中道を、ミカは驚きの表情と共に見守っていた。

 

 

 

 

 

 ターミナルの転送機能を使いシンジュクに戻ってきた三人。すぐさまサイコダイバーを探しにかかるが、程なくして初めて会った時とは違う酒場で見つかった。どうやら、大の酒好きの様だ。

 

「ふむ…。話を聞く限り、なにやら精神を侵されてい感じだな。よし、俺がその少女の精神の中に連れて行ってやる。その少女の場所まで案内してくれ!」

 

 中道達から説明を聞くやいなや、大張り切りで同道を申し出てくれたサイコダイバー。まさしく、ありがたい限りだ。

 

 だが、ここでスティーヴンが顔を出す。なにやらミカに伝えたい事が二つほどあるそうだ。

 

「まずあの超小型PCの充電だが…既に変換機自体は作成し今は充電中だ。とはいえ、急ごしらえなので充電率が悪く、電力を満タンにするには半日はかかるだろう。また、変換機自体もコードがむき出しで下手に使えば感電の危険もあるという未完成品だ。素人が使うにはまだまだ改良が必要だろうね」

 

「半日ぃ!? そんなにかかるの!? もっと何とかならない?」

 

「すまないが、今はこれが限界だ。効率を上げるにはもっと改良するしかない」

 

 不満げな声を上げるミカに、しかしスティーヴンは首を横に振る。こればかりは我慢するしかなさそうだ。

 

「そしてもう一つ…こちらが本題だ。少し電力が回復したので、電源を付け悪魔召喚プログラムを確認したのだが、信じられない事にプログラムの起動を試みた形跡があったのだ。電源を切っている時間帯に…だ。結局起動できなくて諦めた様だが…」

 

 淡々と語るスティーヴン。だが、この話に中道の表情が一気に険しくなる。

 

「ど、どういう事…?」

 

「つまり、何者かがこの超小型PCにハッキングをかけ、無理やり起動させようとしたという事だ。ミカさん、誰かその様な事をする(やから)の心当たりはあるかい?」

 

 いまいちピンと来てないミカに、スティーヴンが説明する。なにやら、かなり鬼気迫る表情だ。

 

「ハッキング…? えー……そ、そういえば、ミレニアムにそういうのが得意な子が居るって先生が言ってたような…。あ! と、いう事は先生やナギちゃん達が私を探してくれてるって事!? ミレニアムの子達にお願いして…。うー、そりゃ、私一応元首長だから、一日近く姿を見せなければ、騒ぎにはなるよね…。ごめんね、先生にナギちゃん、セイアちゃん…それに他の皆…コハルちゃんとかも探してくれてたら嬉しいな…」

 

 少し考えた後、申し訳なさそうに口を開くミカ。ただ、そうしながらも表情はそこはかとなく嬉しそうだ。言葉通りに、探してもらっているのが嬉しいのだろう。

 

「つまり、微かにしか残っていなかったであろう悪魔召喚プロブラムによる召喚の残滓(ざんし)を的確に解析し、この世界のミカさんの超小型PCを追跡したと…? 重ね重ね、信じられんほどの科学力だ…」

 

「スティーヴン、ちょっといいか…?」

 

 一方、このミカの独り言を聞いたスティーヴンは表情をより厳しくして考え込んでしまう。そんなスティーヴンに話しかける中道。そして、ミカに聞こえない様な小声で何やら話し合う二人なのだった。

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