真・女神転生 聖園ミカの終末世界紀行   作:塞翁が馬

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精神世界

「お…おお~…。ここが精神世界かぁ…」

 

 世界全体がオレンジ色に包まれているのを見回しながら、ミカが興味深そうに声を上げる。立っている筈の地面すら見えず、本当にオレンジ色一色…だったのだろう。本来は。

 

 だが、そのオレンジ色は全体的に暗い影を落としている。更に、何やら蜘蛛の糸…の様な物が周囲に張り巡らされており、そこはかとなく不気味な風景でもある。

 

 そう、今いる場所は愛子の精神世界だ。サイコダイバーの力を借りて精神の中へ入りこんだのだ。

 

「―――す、すまない…。俺はここで待たせてもらっても良いか? ここのもっと奥からどす黒い何かを感じる。正直、怖くて震えてるんだ…」

 

 だが、その連れてきてくれたサイコダイバーの足が止まってしまう。言葉通りに恐怖に震えている。

 

「その、どす黒い何かを何とかすれば、愛子は助かるんだな? ミカ、すまんが頼らせてくれ」

 

「オッケー! 何が来ても全部やっつけちゃうよ! 早くアイコちゃんを助けないと!」

 

「僕も微力ながらサポートさせて貰います!」

 

 ギブアップしたサイコダイバーをその場に待たせ、気合を入れて更に奥を目指す三人。特にミカのテンションが高く、銃を高々と掲げ意気揚々と進んでいく。どうやら、少し前の先生達が自分を探してくれている…という事実が、ミカの意気を高揚させている様だ。しかし…。

 

 

 

 

 

『助けてくれてありがとう中道。定めでは私はもう一度あなたに助けられる。そして一度は別れてしまう』

 

『夢の中に続いて、これで助けて貰ったのは二回目ですね。中道、本当にありがとう』

 

『中道! 貴方だけでも逃げて! 本当はずっと…ずっと一緒に居たかった。でも、このままでは二人とも死んでしまう! だから…っ!』

 

『貴女はメシアとしてこの世に生を受けたのです。その力は神より授けられし物。どうか、その力で罪なき人々をお助け下さい…』

 

『メシア…。違う。私が転生したのは中道に会うため。彼は…生きている! 待っていて中道、必ず…必ず会いに行くから!』

 

 

 

 

 

 流石に精神世界と言うだけあり、ところどころで愛子の記憶を垣間見てしまう場所がある。これらは、愛子の記憶の中でも特に強く残っている記憶なのだろう。

 

 最初の方こそその内容に感心していたミカだが、最後の方になると何故か顔を真っ赤にして俯いていた。

 

「ミカ? どうした?」

 

 ミカの異変に気付き、声を掛ける中道。しかし、俯くミカからの返事は無い。

 

「ミカ! 聞いてるか!?」

 

「わっ!? へ、あ、な、なになに? 何か呼んだ?」

 

 更に大声を出す中道に、ようやく驚き慌てて返事をするミカ。

 

「ミカ様、どこか調子が悪いのですか? でしたら少し休憩を…」

 

「だ、大丈夫! 大丈夫だよ! さあ、早く奥へ行こう!!」

 

 心配そうにする法二に、しかしミカは焦りながらも問題ない事を伝える。

 

(い、言えない…! 不可抗力とはいえ、ここまで他人の記憶を覗き見て、今更恥ずかしくなってきた何て言えないよぉ…! だって、これって…私に置き換えたら、先生に悪役である事を白状した時や、全部どうでもよくなって自棄になってたところ、サオリを恨んで追いかけまわしたところ、先生にお姫様って言われたところ…全部全部誰とも知らない他人に見られるって事だよね!? しかも、その時その時の私の心情も全部丸見え…。うわ、うわわわ…! は、恥ずかしすぎる…! その、なんかゴメン! アイコちゃん!!)

 

 心の中で愛子に謝罪してから、ミカは精神の更に奥へと進んでいく。

 

 

 

 

 

「誰だ! わたしの楽しい時間を邪魔する奴は!!」

 

 そして辿り着いた精神の最奥。そこには一人の女性が待ち構えていた。美しい顔は鬼の形相を呈し、女性らしい体つきながら、その手足は蜘蛛の手足のように細い。更に、部屋中が蜘蛛の糸で覆われている。まさしく、獲物を蜘蛛の糸で巻き取る蜘蛛そのものだ。

 

「鬼女 アルケニー。元は人だったが、神の怒りを買ってこの姿にされた悪魔…だそうだ」

 

「元は人…。でも、倒さないとアイコちゃんが助からないんだよね? だったら…!」

 

「ええ、ためらう必要はありません。今の彼女は、身も心も悪魔に成り下がってしまったのです!」

 

 その女性…アルケニーに対し、即座に臨戦態勢を取る三人。元は人…という所にミカの顔が若干曇るが、法二のフォローに一つ頷いて改めて銃をアルケニーに向ける。

 

「ははは! 愚か者どもめ! ここは既に私のテリトリー! この場所で私に勝てると思ったのか!」

 

 そういうやいなや、右手を中道達に突き付けるアルケニー。すると、四方八方から飛んできた蜘蛛の糸が、三人が構えた銃を瞬時にからめとり、更にあっという間に糸で何重にも包んで撃てなくしてしまった!

 

「ほらほら、まだ終わりではないぞ!」

 

 慌てる三人に、アルケニーはもう一度右手を突き出す。すると、今度は飛んできた蜘蛛の糸が三人の体をぐるぐる巻きにして身動きできなくしてしまったのだ!

 

「ぐうっ!」「くそっ、これは…!」

 

「ははははは! 無駄無駄、人間如きの非力では、私の糸は切れん! では、まずはこの女から頂くとしよう。せいぜい、いい声で鳴いてくれよ」

 

 何とか糸から脱出しようともがく中道と法二だが、残念ながら何重にも巻かれた糸はびくともしない。そうして、何故か大人しくしているミカに近づくアルケニー。しかし、次の瞬間!

 

「あああああああっ!!」

 

 裂帛の怒声と共に、ミカは糸を強引に引きちぎってしまったのだ! 

 

「な、なにごべぁっ!!?」

 

 驚愕の声を上げるアルケニーの顔面にミカの拳がヒットする。そして、仰向けに倒れたアルケニーをミカは懐から出した剣…あのシンジュクのガイア神殿の男に貰った剣”あめのむらくも”だ…で、思い切り切り裂いた!

 

「がはっ!? わ、わたし…の……いと…を…。お、おまえ…い、いったい……な、なに…も……の……」

 

 この二連撃を受けて、アルケニーは倒れてしまう。そして、アルケニーの姿が消えると同時に、部屋全体を覆っていた蜘蛛の糸も姿を消した。勿論、中道や法二に巻き付いていた糸も全て消えた。

 

「……………る? …え、き…える?」

 

 少し間を置いてから、不意に三人に掛かる声。辺りを見回すと、丁度部屋の中央に光の球が発生していた。どうやら、声はここから聞こえている様だ。

 

「ありがとう、助かったわ。改めてお礼を言いたいから、まずはここから出てきて」

 

「この声は…アイコちゃん? やった、助けられたんだね! ナカミチ、ホウジ、早く外に出よう!」

 

 言う事だけ言って消えてしまった光の球に、ミカは快哉を上げながら部屋を出て行ってしまった。

 

「やはりミカは強いな…。今はまだ足手まといだが、いつか必ず追いついて見せる。より強力な悪魔を使役できるようになれば、追いつけるはずだ…!」

 

 そんなミカを追いかけながら、一人呟く中道。その表情には決意の色が見える。

 

「―――そうだ、中道君はまだ追いつける余地が十分にある。でも……僕は……」

 

 一方、同じくミカを追いかける法二だが、中道と違い表情は非常に暗かった。

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